デイリーレポート 2024年11月12日
November 12, 2024
##【前日の為替概況】】ユーロドル、続落欧州経済の先行きに不透明感
11日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは続落。終値は1.0655ドルと前営業日NY終値(1.0718 ドル)と比べて0.0063ドル程度のユーロ安水準だった。ユーロ圏最大のドイツ経済で不振が続いている ことから、欧州経済の先行き不透明感を背景にユーロ売りが出やすい地合いとなった。市場では「トラン プ次期政権による関税政策が、欧州経済に悪影響を及ぼすとの懸念も根強い」との声も聞かれ、24時前 には一時1.0629ドルと4月22日以来の安値を更新した。
ただ、NY午後に入ると1.06ドル台半ばで次第に値動きが細った。本日はベテランズデーで米債券市場 が休場となったため、市場参加者が少なく大きな方向感が出なかった。 ドル円は3営業日ぶりに反発。終値は153.72円と前営業日NY終値(152.64円)と比べて1円08銭程 度のドル高水準だった。対ユーロ中心にドル高が進むと、円に対してもドル買いが先行。ダウ平均が連日 で史上最高値を更新したほか、日経平均先物が上昇したことなども相場の支援材料となり、一時153.95 円と日通し高値を付けた。市場では「ドル先高観や日銀の早期利上げ観測後退で円売り・ドル買いが出や すい」との指摘もあった。
なお、石破茂首相は記者会見で「半導体や人工知能(AI)の分野で2030年度までに10兆円以上の公的 支援を行う」と表明。また、「次期春闘での賃上げや最低賃金の中期的引き上げに向けて、月内にも政労 使による協議の場を持つ」と明らかにした。
ユーロ円は3日ぶりに小反発。終値は163.77円と前営業日NY終値(163.61円)と比べて16銭程度の ユーロ高水準。アジア時間に一時164.66円まで上昇した影響が残ったものの、欧米市場では上値の重さ が目立った。独連立政権崩壊でユーロ圏景気への懸念が意識される中、全般ユーロ売りが進んだ流れに沿 った。欧州経済の動向に配慮して欧州中央銀行(ECB)が追加利下げを進めるとの観測からユーロ売りも 出やすく、24時前には一時163.58円付近まで下押しした。
【本日の東京為替見通し】ドル円、引き続きトランプ・トレードで堅調推移か
本日の東京外国為替市場のドル円は、引き続きトランプ・トレード(米国債売り・ドル買い)で堅調推 移が予想される。
昨日のドル円は、ニューヨーク市場がベテランズデーのため債券市場が休場となり、ドル買い要因とな ってきた米中長期債利回りの上昇という材料がなかったものの、ドル全面高の展開の中で153.95円まで 上昇した。ドル円は、上昇基調にある200日移動平均線を支持帯にして、トランプ・トレードにより上値 を探る展開が続いている。
本日のドル円の上値の目処は、7日の高値154.71円であり、明日発表される米10月消費者物価指数 (CPI)の伸び率上昇という思惑から155円台に向けた買い仕掛けが入った場合は、本邦通貨当局による ドル売り・円買い介入の可能性に警戒することになる。
トランプ次期米大統領は、第1次トランプ政権でもドル高をけん制していたが、今年4月にも、ドルが 対円で34年ぶりの高値を付けたことに関して、米国の製造業にとって「大惨事だ」と述べていた。
トランプ・トレードは、第2次トランプ政権での公約の実現(関税と減税)を材料視しているが、トラ ンプ関税は米国の製造業保護のための防波堤であり、為替政策でも製造業保護のためのドル安を志向する ことが想定される。
本邦通貨当局のドル売り・円買い介入は、これまではイエレン米財務長官が難色を示していたことでや りづらかったと思われるが、今後は米国政権のドル安志向と整合的となるため、ハードルは低くなると思 われる。
神田前財務官による今年の4回の覆面介入の水準は、157円台から161円台が目安となっていた。
・4月29日(5兆9185億円)高値160.17円から安値154.54円まで5.63円下落 ・5月1日(3兆8700億円)高値157.99円から安値153.04円まで4.95円下落 ・7月11日(3兆1678億円)高値161.76円から安値157.44円まで4.32円下落 ・7月12日(2兆3670億円)高値159.45円から安値157.38円まで2.07円下落
また、ドル円のテクニカル分析の観点からは、161.95円を頭とする「ヘッド・アンド・ショルダー」 の右肩(※154~155円)を形成しているとの見方もあるため、念頭に置いておきたい。 昨日第2次石破内閣を発足した石破首相は、日米関係の強化に向け米国のトランプ次期大統領と「なる べく早いタイミングで直接会談する機会をもちたい」と述べていた。
18-19日はブラジルで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議に出席する予定となっているが、おそ らく帰途にニューヨークに立ち寄って、トランプ次期大統領との初の会談が予定されているのではないだ ろうか。石破首相は、高校ではゴルフ部に属し、両者は、キリスト教・プロテスタントのプレスビテリア ン(長老派)の信者という共通点があるため、親密な関係構築が期待されてい
【本日の重要指標】※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◇ 10 月マネーストックM2
<海外>
○08:30 ◇ 11 月豪ウエストパック消費者信頼感指数
○09:30 ◇ 10 月豪NAB 企業景況感指数
○16:00 ◎ 10 月独消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比0.4%/前年比2.0%)
○16:00 ◎ 10 月英雇用統計(失業率/失業保険申請件数推移)
○16:00 ◎ 7-9 月英失業率(ILO 方式、予想:4.1%)
○16:00 ◇ 9 月トルコ経常収支(予想:28.5 億ドルの黒字)
○17:00 ◎ ホルツマン・オーストリア中銀総裁、講演
○18:00 ◎ レーン・フィンランド中銀総裁、講演
○18:00 ◎ センテノ・ポルトガル中銀総裁、講演
○18:00 ◎ ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼チーフエコノミスト、講演
○18:30 ◎ 7-9 月期南アフリカ失業率(予想:32.8%)
○19:00 ◎ 11 月独ZEW 景況感指数(予想:13.0)
○19:00 ◎ 11 月ユーロ圏ZEW 景況感指数
○19:30 ◎ 10 月インドCPI(予想:前年比5.81%)
○19:30 ◎ 9 月インド鉱工業生産(予想:前年同月比2.5%)
○21:00 ◎ 9 月ブラジル小売売上高(予想:前年同月比3.6%)
○22:30 ◇ 9 月カナダ住宅建設許可件数(予想:前月比1.7%)
○23:00 ◎ チポローネ欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演
○24:00 ◎ ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事、講演
○13 日00:15 ◎ バーキン米リッチモンド連銀総裁、講演
○13 日04:00 ◎ カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。 ※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。 ※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
11日08:53日銀金融政策決定会合における主な意見
(10月30-31日分)
「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応 じて金融緩和の度合いを調整していくという基本的な考 え方に変わりはない」
「米国経済の不透明感が低下する中で、時間的余裕と いう言葉で情報発信をしていく局面ではなくなりつつあ る」
「今後は、毎回の会合で、その時点のデータに基づき、 リスクや見通しの確度を点検していくことを伝えていくこ とが重要」
「この先の政策金利の引き上げは時間をかけて慎重に 行う必要」
「過去5回の利上げ局面では、米国の利下げ後に日本 は利下げに転じたが、今回局面は過去とは異なる」
「賃金と物価の好循環の持続性に対する自信が強まる まで、当面、政策金利は現状維持でよい」
11日22:16石破首相
「防衛力の人的基盤強化、経済対策に可能な方策盛り 込む」
「APEC、G20のため南米を訪問する」
「トランプ次期大統領となるべく早いタイミングで直接会 談したい」
「2030年度までにAI・半導体分野に10兆円以上の公的 支援」
「春闘、最低賃金引き上げで今月にも政労使の意見交 換」 「10年間で50兆円を超える官民投資引き出す支援フレ ーム策定」
11日22:39ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁
「金利は来年9月ごろには2%近くに低下する可能性」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=転換線の回復を目指す展開を期待>
小陰線引け。一目均衡表・転換線153.01 円を下回る水準
で週引けとなった。
上昇余地を残す転換線の回復を目指す展開が期待できる。
下値の堅さを示唆するやや長めの下ひげをともなう足型を
形成していることも、その期待を後押し。151.85 円前後で上
昇中の21 日移動平均線も支えになるとみるが、伸び悩むよ
うであれば、151.70 円付近で推移する200 日移動平均線や上
昇中の一目・基準線151.03 円の下抜けを試すことになるか。
レジスタンス2 154.71(11/7 高値)
レジスタンス1 154.23(ピボット・レジスタンス1)
前日終値 153.72
サポート1 153.01(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロドル=5 日線の切り下がりともなう下値追い続きそう>
下影陰線引け。目先の下値の節目だった6 日安値1.0683
ドルを下抜け一時1.0629 ドルと、4 月22 日以来の水準まで
下落した。1.06 ドル割れを回避しておりやや底堅さも感じら
れるが戻りは限定的。1.0713 ドル前後で低下中の5 日移動平
均線の切り下がりをともなう下値追いの動きが続くとみる。
戻しても昨日のレンジをカバーする程度にとどまりそう
だ。
レジスタンス1 1.0728(11/11 高値)
前日終値 1.0655
前日終値 153.72
サポート1 1.0572(ピボット・サポート2)
<ポンド円=転換線前後で上下しつつ水準を切り上げへ>
上影陽線引け。197 円前半で上昇中の21 日移動平均線前後
のレンジで底堅さを示し、一目均衡表・転換線を上回ってNY
を引けた。転換線は197.59 円から本日197.47 円へ小幅に低
下と、足もとの動意が不安定になる可能性も示唆している。
しかし現状からすれば明日には197.67 円へ戻し、198 円台へ
上昇していく見込み。同線前後で上下しつつ、水準を切り上
げていくと予想する。
レジスタンス1 198.46(11/11 高値)
前日終値 197.82
サポート1 196.90(11/11 安値)
<NZ ドル円=200 日線回復までは安心感を持ちにくい>
陽線引け。相場の強弱の節目200 日移動平均線を下回る水
準で推移している。一目均衡表・基準線91.27 円や上昇が見
込まれる一目・転換線91.45 円を下回る水準で底堅さを示し、
戻す展開となった。しかし本日92.25 円前後で推移する200
日線を明確に回復するまで安心感を持ちにくい。8 日高値
92.29 円前後や7 日高値92.47 円も押し戻されそうなポイン
ト。すっきりしない動き継続が想定される。
レジスタンス1 92.29(11/8 高値)
前日終値 91.67
サポート1 90.89(11/11 安値)