デイリーレポート 2023年10月10日

October 10, 2023

【前日の為替概況】ドル円、反落 地政学リスクが高まるなかリスク回避的な円買い先行

9 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反落。終値は 148.51 円と前営業日 NY 終値(149.32 円)と 比べて 81 銭程度のドル安水準だった。イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織 ハマスの衝突を受けて中東の地政学リスクが高まる中、リスク回避的な円買いが先行した。

米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を有するローガン米ダラス連銀総裁が「米長期債利回りの急上 昇は金融当局による追加利上げの必要性を減らす可能性がある」と述べたことや、ジェファーソン米連邦 準備理事会(FRB)副議長が「利回り上昇の引き締めへの影響に留意」「リスクバランスが改善する中、FRB は慎重に進むことが可能」などと発言したこともドル売りを促した。4 時過ぎには一時 148.44 円と日通 し安値を更新した。

ユーロドルは 4 営業日ぶりに反落。終値は 1.0567 ドルと前営業日 NY 終値(1.0586 ドル)と比べて 0.0019 ドル程度のユーロ安水準だった。ただ NY 市場に限れば、じり高の展開となり下げ渋った。中東情勢の緊 迫化を背景にリスク・オフのユーロ売り・ドル買いが出た半面、ローガン米ダラス連銀総裁やジェファー ソン FRB 副議長のハト派的な発言を受けてユーロ買い・ドル売りが入った。5 時過ぎには 1.0572 ドル付 近まで買われ、アジア時間に付けた日通し高値 1.0574 ドルに迫った。

ユーロ円は 4 日ぶりに反落。終値は 156.93 円と前営業日 NY 終値(158.07 円)と比べて 1 円 14 銭程度 のユーロ安水準。中東情勢緊迫化で欧州株相場が軟調に推移するとリスク・オフの円買いが先行し、24 時前に一時 156.52 円と日通し安値を更新した。 ただ、FRB 高官からハト派的な発言が相次ぐと安く始まった米国株相場が上昇に転じたため、リスク・ オフの円買いは後退。5 時過ぎには一時 157.00 円付近まで下げ渋った。

【本日の東京為替見通し】ドル円、引き続き押し目買いが入りやすい

昨日のドル円は下落したが、米長期金利の上昇に伴ったドル高地合いは変わらず、押し目には依然とし て買いが入りやすい。ただ、日本当局の円買い介入への強い警戒感で、150 円に近づく水準では売りも入 りやすく、足もとでは動きづらい相場展開が続いている。先週末の米雇用統計は、米連邦準備理事会(FRB) が年内に再利上げに踏み切るとの確信をもたらすには至らなかったものの、雇用統計の結果を受けて市場 では FRB が利下げに転じる時期の予想は 2024 年後半とさらに後ずれした。東京タイムでは連休明けの米 債券市場の時間外取引の動きに注目。

岸田政権は、今月末にも経済対策を発表する方針だ。経済対策の最優先課題は物価高であり、円安はエ ネルギーや食品など輸入物価を引き上げ、家計を直撃する。介入を躊躇し、岸田政権が円安を放置してい ると受け止められれば、経済対策の評価が大きく後退してしまう可能性もある。米国経済が予想以上に底 堅く推移し、利上げが長期化するとの見方が強く、日米の金利差拡大に伴う円安・ドル高のトレンドは当 面続きそうだ。「介入効果は一時的」になる可能性は高いものの、ドル円の 150 円超え水準では日本当局 が円買い介入を実施するとの見方は根強い。

昨日は早朝からパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規 模攻撃を背景に安全資産が買われたものの、パニック的な動きにはなっていない。地政学的な出来事の影 響は短期に終わる可能性はあるが、市場は事態の推移を見守っている。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ◎ 8 月国際収支速報

◇ 経常収支(予想:季節調整前 3 兆 900 億円の黒字/季節調整済 2 兆 4076 億円の黒字)

◎ 貿易収支(予想:7084 億円の赤字)

○14:00 ◇ 9 月景気ウオッチャー調査(予想:現状判断指数 53.2/先行き判断指数 51.3)

<海外>

○09:30 ◇ 9 月豪 NAB 企業景況感指数

○15:00 ◎ 9 月ノルウェー消費者物価指数(CPI、予想:前月比 0.5%/前年比 4.0%)

○16:00 ◇ 8 月トルコ鉱工業生産(予想:前月比 1.0%)

○16:00 ◇ 8 月トルコ失業率

○22:30 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演

○23:00 ◇ 8 月米卸売売上高(予想:前月比 0.5%)

○11 日 00:15 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演

○11 日 02:00 ◎ 米財務省、3 年債入札

○11 日 02:00 ◎ ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事、講演

○11 日 04:00 ◎ カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、討議に参加

○国際通貨基金(IMF)、世界経済見通し公表

○IMF・世界銀行年次総会(モロッコ・マラケシュ、15 日まで)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

9 日 08:25 オースティン米国防長官

「イスラエルが要請の追加軍事支援を検討」

9 日 15:59 カザークス・ラトビア中銀総裁

「今後の利上げ幅は小さなものになる見通し」

「大幅な利上げサイクルは終了している」

「インフレ見通しが 2%を下回ってきたら利下げを開始で きる」

9 日 17:14 デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁

「ユーロ圏の下半期の成長率はゼロに近い見通し」

「インフレは今後低下する見通し」

「欧州中央銀行(ECB)の政策金利は、当分現状の水準 で推移する見通し」

「今後の政策金利の決定は、データ次第」

「中東の地政学リスクの不透明感を受けた原油価格が リスク要因」

9 日 21:07 イエレン米財務長官

「ロシア産原油の取引価格の上限を 1 バレル 60 ドルと する措置を強化する」

9 日 22:04 ローガン米ダラス連銀総裁

「利回り上昇は、利上げの必要性を減らすかもしれな い」

「金融環境が引き続き制限されているため、インフレを 抑制する必要がある」

「政策金利を設定する際、FRB はここ数カ月で大幅に悪 化した金融状況を考慮する必要がある」

「長期金利の上昇が期間プレミアムの上昇によるもので あれば、FRB が利上げする必要性は低くなる可能性」

「長期金利上昇の背景に経済の好調がある限り、FRB はさらなる対応が必要になるかもしれない」

「高インフレが最も重要なリスク」

「労働市場は依然として非常に好調で、賃金も依然とし て堅調」

「生産と支出は驚くほど好調だが、消費者の見通しはま ちまち」

9 日 23:32 ネタニヤフ・イスラエル首相

「ガザで地上作戦を開始する以外に選択肢はない」

10 日 02:33 ジェファーソン米連邦準備理事会(FRB)副 議長

「利回り上昇の引き締めへの影響に留意」

「リスクバランスが改善する中、FRB は慎重に進むこと が可能」

「最近のインフレデータは励みになるが、依然として高す ぎる」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線の回復うかがう局面>

陰線引け。一目均衡表・転換線 148.80 円を割り込んで NY を引けた。相場の下押しが限定されていることで横ばいからやがて 上昇へ向かう公算が出てきた転換線を回復できるか見定め る局面。148.51 円前後で上昇中の 21 日移動平均線付近で底 堅さを示し戻りを試す展開を想定するが、押し目が深くなっ ても一目・基準線 148.04 円も位置する 148 円前後では下げ 渋ることが期待できる。

レジスタンス 2 149.53(10/6 高値)
レジスタンス 1 148.93(10/9 レンジ 61.8%水準)
前日終値 148.51
サポート 1 147.93(ピボット・サポート 2)

<ユーロドル=転換線付近で下げ渋る底堅さ続くか注視>

下影極小陽線引け。1.06 ドル付近で低下中の 21 日移動平 均線や一目均衡表・基準線 1.0623 ドルといった抵抗が上値 に控えるなか 1.0520 ドルまで下振れが先行した。しかし先 週末に続き一目・転換線 1.0533 ドル割れ水準で下げ渋り転 換線を回復。いったん低下する見込みの同線付近で不安定な 振れが予想されるが、引き続き下げ渋りが続くか注視する場 面といえる。

レジスタンス 1 1.0623(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 1.0567
サポート 1 1.0506(10/3-6 上昇幅の 61.8%押し)

<ユーロ円=支え万全といえず下押し不安ある>

陰線引け。158 円付近に位置する一目均衡表・雲の上限を こなすことができず 156 円台へ下押している。一目均衡表・ 基準線 156.56 円や転換線 156.47 円がある 156 円半ばで下げ 渋り、156.60 円前後で上昇中の 90 日移動平均線を回復する ようにやや戻した。だが転換線は低下が先行する可能性があ り、基準線もやがて頭打ちとなる見込み。下支えが万全とは いえず、下押しの不安を抱えながらの推移が続くとみる。

レジスタンス 1 157.64(ピボット・レジスタンス 1)
前日終値 156.93
サポート 1 156.09(10/5 安値)

<豪ドル円=不安定ながら底堅さ維持へ>

下影小陽線引け。94.63 円まで下押しが先行した。しかし 95 円台を回復して NY の取引を終えている。95.00 円で重な る一目均衡表・基準線と転換線付近の底堅さを維持した。今 週後半にもいったん低下する見込みの転換線を追うような 安定しない推移は続く可能性があるものの、横ばいが続く公 算の基準線や、低下しても持ち直しが想定される転換線付近 から大きく下押すことなく底堅さを維持できると予想する。

レジスタンス 1 95.80(9/29 安値)
前日終値 95.21
サポート 1 94.63(10/9 安値)