デイリーレポート 2023年9月26日

September 26, 2023

【前日の為替概況】ドル円 148.96 円まで続伸、米 10 年債利回りが 4.54%台まで上昇

25 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。終値は 148.88 円と前営業日 NY 終値(148.37 円) と比べて 51 銭程度のドル高水準だった。米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めの長期化が意識さ れる一方、日銀は大規模な金融緩和策を維持しており、日米金融政策の方向性の違いに着目した円売り・ ドル買いが優勢となった。米長期金利の上昇傾向が強まると全般ドル買いが活発化し、23 時 30 分前に一 時 148.96 円と昨年 10 月 25 日以来 11 カ月ぶりの高値を付けた。その後の下押しも 148.73 円付近にとど まった。なお、米長期金利の指標である米 10 年債利回りは一時 4.5457%前後と 2007 年 10 月以来の高水 準を記録した。

ユーロドルは続落。終値は 1.0593 ドルと前営業日 NY 終値(1.0653 ドル)と比べて 0.0060 ドル程度の ユーロ安水準だった。米金利上昇に伴うドル買いが入ったほか、ユーロ圏景気の減速懸念からユーロを売 る動きが広がった。24 時前には一時 1.0576 ドルと 3 月 16 日以来の安値を付けた。主要通貨に対するド ルの値動きを示すドルインデックスは一時 106.10 と昨年 11 月 30 日以来の高値を更新した。

なお、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は「ECB はインフレ面でさらに前進した」「インフレは低下し 続けているが、依然として高すぎる状態が長期間続くと予想」「ECB は利下げについて議論していない」 と述べたほか、シュナーベル ECB 専務理事は「ユーロ圏の経済活動は明らかに減速している」「インフレ 問題はまだ完全に解決されていない」などと語った。

ユーロ円は反落。終値は 157.72 円と前営業日 NY 終値(157.93 円)と比べて 21 銭程度のユーロ安水準。 欧州景気への懸念から全般ユーロ売りが進むと、一時 157.49 円と日通し安値を更新した。また、ユーロ 豪ドルは 1.6474 豪ドル、ユーロ NZ ドルは 1.7736NZ ドル、ユーロポンドは 0.8669 ポンド、ユーロカナダ ドルは 1.4253 カナダドルまで値を下げた。

【本日の東京為替見通し】ドル円 続伸か、米国債格下げや円買い介入の可能性には要警戒

本日の東京外国為替市場のドル円は、日米の金融政策の方向性の違いから続伸が予想される。ただし、 引き続き本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性には警戒しておきたい。

また、米国議会での暫定予算案の採決の行方には注視する必要がありそうだ。米国に最高格付けを付与 している唯一の格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが、米政府機関が閉鎖されれば米国 の信用格付けにネガティブに反映されるだろう、と警告。議会では、今月末の期限までに 2024 年度(23 年 10 月-24 年 9 月)の歳出法案を通過させるのは難しい状況となりつつあり、来週以降に政府機関が閉 鎖される可能性が高まりつつある。

なお岸田首相は昨日、物価高対策や持続的な賃上げなどを柱とする経済対策の取りまとめを 26 日の閣 議で指示。対策は来月中をめどに策定し、その後速やかに補正予算の編成に入ると首相は述べた。足元の 円安進行については、「過度な変動は望ましくない」とした上で、引き続き高い緊張感を持って注視する 考えを表明した。

本邦通貨当局の昨年秋の 3 回のドル売り・円買い介入は、ボラティリティーの抑制を名目に実施された。 円買い介入が実施された水準は、ボリンジャー・バンドの+2σ付近だったが、本日の+2σは 149.16 円付 近に位置している。

昨日は日銀の植田総裁と内田副総裁が、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現を見通せる状況に は至っておらず、粘り強く金融緩和を継続する必要がある、との認識を示した。この両者は、7 月の日銀 金融政策決定会合でイールドカーブコントロール(YCC)の運用柔軟化を決定した後、「為替市場のボラテ ィリティー抑制」が背景にあると述べていた。しかしながら昨日は、金融緩和の持続性を高めるため、だ と述べている。

ところで、国際決済銀行(BIS)が発表した 2023 年 8 月の実質実効為替レート(2020 年=100)は 73.19 となり、1970 年以来の低水準となった。すなわち、現状の円の実質実効為替レートは、1971 年のニクソ ン・ショック以前の水準(1 ドル=360 円)まで低下したことになる。その一つの要因としては、8 月の コア CPI(生鮮食品を除く)が前年比+3.1%、コアコア CPI(生鮮食品およびエネルギーを除く)が前年 比+4.3%の物価情勢の元で、政策金利が 31 通貨中唯一のマイナス 0.1%に据え置かれたままであること が挙げられる。

日本の政策金利が 31 通貨中で唯一のマイナス 0.1%であるため、低金利の円を調達して高金利の外貨 で運用する「円・キャリートレード」が活発化しており、一部シンクタンクの試算によれば 10 兆円を超 えてきているもよう。キャリートレードの全盛期は、2007 年当時の 20 兆円であり、まだ半分に過ぎない が、昨年 9 月の円買い介入時の 10.7 兆円に迫りつつある。また、IMM 通貨先物の非商業(投機)部門取 組の円売り持ちポジションは、9 月 12 日時点で円買い介入の目安である 10 万枚(=1 兆 2500 億円)を超 えてきている。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ◇ 8 月企業向けサービス価格指数(予想:前年比 1.8%)

○未定 ◇ 9 月月例経済報告

<海外>

○16:00 ◎ レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演

○16:00 ◎ シムカス・リトアニア中銀総裁、講演

○17:00 ◎ ミュラー・エストニア中銀総裁、講演

○22:00 ◇ 7 月米住宅価格指数(予想:前月比 0.4%)

○22:00 ◎ 7 月米ケース・シラー住宅価格指数(予想:前年比▲0.3%)

○23:00 ☆ 8 月米新築住宅販売件数(予想:前月比▲2.2%/70.0 万件)

○23:00 ◎ 9 月米消費者信頼感指数(予想:105.5)

○23:00 ◎ 9 月米リッチモンド連銀製造業景気指数(予想:▲7)

○27 日 01:30 ◎ ホルツマン・オーストリア中銀総裁、講演

○27 日 02:00 ◎ 米財務省、2 年債入札

○27 日 02:30 ◎ ボウマン米連邦準備理事会(FRB)理事、あいさつ

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

25 日 11:32 ドンブロウスキス欧州委員会副委員長

「欧州と中国の協力は引き続き不可欠」

「EU と中国の関係を含め、オープンでルールに基づくア プローチの利点は今後も有効であると確信」

25 日 14:39 植田日銀総裁

「現在の枠組みで粘り強く金融緩和を続ける必要」

「賃金・価格設定行動に変化が見られるが、不確実性が 大きい」

「2%の物価目標の持続・安定的実現を見通せる状況に 至っていない」

「長期金利を低位に抑える枠組み、局面によっては強い 副作用を生む」

「資源高・円安の影響は業種によって不均一と強く認識」

「輸入物価高は企業業績や家計を圧迫、日銀は金融緩 和で需要面から下支えしてきた」

「今年の春闘に続き、賃上げがさらに強まっていくか注 目」

「直接為替を左右するような政策運営はしない」

「2%目標達成の実現達成見通せれば YCC の撤廃も視 野に入る」

「マイナス金利の撤廃条件に特定なデータは無いが賃 金が重要」

25 日 15:32 カザークス・ラトビア中銀総裁

「9 月の利上げは 10 月の休止を可能にする可能性」

「ECB は 1 回でインフレを鎮めなければならない」

25 日 15:39 内田日銀副総裁

「粘り強く金融緩和を続ける必要がある」

「金融・為替市場の動向や経済・物価への影響を十分注 視」

「YCC 柔軟化は金融緩和の持続性を高めることが狙い」

25 日 16:29 ビルロワドガロー仏中銀総裁

「ECB は金利引き上げではなく、持続性に焦点を当てる べき」

「ECB が将来的に行き過ぎた行動を取る可能性がある と見ている」

「2025 年までの 2%目標達成に自信を深める」

25 日 16:31 デコス・スペイン中銀総裁

「不十分な引き締めも過剰な引き締めも避けるべき」

「各国政府はエネルギー支援を後退させるべき」

25 日 22:07 グールズビー米シカゴ連銀総裁

「ソフトランディングは可能性だが、依然として多くのリス クがある」

「ある時点で問題は金利をどのくらい高くするかというこ とから、金利をどのくらいの期間維持するかという問題 に移る」

「インフレが高止まりするリスクのほうが大きい」

「経済の雇用面は非常に好調」

25 日 22:08 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁

「ECB、インフレ面でさらに前進した」

「サービス部門における雇用は減速しており、全体的な 勢いは鈍化」

「インフレは低下し続けているが、依然として高すぎる状 態が長期間続くと予想」

「ECB は利下げについて議論していない」

「リセッションは基本ラインにない」

25 日 22:12 シュナーベル欧州中央銀行(ECB)専務理 事

「ユーロ圏の経済活動は明らかに減速している」

「インフレ問題はまだ完全に解決されていない」

26 日 02:29 米格付け会社ムーディーズ

「政府機関閉鎖になれば米格付けにネガティブ」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシグナルが点灯中。 2 手連続陽線で転換線を上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。 本日は、147.99 円まで上昇した転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。 上値は昨年 10 月につけた 149 円後半や 150 円前半が意識される。

レジスタンス 2 150.29(2022/10/20 高値)
レジスタンス 1 149.71(2022/10/24 高値)
前日終値 148.88
サポート 1 147.99(日足一目均衡表・転換線)
サポート 2 146.71(日足一目均衡表・基準線)

<ユーロドル=1.0660 ドル台まで低下した転換線が抵抗水準>

陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、 雲の下で引けており、三役逆転の強い売りシグナルが点灯している。 2 手連続陰線で下落中の転換線を下回って引けており続落の可能性が示唆されている。 本日は、1.0664 ドルまで下落してきた転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 1.0664(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0593
サポート 1 1.0516(3/15 安値)

<ポンド円=182 円半ばの転換線を抵抗に戻り売りスタンス>

小陽線引け。雲の中で引けているものの、転換線は基準線を下回り、 遅行スパンは実線を下回っているため売りシグナルが優勢な展開となっている。 2 手連続で小幅な陽線を作ったが、転換線を下回って引けており反落の可能性が示唆されている。 本日は、182 円半ばまで水準を下げた転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 182.52(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 181.81
サポート 1 180.56(日足一目均衡表・雲の下限)

<NZ ドル円=87 円後半で上向きの転換線を支持に買い姿勢>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシグナルが点灯している。2 手連続陽線で転換線を上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。本日は、87 円後半で上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 89.70(7/5 高値)
前日終値 88.83
サポート 1 87.95(日足一目均衡表・転換線)