デイリーレポート 2023年10月31日

October 31, 2023

【前日の為替概況】ドル円、一時 149 円割れ ユーロドルが 1.06 ドル前半まで反発

30 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続落。終値は 149.10 円と前営業日 NY 終値(149.66 円) と比べて 56 銭程度のドル安水準となった。米長期金利の指標である米 10 年債利回りが 4.91%台まで上 昇すると円売り・ドル買いが先行。21 時 30 分過ぎに一時 149.85 円と日通し高値を更新した。

ただ、「日銀は明日の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修 正を議論。現在 1%としている長期金利の事実上の上限を柔軟にし、一定程度 1%を超える金利上昇を容 認する案が有力」との日経新聞の報道が伝わると、一転円買い・ドル売りが優勢となった。0 時 30 分前 には一時 148.81 円と日通し安値を更新した。ナイト・セッションの日経平均先物が 310 円下落したこと も相場の重し。もっとも、売り一巡後は下げ渋る展開に。1 時 30 分前には 149.17 円付近まで下げ幅を縮 めた。

ユーロドルは上昇。終値は 1.0615 ドルと前営業日 NY 終値(1.0565 ドル)と比べて 0.0050 ドル程度の ユーロ高水準だった。日本時間夕刻に一時 1.0547 ドルと日通し安値を付けたものの、前週末の安値 1.0535 ドルが目先サポートとして働くと買い戻しが優勢に。ダウ平均が一時 580 ドル超上昇するなど、米国株相 場が堅調に推移するとリスク・オンのドル売りも優勢となり、一時 1.0625 ドルと日通し高値を付けた。 主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時 106.06 まで低下した。

ユーロ円は小反発。終値は 158.25 円と前営業日 NY 終値(158.13 円)と比べて 12 銭程度のユーロ高水 準。米国株高を背景に円売り・ユーロ買いが先行すると 23 時前に 158.93 円と日通し高値を付けた。ただ、 「日銀は YCC 再修正を議論」との観測報道が伝わると失速した。2 時 30 分前には 158.01 円付近まで上値 を切り下げた。

【本日の東京為替見通し】日銀会合、YCC 再修正は織り込み済みか?介入実績含め注目点多数

本日のドル円は、日銀政策決定会合の金融政策発表と植田日銀総裁の会見、そして外国為替平衡操作の 実施状況(介入実績)が注目となる。

今回は日銀が年 4 回公表する展望レポートも公表される。7 月の同レポートでは、23 年度のコア CPI の前年度上昇率を、4 月の 1.8%から 2.5%を上方修正した。日銀が 24 日に発表した 9 月の「基調的なイ ンフレ率を捕捉するための指標」では、日銀が注目している「刈り込み平均値」は 7・8 月の 3.3%から 3.4%まで上昇。また「加重平均値」は 8 月の 1.8%を上回り 2001 年 1 月以降で最大となる 2.0%まで上 昇していることなどで、今回も上方修正へ期待が高い。もし今回 23 年度を上方修正した場合は 6 回目の 修正となり、日銀のインフレ見通しがこれまで甘かったこととなる。

もっとも、市場では展望レポートの上方修正は織り込んでいることで、注目は長短金利操作(イールド カーブコントロール=YCC)を修正するか否かになる。現在の長期金利の変動幅は±0.5%程度を撤廃、 1.0%の利回りでの指値オペを引き上げる、など憶測が多く流れている。その中で、本日の日経新聞朝刊 一面が「日銀、金利操作再修正へ」「長期、上限 1%超柔軟に」と報じていることもあり、市場は 1.0%を 上回る金利上昇を容認することを織り込みつつあるか。

仮に修正が入った場合の為替市場は、AI 取引が反応し円買いに動きやすい。一方、修正がない場合に は円安に反応するだろう。予想判断が難しいのはその後の動き。YCC 修正の場合でも日銀が長期金利を低 位に抑える政策は変わらず、日米金利差の溝は左程埋まらないとの声が多く、円買いにも限定的との声が ある。一方、無修正の場合は為替介入への警戒感が強い。昨年 9 月 22 日の円買い介入は、日銀政策決定 会合及び当時の黒田日銀総裁の会見への失望感から、市場が円売りに傾いたタイミングで介入を行ってき た。今回も同様に市場が円安に動いた場合には、待ち構えていたように介入を行う可能性もありそうだ。

また、仮に日銀政策決定会合や植田日銀総裁の会見が無風に終わった場合でも、日本時間 19 時に発表 される今月の介入実績の結果でも動意づく可能性があり、警戒を怠らないようにしたい。今月は一時円買 い介入と噂される動きもあった。もし、介入が行われていた場合には、今後の介入継続を示唆することも あり円買いに動きやすいだろう。

なお、ドル円以外では 10 月中国製造業購買担当者景気指数(PMI)が発表されることで、中国の景気動 向が他通貨に影響を与えることには注意したい。また、中東情勢もイスラエルのネタニヤフ首相が停戦を 拒否したことで、更なる戦火拡大やイランの動向を引き続き注視する必要があるだろう。

【本日の重要指標】

<国内>

○08:30 ◎ 9 月完全失業率(予想:2.6%)

○08:30 ◎ 9 月有効求人倍率(予想:1.30 倍)

○08:50 ◎ 9 月鉱工業生産速報(予想:前月比 2.5%/前年比▲2.3%)

○08:50 ◇ 9 月商業販売統計速報(小売業販売額、予想:前年比 5.9%)

○未定 ☆ 日銀金融政策決定会合(終了後、決定内容発表、予想:当座預金金利▲0.10%で据え置き)

○未定 ◎ 経済・物価情勢の展望(10 月、基本的見解)

○14:00 ◇ 10 月消費動向調査(消費者態度指数 一般世帯、予想:35.0)

○14:00 ◇ 9 月新設住宅着工戸数(予想:前年比▲4.7%)

○15:30 ☆ 植田和男日銀総裁、定例記者会見

○19:00 ◇ 外国為替平衡操作の実施状況(介入実績)

<海外>

○06:45 ◎ 9 月ニュージーランド(NZ)住宅建設許可件数

○09:00 ◇ 10 月 ANZ 企業信頼感

○10:30 ◎ 10 月中国製造業購買担当者景気指数(PMI、予想:50.2)

○15:30 ◎ 7-9 月期仏国内総生産(GDP)速報値(予想:前期比 0.1%)

○15:30 ◇ 9 月仏消費支出(予想:前月比 0.4%)

○16:00 ◎ 9 月独小売売上高(予想:前月比 0.5%/前年比▲3.4%)

○16:00 ◇ 9 月独輸入物価指数(予想:前月比 0.7%/前年比▲15.3%)

○16:00 ◇ 9 月トルコ貿易収支(予想:50 億ドルの赤字)

○16:30 ◇ 9 月スイス小売売上高(予想:前年比▲1.9%)

○16:45 ◇ 10 月仏消費者物価指数(CPI)速報値(予想:前月比 0.2%/前年比 4.0%)

○16:45 ◇ 9 月仏卸売物価指数(PPI、予想:前月比 0.2%)

○17:30 ◎ 7-9 月期香港域内総生産(GDP)速報値(予想:前期比 1.4%/前年同期比 5.2%)

○17:30 ◎ デコス・スペイン中銀総裁、講演

○18:30 ◎ ビスコ伊中銀総裁、講演

○19:00 ☆ 7-9 月期ユーロ圏 GDP 速報値(予想:前期比横ばい/前年比 0.2%)

○19:00 ☆ 10 月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値(予想:前年比 3.1%)

○19:00 ☆ 10 月ユーロ圏 HICP コア速報値(予想:前年比 4.2%)

○20:45 ◎ ミュラー・エストニア中銀総裁、講演

○21:00 ◎ 9 月南アフリカ貿易収支(予想:120 億ランドの黒字)

○21:00 ◎ 7-9 月期メキシコ GDP 速報値(予想:前期比 0.8%/前年比 3.2%)

○21:30 ☆ 8 月カナダ GDP(予想:前月比 0.1%/前年比 0.9%)

○21:30 ☆ 7-9 月期米雇用コスト指数(予想:前期比 1.0%)

○22:00 ◇ 8 月米住宅価格指数(予想:前月比 0.5%)

○22:00 ◎ 8 月米ケース・シラー住宅価格指数(予想:前年比 1.6%)

○22:45 ◎ 10 月米シカゴ購買部協会景気指数(予想:45.0)

○23:00 ◎ 10 月米消費者信頼感指数(予想:100.0)

○1 日 01:00 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演

○1 日 01:30 ◎ デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁、講演

○米連邦公開市場委員会(FOMC)1 日目

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

30 日 17:36 カジミール・スロバキア中銀総裁

「利上げサイクルが終了したと宣言するのは、時期尚 早」

「インフレ圧力が強まる可能性は残されている」

30 日 22:58 バイデン米大統領

「労働組合と自動車メーカーの合意、素晴らしいと思う」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=149 円前半の基準線を巡る攻防に>

陰線引け。戻りは 149 円後半の日足一目・転換線を超えたところまでとなり、その後は下値を試す展開に。一時 149 円 を割り込む場面もあった。一巡後は 149 円前半の一目・基準 線付近まで持ち直すも、2 手連続の陰線引け。 本日は 149.11 円で横ばいの基準線を巡る攻防か。もし反 発した場合でも、転換線や昨日高値の 149.80 円台では売り 圧力が高まりそう。ただしイベントリスクもあり、ある程度 の値幅は想定しておいたほうが良さそうだ。


レジスタンス 1 150.78(10/26 高値)
レジスタンス 1 149.80(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 149.10
サポート 1 148.17(10/10 安値)
サポート 2 147.43(10/3 安値)

<ユーロドル=1.06 ドル前半の転換線を睨みながらの取引に>

陽線引け。1.05 ドル半ばで支えられて 1.06 ドル前半まで 上昇。1.0609 ドルで横ばいの一目・転換線を上回り、2 手連 続の陽線引け。 本日は転換線を睨みながらの取引となりそうだ。先週後半 から 1.05 ドル台で下値を切り上げてきており、下押しした 場面でも 1.0571 ドルに位置する基準線辺りが支持となるか。

レジスタンス 1 1.0694(10/24 高値)
前日終値 1.0615
サポート 1 1.0524(10/26 安値)

<ポンド円=雲の下限や基準線を意識した値動きに>

小陽線引け。一目・雲の下で売りが進み、基準線 181 円も 割り込んで 180.70 円台まで下げ幅を広げた。6 日安値を下回 ったところで下落は一巡して 181 円台に戻したものの、終値 は雲を下回っている。前日同様に 181.55 円で横ばいの雲の下限や基準線を意識 しながらの値動きか。雲の中に入り込んだ場合でも、182 円 前半の 21 日移動平均線や転換線などが重しとなりそうだ。

レジスタンス 1 182.26(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 181.45
サポート 1 180.29(10/5 安値)

<NZ ドル円=一目・雲を中心とした値動き続くか>

小陰線引け。86 円後半の一目・雲の下限を割り込むも、下落圧力は強まらず。雲の中再び入り込んで引けた。 雲の上限は本日から 87.70 円台まで上昇し、87.60 円台で 下向きの 90 日移動平均線と共に上値の圧迫要因となりそう だ。もっとも、下サイドも先週後半から 86 円後半の底堅さ が確認されており、暫くは雲を中心とした値動きが続くか。


レジスタンス 1 87.95(10/25 高値)
前日終値 87.12
サポート 1 86.57(ピボット・サポート 2)