デイリーレポート 2024年5月1日

May 1, 2024

【前日の為替概況】ドル円、反発米雇用コスト指数が予想を上回る

30日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反発。終値は157.80円と前営業日NY終値(156.35円) と比べて1円45銭程度のドル高水準だった。1-3月期米雇用コスト指数が予想を上回ったことが分かる と、賃金インフレ圧力の根強さが意識され、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ開始時期が遅れるとの観 測が一段と強まった。米長期金利の上昇とともにドル買いが優勢になると、5時30分過ぎに一時157.85 円と日通し高値を更新した。月末のロンドン16時(日本時間24時)のフィキシングに絡んだドル買いの フローも観測された。ただ、前日には政府・日銀による為替介入と見られる急激な円高・ドル安局面があ っただけに、上昇のスピードは比較的緩やかだった。なお、日銀が公表した明日の当座預金増減要因の予 想値は市場推計値と5.5兆円ほど乖離しており、市場では29日に同程度(約5.5兆円)の円買い介入が あったとの観測が強まっている。

ユーロドルは反落。終値は1.0666ドルと前営業日NY終値(1.0721ドル)と比べて0.0055ドル程度の ユーロ安水準だった。欧州市場では1-3月期ユーロ圏域内総生産(GDP)速報値や4月ユーロ圏消費者物 価指数(HICP)コア速報値が予想を上回ったことを手掛かりに一時1.0735ドルまで上昇する場面もあっ たが、NY市場に入ると軟調な展開となった。米雇用コスト指数の上振れをきっかけに全般ドル買いが入 ったほか、月末のロンドン・フィキシングに絡んだドル買いのフローも観測され、一時本日安値となる 1.0665ドルまで値を下げた。主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時106.33まで 上昇した。ユーロ円は反発。終値は168.22円と前営業日NY終値(167.60円)と比べて62銭程度のユー ロ高水準。予想を上回るユーロ圏GDP速報値を受けてユーロ買いが先行したあとは、ドル円の上昇につれ た買いが入った。22時30分過ぎには一時168.60円と日通し高値を更新した。ただ、そのあとはユーロ ドルの下落につれた売りが出たため、伸び悩んだ。

【本日の東京為替見通し】新たなブラック・ウェンズデーとなるか、大規模介入も効果薄

昨日に日銀が発表した当座預金残高の見通しによると、29日に行われた為替介入は5兆円規模となり、 非常に大規模な介入となったと観測されている。しかしながら、昨日のドル円は5・10日(ゴトー日)の 東京仲値やそれ以後の本邦実需の買い、欧州午後にかけてはロンドン・フィキシングのドル買いなどで、 ドル円は放置をしておけば堅調に推移することが改めて示された。前日に為替介入が行われたと思われる のに、介入水準よりもドル高になっていることは、為替市場が年々巨大になってきていることで、これま でのように協調できない為替介入が無力になりつつあるともいえる。

この状況下の中で、本日も昨日の東京時間のように為替介入がなく、現行水準の157円台やさらにドル 高水準でFOMCを迎えた場合には、FOMCの声明文やパウエルFRB議長の発言がタカ派に少しでも傾いた場 合には、29日に一瞬乗せた160円台ではドル高を止めることはできず、170円、180円と今後はあっとい う間に更に大台を更新することもあり得そうだ。市場は先週25日にイエレン米財務長官の発言「為替介 入は市場が過度のボラティリティで無秩序な、非常にまれかつ例外的な状況(veryrareandexceptional circumstances)にのみ行われるべきだ」との言葉にあるように、米国が介入への否定的な見解を示して いることで、本邦当局の市場介入は限定的にしか行うことが出来ないのではないかとの考えもある。

また、一部ではポンド危機の「暗黒の水曜日(BlackWednesday)」を連想する声も上がっている。これ は1992年に東京時間を含めイングランド銀行(BOE・英中銀)が執拗にポンド買い介入を行ったのにもか かわらず、ジョージ・ソロス氏をはじめとしたファンド勢の売り圧力にはかなわず、英国が欧州為替相場 メカニズム(ERM)を離脱した事件だ。本邦当局の市場介入が無力となった場合には、再び「暗黒の水曜 日」となり、更なる円安への備えも必要になりそうだ。

なお本日は、オセアニア市場は通常通りの営業日となっているが、多くのアジア市場や欧州もドイツ・ フランスなどの大陸勢が休場ということで、流動性が悪化することにも留意しておきたい。

【本日の重要指標】

<国内>

特になし

<海外>

○15:00 ◇ 4 月英ネーションワイド住宅価格指数(予想:前月比 0.2%)

○17:30 ◎ 4 月英製造業 PMI 改定値(予想:48.7)

○20:00 ◇ MBA 住宅ローン申請指数

○21:15 ☆ 4 月 ADP 全米雇用報告(予想:17.5 万人)

○22:45 ◎ 4 月米製造業 PMI 改定値(予想:49.9)

○23:00 ☆ 4 月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景気指数(予想:50.0)

○23:00 ◇ 3 月米建設支出(予想:前月比 0.3%)

○23:00 ◎ 3 月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数(予想:868.6 万件)

○23:30 ◇ EIA 週間在庫統計

○2 日 02:30 ◎ デコス・スペイン中銀総裁、講演

○2 日 03:00 ☆ 米連邦公開市場委員会(FOMC)、終了後政策金利発表(予想:5.25-5.50%で据え置き)

○2 日 03:30 ☆ パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

○中国(労働節)、香港、シンガポール、韓国、スイス、フランス、ドイツ、ノルウェー、スウェーデン、ポ ーランド、ロシア、トルコ、南アフリカ、ブラジル、メキシコ(レーバーデー)、休場

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

30 日 08:06 神田財務官

「介入の有無、私から申し上げることはない」

「輸入価格、今は為替のほうが影響大きい」

「過度な変動が投機で発生すると国民生活に影響、しっ かりと対応していかないといけない」

30 日 09:51 岸田首相

「為替介入の有無を含めてコメントは控える」

「解散総選挙はまったく考えていない」

30 日 19:19 デコス・スペイン中銀総裁

「6 月の欧州中央銀行(ECB)理事会での利下げ開始は ほぼ確実」

30 日 22:49 ビルロワドガロー仏中銀総裁

「2025 年末までのインフレ目標達成に自信」

「ECB は 6 月に利下げを開始できる見通し」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線付近の底堅さ背景とした上向きの流れ予想>

陽線引け。一目均衡表・転換線 156.88 円を下回る水準か ら昨日の取引をスタートした。しかし一時 157.85 円まで上 昇する底堅い動きだった。転換線付近の底堅さを背景とした 上向きの流れが継続しそう。高値警戒感もあり不安定な推移 かもしれないが、ピボット・レジスタンス 2 も近くに位置す る 159 円付近を目先のめどに、4 月 29 日につけた 34 年ぶり 高値の上抜けもうかがう堅調な推移を予想する。

レジスタンス 2 160.17(4/29 高値=年初来高値)
レジスタンス 1 159.02(ピボット・レジスタンス 2)
前日終値 157.80
サポート 1 156.88(日足一目均衡表・転換線)

<ユーロドル=転換線は強い抵抗にならないか>

陰線引け。一目均衡表・転換線 1.0682 ドル前後の底堅さ を背景に 1.0735 ドルまで上昇が先行した。しかし終盤は失 速。転換線を割り込み、1.0660 ドル台まで下落している。転 換線はまだ上昇が続く見込み。反発局面の強い抵抗にならな いと考えられる。転換線の動きに沿った限定的なペースかも しれないが、1.0718 ドル前後で低下中の 21 日移動平均線や 一目・基準線をめどに戻りを試す展開が期待できる。

レジスタンス 1 1.0743(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 1.0666
サポート 1 1.0601(4/16 安値=年初来安値)

<ポンド円=上昇見込まれる転換線が底堅さ示唆>

陽線引け。4 月 29 日に 2008 年以来の 200 円台回復を果た した後を受け、高値警戒感もあるようで 196-197 円台で様子 見姿勢がうかがえた。昨日安値程度まで再び下押す展開を想 定しつつ、まだ調整が大きめになるリスクにも備えておきた いものの、一目均衡表・転換線 195.43 円や基準線 195.27 円 が位置する 195 円台では底堅さを示すことができそう。転換 線は 196円台、197円台へ上昇していく可能性を残しており、 上向きの流れ継続の示唆と受け止めることができる。

レジスタンス 1 197.90(4/29 レンジ 61.8%水準)
前日終値 197.13
サポート 1 196.08(4/30 安値)

<NZ ドル円=転換線・基準線が重なる 92.68 円付近の攻防>

上影陰線引け。4 月 29 日に 2007 年以来の高値 95.40 円ま で上振れた後の調整モードで、戻りの鈍い動きが続いた。一 目均衡表・転換線と基準線が重なる 92.68 円付近の攻防が予 想される。93 円台への上昇が見込まれる転換線の動きに沿っ た戻りを期待するが、下抜けるようだと 4 月 29 日の調整の 下振れでつけた 92.20 円や、本日 91.83 円前後で推移する 21 日移動平均線などが次の下値めどとなるか。

レジスタンス 1 93.65(4/30 高値)
前日終値 92.85
サポート 1 92.20(4/29 安値)