デイリーレポート 2023年12月12日
December 12, 2023
【前日の為替概況】ドル円、続伸 日銀 YCC 撤廃など急ぐ必要ないとの観測報道が伝わり円売り
11 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。終値は 146.16 円と前営業日 NY 終値(144.95 円) と比べて 1 円 21 銭程度のドル高水準だった。欧州市場序盤に「日銀は賃金と物価の好循環の実現に向け た十分な確証が得られていないため、マイナス金利やイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC) の撤廃などを今月急ぐ必要はほとんどないとの認識」との観測報道が伝わり、全般円売りが進んだ影響が 残った。低調な米 3 年債入札を手掛かりに米長期金利が上昇するとドル買いも優勢となり、一時 146.59 円と日通し高値を更新した。ただ、引けにかけては伸び悩んだ。米長期金利が上昇幅を縮めたことでドル 円にも売りが出て、一時 146.07 円付近まで下押しした。
ユーロドルは小反発。終値は 1.0765 ドルと前営業日 NY 終値(1.0763 ドル)と比べて 0.0002 ドル程度 のユーロ高水準だった。米長期金利の指標となる米 10 年債利回りが 4.28%台まで上昇するとユーロ売 り・ドル買いが先行。1 時 30 分過ぎに一時 1.0742 ドルと日通し安値を更新した。ただ、米 10 年債利回 りが 4.22%台まで上昇幅を縮めると 1.0770ドル付近まで持ち直した。もっとも、今日一日の値幅は 0.0037 ドル程度と小さかった。今週は 11 月米消費者物価指数(CPI)や米連邦公開市場委員会(FOMC)、欧州中 央銀行(ECB)定例理事会など重要イベントが予定されているとあって、持ち高を一方向に傾ける動きは 限られた。
ユーロ円は続伸。終値は 157.34 円と前営業日 NY 終値(156.05 円)と比べて 1 円 29 銭程度のユーロ高 水準。日銀が金融政策の修正に早期に動くとの観測が後退する中、全般円売りが優勢になると一時 157.68 円と本日高値を付けた。ただ、そのあとは 157 円台前半でのもみ合いに終始した。
【本日の東京為替見通し】円相場は神経質に、ブラックアウト期間迫る日銀の観測報道に要警戒
本日のドル円相場も、日銀の政策変更に関する観測報道に右往左往する展開が続きそうだ。12 月 7 日 に行われた参院の財政金融委員会では、植田日銀総裁の「年末から来年にかけ一段とチャレンジングにな る」との発言に市場の注目が最も集まったが、2 時間超にわたる委員会では日銀に対して、様々な質疑応 答が行われた。
その質疑応答の中で勝部議員(立憲民主党)が、ブルームバーグが記載した 11 月のコラムを引用し「日 経(新聞)などが YCC の再修正を議論することを事前に報じた」ことに対することが、情報漏洩につなが っているのではないかとの質問を行った。これに対し内田日銀副総裁は情報管理を徹底するとし、「日銀 が報道機関の関係者と接触する場合は複数の人数で会うようにしている」という旨の回答をし、事前報道 についての説明を行った。そのような状況下で流れた、昨日のブルームバーグの報道(マイナス金利や YCC の撤廃などを今月急ぐ必要はほとんどないとの認識)は、「複数の関係者への取材で分かった」と報 じていることで、観測報道ではなく日銀関係者が非公式ながらも言及したと市場が受け止めるのは至極当 然だろう。市場が 12 月への撤廃と先走っていたこともあり、円買いの調整に動いたのもうなずける。
しかしながら、本日の日経新聞の朝刊では「日銀、不慣れな対話路線」との見出しで、これまで事前報 道を行っていた同紙が日銀の混乱について報じている。そして、この記事で注目されるのが「12 月に解 除を事前予告し、フォワードガイダンスを同時に修正する見方もある」との内容。141 円台から 146 円台 まで円買いの修正が入った相場だが、もし 18-19 日に行われる日銀政策決定会合で上述の事前予告が行 われた場合は、再び円買いに動きやすい相場になりそうだ。
いずれにしても、日銀のブラックアウト期間は他国の中央銀行と違いわずか 2 営業日前(詳細は、各金 融政策決定会合の 2 営業日前、会合が 2 営業日以上にわたる場合には会合開始日の 2 営業日前)からで、 本日を含め日銀関係者からの発言や観測記事で市場は神経質な動きを繰り返すことには変わらないだろ う。
【本日の重要指標】
<国内>
○08:50 ◇ 11 月企業物価指数(予想:前月比 0.2%/前年比 0.1%)
<海外>
○09:30 ◇ 11 月豪 NAB 企業景況感指数
○16:00 ◇ 11 月独卸売物価指数(WPI)
○16:00 ◎ 11 月英雇用統計(予想:失業保険申請件数推移 1.50 万件/失業率なし)
○16:00 ◎ 8-10 月英失業率(ILO 方式、予想:4.2%)
○19:00 ◎ 12 月独 ZEW 景況感指数(予想:8.8)
○19:00 ◎ 12 月ユーロ圏 ZEW 景況感指数
○21:00 ◎ 10 月インド鉱工業生産(予想:前年同月比 10.0%)
○21:00 ◎ 11 月インド消費者物価指数(CPI、予想:前年比 5.70%)
○21:00 ◎ 11 月ブラジル IBGE 消費者物価指数(IPCA、予想:前年同月比 4.70%)
○21:00 ◇ 10 月メキシコ鉱工業生産(季調済、予想:前月比▲0.1%)
○22:30 ☆ 11 月米 CPI(予想:前月比横ばい/前年比 3.1%)
☆ エネルギーと食品を除くコア指数(予想:前月比 0.3%/前年比 4.0%)
○13 日 02:00 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
○13 日 03:00 ◎ 米財務省、30 年債入札
○13 日 04:00 ◎ 11 月米月次財政収支(予想:3010 億ドルの赤字)
○米連邦公開市場委員会(FOMC)1 日目
○メキシコ(聖母グアダルーペの日)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
11 日 21:15 ブンゲ・リクスバンク(スウェーデン中銀)副 総裁
「金融引き締めによりインフレは低下しつつあるが、イン フレとの戦いが終わったと断言するには時期尚早」
「インフレが減速傾向にあるものの、クローナ安が不確 実性を高めている」
「スウェーデン・クローナは過小評価されており、経済状 況を考えると今後強含むことが示唆されている」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=次の抵抗として基準線を意識>
上影大陽線引け。相場の強弱を判断する際の分岐点・200
日移動平均線を上回る水準での底堅さを維持した。上伸して
一目均衡表・転換線 145.11 円や 145 円後半で低下中の 5 日
線を上抜けている。ここからは一目・基準線 146.81 円が次の抵抗として意識
されるか。現状では横ばいからやがて低下へ向かう公算の基
準線付近では相応の売り圧力にさらされそう。転換線や 5 日
線を乗り越えたような反発力を示せるか注目となる。
レジスタンス 1 146.81(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 146.16
サポート 1 145.47(12/11 レンジ 38.2%水準)
サポート 2 144.78(12/11 安値)
<ユーロドル=気迷い示す十字線のような足型形成>
極小陰線引け。1.07 ドル前半で低下中の 90 日移動平均線
を追うように 1.0742 ドルへ下振れる場面もあった。しかし
戻しており、気迷いを示すほぼ十字線のような足型を形成。
方向感を定めにくいが、200 日移動平均線 1.0825 ドルや一
目・基準線 1.0837 ドルまでの上昇余地を感じる状況にもみ
える。もっとも、低下傾向の一目・転換線 1.0854 ドル付近からは引き続き上値が重そうだ。
レジスタンス 1 1.0854(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0765
サポート 1 1.0724(12/8 安値)
<ユーロ円=157.59 円に低下した転換線前後の攻防>
大陽線引け。200 日移動平均線前後で 2 日にわたり長い下
ひげをつけて反発する底堅さを示した。その後を受け、
157.68 円まで上値を試している。昨日 157.74 円に位置して
いた一目均衡表・転換線は抵抗となり、引き続き本日は
157.59 円に低下した同線前後の攻防。重い動きを想定するが、
こなすことができれば上昇が続く一目均衡表・雲の下限(本
日 157.75 円)に沿って水準を回復できそうだ。
レジスタンス 1 158.38(12/6 安値)
前日終値 157.34
サポート 1 156.44(12/11 レンジ 38.2%水準)
<豪ドル円=転換線付近で動き停滞か>
陽線引け。200 日移動平均線を上回る水準ながら不安定に
下振れる場面が続いていた。しかし昨日は底堅く、一目均衡
表・雲を上回る動きとなっている。低下傾向の一目均衡表・
転換線 95.92 円付近では動きが停滞気味。昨日の上昇が一
目・基準線 96.17 円目前で抑えられた点も気になる。転換線の低下に引っ張られるように雲の中へ押し戻されるリスク
も視野に入れて臨みたい。
レジスタンス 1 96.57(12/7 高値)
前日終値 95.99
サポート 1 95.33(日足一目均衡表・雲の下限)