デイリーレポート 2023年9月28日
September 28, 2023
【前日の為替概況】ドル円 149.71 円まで続伸、米 10 年債利回りは一時 4.64%台まで上昇
27 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 4 日続伸。終値は 149.63 円と前営業日 NY 終値(149.07 円)と比べて 56 銭程度のドル高水準だった。米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めの長期化が意 識される一方、日銀は大規模な金融緩和策を維持しており、日米金融政策の方向性の違いに着目した円売 り・ドル買いが出た。米 10 年債利回りが一時 4.6404%前後と 2007 年 10 月以来の高水準を記録するなど、米長期金利が上昇傾向を強めると、全般ドル買いが活発化。3 時過ぎに一時 149.71 円と昨年 10 月 24 日の高値に面合わせした。
なお、市場では「心理的節目である 150 円に迫る中、政府・日銀による為替介入への警戒感はあるもの の、日米金利差拡大で円安・ドル高がどこまで進むのか見通せない状況だ」との声が聞かれた。 ユーロドルは 4 日続落。終値は 1.0503 ドルと前営業日 NY 終値(1.0572 ドル)と比べて 0.0069 ドル程度のユーロ安水準だった。FRB が高い政策金利をより長く維持するとの観測が強まる中、米長期金利が大 幅に上昇するとドル買いが優勢となった。節目の 1.0500 ドルを下抜けると、一時 1.0488 ドルと 1 月 6 日以来の安値を更新した。ユーロ圏景気の減速懸念から全般ユーロ売りが出やすい面もあった。 なお、主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時 106.84 と昨年 11 月 30 日以来の 高値を付けた。
ユーロ円は 3 日続落。終値は 157.16 円と前営業日 NY 終値(157.59 円)と比べて 43 銭程度のユーロ安 水準。欧州景気への懸念からユーロ売りが強まると一時 156.96 円と日通し安値を更新した。ダウ平均が 一時 310 ドル超下落した場面ではリスク回避の円買いも入った。
【本日の東京為替見通し】ドル円、介入警戒水準 150 円の攻防か 米国の懸念材料にも注視
本日の東京外国為替市場のドル円は、日米の金融政策の方向性の違いから続伸が予想される。しかしな がら介入警戒水準である 150 円に迫っていることで、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性 には警戒しておきたい。
昨日のニューヨーク市場のドル円は、米 10 年債利回りや原油価格の上昇を背景に、149.71 円まで続伸。 昨年秋のドル売り・円買い介入の目安とされてきたボリンジャー・バンドの+2σを超えてきた。先日、イ エレン米財務長官が日本の為替介入について「過度な変動をならす必要性を総じて理解している」と述べ ており、本邦当局による実弾の円買い介入の可能性を意識しつつ、相場に臨むことになる。
昨年の円買い介入について振り返ってみる。 ・2022 年 9 月 22 日の第 1 弾の円買い介入(東京時間 17 時 30 分頃:2 兆 8382 億円)では、ドル円は高値145.90 円から安値 140.36 円まで、5.54 円(3.8%)下落した。 ・同年 10 月 21 日の第 2 弾の円買い介入(東京時間 23 時 30 分頃:5 兆 6202 億円)では、ドル円は高値151.95 円から安値 146.23 円まで、5.72 円(3.8%)下落した。 ・同月 24 日の第 3 弾の円買い介入(東京時間 8 時 30 分頃:7296 億円)では、ドル円は高値 149.71 円から安値 145.56 円まで、4.15 円(2.8%)下落した。
なお、米国についても懸念材料は幾つか見あたる。パウエル FRB 議長は、米景気に不確実性をもたらす 大きな要因として「原油高、大規模ストライキ、政府機関の閉鎖」を挙げていた。カシュカリ米ミネアポ リス連銀総裁も昨日、政府機関の閉鎖、または自動車ストライキが長期化した場合には景気減速の可能性 があるとし、「米連邦準備理事会(FRB)は物価上昇を緩和する手段を使う必要がなくなる」との見方を示 した。
昨日のニューヨーク商業取引所(NYMEX)の WTI 先物 11 月限は、クッシングの在庫の減少を受けて、1 バレル当たり 93 ドルを突破し、100 ドルが視野に入りつつある。原油高は、インフレ高進要因となるこ とで、FRB の追加利上げ要因となる。
全米自動車労組(UAW)は、米大手自動車メーカーとの労使交渉に大きな進展がなければ、明日 29 日に ストライキを拡大すると表明した。
米国政府機関の閉鎖に関しては、9 月 30 日の会期末に向けて 2024 年度(2023 年 10 月-2024 年 9 月)の予算案成立が難航していることで、予断を許さない状況が続くだろう。
リスクシナリオは、2013 年 10 月のように政府機関が閉鎖された場合だろう。米労働省が 9 月の雇用統 計、消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)などを発表できなくなる事態に陥る。すなわち、10 月 31 日から 11 月 1 日にかけて開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策決定の判断材料とな る雇用・物価データが得られないため、利上げは見送られる可能性が高まることになるか。
さらに先日、米国債の格付けを最上位としている米格付け会社ムーディーズが、米連邦政府の政府機関 が閉鎖に追い込まれれば、米国債の「信用面でマイナスだ」と警告しており、米国債の格下げリスクが危 惧される。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)
<海外>
○09:00 ◇ 9 月 ANZ 企業信頼感
○10:30 ◎ 8 月豪小売売上高(予想:前月比 0.3%)
○18:00 ◎ 9 月ユーロ圏経済信頼感指数(予想:92.5)
○18:00 ◎ 9 月ユーロ圏消費者信頼感指数(確定値、予想:▲17.8)
○18:30 ◇ 8 月南アフリカ卸売物価指数(PPI、予想:前月比 0.5%/前年比 3.7%)
○21:00 ◎ 9 月独消費者物価指数(CPI)速報値(予想:前月比 0.3%/前年比 4.6%)
○21:00 ◇ 8 月メキシコ失業率(季節調整前、予想:3.20%)
○21:30 ☆ 4-6 月期米国内総生産(GDP)確定値(予想:前期比年率 2.1%)
○21:30 ◎ 4-6 月期米個人消費(確定値、予想:前期比 1.7%)
○21:30 ◎ 4-6 月期米コア PCE(確定値、予想:前期比 3.7%)
○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:21.5 万件/167.5 万人)
○22:00 ◎ グールズビー米シカゴ連銀総裁、講演
○23:00 ◎ ホルツマン・オーストリア中銀総裁、講演
○23:00 ◎ 8 月米住宅販売保留指数(仮契約住宅販売指数、予想:前月比▲0.8%/前年比▲12.0%)
○23:45 ◎ グリーン英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演
○29 日 01:30 ◎ デコス・スペイン中銀総裁、講演
○29 日 02:00 ◎ クック米連邦準備理事会(FRB)理事、講演
○29 日 02:00 ◎ 米財務省、7 年債入札
○29 日 04:00 ◎ メキシコ中銀、政策金利発表(予想:11.25%で据え置き)
○29 日 05:00 ☆ パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、講演
○韓国(秋夕)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
27 日 08:56 7 月 27-28 日分の金融政策決定会合議事 要旨
「わが国の景気について、緩やかに回復しているとの認 識で一致」
「個人消費について、物価上昇の影響を受けつつも、緩 やかなペースで着実に増加しているとの認識で一致」
「雇用・所得環境について、緩やかに改善している」
「何人かの委員は、企業経営者からは人材確保のため 賃上げが必要との声が多く聞かれ始めており、所得環 境にも前向きな動きがみられている」
「物価面について、既往の輸入物価の上昇を起点とする 価格転嫁の影響から、足もとは3%台前半となっている との評価で一致」
「足もとの物価上昇率は、4月の展望レポートにおける 想定よりも上振れているとの認識を共有」
「本邦経済について緩やかな回復を続ける、その先につ いては、所得から支出への前向きの循環メカニズムが 経済全体で徐々に強まっていく中で、潜在成長率を上 回る成長を続ける」
「雇用者所得の増加に支えられて、個人消費は増加を 続けるとの見方を共有」
「雇用者所得について、一人当たり名目賃金の上昇率も 高まっていくことから、増加を続けるとの見方で一致」
「物価情勢の先行きの中心的な見通しについて、再びプ ラス幅を緩やかに拡大していくとの見方を共有」
「中心的な物価の見通しは、2023 年度は大幅に上振れ ているが、2024年度と 2025年度は概ね不変であるとの 認識を共有」
「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、 金融市場調節上の様々な工夫により、金融市場調節方 針に沿って、長期金利はゼロ%程度で推移しているとの 認識で一致」
「複数の委員は、イールドカーブの形状の歪みは解消さ れた状態にあるほか、社債市場の機能も回復していると 指摘」
「何人かの委員は、今回の運用の柔軟化は出口への一 歩ではなく、日本銀行が粘り強く金融緩和を進めていく 姿勢に変わりはないことを明確に説明していく必要があ ると指摘」
27 日 16:08 エルダーソン欧州中央銀行(ECB)専務理 事
「金利がピークに達したとは限らない」
「依然としてインフレには上方向のリスク」
27 日 16:11 中国人民銀行(PBOC)アドバイザー
「中国には経済成長を支える比較的十分な政策余地が ある」
「中国は今年も 5%以上の経済成長を達成可能」
「中国経済は“日本化”を回避できる」
27 日 19:39 ホルツマン・オーストリア中銀総裁
「預金準備率を 5-10%まで引き上げるべき」
27 日 19:57 カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁
「米国経済の回復力には驚かされる」
「金利がさらに上昇する可能性があるが、正確には分か らない」
「政府閉鎖は望まない」
「政府閉鎖と自動車メーカーのストライキが経済を減速 させる可能性」
27 日 21:10
「中立金利が上昇する可能性」
「もっと利上げを行う必要があるかどうかは、データを見 て判断したい」
「原油価格の上昇だけで、さらなる利上げが正当化され ることはない」
「FRB は来年も金利を据え置くと予想」
28 日 01:56
「FRB の利上げが完了したのか、まだ利上げが必要な のかは分からない」
「数回の利上げが必要になる可能性もある」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=昨年 10 月以来の 150 円台が視野に>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシグ
ナルが点灯中。4 手連続陽線で転換線を上回って引けており
続伸の可能性が示唆されている。同線は 148.52 円まで上昇
してきた。
本日も転換線を支持に押し目買いスタンスで臨みたい。昨
年 10 月以来の 150 円台が完全に視野に入っており、大台を
巡る攻防も注目される。
レジスタンス 2 151.95(2022/10/21 高値)
レジスタンス 1 150.25(ピボットレジスタンス 2)
前日終値 149.63
サポート 1 148.52(日足一目均衡表・転換線)
サポート 2 147.08(日足一目均衡表・基準線)
<ユーロドル=1.06 ドル前半まで低下した転換線が抵抗水準>
陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を
下回り、雲の下で引けており、三役逆転の強い売りシグナル
が点灯している。4 手連続陰線で下落中の転換線を下回って
引けており続落の可能性が示唆されている。
本日は 1.06 ドル前半で低下中の転換線を抵抗に戻り売り
スタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 1.0613(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0503
サポート 1 1.0429(2022/12/2 安値)
<ポンド円=181 円半ばまで水準を上げた雲の下限を意識>
陽線引け。雲の中で引けているものの、転換線は基準線を
下回り、遅行スパンは実線を下回っているため売りシグナル
が優勢な展開。雲の中で孕み線で切り返したが、転換線を下
回って引けており、反落の可能性が示唆されている。
本日は 181.55 円まで水準を上げた日足一目・雲の下限が
意識されそうだ。182.10 円台に下落した転換線を抵抗に戻り
売りスタンスで臨みたい。
レジスタンス 1 182.16(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 181.59
サポート 1 180.45(8/3 安値)
<NZ ドル円=基準線を支持に押し目買いスタンス>
小陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線
を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買い
シグナルが点灯中。2 手連続陰線でも転換線を上回って引け
ており反発の可能性が残されている。
本日は転換線 88.02 円を念頭に置いた取引。87 円半ばの基
準線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場
合は手仕舞い。
レジスタンス 1 89.70(7/5 高値)
前日終値 88.58
サポート 1 87.56(日足一目均衡表・基準線)