デイリーレポート 2023年9月12日
September 12, 2023
【前日の為替概況】ドル円 145.91 円から 146.98 円まで反発、米 10 年債利回りが 4.30%台へ上昇
11 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反落。終値は 146.59 円と前営業日 NY 終値(147.83 円)と比べて 1 円 24 銭程度のドル安水準だった。週末に掲載された読売新聞による単独インタビューで、植田日銀総裁が「マイナス金利政策の解除を含めいろいろなオプション(選択肢)がある」と語ったことをきっかけに、日銀の大規模金融緩和政策の修正観測が広がると週明け早朝取引から円買いが進行。日本時間夕刻に一時本日安値となる 145.91 円まで下落した。ただ、145 円台では押し目を拾いたい向きも多く、20 時 30 分前には 146.98 円付近まで下げ渋った。米 10 年債利回りが 4.30%台まで上昇したことも相場を下支えした。
もっとも、NY 勢が本格参入する時間帯に入ると 146 円台半ばで値動きが鈍った。今週予定の 8 月米消費者物価指数(CPI)や 8 月米卸売物価指数(PPI)、8 月米小売売上高など、インフレや個人消費の動向を示す重要指標の発表を控えて、様子見ムードが強まった。
ユーロドルは続伸。終値は 1.0750 ドルと前営業日 NY 終値(1.0700 ドル)と比べて 0.0050 ドル程度のユーロ高水準だった。米長期金利の上昇をきっかけにユーロ売り・ドル買いが先行すると、21 時過ぎに一時 1.0716 ドル付近まで値を下げた。ただ、週明け早朝取引で付けた日通し安値 1.0707 ドルが目先サポートとして働くと買い戻しが優勢に。14 日の欧州中央銀行(ECB)定例理事会を前にポジション調整目的の買いも入り、23 時 30 分前には一時 1.0759 ドルと日通し高値を更新した。
米ウォールストリート・ジャーナルの FED ウォッチャー、ニック・ティミラオス記者が 10 日付の記事で、「米連邦準備理事会(FRB)は利上げに慎重になりつつある」との見解を示すと、米金融引き締めが長期化するとの警戒感が緩和。ドル売りを誘った面もあった。主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時 104.42 まで低下している。
ユーロ円は反落。終値は 157.58 円と前営業日 NY 終値(158.20 円)と比べて 62 銭程度のユーロ安水準。日銀の金融政策修正観測の高まりを背景に円高が進むと、日本時間夕刻に一時 156.59 円と日通し安値を更新した。ただ、売り一巡後は買い戻しが優勢に。ドル円の持ち直しやユーロドルの上昇につれた買いが入り、一時 157.70 円付近まで下げ渋った。
【本日の東京為替見通し】ドル円、日本銀行や財務省高官の発言に警戒していく展開か
本日の東京外国為替市場のドル円は、9 日の植田日銀総裁の発言を受けた日銀の年末までの政策修正への警戒感や本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入へ警戒感から上値が重い展開が予想される。昨日は、中国人民銀行による投機的な人民元売りへの牽制措置がドル売り・人民元買いを活発化させ、日本銀行による年末までの政策修正の可能性がドル売り・円買いを活発化させたことで、日中の中央銀行によるドル高是正の様相を呈した。
先週 6 日のドル円の高値は 147.82 円までだったが、神田財務官が、急激な為替変動が続いた場合は「あらゆる選択肢」を排除せず、適切に対応するとの見解を示していた。
8 日の高値は 147.87 円までだったが、鈴木財務相が「為替市場の動向を高い緊張感を持って注視。過度な変動にはあらゆる選択肢を排除せず対応する」と円安を牽制する発言をしたことで、一時 146.59 円まで下押しした。そして、9 日の植田日銀総裁の新聞インタビューでの発言「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば、解除をやる。『年末』までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」を受けて、11 日には、『年末』までの日銀の政策修正を巡る思惑から 145.91 円まで下押ししている。昨年の秋以来、鈴木財務相や神田財務官は、為替市場の「ボラティリティー」の抑制をドル売り・円買い介入の大義名分に掲げていた。今年は、植田日銀総裁や内田日銀副総裁も、イールドカーブコントロール(YCC)の上限を 1%まで引き上げた背景に、ボラティリティーの抑制に言及していた。
すなわち、ドル円が 150 円に向けて上昇するボラティリティーを抑制するために、148 円を防衛線とする、財務省と日本銀行の口先介入の可能性もあるため、今後の本邦通貨当局の出方に注目しておきたい。
ドル円のテクニカル分析では、234 日サイクルの本日 9 月 12 日の前後に、148.59 円から 148.77 円を目処とする高値を付けて、反落するシナリオが警戒されている。また、オシレーター系指標(逆張り指標)は、価格の高値更新(145.07 円⇒147.87 円)に逆行する「弱気の乖離(ベアリッシュ・ダイバージェンス)が出現しており、高値反落の可能性を示唆している。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
特になし
<海外>
○09:30 ◇ 9 月豪ウエストパック消費者信頼感指数
○10:30 ◇ 8 月豪 NAB 企業景況感指数
○15:00 ◇ 8 月独卸売物価指数(WPI)
○15:00 ◎ 8 月英雇用統計(失業率/失業保険申請件数推移)
○15:00 ◎ 5-7 月英失業率(ILO 方式、予想:4.3%)
○18:00 ◎ 9 月独 ZEW 景況感指数(予想:▲15.0)
○18:00 ◎ 9 月ユーロ圏 ZEW 景況感指数
○21:00 ◎ 8 月ブラジル IBGE 消費者物価指数(IPCA、予想:前年同月比 4.67%)
○21:00 ◎ 7 月インド鉱工業生産(予想:前年同月比 4.8%)
○21:00 ◎ 8 月インド CPI(予想:前年比 7.00%)
○13 日 02:00 ◎ 米財務省、10 年債入札
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
11 日 06:25 イエレン米財務長官
「ソフトランディング達成へ非常に良い感触得ている」
11 日 13:39 中国人民銀行
「中国当局、人民元レートには合理的で均衡取れた水 準で適切な安定状態を維持する強固な基盤」
「中国、一方的でプロシクリカルな動き是正へ必要なら 措置講じる構え」
11 日 16:12 松野官房長官
「長期金利の上昇、住宅ローン金利など家計への負担 含め注視」
「長期金利上昇、経済運営に万全を期す」
11 日 18:06 欧州委員会
「2023 年と 2024 年のユーロ圏経済成長率予想をそれぞ れ+0.8%、+1.3%に下方修正」
「2023 年のユーロ圏インフレ率を 2.9%に上方修正、 2024 年は+5.6%に引き下げ」
11 日 18:27 シムシェキ・トルコ財務相
「為替レートをターゲットとしていない」
「リラ安とインフレの時代は終わる」
「必要であれば量的引き締めを実施する」
「インフレ率を一桁に引き下げるためには、一貫した国 内消費と信用の拡大が必要」
11 日 23:10 マン英中銀金融政策委員会(MPC)委員
「中立金利は以前よりも高くなった可能性」
「引き締めの行き過ぎによる間違いの方がましだ」
「インフレがより不安定になる可能性が高い世界に備え る必要がある」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=9/11 安値を支持に押し目買いスタンス>
陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。145.91 円まで下げて、一時転換線 146.16円を下回ったものの、転換線を上回って引けており反発の可能性が示唆されている。本日は、転換線を念頭に置き、11 日の安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 2 148.40(2022/11/4 高値)
レジスタンス 1 147.87(9/7・8 高値)
前日終値 146.59
サポート 1 145.91(9/11 安値)
サポート 2 145.14(日足一目均衡表・基準線)
<ユーロドル=転換線を抵抗に戻り売りスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシグナルが点灯している。2 手連続陽線で反発したものの、転換線を下回って引けており反落の可能性が示唆されている。本日は、転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 1.0813(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0750
サポート 1 1.0635(5/31 安値)
<ポンド円=転換線を抵抗に戻り売りスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシグナルが点灯中。しかし、2 手連続陽線で反発したものの転換線を下回って引けており反落の可能性が示唆されている。本日は、転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 184.38(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 183.37
サポート 1 182.69(9/11 安値)
<NZ ドル円=8/30 高値を抵抗に戻り売りスタンス>
陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の中で引けているものの、転換線を下回って引けていることで、売りシグナルが優勢な展開となっている。被せ線で反落し、基準線や転換線を下回って引けており続落の可能性が示唆されている。本日は、転換線 86.81 円を念頭に置き、8 月 30 日の高値を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 87.53(8/30 高値)
前日終値 86.76
サポート 1 85.80(8/21 安値)