デイリーレポート 2023年8月31日

August 31, 2023

【前日の為替概況】ドル円、反発 米国株上昇に伴いリスク・オン

30 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反発。終値は 146.24 円と前営業日 NY 終値(145.88 円) と比べて 36 銭程度のドル高水準だった。8 月 ADP 全米雇用報告が 17.7 万人増と予想の 19.5 万人増を下 回り、米労働市場の過熱感の緩和が示されると、米連邦準備理事会(FRB)による追加利上げ観測が一段 と後退。米金利の低下とともに全般ドル売りが優勢となった。4-6 月期米国内総生産(GDP)改定値や個 人消費、コア PCE が予想より弱い内容となったこともドル売りを促し、一時 145.56 円と日通し安値を更 新した。

ただ、その後発表の 7 月米住宅販売保留指数が予想を上回ったことが分かると買い戻しが優勢となり、 146.29 円付近まで持ち直した。米国株相場の上昇に伴うリスク・オンの円売りも出た。

ユーロドルは 3 日続伸。終値は 1.0923 ドルと前営業日 NY 終値(1.0880 ドル)と比べて 0.0043 ドル程 度のユーロ高水準だった。8 月独消費者物価指数(CPI)速報値が前年比で予想を上回ると、欧州中央銀 行(ECB)の利上げ継続観測が高まりユーロ買いが優勢となった。低調な米経済指標が相次いだこともド ル売りを促し、23 時前に一時 1.0945 ドルと 15 日以来約 2 週間ぶりの高値を付けた。その後の下押しも 1.0917 ドル付近にとどまった。

ユーロ円は 5 日続伸。終値は 159.74 円と前営業日 NY 終値(158.72 円)と比べて 1 円 02 銭程度のユー ロ高水準。独インフレ指標の上振れを受けて、「ECB が 9 月の理事会で追加利上げを決める」との観測が 高まるとユーロ買いが進んだ。米国株相場の上昇を背景にリスク・オンの円売り・ユーロ買いも入り、5 時前には 159.76 円と 2008 年 8 月以来 15 年ぶりの高値を更新した。

【本日の東京為替見通し】ドル円、米指標に一喜一憂も底堅さは続く

ドル円は米経済指標の結果に一喜一憂しながらも底堅い動きが続いている。29 日の 7 月米 JOLTS 求人 件数が 3 カ月連続で減少し、約 2 年半ぶりの低水準になったことに続いて、昨日発表の 8 月 ADP 全米雇用 報告も予想を下回る結果となり、米連邦準備理事会(FRB)の利上げで引き締まっていた労働市場が緩み 始めているとの見方が強まっている。本日の NY 市場では米金融当局が注視するインフレ指標である米個 人消費支出(PCE)コア価格指数が発表される。市場予想では 7 月も 6 月同様に前月比+0.2%が見込まれ ている。予想通りなら 2 カ月間の上昇としては 20 年末以来最も小幅となる。

本日の東京市場では中国の 8 月製造業購買担当者景気指数(PMI)の発表が予定されている。同指標は 5 カ月連続で景気判断の分岐点とされる 50 を下回ると予想されているが、予想以上にさえない結果とな れば、中国株の下落に伴いリスクオフの円買いが見られる可能性があるが、対人民元でドル買いも進む可 能性があり、ドル円は引き続き下値の堅い動きが見込まれる。日銀が緩和策を変えない限り、円が主要通 貨に対して売られやすい状況は続きそうだ。円キャリートレードの趨勢を示すとされる在日外銀の本支店 勘定は、最新の 6 月時点で 13 兆円台と、昨年 10 月につけた 15 年ぶり高水準となる 14 兆円へ迫り、円売 りに再び勢いのついていることが示されている。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)

○08:50 ◇ 7 月商業販売統計速報(小売業販売額、予想:前年比 5.4%)

○08:50 ◎ 7 月鉱工業生産速報(予想:前月比▲1.4%/前年比▲1.4%)

○10:30 ◇ 中村豊明日銀審議委員、あいさつ

○14:00 ◇ 7 月新設住宅着工戸数(予想:前年比▲0.8%)

○19:00 ◇ 外国為替平衡操作の実施状況(介入実績)

<海外>

○10:00 ◇ 8 月 ANZ 企業信頼感

○10:30 ◎ 8 月中国製造業購買担当者景気指数(PMI、予想:49.4)

○10:30 ◇ 4-6 月期豪民間設備投資(予想:前期比 1.2%)

○15:00 ◎ 7 月独小売売上高(予想:前月比 0.3%/前年比▲1.0%)

○15:30 ◇ 7 月スイス小売売上高

○15:45 ◇ 8 月仏消費者物価指数(CPI)速報値(予想:前月比 0.8%/前年比 4.6%)

○15:45 ◇ 7 月仏消費支出(予想:前月比 0.3%)

○15:45 ◇ 7 月仏卸売物価指数(PPI)

○15:45 ◎ 4-6 月期仏国内総生産(GDP)改定値(予想:前期比 0.5%)

○16:00 ◎ 4-6 月期トルコ GDP(予想:前年比 3.5%)

○16:00 ◎ シュナーベル欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演

○16:15 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演

○16:15 ◎ ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼チーフエコノミスト、講演

○16:55 ◎ 8 月独雇用統計(予想:失業率 5.7%/失業者数変化 1.00 万人)

○18:00 ◎ 7 月ユーロ圏失業率(予想:6.4%)

○18:00 ☆ 8 月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値(予想:前年比 5.1%)

○18:00 ☆ 8 月ユーロ圏 HICP コア速報値(予想:前年比 5.3%)

○18:30 ◇ 7 月南アフリカ卸売物価指数(PPI、予想:前月比 0.4%/前年比 2.9%)

○20:30 ☆ ECB 理事会議事要旨(7 月 27 日分)

○20:30 ◇ 8 月米企業の人員削減数(チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社調べ)

○21:00 ◎ 7 月南アフリカ貿易収支(予想:12.5 億ランドの赤字)

○21:00 ◇ 7 月メキシコ失業率(季節調整前、予想:2.80%)

○21:00 ☆ 4-6 月期インド GDP(予想:前年同期比 7.7%)

○21:30 ◇ 4-6 月期カナダ経常収支(予想:112 億カナダドルの赤字)

○21:30 ◎ 7 月米個人消費支出(PCE、予想:前月比 0.7%)

◎ 7 月米個人所得(予想:前月比 0.3%)

☆ 7 月米 PCE デフレーター(予想:前年比 3.3%)

☆ 7 月米 PCE コアデフレーター(予想:前月比 0.2%/前年比 4.2%)

○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:23.5 万件/170.3 万人)

○22:00 ◎ コリンズ米ボストン連銀総裁、講演

○22:45 ◎ 8 月米シカゴ購買部協会景気指数(予想:44.1)

○1 日 01:00 ◎ デギンドス ECB 副総裁、講演

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

30 日 10:38 田村日銀審議委員

「現状では長期金利が 1%まで上昇することはないと想 定」

「ファンダメンタルズから乖離した投機的な動きや急激な 金利変動が見られれば、過度な金利上昇を抑制してい く」

「経済・物価を巡る不確実性は極めて高い状況」

「現時点においては金融緩和を継続することが妥当」

「物価は当面上昇幅を縮小も、プラス幅を穏やかに拡大 へ」

「想定以上に物価が上振れる可能性も否定できない」

「物価目標が実現したか見極めるにはもう少し時間が必 要」

「2%目標が見通せるようになれば決定会合で適切な出 口戦略を議論」

「マイナス金利の解除は一つの正常化の選択肢」

30 日 19:08 センテノ・ポルトガル中銀総裁

「ユーロ圏経済成長の指標はこのところ下振れている」

「仮に利上げを休止したとしても、利上げは終了と言うこ とは誤ったメッセージになる」

「政策決定には慎重にならざるを得ない」

「インフレ率が年末までに 3%を下回ると確信」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線付近から下振れるも下げ渋る>

小陽線引け。一時 145.56 円と、一目均衡表・転換線 145.96円からやや離れ気味に下押した。しかし下げ渋り、今後の上昇余地を残す同線をほどなく回復。転換線付近の底堅さを維持した。その下で推移する 21日移動平均線も 145 円付近へ上昇して推移。下振れ回避の一助となりそうだ。

レジスタンス 2 147.37(8/29 高値=年初来高値)
レジスタンス 1 147.09(ピボット・レジスタンス 2)
前日終値 146.24
サポート 1 145.56(8/30 安値)

<ユーロドル=転換線を上回る水準で次の方向うかがう>

陽線引け。1.09 ドル回復を前に伸び悩む場面を挟むやや安定性を欠く展開が先行した。しかし同大台を回復して 1.0945ドルまで強含んでいる。一目均衡表・雲の下限 1.0956 ドルを前に足踏みとなり、一目・基準線の今後の低下も予想されるため先行きに不透明感はある。ただ、レンジが切り上がり、転換線の低下はしばらく回避できそう。当面は転換線を上回る水準で推移し、次に動き出す方向を探ることになるか。

レジスタンス 1 1.0998(ピボット・レジスタンス 2)
前日終値 1.0923
サポート 1 1.0856(日足一目均衡表・転換線)

<ポンド円=目先の抵抗とみられた転換線を上抜け>

大陽線引け。21 日移動平均線付近の底堅さを維持し、一目均衡表・転換線 185.06 円を上抜け。186.07 円まで上伸した。転換線は依然としていったん低下する可能性を残したまま。相場下押しの不安はあるものの、185 円付近で推移する 5 日移動平均線や、184 円前半で上昇中の 21 日線が支えとなり大きな下振れは回避できるとみる

レジスタンス 1 186.77(8/22 高値=年初来高値)
前日終値 186.05
サポート 1 185.08(5 日移動平均線)

<NZ ドル円=雲の中で気迷いか>

極小陰線引け。一目均衡表・雲の中で十字線に近い足型を形成した。気迷いの示唆と考えられる。強い動きにならなくとも、一目均衡表・基準線 86.77 円付近を維持できれば低下中の雲上限 87.39 円をやがて上抜くことができそう。少なくとも一目・転換線 86.66 円付近に下押しをとどまりそうで、相場の底抜けは回避できるだろう。

レジスタンス 1 87.53(8/30 高値)
前日終値 87.06
サポート 1 86.66(日足一目均衡表・転換線)