デイリーレポート 2023年5月12日

May 12, 2023 ←当日の日付に変更

【前日の為替概況】ドル円133.75円まで下落、米4月PPIや新規失業保険申請件数26.4万件で

11日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは反落。終値は1.0916ドルと前営業日NY終値(1.0982ドル)と比べて0.0066ドル程度のユーロ安水準だった。米債務上限問題を巡る懸念や米金融システム不安再燃への警戒から、ダウ平均が一時400ドル超下落するとリスク・オフのドル買いが優勢となった。23時過ぎに一時1.0900ドルと日通し安値を更新した。その後の戻りも1.0929ドル付近にとどまった。

なお、デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁はこの日、「サービスインフレを懸念」「追加利上げの可能性がある」「将来の利上げ規模はデータと信用状況に依存」などと述べたが、相場の反応は限られた。

ドル円は反発。終値は134.53円と前営業日NY終値(134.34円)と比べて19銭程度のドル高水準だった。米地銀パックウエスト・バンコープの預金が約1割流出していたことが判明すると時間外のダウ先物の下落や米長期金利の低下とともに円買い・ドル売りが先行。「米連邦預金保険公社(FDIC)が預金保険基金に関する発表を本日行う予定」との報道が伝わると134.63円付近まで瞬間的に反発したものの、戻りは限定的だった。4月米卸売物価指数(PPI)や前週分の米新規失業保険申請件数が予想よりも弱い内容となったことで再び売りが強まると、一時133.75円と日通し安値を更新した。

ただ、4日の安値133.50円がサポートとして働くと買い戻しが優勢に。欧州通貨やオセアニア通貨に対してドル高が進んだ影響も受けて、一時134.59円付近まで持ち直した。なお、主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時102.15まで上昇した。

ユーロ円は3日続落。終値は146.88円と前営業日NY終値(147.56円)と比べて68銭程度のユーロ安水準。ユーロドルの下落につれた売りが先行すると一時146.13円と日通し安値を付けたものの、ドル円の持ち直しにつれた買いが入ると146.93円付近まで下げ渋った。

南アフリカランドは対円で6.92円と2021年1月以来の安値を付け、対ドルで19.3413ランドと20年4月以来の安値を更新した。株安を背景に投資家のリスク回避の姿勢が強まる中、ランドを含めた新興国通貨への売りが強まり、「米国は南アがロシアへ兵器を供給していると非難」との報道が嫌気された。

【本日の東京為替見通し】ドル円、来週へ延期された債務上限協議への警戒感から伸び悩む展開

本日の東京外国為替市場のドル円は、本日予定されていた米国債務上限引き上げを巡る協議が来週へ延期されたことで上値が重い展開か予想される。

イエレン米財務長官が、米国がデフォルト(債務不履行)に陥る「Xデイ」と警告した6月1日が近づく中で、バイデン米大統領とマッカーシー下院議長(共和党)などの議会指導部による債務上限引き上げの協議は、9日に続いて本日予定されていたが、来週へ延期されると報じられている。当局者によれば、この延期は、債務上限突破を回避するための合意に向けたスタッフレベルの交渉が進展していることによるものらしい。バイデン米大統領は、来週早々に議会指導者と会談した後、19、20、21日には広島サミットに参加することになっている。バイデン米大統領と上下両院の議員がワシントンに同時に居る時期は、「Xデイ」までは4日間(12日、15日、16日、17日)だけとなっている。

2011年夏のオバマ第44代米大統領と下院共和党による債務上限引き上げを巡る「チキンゲーム」の時は、1兆ドルのプラチナコイン発行案、合衆国憲法修正第14条の発動案が検討されたが、オバマ米大統領は一蹴しており、8月2日の期限直前の7月31日に米議会が債務上限引き上げを承認したことで、米国のデフォルトは回避された。しかし、8月5日には、格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)が、米国の長期発行体格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げたことで、米国債格下げショックが市場を襲った。今回は、バイデン米大統領が合衆国憲法修正第14条の発動に言及しているが、イエレン米財務長官は否定的な見解を示している。

今年1月、マッカーシー下院議員が下院議長に就任するまでに15回の投票を要したが、マッカーシー下院議長は、反対し続けた下院共和党の保守強硬派「フリーダム・コーカス」に対して、ホワイトハウスに大規模な歳出削減を認めさせることを約束した。4月25日に米下院で可決したマッカーシー下院議長案は、債務上限1.5兆ドルの引き上げと10年間で4.5兆ドルの福祉・エネルギー関係予算を削減する法案だった。共和党のマコネル上院院内総務を含む同党の上院議員43人は、無条件で連邦債務上限を引き上げる法案の採決を認めることに反対すると表明し、「実質的な歳出・予算の改革」が法案に盛り込まねばならないと主張している。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ◇ 4 月マネーストックM2

○主要7 カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議(新潟市、13 日まで)

<海外>

○15:00 ☆ 3 月英国内総生産(GDP、予想:前月比横ばい)

○15:00 ☆ 1-3 月期英GDP 速報値(予想:前期比0.1%/前年比0.2%)

○15:00 ◎ 3 月英鉱工業生産(予想:前月比横ばい/前年比▲2.9%)

○15:00 ◎ 3 月英製造業生産高(予想:前月比▲0.1%)

○15:00 ◇ 3 月英商品貿易収支/英貿易収支(予想:175.00 億ポンドの赤字/50.00 億ポンドの赤字)

○15:00 ◎ 1-3 月期ノルウェーGDP(予想:前期比0.2%)

○15:45 ◇ 4 月仏消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比0.6%/前年比5.9%)

○17:30 ◎ 1-3 月期香港GDP 確定値(予想:前期比5.3%/前年同期比2.7%)

○20:15 ◎ ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼チーフエコノミスト、講演

○21:00 ◎ 3 月インド鉱工業生産(予想:前年同月比3.3%)

○21:00 ◎ 4 月インドCPI(予想:前年比4.80%)

○21:00 ◎ 4 月ブラジルIBGE 消費者物価指数(IPCA、予想:前年同月比4.10%)

○21:00 ◇ 3 月メキシコ鉱工業生産(季調済、予想:前月比▲0.2%)

○21:30 ◇ 4 月米輸入物価指数(予想:前月比0.3%)

○23:00 ◎ 5 月米消費者態度指数(ミシガン大調べ、速報値、予想:63.0)

○13 日01:00 ◎ 4 月ロシアCPI(予想:前月比0.5%)

○13 日03:20 ◎ デイリー米サンフランシスコ連銀総裁、講演

○14 日 トルコ大統領・議会選

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

11日08:57日銀金融政策決定会合における主な意見(4月27-28日分)

「わが国経済は、既往の資源高の影響などを受けつつも、持ち直している。先行きは、ペントアップ需要の顕在化や高めの賃金上昇等が消費を下支えすることが期待される。また、積極的な設備投資の継続も見込まれる。わが国経済の先行きにとっては、こうした動きがどれだけ強くみられるかが重要である。」

「消費者物価上昇率は、既往の輸入価格上昇の転嫁により、当面は2%を超えて推移するものの、価格転嫁が一巡する中で、今年度半ばにかけて2%を下回るとみている。」

「物価見通しは幾分上振れているが、「2%を超えるインフレ率が持続してしまうリスク」 より、「拙速な金融緩和の修正によって2%実現の機会を逸してしまうリスク」 の方がずっと大きい。」

「2%の「物価安定の目標」 の達成にはなお時間がかかる状況であり、目標達成まで金融緩和を続けるというフォワードガイダンスは、目標達成に対する強いコミットメントを示す観点で有用である。」

11日14:39イエレン米財務長官

「議会は債務上限を引き上げるべき、米国のデフォルトは、経済・金融の大惨事をもたらす」

「デフォルトは米国の回復を脅かし世界的な低迷と一段の後退につながる」

「デフォルトは米国のグローバル経済での指導力を損ない安全保障上の利益を守る能力に疑問生じる」

「市場は債務上限に達する可能性を認識している」

「債務上限巡る駆け引きが深刻な経済コストにつながる可能性があり、すでに金利が上昇している」

「下振れリスクがあるが世界経済は6カ月前よりも良い状況、G7諸国の多くでインフレは鈍化している」

「経済的回復力高めるため米国はG7諸国と協力、経済安全保障を強化し信頼できるサプライチェーンの構築へ」

11日16:32植田日銀総裁

「(金融不安について)足もとは市場と金融システムは落ち着いている」

「今後不安定な動きがないか、色々と意思疎通を密にして確認」

11日20:00英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨

「MPCのメンバー7人は0.25%の利上げを支持、残り2人は据え置きを支持」

「インフレが持続するなら追加引き締めが必要になる」

「英経済はリセッションを回避すると見込む」

「GDP見通し、2023年を-0.5%から+0.25%、2024年を-0.25%から+0.75%、2025年を+0.25%から+0.75%へ大幅に上方修正」

「1年後のインフレ予測は+3.38%(前回は3.01%)」

「2年後のインフレ予測は+1.10%(前回は0.95%)」

「3年後のインフレ予測は+2.00%」

11日20:40ベイリー英中銀(BOE)総裁

「インフレは依然として高過ぎる」

「予想以上に経済に底堅さが見られる」

「コアインフレは予想よりも高い水準で高止まり」

「金利に関する方向性を示すつもりはない」

「金利についてはエビデンス次第」

「GDPは上方修正されたものの、依然として弱い状況」

「インフレは今年末までに半減する見込み」

「インフレの持続性に関する指標はまちまち」

「利上げを一時停止できる時期に近づいている」

11日21:23JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)

「規制当局は銀行に対する空売り禁止を検討すべき」

11日22:16カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁

「インフレは低下したが、依然として目標を上回っている」

「賃金の伸びはやや鈍化」

「銀行の混乱は経済減速の原因になる可能性がある」

12日03:25デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁

「総合インフレは引き続き緩和するだろう」

「コアインフレはより安定し、持続的に」

「サービスインフレを懸念」

「追加利上げの可能性がある」

「将来の利上げ規模はデータと信用状況に依存」

12日04:31米エネルギー省のグランホルム長官

「戦略石油備蓄(SPR)補充に向けた石油購入を6月にも始める可能性」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線を抵抗に戻り売りスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシグナルが点灯中。しかし、孕み線で反発したものの転換線を下回って引けており反落の可能性が示唆されている。本日は、転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス2 136.63(5/3 高値)
レジスタンス1 135.64(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 134.53
サポート1 133.50(5/4 安値)
サポート2 133.00(日足一目均衡表・雲の上限)

<ユーロドル=低下中の転換線を抵抗に戻り売りスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の上で引けており、三役好転は解消したものの買いシグナルが優勢な展開となっている。しかし、抱き線で反落して転換線を下回って引けていることで続落の可能性が示唆されている。本日は、低下中の転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1 1.0996(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0916
サポート1 1.0813(日足一目均衡表・雲の上限)

<ユーロ円=基準線を抵抗に戻り売りスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシグナルが点灯している。しかし、3 手連続陰線で転換線を下回って引けており続落の可能性が示唆されている。本日は、基準線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1 147.60(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 146.88
サポート1 145.77(4/12 安値)

<豪ドル円=転換線を抵抗に戻り売りスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシグナルが点灯している。しかし、3 手連続陰線で転換線を下回って引けているため続落の可能性が示唆されている。本日は、転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1 90.80(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 90.18
サポート1 89.55(日足一目均衡表・雲の上限)