デイリーレポート 2023年9月11日

September 11, 2023

【前日の為替概況】ドル円 147.87 円まで上昇、米 10 年債利回りが 4.26%台へ上昇

8 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 3 営業日ぶりに反発。終値は 147.83 円と前営日 NY 終値(147.30 円)と比べて 53 銭程度のドル高水準だった。東京市場では鈴木財務相の円安けん制発言をきっかけに一時 146.59 円まで売り込まれる場面もあったが、NY 市場では底堅く推移した。一時は 4.20%台まで低下した米 10 年債利回りが 4.26%台まで上昇すると、日米金利差拡大への思惑から円売り・ドル買いが進んだ。4 時過ぎには一時 147.87 円と前日に付けた年初来高値に面合わせした。

ユーロドルは小反発。終値は 1.0700 ドルと前営業日 NY 終値(1.0696 ドル)と比べて 0.0004 ドル程度のユーロ高水準だった。米長期金利が低下した場面ではユーロ買い・ドル売りが優勢となり、23 時過ぎに一時 1.0744 ドルと日通し高値を付けた。ただ、ユーロ圏景気の減速懸念からユーロ買いは広がらず、上値は限定的だった。米長期金利が上昇に転じるとユーロ売り・ドル買いがじわりと強まり、1.0697 ドル付近まで押し戻された。

ユーロ円は反発。終値は 158.20 円と前営業日 NY 終値(157.56 円)と比べて 64 銭程度のユーロ高水準。欧米株価の上昇を受けて、投資家の過度なリスク回避姿勢が後退すると円売り・ユーロ買いが進んだ。23時過ぎに一時 158.39 円と日通し高値を更新した。その後の下押しも 158.08 円付近にとどまった。

カナダドルは堅調。カナダ統計局が発表した 8 月カナダ雇用統計で、新規雇用者数が 3.99 万人増と予想の 1.50 万人増を上回り、失業率が 5.5%と予想の 5.6%より強い内容だったことが分かるとカナダドル買いが広がった。対米ドルでは一時 1.3608 カナダドル、対ユーロでは 1.4568 カナダドル、対円では 108.46 円まで値を上げた。

【本日の東京為替見通し】ドル円は底堅い展開だが、引き続き円買い介入の可能性には要警戒か

本日の東京外国為替市場のドル円は、米 10 年債利回りや原油価格の上昇を背景に底堅い展開が予想されるものの、植田日銀総裁の発言や本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性が上値を抑える展開が予想される。

今朝のドル円は、週末の植田日銀総裁の発言「賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた時期になれば、マイナス金利政策の解除を含め、色々選択肢がある」を受けて、146.67 円まで下落した。

ドル円の高値は、5 日が 147.80 円、6 日が 147.82 円、7 日が 147.87 円、8 日が 147.87 円までと 148円台の手前までの堅調推移が続いており、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の出方を窺う展開と なっている。

ドル円のテクニカル分析では、234 日サイクルの 9 月 12 日頃に、148.59 円~148.77 円を目処とする高値を付けて、反落するシナリオが想定されている。また、オシレーター系指標(逆張り指標)は、価格の高値更新(145.07 円⇒147.87 円)に逆行する「弱気の乖離(ベアリッシュ・ダイバージェンス)が出現しており、高値反落の可能性を示唆している。

先週 6 日、神田財務官は、急激な為替変動が続いた場合は「あらゆる選択肢」を排除せず、適切に対応するとの見解を示した。昨年 9 月 22 日の本邦通貨当局による 145 円台での第 1 弾ドル売り・円買い介入の前には、神田財務官は「どんな場合でも、あらゆるオプションがアベイラブル(利用可能)であって、何かを排除しているわけではない」と述べていた。すなわち、「あらゆる選択肢、オプション」という介入実施の警告が発せられたのかもしれない。8 日には、鈴木財務相が「為替市場の動向を高い緊張感を持って注視。過度な変動にはあらゆる選択肢を排除せず対応する」と述べたが、昨年 9 月 22 日の第 1 弾ドル売り・円買い介入の時は、「(行き過ぎた円安に対しては)断固たる措置をとる」と警告していた。現状のドル高・円安相場に関しては、昨年のような輸入インフレという「悪い円安」論も聞かれず、三者会合(財務省・金融庁・日銀)やレートチェックなども聞こえてこないため、円買い介入の実施水準が 150円台に引き上げられているのではないか、との指摘もあるものの、予断を許さない状況が続くことになる。

神田財務官が言及した投機筋に関しては、IMM 通貨先物の非商業(投機)部門取組は、9 月 5 日時点で97,136 枚(x1250 万円=1 兆 2142 億円)となっていた。昨年のドル売り・円買い介入前の円売り持ち高は、10 万枚程度(=1 兆 2500 億円)だったことで、神田財務官はもうしばらく待つつもりなのかもしれない。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ◇ 8 月マネーストック M2

<海外>

○15:00 ◎ 8 月ノルウェー消費者物価指数(CPI、予想:前月比▲0.3%/前年比 5.4%)

○16:00 ◇ 7 月トルコ経常収支(予想:45 億ドルの赤字)

○16:00 ◇ 7 月トルコ失業率

○16:00 ◇ 7 月トルコ鉱工業生産

○21:00 ◇ 7 月メキシコ鉱工業生産

○12 日 02:00 ◎ 米財務省、3 年債入札

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

8 日 05:12 ボスティック米アトランタ連銀総裁

「インフレ率を 2%の目標に下げるためにまだやるべき 仕事がある」

「経済にはなお勢いがあり、需要は依然として増加して いる」

8 日 08:10 ローガン米ダラス地区連銀総裁

「9 月の利上げ見送りは適切な可能性」

「政策を十分に制約的にするためにはまだやるべきこと ある」

「過度のインフレが終わったと確信できない」

「FRB は政策を注意深く調整し、段階的に措置を講じる べき」

8 日 09:38 鈴木財務相

「過度な変動は望ましくない」

「為替はファンダメンタルズ反映して安定推移が重要」

「為替市場の動向を高い緊張感を持って注視」

「過度な変動にはあらゆる選択肢を排除せず対応」

8 日 22:49 バー米連邦準備理事会(FRB)副議長

「中央銀行デジタル通貨(CBDC)実現には程遠い」

「強力な監視なしでのステーブルコイン発行について深 く懸念」

*金融政策については言及せず

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=9/8 安値を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。2 手連続陰線の後、抱き線で反発して転換線を上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。本日は、8 日の安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 2 149.71(2022/10/24 高値)
レジスタンス 1 148.40(2022/11/4 高値)
前日終値 147.83
サポート 1 146.59(9/8 安値)
サポート 2 146.16(日足一目均衡表・転換線)

<ユーロドル=転換線を抵抗に戻り売りスタンス>

小陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシグナルが点灯している。孕み線で反発したものの転換線を下回って引けており反落の可能性が示唆されている。本日は、転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 1.0816(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0700
サポート 1 1.0635(5/31 安値)

<ユーロ円=8/30 高値を抵抗に戻り売りスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシグナルが点灯している。孕み線で反発したものの転換線を下回って引けており反落の可能性が示唆されている。本日は、転換線 158.39 円を念頭に置き、8 月 30 日の高値を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 159.76(8/30 高値)
前日終値 158.20
サポート 1 157.01(9/8 安値)

<豪ドル円=8/30 高値を抵抗に戻り売りスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシグナルが点灯している。しかし、抱き線で反発したものの転換線を下回って引けており反落の可能性が示唆されている。本日は、転換線 94.33 円を念頭に置き、8 月 30 日の高値を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 95.06(8/30 高値)
前日終値 94.27
サポート 1 92.84(8/21 安値)