デイリーレポート 2024年8月21日

August 21, 2024

【前日の為替概況】米10年債利回り3.80%でドル全面安対円145.20円、対ユーロ1.1130ドル

20日のニューヨーク外国為替市場でドル円は3日続落。終値は145.26円と前営業日NY終値(146.59 円)と比べて1円33銭程度のドル安水準だった。欧米株相場の下落を背景にリスク回避の円買い・ドル 売りが先行。米長期金利の指標となる米10年債利回りが3.80%台まで低下すると全般ドル売りが加速し、 一時145.20円まで値を下げた。市場では「米労働省が21日に公表する年次改定で過去の雇用統計を下方 修正するとの観測もくすぶる」との声が聞かれた。

なお、市場参加者らは米労働省が明日発表する年次改定で、3月までの年間雇用者数の伸びが現在の推 定から少なくとも60万人下方修正されると見込んでいる。一部では「100万人規模の改定もあり得る」 との指摘があった。

ユーロドルは3日続伸。終値は1.1130ドルと前営業日NY終値(1.1085ドル)と比べて0.0045ドル程 度のユーロ高水準だった。米長期金利の低下に伴うユーロ買い・ドル売りが優勢になると一時1.1130ド ルと年初来高値を更新した。

主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時101.36と1月2日以来の低水準を付け た。

ユーロ円は3日続落。終値は161.67円と前営業日NY終値(162.50円)と比べて83銭程度のユーロ安 水準。ドル円の下落につれた売りが出たほか、欧米株価の下落に伴うリスク・オフの円買いが入った。2 時過ぎには一時161.54円と日通し安値を更新した。

ユーロ円以外のクロス円も軟調だった。ポンド円は一時189.24円、豪ドル円は97.87円、NZドル円は 89.29円、カナダドル円は106.61円、南アフリカランド円は8.13円、メキシコペソ円は7.64円まで値 を下げた。

【本日の東京為替見通し】ドル円米雇用年次改定100万人下方修正への警戒感から軟調推移か

本日の東京外国為替市場のドル円は、日本の7月貿易収支を見極めた後は、今夜発表される米雇用年次 ベンチマーク改定への警戒感から軟調推移が予想される。

8時50分に発表される日本の7月の貿易収支は3300億円程度の赤字と予想されている。

1-6月の貿易赤字は約3.2兆円だったことで、7月が予想通りならば、3.53兆円程度の赤字となる。 また、投資信託を通じた家計の円売り(新NISA少額投資非課税制度)は1-7月で7兆8695億円だったこ とで、1-7月の本邦からの実需の円売りは約11.4兆円となる。

本邦通貨当局は、今年、15兆3233億円のドル売り・円買い介入を実施したことで、貿易赤字と家計の 円売りを上回り、投機筋は円・キャリートレードの手仕舞いに動いている模様で、ドル円は需給面から 161円台から141円台まで20円幅下落したことになる。

今夜23時に米労働省が発表する年次ベンチマーク改定での2024年3月分までの1年間の雇用者数は、 大幅に下方修正される可能性(予想:▲30万人~▲100万人)が警戒されている。ちなみに、昨年8月は、 50万人程度の下方修正が警戒されていたが、実際は30.6万人の下方修正だった。

2023年4月から2024年3月までの非農業部門就労者数は290万人の増加、月平均は24.1万人の増加 だが、50万人程度下方修正された場合、月平均で20万人を割り込むことになる。

もし警戒されているように大幅な下方修正(▲100万人)だった場合、23日(日本時間午後11時)の ジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)でのパウエルFRB議長の講演が、 7月31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見以上にハト派になる可能性、例えば9月FOMCでの0.50% の利下げ開始に言及する可能性が高まることになる。

FOMCは、2022年3月の利上げ開始以来、2大責務(「雇用の最大化」と「物価の安定」)のうち、「物価 の安定」に特段の重点を置き、FF金利誘導目標を0.00-25%から5.25-50%まで引き上げてきた。しかし、 7月の声明文では、「2大責務の『両面』のリスクに留意する」との文言に変更され、雇用情勢に配慮する スタンスが示された。

7月の失業率が4.3%まで上昇し、FRBが完全雇用と見なす4.2%をわずかに上回っていることで、パウ エルFRB議長は2020年8月のジャクソンホール会合での見解、すなわち、FRBの金融政策の主軸を「物 価安定」から「雇用最大化」へ大転換することを再表明する可能性が警戒されている。

【本日の重要指標】※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ◎ 7 月貿易統計(通関ベース、予想:季節調整前3307 億円の赤字、季節調整済7449 億円の赤字)

<海外>

○17:00 ◎ 7 月南アフリカ消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.7%/前年比4.8%)

○20:00 ◎ パネッタ欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演

○20:00 ◇ MBA 住宅ローン申請指数

○21:30 ◇ 7 月カナダ鉱工業製品価格(予想:前月比▲0.3%)

○21:30 ◇ 7 月カナダ原料価格指数(予想:前月比▲0.8%)

○23:00 ◎ 米労働省、雇用統計の年次改定を発表

○23:30 ◇ EIA 週間在庫統計

○22 日02:00 ◎ 米財務省、20 年債入札

○22 日03:00 ☆ 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7 月30 日-31 日分)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

20日07:58レーン・フィンランド中銀総裁

「ユーロ圏の成長低迷は、9月欧州中央銀行(ECB)理 事会での利下げ根拠を強める」

20日10:33豪準備銀行(RBA)議事要旨

「修正された予測ではインフレ率が持続的に目標に戻る にはこれまで考えられていたよりも若干時間がかかると の見通しが示された」

「委員はインフレが合理的な期間内に目標に戻らないリ スクが高まったと評価」

「金利を据え置くことがインフレと労働市場の両方に対 するリスクのバランスを最もよくとることができるとの認 識で一致」

「入手可能な情報に基づくと、政策金利を短期的に引き 下げられる可能性は低い」

「メンバーがインフレの進行に確信を持てるまで金融政 策は十分に制限的である必要がある」

21日03:22ボウマン米連邦準備理事会(FRB)理事

「労働市場は引き続き緩和し、より均衡がとれつつある」

「失業率は上昇しているが、依然として歴史的低水準」

「賃金上昇率は目標を上回るペースを維持」

「政策スタンスの変更には引き続き慎重な姿勢」

「インフレが目標に向かって持続的に低下していること が示された場合、過度に抑制的にならないよう徐々に金 利を引き下げることが適切となる」

「インフレには引き続き上振れリスクがあるとみている」

「インフレ抑制に向けた継続的な進展を損なわないよう に、忍耐強く対応する必要がある」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線を抵抗に戻り売りスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシ グナルが点灯している。3 手連続陰線で転換線を下回って引 けており続落の可能性が示唆されている。 本日は転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上 抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス2 149.39(8/15 高値)
レジスタンス1 147.29(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 145.26
サポート1 144.29(8/7 安値)
サポート2 143.63(8/6 安値)

<ユーロドル=上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯中。3 手連続陽線で依然として転換線を上回っ て引けており続伸の可能性が示唆されている。 本日は上昇中の転換線を支持に押し目買いスタンスで臨 み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1 1.1276(2023/7/18 高値)
前日終値 1.1130
サポート1 1.1020(日足一目均衡表・転換線)

<ユーロ円=基準線を抵抗に戻り売りスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシ グナルが点灯中。3 手連続陰線で転換線(本日161.84 円)を 下回る水準で推移しており続落の可能性が示唆されている。 本日は基準線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上 抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1 163.63(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 161.67
サポート1 160.42(8/19 安値)

<豪ドル円=8/13 安値を支持に押し目買いスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシ グナルが点灯中。しかし、抱き線で反落したものの、依然と して転換線を上回って引けており反発の可能性が示唆され ている。 本日は転換線97.63 円を念頭に置き、13 日安値を支持に押 し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス1 99.04(8/20 高値)
前日終値 98.01
サポート1 96.73(8/13 安値)