デイリーレポート 2023年11月30日

November 30, 2023

【前日の為替概況】米 7-9 月期 GDP の上方修正でドル高、対円 147.90 円 対ユーロ 1.0960 ドル

29 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 4 日続落。終値は 147.24 円と前営業日 NY 終値(147.48 円)と比べて 24 銭程度のドル安水準。アジア時間に一時 146.67 円と 9 月 12 日以来の安値まで売り込ま れた反動で買い戻しが先行した。米商務省が発表した 7-9 月期米国内総生産(GDP)改定値が年率換算で 前期比 5.2%増と速報値の 4.9%増から上方修正され、予想の 5.0%増を上回ったことが伝わるとドル買 いが加速。23 時過ぎに一時 147.90 円と日通し高値を付けた。ただ、節目の 148.00 円には届かなかった。 米経済活動の 3 分の 2 超を占める個人消費が 3.6%増と予想の 4.0%増を下回ったほか、米連邦準備理事 会(FRB)が物価の目安として注目する食料とエネルギーを除くコア個人消費支出(PCE)指数が 2.3%上 昇と予想の 2.4%上昇を下回ったことが相場の重しとなった。米国で利上げ局面が終了したとの見方が広 がる中、戻りを売りたい向きも多く、4 時過ぎには 147.08 円付近まで下押しした。

なお、FRB がこの日公表した米地区連銀経済報告(ベージュブック)では「米経済活動は前回の報告書 以降減速した」との認識が示されたほか、物価上昇については「地区全体でほぼ緩やかになったが、依然 として高止まりしている」、労働需要については「引き続き緩和した」と伝わった。

ユーロドルは 5 営業日ぶりに反落。終値は 1.0969 ドルと前営業日 NY 終値(1.0993 ドル)と比べて 0.0024 ドル程度のユーロ安水準だった。アジア時間に一時 1.1017 ドルと 8 月 10 日以来の高値を更新したあとだ けに、欧米市場では利食い売りなどが出た。11 月独消費者物価指数(CPI)速報値が予想を下回ったこと で、欧州のインフレ鈍化を意識したユーロ売りも出た。米 GDP 改定値の上振れを受けてドル買いが強まる と、一時 1.0960 ドルと日通し安値を更新した。もっとも、米国での早期利下げを見込むユーロ買い・ド ル売りが入ると、1.0995 ドル付近まで下げ渋った。

なお、バーキン米リッチモンド連銀総裁は「追加利上げの可能性を排除するつもりはない」「利下げに ついて議論するのは時期尚早」などと述べたほか、メスター米クリーブランド連銀総裁は「今後のデータ 評価する上で政策は良い位置にある」「さらなる利上げが必要かどうかは経済状況次第」などと語った。

ユーロ円は 3 日続落。終値は 161.52 円と前営業日 NY 終値(162.12 円)と比べて 60 銭程度のユーロ安 水準。21 時 30 分過ぎに本日高値となる 162.25 円まで上昇後、取引終了間際に 161.49 円まで反落した。

【本日の東京為替見通し】ドル円、10 月米 PCE デフレーターへの警戒感から上値が重い展開か

本日の東京外国為替市場のドル円は、今夜発表される 10 月の米 PCE デフレーターへの警戒感から上値 が重い展開が予想される。

12 月 12-13 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標と して注視している米 10 月 PCE デフレーターは前年比+3.0%と予想されており、9 月+3.4%からの伸び率 鈍化が見込まれている。

CME のフェドウオッチによると、米金利先物市場では来年 5 月の FOMC での利下げ開始確率が高まって いる。さらに米国債券市場でも、FRB が来年 5 月までに利下げに転じるとの観測が高まっている。もし、 今夜発表される 10 月 PCE デフレーターが予想を下回り、2%台まで伸び率が減速していた場合、来年の利 下げ開始時期が第 1 四半期あたりまで前倒しされる可能性が高まることになるか。

12 月 FOMC での景況感の判断材料となる地区連銀経済報告(ベージュブック)は、消費者が裁量的な支 出を控えたために、米経済活動は減速したと指摘していた。また、米感謝祭の翌日、ブラックフライデー の売上高が低調だった模様で、ベージュブックが指摘していた消費者支出への警戒感を裏付けている。

昨日はタカ派のメスター米クリーブランド連銀総裁が「データに機敏に対応」と述べている。次回 FOMC までの重要なデータは、本日の 10 月 PCE デフレーター、12 月 8 日の 11 月雇用統計、12 日の同月消費者 物価指数(CPI)となる。

ドル円のテクニカル分析では、長期的には、エリオット波動の最終 5 波を示唆する「斜行三角形」を形 成中、中期的には高値反転を示唆する「弱気の乖離(ベアリッシュ・ダイバージェンス)」を形成中、短 期的には「ダブル・トップ(151.72 円・151.91 円)」が完成したことで、下値リスクが高まりつつある。

10 時 30 分に発表される 11 月中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は 49.7 と予想されており、10 月 の 49.5 からの改善が見込まれている。リスクシナリオは、予想を下回った場合のリスク回避となるため 要注目か。

【本日の重要指標】

<国内>

○08:50 ◎ 10 月鉱工業生産速報(予想:前月比 0.8%/前年比 0.4%)

○08:50 ◇ 10 月商業販売統計速報(小売業販売額、予想:前年比 5.9%)

○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)

○10:30 ◎ 中村豊明日銀審議委員、あいさつ

○14:00 ◇ 11 月消費動向調査(消費者態度指数 一般世帯、予想:35.6)

○14:00 ◇ 10 月新設住宅着工戸数(予想:前年比▲6.8%)

○19:00 ◇ 外国為替平衡操作の実施状況(介入実績)

<海外>

○09:00 ◇ 11 月 ANZ 企業信頼感

○09:30 ◇ 7-9 月期豪民間設備投資(予想:前期比 1.0%)

○09:30 ◎ 10 月豪住宅建設許可件数(予想:前月比 2.0%)

○未定 ◎ 韓国中銀、政策金利発表(予想:3.50%で据え置き)

○10:30 ◎ 11 月中国製造業購買担当者景気指数(PMI、予想:49.7)

○16:00 ◎ 10 月独小売売上高(予想:前月比 0.4%/前年比▲2.0%)

○16:00 ◎ 7-9 月期トルコ国内総生産(GDP、予想:前年比 5.6%)

○16:30 ◇ 10 月スイス小売売上高

○16:45 ◎ 7-9 月期仏国内総生産(GDP)改定値(予想:前期比 0.1%)

○16:45 ◇ 11 月仏消費者物価指数(CPI)速報値(予想:前月比横ばい/前年比 3.7%)

○16:45 ◇ 10 月仏卸売物価指数(PPI)

○16:45 ◇ 10 月仏消費支出(予想:前月比▲0.2%)

○17:00 ◇ 11 月スイス KOF 景気先行指数(予想:96.6)

○17:55 ◎ 11 月独雇用統計(予想:失業率 5.8%/失業者数変化 2.20 万人)

○18:30 ◇ 10 月南アフリカ卸売物価指数(PPI、予想:前月比 1.1%/前年比 5.8%)

○18:30 ◎ パネッタ伊中銀総裁、講演

○19:00 ☆ 11 月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値(予想:前年比 2.7%)

○19:00 ☆ 11 月ユーロ圏 HICP コア速報値(予想:前年比 3.9%)

○19:00 ◎ 10 月ユーロ圏失業率(予想:6.5%)

○21:00 ◎ 10 月南アフリカ貿易収支(予想:91 億ランドの黒字)

○21:00 ☆ 7-9 月期インド GDP(予想:前年同期比 6.8%)

○21:00 ◇ 10 月メキシコ失業率(季節調整前、予想:2.80%)

○22:30 ☆ 9 月カナダ GDP(予想:前月比横ばい/前年比 0.8%)

☆ 7-9 月期カナダ GDP(予想:前期比 0.2%)

○22:30 ◎ 10 月米個人消費支出(PCE、予想:前月比 0.2%)

◎ 10 月米個人所得(予想:前月比 0.2%)

☆ 10 月米 PCE デフレーター(予想:前年比 3.0%)

☆ 10 月米 PCE コアデフレーター(予想:前月比 0.2%/前年比 3.5%)

○22:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:22.0 万件/187.2 万人)

○22:30 ◎ ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、講演

○23:15 ◎ ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、講演

○23:45 ◎ 11 月米シカゴ購買部協会景気指数(予想:45.4)

○24:00 ◎ 10 月米住宅販売保留指数(仮契約住宅販売指数、予想:前月比▲2.0%/前年比▲8.8%)

○1 日 01:00 ◎ グリーン英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演

○1 日 02:00 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演

○石油輸出国機構(OPEC)プラス閣僚級会合

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

29 日 10:04 ニュージーランド準備銀行(RBNZ)声明

「インフレ率は依然として高すぎるため、当委員会はイン フレ圧力の継続を警戒」

「経済成長は年初の予想を上回っているが、依然として トレンドを下回っており、さらに減速する可能性が高い」

「インフレ圧力が予想以上に強まれば、政策金利はさら に引き上げられる必要があるだろう」

「内需がさらに強まれば、追加的な金融引き締めが必要 になる可能性が高い」

「インフレ率は 2024 年後半までに目標範囲内に低下す ると予想」

「金利見通しでは来年の利上げがあるリスクが高まって いることを示している」

「金利見通しでは 2025 年半ばまで利下げがないと予想」

29 日 10:40 安達日銀審議委員

「賃金と物価の好循環という状況の芽が出始めているが、 十分ではない」

「10 月の YCC 運用のさらなる柔軟化が、金融政策の正 常化を意識した政策変更ではない」

「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じ る方針」

「長期金利の持つ情報的価値を有効に活用すべき余地 が徐々に高まってきた」

「賃金・物価の好循環が実現する状況になるまではマイ ナス金利の解除は難しい」

「中小企業では今年度並みの賃上げ厳しいとの声、マイ ナス金利いつ解除するかできるような状況ではない」

「賃上げの見極め、新年度明け以降になる」

「マイナス金利解除の条件、想定しない内外経済の動き あり、実質賃金が先にプラスになる可能性もある」

「マイナス金利解除、10 年金利の柔軟化とは性格異な る」

29 日 11:21 オア NZ 準備銀行(RBNZ)総裁

「今回の会合では利上げについて議論した」

「新首相との会談は非常に建設的だった」

「我々は来年まで金利を維持することに固執してきた」

「予想では金利に上昇バイアスがかかっているが、まだ 決定事項ではない」

「インフレに対するリスクはまだ上向き」

「金利についてしっかり議論した」

29 日 16:46 ベイリー英中銀(BOE)総裁

「BOE は現在利下げについて議論する立場にない」

「インフレ率が 2%に達するという十分な証拠はまだ得ら れておらず、確信も持っていない」

30 日 00:06 ボスティック米アトランタ連銀総裁

「2%のインフレへの道は不安定になるだろう」

「今後数カ月は経済活動が鈍化すると予想」

「インフレの下降軌道は継続すると予想」

30 日 00:11 バーキン米リッチモンド連銀総裁

「インフレが 2%に向け軌道に乗っているかどうかは懐 疑的」

「追加利上げの可能性を排除するつもりはない」

「市場はインフレに関して私とは異なる予測を立ててい る」

「利下げについて議論するのは時期尚早」

「我々が発信するメッセージが市場に反映されることを 願う」

30 日 03:37 メキシコ中銀

「政策会合からのインフレ見通しを維持」

「2023 年の GDP 成長率予測を 3%から 3.3%に引き上 げ」

「2024 年の GDP 成長率予測を 2.1%から 3%に引き上 げ」

「2025 年の GDP 成長率は 1.5%になると予想」

30 日 04:00 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

「全体として、米経済活動は前回の報告書以降減速し た」

「4 地区が緩やかな成長を報告し、2 地区が横ばい、もし くは僅かな減速を示唆。6 地区が若干の減速を示した」

「自動車を含む小売売上高は依然としてまちまち。消費 者が価格に敏感になったため、家具や電化製品などの 裁量品や耐久財の売上高は平均して減少した」

「製造業はまちまちで、製造業者の見通しは弱含んだ」

「ビジネスローン、特に不動産ローンの需要が若干減少 した」

「商業用不動産の活動は引き続き鈍化した」

「今後 6 カ月から 12 カ月の経済見通しは悪化した」

「ほとんどの地区で全体の雇用が横ばいから小幅な増 加を報告。労働需要は引き続き緩和した」

「しかし、いくつかの地区では労働市場が逼迫しており、 熟練労働者が不足していると報告」

「多くの地区で賃金圧力の緩和が報告された」

「価格上昇は地区全体でほぼ緩やかになったが、価格 は依然として高止まりした」

「ほとんどの地区は、緩やかな価格上昇が来年も続くと 予想」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=三役逆転が点灯、転換線を抵抗に戻り売り>

陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の下で引けたことで三役逆転の強い売りシグナル が点灯した。4 手連続陰線で転換線を下回って引けており、 続落の可能性が示唆されている。 本日は 148.30 円台まで低下した転換線を抵抗に戻り売り スタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。


レジスタンス 2 149.29(日足一目均衡表・基準線)
レジスタンス 1 148.33(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 147.24
サポート 1 146.44(9/12 安値)
サポート 2 145.91(9/11 安値)

<ユーロドル=上昇中の転換線から 11/27 安値が支持帯に>

陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシグ ナルが点灯中。1.10 ドル台では伸び悩み、4 手連続陽線の後 の孕み線で反落した。しかしながら、依然として転換線を上 回って引けており反発の可能性が示唆されている。 本日は、1.0930 ドル台まで上昇してきた転換線から 27 日 安値までを支持帯に押し目買いスタンスで臨みたい。


レジスタンス 1 1.1017(11/29 高値)
前日終値 1.0969
サポート 1 1.0925(11/27 安値)

<ポンド円=186 円半ばの転換線を念頭に置いた取引>

陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けているため三役好転の強い買いシグナ ルが点灯中。3 手連続陰線でも転換線を上回って引けており 反発の可能性が示唆されている。 本日は 186.57 円で横ばいの転換線を念頭に置いた取引。 同線をクリアに割り込むようであれば、185.60 円台の 22 日 安値辺りまでの下押しは考えておきたい。


レジスタンス 1 187.88(11/28 高値)
前日終値 186.93
サポート 1 185.64(11/22 安値)

<NZ ドル円=転換線が支持、ダブルトップの可能性も警戒>

上影小陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けており三役好転の強い買いシグ ナルが点灯中。2 手連続陰線の後に孕み線で反発して転換線を上回って引 けており続伸の可能性が残されている。本日は同線を支持に 押し目買いスタンス。しかしながらダブル・トップ(91.20 円・91.22 円)の可能性も高まっており、そちらも警戒はしておきたい。


レジスタンス 1 91.22(11/29 高値)
前日終値 90.62
サポート 1 90.21(日足一目均衡表・転換線)