デイリーレポート 2023年6月16日

June 16, 2023

【前日の為替概況】ラガルド総裁追加利上げ示唆 ユーロドル 1.0953 ドル、ユーロ円 153.69 円

15 日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは 4 日続伸。終値は 1.0945 ドルと前営業日 NY 終値 (1.0830 ドル)と比べて 0.0115 ドル程度のユーロ高水準だった。欧州中央銀行(ECB)はこの日、定例 理事会を開き市場予想通り 0.25%の利上げを決めたと発表。声明では「理事会は今後の決定でインフレ 率を目標の 2%へ戻すため政策金利が十分に制約的な水準になるよう確実にする」と指摘し、インフレ抑 制へ一段の引き締めを示唆した。また、ラガルド ECB 総裁は理事会後の会見で「7 月も利上げを継続する 可能性が極めて高い」「(利上げの)一時停止は検討していない」などと語った。

米連邦準備理事会(FRB)が前日に利上げを見送った一方、ECB は利上げを継続。欧米金利差縮小への 思惑からユーロ買い・ドル売りが優勢になると、一時 1.0953 ドルと 5 月 11 日以来約 1 カ月ぶりの高値を 更新した。

ドル円は小反発。終値は 140.29 円と前営業日 NY 終値(140.09 円)と比べて 20 銭程度のドル高水準だ った。ただ、NY 市場に限れば上値の重さが目立った。ECB 定例理事会の結果とラガルド総裁の発言が伝わ ると、対ユーロ中心にドル安が進行。円に対してもドル売りが先行し、一時 140.16 円付近まで下押しし た。米長期金利の低下も相場の重しとなった。

なお、米 10 年債利回りは一時 3.70%台まで低下した。前日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が公表し た政策金利見通し(ドット・チャート)では年内に 0.25%の利上げが 2 回実施される可能性が示唆され たものの、市場では「米 CPI や米 PPI の下振れを踏まえると FRB が再度利上げに踏み切ることには懐疑的」 との声が聞かれた。

ユーロ円は 4 日続伸。終値は 153.55 円と前営業日 NY 終値(151.73 円)と比べて 1 円 82 銭程度のユー ロ高水準。利上げを継続する ECB と、金融緩和策の継続が見込まれる日銀との金融政策の方向性の違いが 意識されて、円売り・ユーロ買いが優勢となった。4 時 30 分前に一時 153.69 円と 2008 年 9 月以来 15 年 ぶりの高値を付けた。

代表的な暗号資産(仮想通貨)であるビットコインは堅調だった。前日 NY 市場終盤に急落した反動で 買い戻しが優勢となり、対ドルで 2 万 5484 ドル前後、対円で 357 万円台まで反発した。「資産運用会社の ブラックロックはビットコインの価格に連動した上場投資信託(ETF)の上場申請を準備している」との 観測報道も買い戻しを誘った。

【本日の東京為替見通し】ドル円、昨年 9 月 22 日の再現に要警戒か 本日は日銀会合

本日の東京外国為替市場のドル円は、米連邦準備理事会(FRB)による年内 2 回の利上げ示唆と日銀の 大規模金融緩和の維持見通しという日米金融政策の乖離から底堅い展開が予想される。しかしながら、昨 年 9 月 22 日の再現の可能性には警戒しておきたい。

2022 年 9 月 22 日、米連邦公開市場委員会(FOMC)の後に開催された日銀金融政策決定会合で大規模金 融緩和の維持が決定された。ドル円は 145.90 円まで上昇し、ボリンジャー・バンド+2σの 146.12 円に迫 っていた時、本邦通貨当局がボラティリティー「過度な変動」抑制のためにドル売り・円買い介入を断行 した。本日のドル円のボリンジャー・バンド+2σは 140.87 円付近に位置しており、昨日、松野官房長官 が「為替市場の動向をしっかりと注視。必要があれば適切に対応していく考えに変わりはない」と述べて いることで警戒しておきたい。

昨日発表された日本の 5 月貿易赤字は 1 兆 3725 億円となり、1-5 月の合計赤字幅は 6 兆 9899 億円で、 過去最高を記録した 2022 年同時期の 6 兆 5968 億円の赤字を上回り、実需の円売り圧力の強さが確認され たことも、ドル円の下値を支える要因となっている。

ドル円のテクニカル分析では、140.93 円と 138.45 円を底辺とする「三角保ち合い」を上抜けており、 7 月 FOMC での利上げ観測や日銀会合での大規模金融緩和策の継続観測を背景にした上昇トレンドの再開 を示唆している。

ドル円の上値の目処は以下の通り。 ・142.51 円:151.95 円から 127.23 円までの下落幅の 61.8%戻し ・142.48 円;昨年 11 月 11 日の高値 ・142.21 円:三角保ち合い(底辺 2.48 円幅:140.93 円~138.45 円)

FOMC の政策金利見通し(ドット・チャート)では、2023 年末の予想中央値が 5.6%(※FF 金利 5.50-75%) へ引き上げられたことで、年内残り 4 回の FOMC 会合の内、2 回で 0.25%の利上げが示された。昨日のド ル円は、米 10 年債利回りが 3.84%台へ上昇したことで、一時 141.50 円まで上昇したものの、米 10 年債 利回りの 3.7%台への低下で 140 円台前半まで反落した。

「CMEグループ」が FF 金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、7 月 FOMC で 5.25-50%へ 利上げ、そして、9 月、11 月、12 月 FOMC では据え置き確率が高まっており、年内 1 回の利上げだけを示 唆している。

すなわち、パウエル FRB 議長が「過去 2 年、FOMC のインフレ予測は外れていた」と述べていたように、 市場は年内 2 回の利上げを信じておらず、米 CPI や PPI の下振れにより 1 回の利上げに留まると見越して いる。FRB は、2021 年までは「インフレ高進は一時的」との見立てから金融緩和策を続けるというミスを 犯し、2022 年から 2023 年にかけて 10 回の利上げによりインフレを抑制しつつあるものの、信用収縮を 見過ごすというミスを犯しつつあることを市場は見透かしているのかもしれない。

5 月の消費者物価指数(CPI)が前年比+4.0%まで低下していた米国の金利体系は、FF 金利が 5.00-25%、 2 年債利回りが 4.6%台、10 年債利回りが 3.7%台となっており、リセッション(景気後退)による利下 げを示唆しており、ドット・チャートが示している 2024 年利下げ見通しと整合的となっている。」

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○未定 ☆ 日銀金融政策決定会合(終了後、決定内容発表、予想:当座預金金利▲0.10%で据え置き)

○15:30 ☆ 植田和男日銀総裁、定例記者会見

<海外>

○16:00 ◎ ブラード米セントルイス連銀総裁、講演

○17:00 ◎ ホルツマン・オーストリア中銀総裁、講演

○17:00 ◎ レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演

○18:00 ◎ ミュラー・エストニア中銀総裁、講演

○18:00 ☆ 5 月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)改定値(予想:前年比 6.1%)

○18:00 ☆ 5 月ユーロ圏 HICP コア改定値(予想:前年比 5.3%)

○19:00 ◎ センテノ・ポルトガル中銀総裁、講演

○19:00 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演

○20:45 ◎ ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事、講演

○21:30 ◇ 4 月対カナダ証券投資

○21:30 ◇ 4 月カナダ卸売売上高(予想:前月比 1.6%)

○22:00 ◎ バーキン米リッチモンド連銀総裁、講演

○23:00 ◎ 6 月米消費者態度指数(ミシガン大調べ、速報値、予想:60.0)

○南アフリカ(青年の日)、休場

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

15 日 11:06 松野官房長官

「為替はファンダメンタルズを反映して動くことが重要」

「為替市場の動向をしっかりと注視」

「必要があれば適切に対応していく考えに変わりはない」

15 日 21:23 欧州中央銀行(ECB)声明 「ECB のインフレ予測は 2023 年 5.4%、2024 年 3.0%、2025 年 2.2%」

「GDP 予測は 2023 年に 0.9%、2024 年に 1.5%、2025年に 1.6%の経済成長を見込んでいる」

「金利を十分に景気抑制的な水準にすることを確実にする」

「PEPP の再投資は少なくとも 2024 年末まで継続する」

「高すぎるインフレが長く続いている」

「物価上昇の基調を示す指標は依然として強いものの、一部には軟化の兆しも見られる」

「インフレ率が 2%の中期目標に適時に戻ることを確実にすることを決意」

15 日 21:56 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁

「成長は年後半に強まる公算」

「基調的な価格圧力は依然強い」

「成長とインフレの見通しは極めて不確実」

「経済はここ数カ月停滞している」

「長期的なインフレ期待は警戒が必要」

「賃金の上昇がインフレ高の大きな要因に」

「今後もデータに基づいてアプローチ」

「労働市場は依然として強い」

「ECB、利上げでまだやるべきことがある」

「7 月に利上げの公算が極めて大きい」

「停止は考えていない」

「ターミナルレートについてはコメントしたくない」

「ECB はインフレ見通しに満足していない」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線は 140 円前半まで上昇、14 日安値が支持>

上影陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実 線を上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグ ナルが点灯中。抱き線で反発して転換線を上回って引けてお り続伸の可能性が示唆されている。しかし、天井圏を示唆す る「波高き足」の様相を呈していることには要警戒か。 本日は 140.13 円まで水準を上げた転換線を念頭に、14 日 安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた 場合は手仕舞い。

レジスタンス 2 142.48(2022/11/11 高値)
レジスタンス 1 141.50(6/15 高値)
前日終値 140.29
サポート 1 139.29(6/14 安値)
サポート 2 137.95(日足一目均衡表・基準線)

<ユーロドル=厚い雲の上限を意識した取引>

大陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線 を上回り、雲の中で引けてはいるものの買いシグナルが優勢 な展開となっている。4 手連続陽線で転換線を上回って引け ており、続伸の可能性が示唆されている。 昨日届かなかった厚い雲の上限は本日 1.0966 ドル。同水 準を意識しながら押し目買いスタンスで臨み、転換線を下抜 けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 1.1091(5/4 高値)
前日終値 1.0945
サポート 1 1.0810(日足一目均衡表・転換線)

<ポンド円=約 7 年半ぶりの高値更新、押し目買い継続>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナル が点灯中。約 7 年半ぶりの高値を更新し、3 手連続陽線で転 換線を大きく上回って引けており続伸の可能性が示唆され ている。 本日は、14 日の高値を支持に押し目買いスタンスで臨み、 同水準を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 180.80(ピポット・レジスタンス 2)
前日終値 179.33
サポート 1 177.42(6/14 高値)

<NZ ドル円=転換線を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けているため、三役好転の強い買いシグ ナルが点灯中。6 手連続陽線で転換線を上回って引けている ことで続伸の可能性が示唆されている。 本日は、転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線 を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 88.25(ピポット・レジスタンス 2)
前日終値 87.47
サポート 1 86.01(日足一目均衡表・転換線)