デイリーレポート 2023年7月20日

July 20, 2023

【前日の為替概況】ドル円、日銀の大規模金融緩和の修正観測後退で 139.99 円まで上昇

19 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。終値は 139.65 円と前営業日 NY 終値(138.83 円) と比べて 82 銭程度のドル高水準だった。前日の植田和男日銀総裁の発言を受けて、日銀の大規模金融緩 和策の修正観測が後退する中、23 時 30 分前に一時 139.99 円と欧州時間に付けた日通し高値に面合わせ した。ただ、節目の 140.00 円手前では上値が重くなった。米 10 年債利回りが 3.73%台まで低下したこ とが相場の重しとなったほか、50 日移動平均線の 140.38 円や 12 日の高値 140.39 円がレジスタンスとし て意識された。

ユーロドルは続落。終値は 1.1201 ドルと前営業日 NY 終値(1.1229 ドル)と比べて 0.0028 ドル程度の ユーロ安水準だった。欧州序盤に一時 1.1240 ドルと日通し高値を付けたものの、前日に付けた約 1 年 5 カ月ぶりの高値 1.1276 ドルがレジスタンスとして働くと失速した。欧州中央銀行(ECB)の利上げ継続観 測が後退する中、24 時前に一時 1.1175 ドルと日通し安値を更新した。市場では「今夏以降、ECB が利上 げを一時停止する可能性が意識されている」との声が聞かれた。

なお、ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁は「あと 0.25%の利上げで十分」「インフレは低下しており、 さらなる引き締めは経済に悪影響を与える可能性」などと述べた。

ユーロ円は上昇。終値は 156.43 円と前営業日 NY 終値(155.89 円)と比べて 54 銭程度のユーロ高水準。 欧州時間に一時 157.21 円まで上昇した影響が残ったものの、NY 市場に限れば上値の重さが目立った。ECB の利上げ継続観測が後退する中、24 時頃には 156.16 円付近まで下押しした。

【本日の東京為替見通し】6 月の日本の貿易収支と豪の雇用統計に要注目か

本日の東京外国為替市場のドル円は、日本の 6 月の貿易収支で実需の円売り圧力を確認し、豪ドル/ド ルは 6 月の豪雇用統計で 8 月の利上げの可能性を見極めることになる。

ドル円は、7 日の内田日銀副総裁や 13 日の早川元日本銀行理事によるイールドカーブコントロール (YCC)の許容変動幅の拡大を示唆する発言を受けて、14 日に 137.25 円まで下落していたものの、16 日 と 18 日に植田日銀総裁が否定的な見解を述べたことで、昨日の 139.99 円まで反発している。

フォワードガイダンスを一部修正して「機動的に対応」の文言が追加されたことや、7 月の「経済・物 価情勢の展望(展望リポート)」では、物価見通しが引き上げられる可能性があるとの新聞報道などが、 YCC の許容変動幅の拡大観測を高めていた。

しかし、岸田政権は、今秋の衆院解散・総選挙を視野に入れており、10 月上旬召集とされる秋の臨時 国会前後には「防衛費増額」「子育て支援の財源問題」「24 年度税制改正大綱」などが待ち受けている。 YCC の許容変動幅を±0.5%から±0.75%、あるいは±1.0%に拡大した場合、岸田政権の財政政策に悪い 影響を与え、株価も下がることから、植田日銀総裁は政権へ忖度したのかもしれない。

本日も、日銀関係者による YCC に関する発言には要警戒となる。

8 時 50 分に発表される日本の 6 月の貿易赤字(通関ベース)は、季節調整前 467 億円の赤字、季節調 整済 6632 億円の赤字と予想されている。今年の 1 月から 5 月までの貿易赤字は、6 兆 9899 億円となって おり、昨年同時期の 6 兆 5968 億円を上回っている。昨年全体の貿易赤字は 19 兆 9453 億円だったが、本 邦通貨当局によるドル売り・円買い介入(9 兆 1880 億円)で約半分を相殺していたことになる。今年も、 ドル売り・円買い介入が実施されるとすれば、実需の円売り圧力である貿易赤字額を打ち消す金額が予想 される。

10 時 30 分に発表される豪 6 月雇用統計は、失業率が 3.6%、新規雇用者数 1.50 万人と予想されている。 8 月の豪準備銀行(RBA)理事会での政策金利の据え置き、あるいは利上げの可能性を見極めることにな る。

7 月の RBA 理事会議事要旨は、インフレ、世界経済、労働市場、家計消費に関する今後のデータ、最新 のスタッフ予測、リスク評価の見直しを待って、8月に状況を再評価することで合意していた。そして、 失業率がインフレ押し下げに必要な水準とされる約 4.5%を超えて上昇する可能性を踏まえて、経済成長 が予想以上に減速するリスクもあるとしていた。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ◎ 6 月貿易統計(通関ベース、予想:季節調整前 467 億円の赤字、季節調整済 6632 億円の赤字)

<海外>

○10:30 ◎ 6 月豪雇用統計(予想:失業率 3.6%/新規雇用者数 1.50 万人)

○15:00 ◇ 6 月独生産者物価指数(PPI、予想:前月比▲0.4%)

○15:45 ◇ 7 月仏企業景況感指数(予想:100)

○16:00 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演

○17:00 ◇ 5 月ユーロ圏経常収支(季節調整済)

○17:30 ◎ 6 月香港消費者物価指数(CPI、予想:前年同月比 1.9%)

○20:00 ◎ トルコ中銀、政策金利発表(予想:17.00~20.00%に引き上げで見方分かれる)

○21:30 ◎ 7 月米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(予想:▲10.0)

○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:24.2 万件/172.9 万人)

○未定 ☆ 南アフリカ準備銀行(SARB)、政策金利発表(予想:8.25%で据え置きと 8.50%に引き上げで 拮抗)

○23:00 ◎ 7 月ユーロ圏消費者信頼感指数(速報値、予想:▲16.0)

○23:00 ◎ 6 月米景気先行指標総合指数(予想:前月比▲0.6%)

○23:00 ◎ 6 月米中古住宅販売件数(予想:前月比▲2.3%/年率換算 420 万件)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

20 日 01:10 ラムスデン・イングランド銀行(英中銀、 BOE)副総裁

「インフレ率は大幅に低下し始めているが、依然として高すぎる」

「インフレ圧力が持続するという証拠があれば、さらなる 引き締めが必要になるだろう」

「6 月会合以降に発表されたデータの詳細についてコメ ントするつもりはない」

20 日 01:12 ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁 「あと 0.25%の利上げで十分」

「インフレは低下しており、さらなる引き締めは経済に悪 影響を与える可能性」

20 日 02:15 プーチン露大統領

「現形態での穀物輸出合意延長は的外れ」

「ロシアは条件が満たされれば穀物輸出合意を再開す る可能性」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線を抵抗に戻り売りスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、雲の上で引けているものの、売りシグナルが優勢な 展開となっている。2 手連続陽線でも転換線を下回っている ことで反落の可能性が示唆されている。 本日は、転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を 上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 2 141.16(日足一目均衡表・基準線)
レジスタンス 1 140.13(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 139.65
サポート 1 138.88(日足一目均衡表・雲の上限)
サポート 2 137.70(7/18 安値)

<ユーロドル=転換線を支持に押し目買いスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けているため、三役好転の強い買いシグ ナルが点灯中。8 手連続陽線の後、2 手連続陰線で反落した ものの、転換線を上回って引けており、反発の可能性が示唆 されている。本日は、転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線 を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 1.1276(7/18 高値)
前日終値 1.1201
サポート 1 1.1110(日足一目均衡表・転換線)

<ユーロ円=転換線を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けており、三役好転の強い買いシグナル が点灯している。2 手連続陽線で転換線を上回って引けてお り、続伸の可能性が示唆されている。本日は、転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線 を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 157.21(7/19 高値)
前日終値 156.43
サポート 1 155.35(日足一目均衡表・転換線)

<豪ドル円=雲の上限を支持に押し目買いスタンス>

小陽線(寄引同事線)引け。転換線は基準線を下回り、遅 行スパンは実線を下回り、雲の上で引けているものの、売り シグナルが優勢な展開となっている。しかし、2 手連続陽線 で転換線を上回って引けており、続伸の可能性が示唆されて いる。本日は、雲の上限を支持に押し目買いスタンスで臨み、同 線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 95.47(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 94.58
サポート 1 93.85(日足一目均衡表・雲の上限)