デイリーレポート 2024年6月13日

June 13, 2024

【前日の為替概況】ドル円、米5月CPIで155.72円まで下落後ドット・プロットで156.90円まで反発

12日のニューヨーク外国為替市場でドル円は4営業日ぶりに反落。終値は156.72円と前営業日NY終 値(157.13円)と比べて41銭程度のドル安水準だった。米労働省が発表した5月米消費者物価指数(CPI) が前月比横ばい/前年比3.3%、エネルギーと食品を除くコア指数が前月比0.2%/前年比3.4%といず れも予想を下回ったことが分かると、米利下げ期待が再燃。米長期金利の低下とともに全般ドル売りが活 発化し、1時30分過ぎに一時155.72円と日通し安値を更新した。

ただ、売り一巡後は買い戻しが優勢に。米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果やパウエル米連邦準備理 事会(FRB)議長の発言が伝わると、米長期金利が低下幅を縮小するとともにドル買い戻しが加速。5時 30分前に156.90円付近まで下げ渋った。

FRBは今日まで開いたFOMCで市場予想通りFFレートの誘導目標を5.25-5.50%に据え置くことを決め たと発表。声明では「インフレ率はこの1年で緩和したが、依然高止まりしている」と強調したうえで、 「ここ数カ月は2%の物価目標に向けた緩やかながらもさらなる進展があった」と指摘。前回の「一段の 進展は見られていない」から表現を改めた。

政策金利見通し(ドット・チャート)では2024年末時点の中央値が4.6%から5.1%へ上方修正され、 年内の利下げ予想回数は前回3月の3回から1回に減った。25年末は3.9%から4.1%へ上方修正された 一方、26年末は前回の3.1%と同じとなった。長期的な水準は2.6%から2.8%に修正された。 なお、パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で「インフレは大幅に緩和したが、依然として高すぎる」 「インフレに対する信頼を高めるには、より良いデータが必要」「FRBはインフレのリスクを引き続き大 いに注視している」などと発言した。

ユーロドルは4日ぶりに反発。終値は1.0809ドルと前営業日NY終値(1.0741ドル)と比べて0.0068 ドル程度のユーロ高水準だった。米インフレ指標の下振れを受けて米利下げ期待が再燃すると、米長期金 利の低下とともに全般ドル売りが先行。24時過ぎに一時1.0852ドルと日通し高値を更新した。 ただ、FOMCの結果やパウエルFRB議長の発言が伝わると、米長期金利が低下幅を縮小するとともにド ルを買い戻す動きが優勢に。4時30分前には1.0804ドル付近まで下押しした。

ユーロ円は5日ぶりに反発。終値は169.41円と前営業日NY終値(168.77円)と比べて64銭程度のユ ーロ高水準。ドル円とユーロドルの値動きの影響を同時に受けたため、しばらくはもみ合いの展開が続い ていたが、引けにかけては強含んだ。5時30分前に一時169.59円と日通し高値を更新した。

【本日の東京為替見通し】ドル円、明日の日銀決定控え上値重いか豪ドルは雇用統計に注目

本日の東京外国為替市場のドル円は、米連邦公開市場委員会(FOMC)を終えて米10年債利回りが4.3% 台へ低下していることや本日から明日にかけて開催される日銀金融政策決定会合での金融政策正常化へ の警戒感から上値が重い展開が予想される。

昨日発表された日本の5月輸入物価指数は、前年比+6.9%となり、4月の同比+6.6%(修正値)から上 昇していた。

植田日銀総裁は、これまで円安による輸入物価上昇を起点としたコストプッシュ圧力である「第1の力」 への警戒感を示していたことで、本日からの日銀金融政策決定会合での円安対応としての金融政策正常化 への警戒感を高めている。

市場のハト派的な見方は、政策金利(0.00~0.10%)の据え置きと国債買い入れオペ(※6兆円規模) の据え置き、あるいは5兆円程度までの減額となっている。タカ派的な見方は、0.15~0.25%程度の追加 利上げと4兆円以下までの減額となっている。

植田日銀総裁、内田日銀副総裁、安達日銀審議委員は、さらなる金融政策正常化の可能性を示唆し、中 村日銀審議委員は、金融政策正常化は時期尚早と述べていた。

FOMC声明文に関しては、「インフレ率はこの1年で緩和したが、依然高止まりしている」という文言は タカ派と見なせる。一方で、「委員会が目指す2%のインフレ目標に向けては『緩慢なる一段の進展が見 られた』(modestfurtherprogress)」と、従来の「一段の進展は見られていない」から変更されたこと はハト派と見なせる。

また、ドット・プロット(金利予測分布図)では、年内の利下げ回数が3月時点の3回から1回に減り、 長期的な金利の着地点の予想を2.8%と3月時点の2.6%から引き上げたことは、タカ派的と見なせる。 すなわち、FOMCは、インフレ抑制のため、政策金利を高水準で長期間維持するという方針を示唆したこ とになる。

しかしながら、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する 「フェドウオッチ」での利下げ開始は、9月FOMCとなっており、12月FOMCでも追加利下げが見込まれて おり、年末のFF金利誘導目標4.75-5.00%と想定されている。

10時30分に発表される5月豪雇用統計の予想は、失業率が4.0%で4月の4.1%から改善が見込まれ、 新規雇用者数は3.00万人の増加で4月の3.85万人増から増加幅の減少が見込まれている。4月の失業率 は労働力人口(人工)が増えた影響で4.1%と3月の3.9%から上昇していたことで、豪準備銀行(RBA)理 事会の利上げ観測が消滅し、12月の利下げ観測(※50%以上)が台頭していたが、5月の失業率が予想通 りに低下した場合の利下げ確率の変化に注目しておきたい。

【本日の重要指標】

<国内>

○日銀金融政策決定会合(1 日目)

○08:50 ◇ 4-6 月期法人企業景気予測調査

○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)

<海外>

○08:01 ◇ 5 月英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格(予想:▲6)

○10:30 ◎ 5 月豪雇用統計(予想:失業率 4.0%/新規雇用者数 3.00 万人)

○15:00 ◇ 5 月独卸売物価指数(WPI)

○15:30 ◇ 5 月スイス生産者輸入価格

○16:00 ◎ ミュラー・エストニア中銀総裁、講演

○18:00 ◎ 4 月ユーロ圏鉱工業生産(予想:前月比 0.2%/前年比▲1.9%)

○21:00 ◎ 4 月ブラジル小売売上高(予想:前年同月比 3.4%)

○21:30 ◎ 5 月米卸売物価指数(PPI、予想:前月比 0.1%/前年比 2.5%)

◎ 食品とエネルギーを除くコア指数(予想:前月比 0.3%/前年比 2.4%)

○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:22.5 万件/179.8 万人)

○14 日 01:00 ◎ ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、討議に参加

○14 日 02:00 ◎ 米財務省、30 年債入札

○主要 7 カ国(G7)首脳会議(サミット、伊プーリア州、15 日まで)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

12 日 09:15 チャーマーズ豪財務相

「経済を破壊することなくインフレと戦っている」

「中国経済は一朝一夕には回復しない」

「中国と豪州の関係はより安定したものになる」

12 日 14:11 カザークス・ラトビア中銀総裁

「年内の追加利下げの可能性は残されている」

「インフレの再燃がないという確信が必要」

「欧州中央銀行(ECB)は、段階的に利下げを行うべき」

12 日 17:12 IEA(国際エネルギー機関)

「2024年の世界の石油需要成長見通しを日量10万バレ ル下方修正し、96 万バレルとする」

「長期的には供給が需要を上回ると引き続き想定」

12 日 22:23 デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁

「今後 6 カ月間の明確な金利経路はない」

「不透明感のレベルは極めて高い」

「十分に慎重にかつゆっくりと動かなければならない」

13 日 03:00 米連邦公開市場委員会(FOMC)声明

「最近の指標は、経済活動が引き続き堅調なペースで 拡大していることを示している」

「雇用の伸びは引き続き力強く、失業率は依然低い」

「インフレ率はこの 1 年で緩和したが、依然高止まりして いる」

「ここ数カ月間、委員会の 2%のインフレ目標に向けて緩 やかな前進が見られた」

「委員会は雇用最大化と長期的な 2%のインフレ率の達 成を目指す」

「委員会は、雇用とインフレ率の目標達成に対するリス クのバランスがこの 1 年で改善に向かっていると判断す る」

「経済の見通しは不確実で、委員会はインフレのリスク を引き続き大いに注視している」

「目標を支援するため、委員会は FF 金利の目標誘導レ ンジを 5.25-5.50%に維持することを決定した」

「FF 金利の目標誘導レンジのあらゆる調整を検討する に当たり、委員会は今後もたらされるデータ、変化する 見通し、リスクのバランスを慎重に評価する」

「委員会は、インフレ率が持続的に 2%に向かっていると の確信がさらに強まるまで、目標誘導レンジの引き下げ が適切になるとは予想していない」

「さらに、委員会は保有する米国債およびエージェンシ ーローン担保証券の削減を続ける」

「委員会は、インフレ率を 2%の目標に戻すことに強く取 り組む」

「金融政策の適切な姿勢を評価するに当たり、委員会は 今後もたらされる経済見通しに関する情報の意味を引 き続き監視する」

「もしも委員会の目標の達成を妨げる可能性があるリス クが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調 整する準備がある」

「委員会の評価は、労働市場の状況、インフレ圧力、イ ンフレ期待、金融と世界の動向を含む幅広い情報を考 慮する」

「今回の金融政策決定は全会一致」

13 日 03:33 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長 「経済は労働、インフレでかなりの進展を遂げた」

「インフレは大幅に緩和したが、依然として高すぎる」

「FRB は需要と供給の引き締め姿勢を維持」

「経済活動は堅調なペースで拡大」

「雇用の伸びは依然として堅調だが、第 1 四半期から鈍 化」

「最近のインフレデータはやや緩和している」

「労働市場は比較的タイトだが過熱していない」

「二つの責務を達成するリスクはより均衡している」

「インフレに対する信頼を高めるには、より良いデータが 必要」

「FRB はインフレのリスクを引き続き大いに注視してい る」

「予測にはあまり自信がない」

「PCE 物価指数が 2.6~2.7%であれば良い状況」

「インフレ率の良好な数値がいくつあるかは明らかにし ない」

「ほとんどの当局者は会合の途中で予測を更新しない」

「政策はインフレだけでなく、データ全体に依存する」

「金利変更のタイミングはデータに大きく依存している」

「第 1 四半期のインフレは停滞しており、利下げには時 間がかかるだろうという結論に達した」

「当局者は金利がパンデミック前の水準まで下がる可能 性は低いと考え始めた」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=6/12 の安値を支持に押し目買いスタンス>

下影陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実 線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買 いシグナルが点灯中。抱き線で反落して一時転換線 156.01 円や雲の上限 155.75 円を下抜けたものの、転換線を上回っ て引けていることで反発の可能性が示唆されている。 本日は 12 日の安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、 同水準を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 2 160.17(4/29 高値=年初来高値)
レジスタンス 1 157.99(5/1 高値)
前日終値 156.72
サポート 1 155.72(6/12 安値)
サポート 2 155.12(6/7 安値)

<ユーロドル=6/4 高値を抵抗に戻り売りスタンス>

上影陽線引け。転換線は基準線と同値のままだが、遅行ス パンは実線を上回って好転し、雲の上で引けていることで、 買いシグナルが優勢な展開。しかし、抱き線で反発して一時 転換線 1.0818 ドルを上回ったものの、依然として転換線を 下回って引けており反落の可能性が示唆されている。 本日は、転換線を上回った場合は反落の可能性が低下する ことを念頭に、4 日高値を抵抗に戻り売りスタンスか。

レジスタンス 1 1.0916(6/4 高値)
前日終値 1.0809
サポート 1 1.0737(日足一目均衡表・雲の下限)

<ユーロ円=6/3 高値を抵抗に戻り売りスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯中。しかし、抱き線で反発したものの依然とし て転換線 169.49 円を下回って引けており反落の可能性が示 唆されている。 本日は転換線を上回った場合は反落の可能性が低下する ことを念頭に、3 日の高値を抵抗に戻り売りスタンスか。

レジスタンス 1 170.89(6/3 高値)
前日終値 169.41
サポート 1 168.30(6/10・11 安値)

<豪ドル円=横ばいの転換線を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯中。基準線や転換線を上回って引けていること で続伸の可能性が示唆されている。 本日は横ばいの転換線を支持に押し目買いスタンスで臨 み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 105.09(ピポット・レジスタンス 2)
前日終値 104.44
サポート 1 103.67(日足一目均衡表・転換線)