ウィークリーレポート 2024年11月8日

週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

November 8, 2024

ドル円、ドル先高観から底堅い

◆ドル円、トランプトレード継続なら堅調に推移

◆ドル円、CPI など週半ば以降に米重要指標が目白押し

◆ユーロドル、独連立政権崩壊が重しに

予想レンジ

ドル円 151.50-157.00 円

ユーロドル 1.0450-1.0950 ドル

11 月 11 日週の展望

ドル円は、米大統領選や米連邦公開市場員会(FOMC)を通過して方向感を探る展開が想定され るが、ドルは底堅さを維持しそうだ。5 日に投開票された米大統領選は決着に時間がかかるとい う予想に反し、トランプ候補の圧勝で幕が引かれた。トランプ新政権の掲げる減税や財政出動な どの経済政策に対する期待を背景にトランプトレード(米国債売り・ドル買い)がしばらくは継 続する可能性は高く、ドル円の上昇期待は一段と高まっている。

今後の焦点となるのは米金利見通しになるだろう。11 月 FOMC では予想通り 2 会合連続での利 下げが決定され、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は会見で「経済データ次第で利下げペー スを決める」姿勢を強調したほか、インフレについては「2%前後で落ち着くというストーリーは 非常に一貫性があると感じている」と自信を示した。ただ、新政権による高関税や減税がインフ レに与える影響を懸念する声は大きく、利下げ観測が後退する可能性を考慮するとドルの下値は 堅くなりそうだ。来週は 13 日に 10 月消費者物価指数(CPI)、14 日に 10 月卸売物価指数(PPI) や前週分の新規失業保険申請件数、15 日に 10 月小売売上高と週半ば以降に重要指標が軒並み発 表されるため注目したい。

なお、国内イベントとしては 11 日に総理指名選挙が行われる予定となっている。1 回目の投票 で決着が付かない場合、石破首相と立憲民主党の野田代表との決選投票になるが、国民民主党な どが野田氏に投票しない方針を示しており、石破首相が再び選出される見通し。ただ、先日の衆 院選大敗の責任を問う意見が自民党内でも過熱化しており、進退の行方を注視したい。 ユーロドルは、ドル先高観から上値の重い動きが続きそうだ。また、独連立与党 3 党の一角を 占めた自由民主党(FDP)が政策の不一致を理由に離脱したことを受けて、独政情不安が急速に高 まっていることもユーロの重しとなるだろう。ショルツ首相は来年 1 月の信任投票実施を表明し、 不信任なら 3 月にも総選挙を行う可能性が出てきたが、野党側は来週にも信任投票の実施を要求 しており、先行きは不透明な状況だ。

11 月 4 日週の回顧

ドル円は、米大統領選でのハリス候補優勢との報道を受けて週明けは下落して始まったものの、 投開票の結果が明らかになり、トランプ候補勝利との報道が続々と伝わると一気に買いが加速。 一時 154.71 円まで買い上げられた。ただ、その後は急ピッチで上げた反動から失速。米長期金利 の低下とともに 152.70 円まで調整売りに押されている。 ユーロドルはトランプトレードによりドルが全面高の展開になると、一時 1.0683 ドルと 6 月 27 日以来の安値を更新したが、一巡後はショートカバー入り 1.0825 ドルまで持ち直した。(了)

週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

November 8, 2024

豪ドル、RBA はタカ派姿勢を維持

◆豪ドル、RBA はタカ派姿勢を維持

◆豪ドル、米大統領選後は 2016 年と同じ流れを辿るか注視

◆ZAR、米新政権の南アへの影響はネガティブ材料が多い

予想レンジ

豪ドル円 100.00-105.00 円

南ア・ランド円 8.60-9.00 円

11 月 11 日週の展望

豪ドルは不安定な動きとなりそうだ。豪州の重要な経済指標をにらみながら、「トランプ・トレ ード」が持続するか見定める必要があるだろう。 豪州では、今週開催された豪準備銀行(RBA)理事会で、政策金利が予想通り据え置かれた。RBA は声明文で「基調インフレは依然として高すぎる」「インフレ率は 2026 年まで目標(2-3%)の中 央値に到達することはないだろう」と言及するなど、これまで通りのタカ派的な見解を維持。市 場では RBA が金融緩和に転じるのは早くても来年前半との見方が中心となっている。一方で、米 連邦準備理事会(FRB)は 6-7 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利引き下げを決定。今後も 追加利下げを進めていく考えを示しており、目先は豪米金利差が縮小していくことになるだろう。 こうした金融政策の違いは豪ドルの下値を支えることになるが、今週の為替市場では米大統領 選挙で共和党のトランプ候補が勝利したことを受け、「トランプ・トレード」によるドル買いが進 む場面が見られた。翌日には失速するなどドル相場は不安定な動きとなったが、来週以降に米金 利の上昇とドル買いが再び強まるのであれば、豪ドルも対ドルを中心に上値が重くなることが予 想される。トランプ候補が前回勝利した 2016 年は選挙後から年末まで豪ドル安・ドル高が進行し たが、今回も同様の流れを辿るか慎重に見極めたいところだ。

なお、来週は豪州から 12 日に 11 月ウエストパック消費者信頼感指数や 10 月 NAB 企業景況感指 数、13 日に 7-9 月期賃金指数、14 日に 10 月雇用統計が公表予定。特に四半期賃金指数や雇用統 計は RBA の金融政策にも大きな影響を与える指標として注目されそうだ。

南アフリカ・ランド(ZAR)は神経質な展開が予想される。来週は 12 日に 7-9 月期失業率の発 表が予定されているものの、基本的にはドル相場など外部要因に振らされることになるだろう。 なお、トランプ新政権による南アへの影響については総じてネガティブなものが多い。トランプ 次期米大統領はアフリカ成長機会法(AGOA)が米国経済にもたらす利益に疑問を呈しており、南 アの政策が米国の利益と合致していないと感じた場合、AGOA に基づく南アへのアクセス見直しや 制限を検討する可能性がある。さらに、BRICS 諸国の一員として反西側諸国との関係を深めてい ることが国際舞台で南アフリカの立場を危うくするとの懸念もある。短期的な ZAR 売り材料とは ならないだろうが、今後の影響を見極めていく必要があるだろう。

11 月 4 日週の回顧

豪ドルはしっかり。対円では総じて堅調に推移したほか、米大統領選の結果判明後には対ドル で売りに押される場面もあったが、翌 7 日には買い戻しが入った。ZAR も同様に対円では底堅い 展開が続いた。対ドルでは大統領選後に一時売りに押されたものの、その後はドル売りの流れに 沿って買い戻しに転じた。(了)

週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

November 8, 2024

ポンド、英雇用データに注目

◆ポンド、英雇用データに注目、賃金の減速基調がポイントに

◆ポンド、BOE 総裁は金利が徐々に低下との見解

◆加ドル、トランプ次期米大統領が加経済の懸念材料に

予想レンジ

ポンド円 196.00-202.00 円

加ドル円 108.50-112.50 円

11 月 11 日週の展望

ポンドは英雇用データや国内総生産(GDP)速報値に注目。特にイングランド銀行(英中銀、BOE) が金融政策を決定するうえで判断材料の 1 つとする平均賃金の上昇率に注視したい。 前回 6-8 月期の賃金上昇率(ボーナスを除く)は、約 2 年ぶりの低水準となる前年比 4.9%ま で減速し、求人数も減少傾向とインフレ圧力の緩和を示す内容だった。ただ英中銀は、0.25%利 下げを決定した 7 日の声明で、「賃金伸び率は依然として高水準」だと指摘している。英政府が先 月発表した予算案を受けて、消費者物価指数が前年比 0.5%弱押上げられると見込まれるなか、 賃金の減速基調が止むようだと「英追加利下げ先延ばし」観測が高まるだろう。

また、今回の 7-9 月期 GDP 速報値については、4-6 月期が前期比・前年比ともに改定値で下方 修正されているほか、最新の英中銀予測でも 2024 年 GDP は 1%と 8 月予測から 0.25%下振れして おり、足もとでの成長減速はある程度織り込み済みと受けとめておいたほうが良いだろう。2025 年 GDP 予測は 1.5%まで持ち直すとされている。

なお、7 日の英中銀声明では、政策金利の先行きについて文言は変更されず。「引き続き十分な 期間、引き締めを続ける必要がある」、「インフレリスクに注視しながら、会合ごとに引き締め度 合いを決定する」と述べられた。ベイリーBOE 総裁は会見で「あまりにも急速な、または大幅な 利下げはできないが、金利は徐々に低下するだろう」との見解を示した。また、一方では「予算 がインフレにどのように影響するか、さらに見極める必要」と過度な思惑をけん制している。 加ドルは、米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が圧勝したことを受けて強まった「ト ランプ・トレード(米債売りやドル買い)」が継続するのか、または一過性なのかを見定めながら の取引となりそうだ。また、米市場依存度が高い企業が多いカナダにとって、トランプ氏が主張 する「保護主義的な貿易政策の強化」も大きな懸念材料。「全ての輸入品に対して一律 10%の関 税」が実際に導入されれば、年間 300 億ドルのコストをカナダ経済は被るとの試算もある。他に も、トランプ次期米大統領は、米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に含まれる 6 年ごとの見直し 条項を利用し、協定の再交渉を行う意向を示している。次期米大統領と関係性が良いとは言えな いトルドー加首相がどのように交渉するのかが今後の注目ポイント。

11 月 4 日週の回顧

ポンドと加ドルはともに対円で売り先行も、米大統領選のトランプ候補勝利を受けて急騰した ドル円に追随して上値を試した。ポンド円は 196 円半ばから 199 円半ば、加ドル円が 109 円付近 から 111 円前半まで上昇した。トランプ・トレードの影響で、対ドルではポンドが 1.30 ドル半ば から 1.28 ドル前半まで下落、加ドルが 1.38 加ドル前半から 1.39 加ドル半ばまで加ドル安が進行 した。その後、英中銀のインフレ見通し上振れでポンドは買い戻され、加ドルも米連邦公開市場 委員会(FOMC)にかけて水準を切り上げた。(了)