デイリーレポート 2023年12月20日
December 20, 2023
【前日の為替概況】ドル円、一時 144.96 円まで上昇 日銀の早期政策修正観測の後退で
19 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 3 日続伸。終値は 143.84 円と前営業日 NY 終値(142.78 円)と比べて 1 円 06 銭程度のドル高水準だった。日銀の大規模金融緩和策の維持や、会合後の植田和男 日銀総裁による会見を受けて市場で先行していた早期の政策修正観測が後退すると円売り・ドル買いが進 行。20 時前には一時 144.96 円まで値を上げた。
ただ、NY 市場に限れば上値の重さが目立った。米金融政策が 2024 年の早いうちに利下げに転じるとの 観測が根強い中、米金利の低下に伴う円買い・ドル売りが入ると一時 143.53 円付近まで下押しした。 なお、バーキン米リッチモンド連銀総裁は利下げの可能性について、「予想通りインフレ率が低下すれ ば米連邦準備理事会(FRB)は適切に対応する」との見解を示した。半面、ボスティック米アトランタ連 銀総裁は「インフレを巡っては驚異的な進展が見られたものの、まだ道半ば」「FRB の利下げ実施に緊急 性はない」と話した。
ユーロドルは続伸。終値は 1.0981 ドルと前営業日 NY 終値(1.0924 ドル)と比べて 0.0057 ドル程度の ユーロ高水準だった。FRB が 24 年の早期に利下げに転じるとの観測が根強い中、米金利低下に伴うユー ロ買い・ドル売りが入ると、一時 1.0987 ドルと日通し高値を付けた。
ユーロ円も続伸。終値は 157.95 円と前営業日 NY 終値(155.97 円)と比べて 1 円 98 銭程度のユーロ高 水準。日銀のマイナス金利政策解除への警戒感が後退する中、20 時前に一時 158.57 円と本日高値を付け たものの、1 時 30 分過ぎには 157.60 円付近まで上げ幅を縮めた。ドル円につれた動きとなった。
米ドルカナダドルは軟調だった。11 月カナダ消費者物価指数(CPI)が前月比 0.1%/前年同月比 3.1% と予想の前月比▲0.1%/前年同月比 2.9%を上回ったことが伝わると、米ドル売り・カナダドル買いが 進行。取引終了間際に一時 1.3332 カナダドルと日通し安値を付けた。
【本日の東京為替見通し】ドル円、底堅い展開か 日銀会合の現状維持を受け
本日の東京外国為替市場のドル円は、植田日銀総裁が来年 1 月のマイナス金利政策解除を示唆しなかっ たことから底堅い展開が予想される。ただ上値についても、米 10 年債利回りの伸び悩みで限定的となり そうだ。
植田日銀総裁は、昨日の会見で、大規模金融緩和政策の継続を決定した理由として、先行きの経済情勢 の不確実性が高いことを挙げていたが、政治情勢の不確実性もあるのかもしれない。
岸田首相は、先日「日銀と政府はアコード(共同声明)を通じて緊密に連携することを確認している。 政府はデフレ脱却に向けて取り組んでおり、しっかりと念頭に置いて政府と連携をしていただきたい」と 述べていた。昨日の日銀会合には、新藤経済財政担当相が出席しており、岸田首相の意向、すなわち、現 時点では金融引き締めへの転換は受け入れられないことを伝えたのかもしれない。
また、自民党派閥の政治資金パーティーを巡る問題で政局混迷への警戒感が高まりつつあることで、景 気回復への悪影響を避ける観点から、日銀は現状の金融政策の維持となったのかもしれない。
ドル円は、12 月 7 日の植田日銀総裁の参院財政金融委員会での答弁で、「年末から来年にかけて一段と チャレンジングな状況になる」との発言を受けて、7 日の高値 147.32 円から 14 日の安値 140.97 円まで 下落。そして、昨日の植田日銀総裁の発言「国会で仕事への取り組み姿勢を問われ、一段と気を引き締め てというつもりだった」を受けて、144.96 円まで戻している。
ドル円が 147 円台までの全値戻しとなる往って来いとはならなかったのは、13 日のパウエル FRB 議長 の発言「利下げは視野に入り始めており、今回の FOMC 会合でも議論した」を受けて、来年 3 月の米連邦 公開市場委員会(FOMC)での利下げ観測が高まっているからかもしれない。
昨日までの日銀金融政策決定会合では、短期政策金利をマイナス 0.1%に据え置くとともに、長期金利 の誘導水準を「ゼロ%程度」として上限は 1%を「めど」とするイールドカーブコントロール(YCC)の 運用も維持した。先行きの政策指針であるフォワードガイダンス「必要があれば、躊躇なく追加的な金融 緩和措置を講じる」にも変更はなかった。
植田日銀総裁は、2%目標実現の鍵を握る基調的物価が 2025 年度にかけて目標に向け徐々に高まるとの 見通し実現の「確度は引き続き少しずつ高まっている」とした上で、「もう少しデータやさまざまな情報 を見たい」との考えを示した。そして、来年 1 月会合の政策決定はそれまでに入手される情報次第だとし ながらも、新しいデータはそんなに多くない、と述べており、1 月会合での金融政策正常化の可能性は低 下している。
8 時 50 分に発表される 11 月貿易統計(通関ベース)は、季節調整前で 9624 億円の赤字、季節調整済 で 7689 億円の赤字と予想されている。ドル円を下支えする本邦実需筋の円売り圧力を確認することにな る。
【本日の重要指標】
<国内>
○08:50 ◎ 11 月貿易統計(通関ベース、予想:季節調整前 9624 億円の赤字、季節調整済 7689 億円の赤字)
<海外>
○08:00 ◎ グールズビー米シカゴ連銀総裁、インタビュー
○16:00 ◇ 11 月独生産者物価指数(PPI、予想:前月比▲0.3%)
○16:00 ◇ 1 月独消費者信頼感指数(Gfk 調査、予想:▲27.0)
○16:00 ◎ 11 月英消費者物価指数(CPI、予想:前月比 0.1%/前年比 4.4%)
○16:00 ◎ 11 月英 CPI コア指数(予想:前年比 5.6%)
○16:00 ◇ 11 月英小売物価指数(RPI、予想:前月比 0.2%/前年比 5.7%)
○18:00 ◇ 10 月ユーロ圏経常収支(季節調整済)
○19:00 ◇ 10 月ユーロ圏建設支出
○21:00 ◇ MBA 住宅ローン申請指数
○22:30 ◎ 7-9 月期米経常収支(予想:1960 億ドルの赤字)
○23:00 ◎ レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演
○24:00 ◎ 12 月ユーロ圏消費者信頼感指数(速報値、予想:▲16.4)
○24:00 ◎ 11 月米中古住宅販売件数(予想:前月比▲0.4%/年率換算 378 万件)
○24:00 ◎ 12 月米消費者信頼感指数(予想:104.0)
○21 日 00:30 ◇ EIA 週間在庫統計
○21 日 03:00 ◎ 米財務省、20 年債入札
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
19 日 05:57 デイリー米サンフランシスコ連銀総裁
「24 年に利下げが適切になる可能性がある」
「24 年に 3 回の利下げが必要になる可能性」
19 日 11:54 日本銀行声明
「粘り強く金融緩和を継続」
「賃金上昇に伴う形で 2%物価目標を持続的・安定的に 実現することを目指していく」
「必要なら躊躇なく追加的な緩和措置を講じる」
「物価目標の実現を目指し、これを安定的に持続するた めに必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融 緩和を継続
「企業等の資金繰りと市場の安定維持に努める」
「内外経済や金融市場巡る不確実性きわめて高い、経 済・物価・金融情勢に応じ機動的に対応」
19 日 15:35 植田日銀総裁
「我が国の景気は緩やかに回復している」
「経済・物価を巡る不確実性は極めて高い」
「粘り強く金融緩和を継続していく」
「基調的な物価上昇率、2%に向け上昇する確度高まっ ている」
「賃金から物価への波及、サービス価格への動向を見 たい」
「チャレンジング発言、仕事の取組み姿勢一般に対する もの」
「物価安定目標を十分な確度をもって見通せる段階に はない」
「確度は上がっているが閾値に達するにはもう少し情報 見たい」
「政策修正、毎回の決定会合で議論して決まるもの」
「政策修正、一般論としてサプライズは避けられない」
「出口の対応、確度の高い姿を示すことは困難」
「マイナス金利、金融機関収益や金融仲介にマイナスの 影響も」
「実質賃金マイナス、先行き好転見通しなら障害になら ない」
「政策変更、3 月決算避ける必要との議論は今のところ 出ていない」
「1 月会合での政策修正の可能性、そこまでに入ってくる 情報次第だが、そんなに多くはない」
「マイナス金利解除後の政策金利、現時点で決め打ちで きない」
「政策修正について、来月上げますということになる可 能性はあまりない」
19 日 16:22 ビルロワドガロー仏中銀総裁
「早すぎる利下げは、インフレが再発する危険性がある」
「政策金利はしばらく高止まりした後、24 年のある時点 で引き下げられる」
「利上げ局面は終わった」
「遅くとも 25 年までにインフレ率を 2%に戻す。これは予 想ではなく約束」
「インフレは仏国民にとって最大の関心事であり、低下し 始めている」
19 日 17:48 シムカス・リトアニア中銀総裁
「市場の利下げ見通しは過度に楽観的」
19 日 18:59 新藤経済再生担当相
「日銀決定会合出席、日程の都合がついたため」
「日銀会合、日程に余裕があれば参加する」
19 日 22:01 カザークス・ラトビア中銀総裁
「ユーロ圏のコアインフレ率は 11 月も高水準」
「金利はしばらくの間、現在の水準にとどまる必要があ る」
「インフレに対する勝利を宣言するのは時期尚早」
20 日 00:26 バーキン米リッチモンド連銀総裁
「(利下げの可能性について)予想通りインフレ率が低下 すれば FRB は適切に対応する」
20 日 03:24 ボスティック米アトランタ連銀総裁
「FRB は驚異的な前進を遂げたものの、インフレはまだ 続くだろう」
「労働市場の逼迫は今後も続くと予想」
「政策には毅然とした態度が必要」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=12/18 高値を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を
下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシ
グナルが点灯中。しかし 3 手連続で陽線を形成し、転換線を
上回って推移しており、続伸の可能性が示唆されている。
本日は 143.78 円まで低下してきた転換線を念頭に置き、
18 日高値を支持に押し目買いスタンスで臨みたい。
レジスタンス 2 145.99(12/13 高値)
レジスタンス 1 144.96(12/19 高値)
前日終値 143.84
サポート 1 143.16(12/18 高値)
サポート 2 142.25(12/19 安値)
<ユーロドル=横ばいの転換線を支持に押し目買い>
陽線引け。転換線は基準線を下回ったが、遅行スパンは実
線を上回り、雲の上で引けていることで買いシグナルが優勢
な展開。2 手連続陽線で転換線を上回って引けており、続伸
の可能性が示唆されている。ただし、ダブル・トップ(1.1017
ドル・1.1009 ドル)の可能性には留意しておきたい。
本日は 1.0860 ドル台で横ばいの転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 1.1047(7/28 高値)
前日終値 1.0981
サポート 1 1.0867(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロ円=上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を
下回り、雲の下で引けているため三役逆転の強い売りシグナ
ルが点灯している。しかし、2 手連続陰線で転換線を上回っ
て引けており、続伸の可能性が示唆されている。
本日は 156 円前半まで上昇してきた転換線を支持に押し目
買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 158.77(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 157.95
サポート 1 156.22(日足一目均衡表・転換線)
<豪ドル円=96 円後半まで上げてきた雲の上限を意識>
大陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線
を下回り、雲を上回って引けているものの売りシグナルが優
勢な展開となっている。しかし、3 手連続陽線で雲を上抜け
し、転換線も上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は 96.80 円台まで水準を上げてきた雲の上限を意識し、
押し目買いスタンスで臨みたい。支持水準としては 96.17 円
の基準線を想定し、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 98.54(11/24 高値)
前日終値 97.27
サポート 1 96.17(日足一目均衡表・基準線)