デイリーレポート 2023年10月6日
October 6, 2023
【前日の為替概況】ユーロドル、続伸 米長期金利低下に転じドル売り優勢に
5 日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは続伸。終値は 1.0550 ドルと前営業日 NY 終値(1.0504 ドル)と比べて 0.0046 ドル程度のユーロ高水準だった。前週分の米新規失業保険申請件数が 20.7 万件と 予想の 21.0 万件より強い内容だったことが分かると、米長期金利の上昇とともにドル買いが先行。21 時 30 分過ぎに一時 1.0500 ドルと日通し安値を更新した。
ただ、米長期金利が低下に転じると一転ドル売りが優勢となり、前日の高値 1.0532 ドルを上抜けて一 時 1.0552 ドルと日通し高値を更新した。明日の 9 月米雇用統計の発表を前にポジション調整目的のユー ロ買い・ドル売りも入ったようだ。
ドル円は反落。終値は 148.51 円と前営業日 NY 終値(149.12 円)と比べて 61 銭程度のドル安水準だっ た。米金融引き締めが長期化するとの観測が根強い中、米長期金利の上昇に伴う円売り・ドル買いが先行。 21 時 30 分過ぎに 149.12 円付近まで上昇し、アジア時間早朝に付けた日通し高値に面合わせした。
ただ、米長期金利が低下に転じると次第に円買い・ドル売りが優勢となり、148.31 円付近まで下押し した。なお、デイリー米サンフランシスコ連銀総裁は「いかなる決定も急ぐ必要はない」「労働市場と物 価の減速が続けば金利据え置きは可能」と述べたほか、バーキン米リッチモンド連銀総裁は「米国債利回 りの急上昇は堅調な経済指標と大量の国債供給を反映したもの」と指摘した。
ユーロ円は小幅ながら続伸。終値は 156.69 円と前営業日 NY 終値(156.65 円)と比べて 4 銭程度のユ ーロ高水準。ドル円の失速に伴う円買い・ユーロ売りが先行すると一時 156.22 円付近まで下押ししたも のの、引けにかけて持ち直した。
メキシコペソは軟調だった。対ドルで一時 18.3756 ペソと 4 月 6 日以来約半年ぶりの安値を付けたほか、 対円では 8.08 円と 6 月 13 日以来の安値を更新した。「同国政府は一方的に、事前の連絡もなく空港に関 する料金体系を変更した」と伝わると、空港運営会社の株価が軒並み急落。同国の代表的な株式指数であ るボルサ指数も 4%を超す大幅下落となり、ペソ売りを誘った。
【本日の東京為替見通し】雇用統計前でリスク取りにくいか、米金利上昇の弊害にも注目集まる
本日のドル円は、日本時間夜に米雇用統計が発表されることで、積極的な売買は手控えられレンジ取引 となるか。
昨日の米長期金利は低下したが、依然として日米の金融政策の方向性の相違がドル円の買い材料となっ ている。しかしながら、ここ最近は急ピッチで上昇してきた米金利の弊害を気にする声が高まっている。 今週に入り米 10 年債利回りの水準は 4.8%まで上昇したが、これは 2008 年の金融危機直前以来の水準と 重なる。この動きが住宅、金融機関、米政府の財政などへの懸念を高めている。今春にシリコンバレー銀 行とファースト・リパブリックの破綻の要因が債券価格の下落(利回りの上昇)だったことで、新たな地 方銀行の問題が表面化するとの声も徐々に出てきている。今晩発表される、米雇用統計が仮に強い結果と なり、10 年債利回りが 5%に近づいた場合は、イニシャルアクションとしてはドル円が買われるだろうが、 中長期的な金利高の弊害を孕んでいることには警戒をしておきたい。
ドル円の上値が重くなっているのは、3 日の急落の影響もある。昨日は東京時間にまとまったドル売り が入ると、介入経験のある為替ディーラーからすれば介入とは思えない売り方なのにもかかわらず、個人 投資家などはこれまで以上にドル売りの動きに神経質になっていることで、買いオーダーをキャンセルし 売り逃げに回るなど、介入恐怖症状態になっていた。徐々に相場も水準に慣れてくるのだろうが、解散総 選挙の前哨戦となる衆参補選が 10 月後半に行われることで、与党自民党が円安の流れを止めようとする 可能性があるのも事実だろう。
経済指標は、本日は本邦から 8 月毎月勤労統計、同月家計調査、同月景気動向指数速報値が発表される。 勤労統計の現金給与総額は前年比で 1.5%増の予想、一方で消費支出は前年比で 4.3%減の予想となって いる。依然として給与がインフレ率に届かない反面、支出が抑えられる傾向が続きそうだ。
なお、他のアジア・オセアニア諸国からは市場が動意づくような経済指標などのイベントは予定されて いない。しかしながら、株価動向に敏感なオセアニア通貨や原油先物価格が 11 カ月ぶりの水準まで下落 していることで産油国通貨のカナダドルなどがアジア時間でも市場をけん引していることで、これらの通 貨の値動きも注意深く見ておきたい。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:30 ◇ 8 月毎月勤労統計(現金給与総額、予想:前年比 1.5%)
○08:30 ◇ 8 月家計調査(消費支出、予想:前年比▲4.3%)
○14:00 ◇ 8 月景気動向指数速報値(予想:先行 109.1/一致 114.2)
<海外>
○13:30 ☆ インド中銀、金融政策決定会合(予想:6.50%で据え置き)
○14:45 ◇ 9 月スイス失業率(季節調整前、予想:2.0%)
○15:00 ◎ 8 月独製造業新規受注(予想:前月比 1.8%/前年同月比▲7.9%)
○15:45 ◇ 8 月仏貿易収支
○15:45 ◇ 8 月仏経常収支
○21:30 ◎ クノット・オランダ中銀総裁、バスレ・スロベニア中銀総裁、ブイチッチ・クロアチア中銀総 裁、カジミール・スロバキア中銀総裁、講演
○21:30 ☆ 9 月カナダ雇用統計(予想:新規雇用者数変化 2.00 万人/失業率 5.6%)
○21:30 ☆ 9 月米雇用統計(予想:非農業部門雇用者数変化 17.0 万人/失業率 3.7%/平均時給、前月比 0.3%/前年比 4.3%)
○7 日 01:00 ◎ ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事、講演
○7 日 04:00 ◇ 8 月米消費者信用残高(予想:117.0 億ドル)
○欧州連合(EU)非公式首脳会合(スペイン・グラナダ)
○中国(国慶節)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
5 日 17:56 カジミール・スロバキア中銀総裁
「9 月の利上げが最後になることを望む」
「パンデミック緊急資産購入プログラム(PEPP)の再投 資スケジュールを変更すべきではない」
「ユーロ圏のインフレ率は鈍化傾向にある」
「12 月理事会での利上げは予想していない」
5 日 18:29 デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁
「現状の政策金利水準はインフレ抑制に効果的」
「今後の金融政策はデータ次第」
「利下げの議論は時期尚早」
5 日 19:06 ブロードベント BOE(イングランド銀行)副総 裁
「英国のインフレ率を 2 年以内に目標値に戻すことを目 指している」
「英国のインフレ状況は、他の地域と似通っている」
「英国経済には、明らかな減速の兆候が見られる」
5 日 23:41 ビルロワドガロー仏中銀総裁
「ECB の利上げが完了することを期待」
「現時点では追加利上げを正当化する理由はない」
「過去の市場の利下げ期待は楽観的すぎた」
「経済のソフトランディングを目指すべき」
6 日 00:28 プーチン露大統領
「ウクライナでの目標は必ず達成できると確信」
「理論的にはロシアの核実験禁止条約の批准を取り消 すことができる」
「ロシアは近く核ミサイルを配備する」
「ロシアはガス供給に関して協力する用意がある」
「ロシアはノルドストリーム 2 経由でガス供給を開始する 可能性」
「ロシアは欧州へのガス供給を継続」
6 日 01:10 デイリー米サンフランシスコ連銀総裁
「金利の据え置きは積極的な政策措置」
「いかなる決定も急ぐ必要はない」
「可能な限り緩やかに物価の安定を回復することを目指 す」
「労働市場と物価の減速が続けば金利据え置きは可 能」
6 日 01:55 バーキン米リッチモンド連銀総裁
「現在の金利は高く感じるが、長期的なものではない」
「2%は非常に妥当なインフレ目標」
6 日 02:13 ゲオルギエバ国際通貨基金(IMF)専務理事
「現在の世界成長ペースは依然として非常に弱い」
「パンデミック前の平均 3.8%を大幅に下回っている」
「サービス需要の高まりとインフレの進展によりソフトラ ンディングの可能性は高まったが、警戒は不可欠」
「インフレとの戦いは依然として最優先事項」
「インフレ率は一部の国で 2025 年まで目標を上回る状 態が続く」
「インフレとの戦いに勝つには、金利をより長期間にわた って高水準に維持する必要がある」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=基準線を支えに大きな崩れ回避できると予想>
下影陰線引け。一時 148.26 円まで下押しが進み、一目均
衡表・転換線 148.80 円を下回って NY を引けた。
148.35 円前後で上昇中の 21 日移動平均線を上回る水準に
とどまっているが、割り込んだ転換線はここ最近の伸び悩み
を反映して現水準で頭打ちになる公算が高まってきた。転換
線付近で戻りが鈍るリスクに留意。下値の一目・基準線
147.31 円は上昇傾向維持が見込まれ支えとなり、相場が大き
く崩れる展開は回避できるだろう。
レジスタンス 2 149.44(10/2 安値)
レジスタンス 1 149.12(10/5 高値)
前日終値 148.51
サポート 1 147.77(ピボット・サポート 2)
<ユーロドル=日柄経過も味方に転換線を上回る>
陽線引け。昨日は 1.0553 ドルに位置していた一目均衡表・
転換線に上値が抑えられた。しかし同線は本日 1.0533 ドル
へ低下。相場が横ばいのままでも日柄経過も味方に目先の抵
抗を 1 つこなすことができる状態。ただ、1.0616 ドル前後で
低下中の 21 日移動平均線や一目・基準線 1.0665 ドルが上昇
の勢いを緩和すると考えられ、戻すにしてもペースを緩慢に
しそうだ。
レジスタンス 1 1.0553(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0504
サポート 1 1.0448(10/3 安値=年初来安値)
<ユーロ円=90 日線付近で底堅いが雲の中にとどまりそう>
下影極小陽線引け。一目均衡表・雲の中において 156 円半
ばで緩やかに上昇する 90 日移動平均線付近を維持して推移
している。同線付近の底堅さを背景にもう一段戻りを試した
いところ。しかし現水準 156.95 円から週明けには 157.88 円
へ急上昇する雲の上限以下にとどまって推移することが想
定でき、戻りのレンジを限定するとみる。
レジスタンス 1 156.94(10/2-3 下落幅の 61.8%戻し)
前日終値 156.69
サポート 1 156.09(10/5 安値)
<豪ドル円=95 円で重なる転換線・基準線が抵抗>
小陽線引け。4 日には下限が切り上がる一目均衡表・雲の
中へ戻すことができ、昨日は 94.33 円へ低下した雲の上限を
上抜くことができた。94.76 円前後で上昇中の 90 日移動平均
線を追うように戻りを試す局面となっている。ただ、現時点
で 95.00 円に重なっている一目均衡表・転換線と基準線が抵
抗となり、やがて低下する見込みの転換線に押し返されるリ
スクもある。戻りを試すには慎重さが必要といえる。
レジスタンス 1 95.00(日足一目均衡表・転換線および基準線)
前日終値 94.60
サポート 1 94.00(ピボット・サポート 2)