RBA、利下げから一転。 3連続利上げののち据え置き。
直近(6/16)、豪州準備銀行は政策金利を4.35%で全員一致の据え置きとしました。注目すべきは、ここに至る「往復」です。いったん3.60%まで下げた金利を、2026年に3回連続で引き上げ、わずか1年で前回のピークへ逆戻り。物価の再燃に揺れる豪州の金融政策を、図で読み解きます。
4.35%を維持・利上げ後の一服
3連続利上げののち、全員一致で「一服」
豪州準備銀行(RBA)は6月16日の会合で、政策金利(キャッシュレート)を4.35%で据え置きました。採決は全員一致。ただしこれは、2026年に入って2月・3月・5月と3回連続で利上げした後の一服です。声明は「総合・基調インフレともに依然として高すぎる」とし、必要なら追加利上げも辞さないと明言しました。
わずか1年ほど前まで、RBAは利下げ局面にありました。それが物価の再燃と中東情勢による燃料高で急きょ利上げに逆戻り。ブロック総裁は「やるべきことをやる」と、タカ派的な姿勢を崩していません。利下げから利上げへ——豪州の金融政策は、世界でも珍しい「Uターン」を経験しています。
下げて、また上げる — 金利の「往復」
RBAは2022年から利上げを進め、2023年11月に4.35%でピークに。その後2024年末から利下げに転じ、2025年5月に3.60%まで下げました。ところが物価が再燃し、2026年に入って3回連続で利上げ。同年5月、金利は再び4.35%へ——まるで山を下りて、また同じ頂上に登り直したような動きです。
この「往復」は、インフレとの戦いがいかに一筋縄でいかないかを物語ります。いったん下がったインフレが、エネルギー高で再び加速し、利下げを帳消しに。現在の4.35%は前回ピークと同じ水準ですが、「据え置きで到達」ではなく「利上げで再到達」した点が決定的に異なります。
物価は鈍化、でも目標レンジの「上」
直近4月のCPI(消費者物価)は前年比+4.2%と、3月の+4.6%から鈍化しました。しかしRBAが重視する基調インフレ(トリム平均)は+3.4%と、むしろ小幅に上昇。目標レンジ2〜3%の上限を上回ったままで、利上げを正当化する根拠となっています。
RBAの物価目標は、米欧日のような「2%」のピンポイントではなく「2〜3%のレンジ」。基調インフレがこの帯の上限を超えている限り、RBAは利下げに動きにくくなります。一方で景気は減速気味で、失業率は4.5%へ上昇、GDPも前期比+0.3%と力強さを欠きます。物価と景気の板挟みが続いています。
足元に忍び寄る、景気の影
利上げを続ける一方で、豪州経済には減速のサインが出ています。声明は「住宅市場の勢いが変化し、一部の都市で住宅価格が下落している」と指摘。これは、力強い住宅価格上昇を強調していた3月会合からの明確な変化です。輸出も石炭−6.8%などで減少し、最大の貿易相手・中国向け需要の弱さがにじみます。
RBAは「世界経済の不確実性が長引けば、豪州や主要貿易相手国の成長が下振れる可能性がある」とも警告。資源国である豪州は、中国の景気と商品市況に大きく左右されます。インフレを抑えるための利上げが、景気をさらに冷やすリスク——この綱渡りが、据え置き判断の背景にあります。
割れて、まとまる — 理事会の票の動き
金融政策は、2025年に新設された金融政策委員会(Monetary Policy Board)で決まります。9人のメンバーが議論し、近年は票の内訳も公表されるようになりました。2026年の4回の会合をたどると、委員会の「迷い」と「収束」が見えてきます。
3月会合は5対4と真っ二つ。利上げを急ぐべきか慎重になるべきか、委員会が最も揺れた瞬間でした。その後5月は8対1で利上げに収束し、6月は全員一致で据え置き。票の動きは、政策の「迷いから合意へ」のプロセスをそのまま映し出しています。決定はシドニー時間14時30分、その1時間後にブロック総裁が会見します。
2026年 金融政策委員会カレンダー
会合は年8回、おおむね6週間ごとに開かれます。うち2・5・8・11月の会合では、四半期ごとの詳細な金融政策報告(SMP)が公表されます。本日の会合を終え、次回は8月10〜11日です。
市場の関心は、4.35%が「再びの天井」になるのか、それとも通過点なのか。基調インフレが目標レンジ(2〜3%)へ低下すれば据え置き継続、逆に再加速すれば追加利上げ——8月のSMP(金融政策報告)で示される見通しが、次の方向感を決めます。
為替・市場への影響、用語ミニ解説
豪ドルは代表的な資源国通貨で、RBAの金利と中国・商品市況に左右されます。利上げは通常、豪ドル高の材料ですが、足元では原油の落ち着きや景気減速懸念が重しとなり、「タカ派でも豪ドルが上がりにくい」状況に。対円では、豪州の高金利が豪ドル買い・円売りの背景となってきました。