ウィークリーレポート 2023年9月22日

週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

September 22, 2023

日米の金融スタンスの違いが明確に

◆ドル円、日米金融イベント通過で金融スタンスの違いから底堅い

◆円安のペースが早まれば介入警戒感が高まりそう

◆ユーロドル、引き続き上値の重い展開

予想レンジ

ドル円 146.00-151.00 円

ユーロドル 1.0300-1.0750 ドル

9 月 25 日週の展望

ドル円は、米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀金融政策決定会合を通過し、日米金融政策の 方向性を改めて確認することから底堅い展開が想定される。

FOMC では、「経済・金利見通し」で年内あと 1 回の利上げが確認されたほか、2024 年末と 2025 年末の中央値が上方修正された。また、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が定例記者会見で 「経済成長率が予想より強い」「経済活動の力強さが、金利の引き上げを必要とする主な理由」と 発言するなど、今回の決定が「タカ派的な据え置き」だったことを市場に印象付かせた。FRB 議 長が掲げる「金利水準がより高く、より長く」の金融スタンスを改めて強調したため、日米金融 政策の方向性の違いが一段と明確になった。

今後の米金利見通しを占う上でインフレ指標よりも米国の実体経済の強さを表す指標に一段と 注目が集まる可能性がある。そういった意味でも、来週は 26 日に 9 月消費者信頼感指数や 9 月米 リッチモンド連銀製造業景気指数、27 日に 8 月耐久財受注額、28 日に 4-6 月期米国内総生産(GDP) 確定値、29 日に 8 月 PCE コアデフレーターなど、重要指標が目白押しとなっているため、結果を 受けた米長期金利の動向には注目が集まる。

ただ、米 10 年債利回りが 2007 年 11 月以来の高水準を付けるなど、金利上昇が株式市場への悪 材料となることに警戒感が高まっている。今週後半にかけて世界的に株価が下落した流れが来週 以降も続くかどうか注視する必要があるだろう。

また、ドル円が上値を試す展開となった場合には、引き続き政府・日銀による介入の可能性が 出てくることも考慮したい。足もとのドル円は、昨年 11 月以来の高値を更新し続けているものの、 ペースが緩やかであることから介入実施への警戒感はそれほど高まっていないが、来週の相場で 急速な円安が進んだ場合には、政府高官などの発言の変化に注目すべきだろう。

ユーロドルは、引き続き上値の重い展開が想定される。先日の欧州中央銀行(ECB)理事会で利 上げ休止観測が高まるなか、米国が「タカ派的な金利据え置き」を発表したことで、欧米金融政 策の方向性の違いに着目したユーロ売り・ドル買いの流れが続く可能性が高いと予想している。

9 月 18 日週の回顧

ドル円は、147 円台後半を中心としたもみ合いが週半ばまで続いていたが、FOMC やパウエル FRB 議長のタカ派的な見解を受けてドル高が進むと一時 148.46 円と年初来高値を更新した。ただ、米 金利上昇を嫌気して欧米株価が崩れるとリスクオフの動きとなり、一時 147.32 円まで失速してい る。ユーロドルは週半ばまでは底堅く一時 1.0737 ドルまで上昇したが、FOMC 後はドル高が加速 した影響から 1.0617 ドルまで一転下落した。(了)

週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

September 22, 2023

ZAR、金融政策方針に大きな変化なし

◆ZAR、予想通りの金利据え置きで金融政策方針も大きな変化なし

◆豪ドル、豪米金融政策の方向性を手掛かりに伸び悩み

◆豪ドル、9 月 RBA 理事会議事要旨では目新しい材料を得られず

予想レンジ

豪ドル円 92.00-96.00 円

南ア・ランド円 7.50-8.00 円

9 月 25 日週の展望

豪ドルは上値の重い展開となりそうだ。今週公表された 5 日開催分の豪準備銀行(RBA)理事会 議事要旨では「金融政策のさらなる引き締めが必要となる可能性があるとの認識で一致」などの 見解が示されたが、目新しい材料は伝わらなかった。すでに 3 会合連続で金利が据え置かれてい ることもあり、市場では RBA の引き締めサイクルは終了したとの思惑が広がりつつある。

一方で、今週開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では市場予想通り金利据え置きとなっ たものの、政策金利見通し(ドット・チャート)で 2024 年末の予想中央値が引き上げられるなど、 米金融引き締めの長期化観測が高まった。豪米金融政策の方向性を手掛かりにした豪ドル売り・ ドル買い圧力が強まりやすい状況にあり、対ドルを中心に豪ドルは伸び悩む動きが予想される。

来週は 27 日に 8 月消費者物価指数(CPI)、28 日に 8 月小売売上高の発表が予定されている。 注目を集める 8 月 CPI でインフレの鈍化傾向が鮮明になれば、一段の豪ドル売り材料として意識 されるだろう。なお、現時点の市場予想によると 8 月 CPI は前年比で 5%台(7 月は 4.9%)を回 復すると見込まれている。

隣国 NZ では 28 日に 9 月 ANZ 企業信頼感の発表が予定されているが、NZ ドル相場への影響は限 られるだろう。10 月 4 日に NZ 準備銀行(RBNZ)の金融政策公表を控えるなか、徐々にイベント 前の様子見ムードが強まりそうだ。

南アフリカ・ランド(ZAR)は伸び悩む展開か。21 日の南アフリカ準備銀行(SARB)金融政策 委員会(MPC)では 2 会合連続での金利据え置きを決定。5 人の委員のうち 3 人が据え置き、2 人 が 25bp の利上げを主張しており、こちらも前回から変わらなかった。声明ではインフレ見通しに 対するリスクが残存していることを指摘したものの、今後の金融政策見通しに大きな変化はなさ そうだ。SARB の方針に大きな変化がない以上、金融引き締めの長期化観測が高まった米国と比較 すると、金利面ではドル買い・ZAR 売りに傾きやすくなるだろう。

なお、来週は 25 日が伝統文化継承の日の振替休日で休場。28 日に 8 月卸売物価指数(PPI)、 29 日に 8 月貿易収支の発表が予定されている。インフレ関連指標には注意する必要があるものの、 ZAR 相場を主導するような材料となる可能性は低い。

9 月 18 日週の回顧

豪ドルは上値の重い動き。週明けから対ドル・対円で豪ドルは底堅く推移し、対円では 7 月以 来の高値を更新する場面も見られた。ただ、FOMC 後は全般にドル買いが強まった流れに沿って、 豪ドル売り・ドル買いが進行。豪ドル円もつれ安となり、週初からの上昇分を吐き出す格好とな った。

ZAR も豪ドルと同様に週明けから買い先行となったが、FOMC 後は対ドル・対円ともに上値の重 さが意識された。(了)

週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

September 22, 2023

英・加中銀の次の一手を探る展開

◆ポンド、英中銀は 15 会合ぶりの金利据え置きも意見分かれる

◆ポンド、月末・四半期末に絡んだフローに注意

◆加ドル、CPI 加速で追加利上げ観測広がり始める

予想レンジ

ポンド円 179.00-184.00 円

加ドル円 107.50-111.50 円

9 月 25 日週の展望

ポンドは、イングランド銀行(英中銀、BOE)が 15 会合ぶりに利上げを見送った影響を見極め る展開か。21 日に英中銀は金融政策委員会(MPC)の結果を公表し、9 人の委員中 5 人のみ賛成と いう僅差で政策金利を 5.25%で据え置くことを決定した。ベイリーBOE 総裁は据え置きを主張し、 反対した 4 人は全て 0.25 ポイントの引き上げを望んだ。今後は利上げを訴えたカンリフ副総裁、 ハスケル、マン、グリーン委員たちがどのような見解を示すのか注目される。総裁の意向に反し て引き締めに固執するようであれば、金融政策の先行き不透明感が増すことになりそうだ。

英金融政策に対する市場予想は「5.50%に引き上げ」とされていたため、決定に対する相場の 反応はポンド売り。もっとも、20 日の MPC 投票前に発表された 8 月英消費者物価指数(CPI)が 前年比 6.7%と前回値や上振れ予想を下回り、2022 年 2 月以来の低水準記を記録。そのため中銀 発表前には、短期金融市場での利上げ織り込み度は 50%程度まで縮小していた。ただし、英・長 期債利回りも一巡後は上昇に転じるなど、英金利先安観は強まらず。英中銀は「今後、インフレ 率が劇的に加速する」との見通しを示しているものの、市場はまだ懐疑的な見方のようだ。なお、 経済協力開発機構(OECD)は、英国の 2023 年インフレ率予測を 7.2%とし、6 月時点の 6.9%か ら引き上げた。主要先進国のなかで最も高いインフレ率が見込まれている。

25 日週の英経済指標は 29 日に 4-6 月期国内総生産(GDP)改定値が発表される程度。それより も、月末、四半期末に絡んだ売買に振らされる可能性がある。ロンドン 16 時(日本時間 24 時) のフィキシング前後で荒い値動きとなることも多く、持ち高の管理には気を付けておきたい。

加ドルは、米金利や原油相場の動向を眺めながらも下値は限られた展開となりそうだ。足もと のインフレ率が想定以上に加速し、カナダ中銀(BOC)が 10 月会合で利上げに踏み切るとの観測 が広がっていることが加ドルの支えとなっている。19 日発表の 8 月カナダ消費者物価指数(CPI) は前年比 4.0%と前回や予想から上振れ、4 カ月ぶりの水準まで上昇した。市場は 7-9 月期イン フレ率が約 3.8%と見込み始めており、そうなると BOC が 7 月報告書で示した 3.3%予想を大きく 上回ることになる。今年残された中銀会合は 10 月と 12 月の 2 回。米国でも金利先高観が強まる 中、現行 5.0%からの政策金利引き上げが意識されることになりそうだ。

9 月 18 日週の回顧

ポンドは週半ばから後半にかけて下値を試した。対円では 183 円半ばから 180 円後半、対ドル では 1.24 ドル前半から 1.22 ドル半ばまで下落。予想を下回った英 CPI や英中銀の金利据え置き がポンド売りを促した。また、米金利が上昇基調を強めたこともドル高ポンド安に繋がった。 加ドルは買いが先行し、対円では 110 円半ば、対ドルでも 1.33 加ドル後半まで加ドル高に傾い た。上昇幅を広げた原油先物、予想比上振れのカナダ CPI に後押しされた。もっとも週後半にか けては、リスクセンチメントの悪化が重しとなり加ドルの売り戻しが優勢となった。(了)