デイリーレポート 2023年9月1日
September 1, 2023
【前日の為替概況】ドル円、反落 アジア時間高値が抵抗となり失速、米株安・長期金利低下
31 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反落。終値は 145.54 円と前営業日 NY 終値(146.24 円) と比べて 70 銭程度のドル安水準だった。米連邦準備理事会(FRB)が金融政策を判断するうえで重視して いる 7 月米個人消費支出(PCE)価格指数(デフレーター)で変動が激しい食品とエネルギーを除くコア デフレーターは前年比 4.2%上昇と市場予想と一致し、インフレ圧力の根強さを示唆する内容と受け止め られた。また、8 月米シカゴ購買部協会景気指数は 48.7 と予想の 44.1 を上回り、ドルの買い戻しを誘っ た。23 時前には一時 146.23 円付近まで値を上げた。
ただ、アジア時間に付けた日通し高値 146.25 円が目先レジスタンスとして働くと失速した。ダウ平均 の失速や米長期金利の低下に伴う円買い・ドル売りも入り、3 時 30 分前には 145.35 円と日通し安値を更 新した。市場では「月末のロンドン 16 時(日本時間 24 時)のフィキシングに絡んだ円買いのフローが観 測された」との声も聞かれた。
ユーロドルは 4 営業日ぶりに反落。終値は 1.0843 ドルと前営業日 NY 終値(1.0923 ドル)と比べて 0.0080 ドル程度のユーロ安水準だった。ユーロ圏のインフレ指標や欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨(7 月 27 日分)を受けて、ECB の追加利上げ観測が後退すると、欧州債利回りが低下。全般ユーロ売りが広がっ た。1 時 30 分前には 1.0835 ドルと日通し安値を更新した。
ユーロ円は 6 日ぶりに反落。終値は 157.82 円と前営業日 NY 終値(159.74 円)と比べて 1 円 92 銭程度 のユーロ安水準。ECB が 9 月の理事会で追加利上げを決めるとの観測が後退する中、全般ユーロ売りが先 行。ダウ平均の失速に伴うリスク回避の円買いやロンドン・フィキシングに絡んだ円買いのフローも入り 一時 157.62 円まで値を下げた。
メキシコペソは急落した。メキシコ中銀がペソ安に歯止めをかけるために導入している為替ヘッジ・プ ログラムについて「段階的に縮小する」と発表すると、ペソ売りが優勢となった。ドルペソは一時 17.1065 ペソ、ペソ円は 8.53 円までペソ安に振れた。メキシコの代表的な株式指数であるボルサ指数は 2%超下 落した。
【本日の東京為替見通し】ドル円、米雇用統計待ちか
本日は市場の目線が NY タイムに発表される米 8 月雇用統計に向けられており、東京タイムでのドル円 は模様眺めムードが強まりそうだが、一段の調整売りに押される可能性にも注意したい。今週に発表され た 7 月米 JOLTS 求人件数が約 2 年半ぶりの低水準となり、8 月 ADP 全米雇用報告も予想を下回るなど、米 労働市場の過熱感の緩和が示された。また、7 月 PCE デフレータはインフレの落ち着きを示しているもの の、個人消費支出が強い数字となった。
8 月米雇用統計では、非農業部門雇用者数の予想は 17 万人と前月から減少が見込まれている。予想通 りなら、過去 3 カ月の雇用者数の伸び平均は 2021 年初め以来最も小幅になる。また、同平均時給も前月 から伸びが縮小すると予想されており、雇用統計の結果が予想通り若しくは予想以上に低調な結果となれ ば、労働市場の減速が証明されつつあるとの認識とともに、米金融当局による追加利上げの緊急性が低下 するとの見方が強まり、ドル高に調整が入りそうだ。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は先週 のジャクソンホール会合での講演で、インフレ率を 2%に低下させるには労働市場が軟化するとともに一 定期間にわたって経済成長率が潜在成長率を下回る必要があると強調した。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◇ 4-6 月期の法人企業統計調査(法人季報、ソフトウェアを含む設備投資額、予想:前年比 8.3%)
<海外>
○10:45 ◎ 8 月 Caixin 中国製造業購買担当者景気指数(PMI、予想:49.3)
○15:00 ◇ 8 月英ネーションワイド住宅価格指数(予想:前月比▲0.4%)
○15:30 ◎ 8 月スイス消費者物価指数(CPI、予想:前月比 0.2%)
○16:00 ◇ 8 月トルコ製造業 PMI
○16:30 ◇ 8 月スイス製造業 PMI(予想:40.5)
○16:50 ◎ 8 月仏製造業 PMI 改定値(予想:46.4)
○16:55 ◎ 8 月独製造業 PMI 改定値(予想:39.1)
○17:00 ◎ 8 月ユーロ圏製造業 PMI 改定値(予想:43.7)
○17:30 ◎ 8 月英製造業 PMI 改定値(予想:42.5)
○19:00 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
○21:00 ☆ 4-6 月期ブラジル国内総生産(GDP、予想:前期比 0.3%/前年同期比 2.7%)
○21:30 ☆ 6 月カナダ GDP(予想:前月比▲0.2%/前年比 1.4%)
☆ 4-6 月期カナダ GDP(予想:前期比 1.2%)
○21:30 ☆ 8 月米雇用統計(予想:非農業部門雇用者数変化 17.0 万人/失業率 3.5%/平均時給、前月比 0.3%/前年比 4.4%)
○22:45 ◎ 8 月米製造業 PMI 改定値(予想:47.0)
○22:45 ◎ メスター米クリーブランド連銀総裁、講演
○23:00 ☆ 8 月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景気指数(予想:47.0)
○23:00 ◇ 7 月米建設支出(予想:前月比 0.5%)
○24:00 ◇ 8 月メキシコ製造業 PMI
○2 日 03:00 ◎ 8 月ブラジル貿易収支(予想:97.50 億ドルの黒字)
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
31 日 10:45 中村日銀委員
「賃金上昇を伴う物価上昇の形成には至っていない」
「物価 2%の持続・安定的な実現見通せる上昇に至って ない」
「好循環の形成、経済成長と賃金が増加する構造変革 が必要」
「金融引き締めへの転換、まだ時間が必要」
31 日 16:07 シュナーベル欧州中央銀行(ECB)専務理事
「ユーロ圏の先行きは依然として極めて不透明」
「経済活動は目に見えて緩やかになっている」
「金利のピークがどこになるのか、また、金利がいつまで 制限的な水準に保たれなければならないのかを予測す ることはできない」
「ユーロ圏は深刻な景気後退の瀬戸際にはない」
31 日 16:20 ボスティック米アトランタ連銀総裁
「過度な引き締めは無用な害を及ぼす」
「現在の金利スタンスは適切な制限的」
「インフレが加速するなら追加引き締めを支持」
31 日 16:48 ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼 チーフエコノミスト
「英国のインフレは依然高すぎる」
「英国は特に、第 2 ラウンドのインフレ効果に直面」
「インフレに自己満足する余地はない」
「ヘッドラインレートが低下したにもかかわらず、インフレ に注意すべきケースがある」
「インフレのいくつかの指標は、最近あまり穏やかではな い」
「今後多くの政策が予定されている」
「インフレに関して仕事をやり遂げる必要がある」
「政策面で十分な努力をする必要がある」
「インフレ対策はやり過ぎの可能性もある」
「金融政策の一つの選択肢は金利の長期安定」
「インフレの力学が英国経済に埋め込まれてしまう危険 性」
「金利についてはそのようなアプローチを支持する傾向 がある」
31 日 18:37 ホルツマン・オーストリア中銀総裁
「現在の情報に基づけば、9 月の利上げを否定はしない が、まだ決めてはいない」
「ターミナルレートに近づいているが、まだ到達していな い可能性が高い」
31 日 20:36 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨(7 月 27 日分)
「見通しの悪化は、金融緩和が機能していることを示す」
「経済活動に下向きのサプライズが生じる可能性がある との評価については、大筋で一致」
「全員が 0.25%の利上げを支持」
「9 月に集中しすぎないよう注意を促した」
「スタッフ予想では 9 月に追加利上げを実施する必要は ないとの見解が示された」
31 日 23:38 ノバク露副首相
「ロシアはOPECプラスとさらなる行動を取ることで合意」
1 日 01:56 デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁
「最新の指標は第 3 四半期、おそらく第 4 四半期の減速 を示唆している」
「インフレ率を 2%の目標に戻すために努力を続ける必 要」
「9 月の決定はまだ議論の余地がある」
「今後数日間の指標が ECB の決定の鍵となる」
「利上げプロセスの最終段階にいる」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=21 日線付近で下げ渋ることできるか注視>
下影陰線引け。一目均衡表・転換線 145.96 円を下回り、一時 145.35 円まで下落した。転換線はまだ上昇余地を残しており、強い抵抗にならないだろう。しかし 8 月 30 日に転換線を回復する前に下げ渋った際の安値 145.56 円を割り込んでおり反発力は鈍いか。145.18 円前後で上昇中の 21 日移動平均線付近では下げ渋るとみるが、念のため 8 月 23 日安値 144.54 円前後まで下振れる可能性も視野に入れて臨んだほうがよいだろう。
レジスタンス 1 146.25(8/31 高値)
前日終値 145.54
サポート 1 144.81(ピボット・サポート 2)
サポート 2 144.54(8/23)
<ユーロドル=転換線や 200 日線前後で底堅さ示すか>
陰線引け。一時 1.0835 円まで下落した。一目均衡表・転換線 1.0856 ドルを下回って NY を引けた。転換線は上昇傾向を維持する見込みで、同線に沿った緩やかな戻りも想定できる。1.0816 円前後で上昇中の 200 日移動平均線付近でも底堅さを示すとみる。ただ、1.09 ドル前後で低下中の 21 日線や90 日線が反発を抑制しそうだ。
レジスタンス 1 1.0915(90 日移動平均線)
前日終値 1.0843
サポート 1 1.0782(8/29 安値)
<ユーロ円=転換・基準線レンジから次の方向うかがう状態>
大陰線引け。一目均衡表・転換線 158.32 円を下抜け、157.62円まで下落幅を広げた。緩やかに上昇する転換線は強い抵抗にならず、現水準 155.59 円から週明けにも 157 円台に切り上がる見込みの一目・基準線も下支えになりそう。大きな崩れは回避できるとみるが、まずは転換線と基準線に挟まれた158 円を中心としたレンジに収れんする流れとなり次に動き出す方向性を探る状態か。
レジスタンス 1 158.69(8/30-31 下落幅の半値戻し)
前日終値 157.82
サポート 1 157.24(8/25 安値)
<豪ドル円=日柄経過を味方に雲を上回る>
下影小陰線引け。昨日は 94.67 円に位置していた一目均衡表・雲の上限を抜けきれず 94.04 円まで失速した。しかし雲の上限は本日 94.09 円へ低下。相場は NY 終値 94.38 円付近でおおむね横ばいだが、日柄の経過を味方に雲を上抜けてきた。重しが 1 つ取れ、雲を上回る水準での底堅い推移が期待できる。
レジスタンス 1 94.94(8/31 高値)
前日終値 94.38
サポート 1 93.82(日足一目均衡表・基準線)