デイリーレポート 2023年9月22日

September 22, 2023

【前日の為替概況】ドル円、3 日ぶり反落 日銀会合を前にポジション調整目的の売り

21 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 3 営業日ぶりに反落。終値は 147.59 円と前営業日 NY 終 値(148.34 円)と比べて 75 銭程度のドル安水準だった。アジア時間に一時 148.46 円と年初来高値を付 けたことで、海外市場では利食い売りなどが目立った。米国株相場が軟調に推移したこともリスク・オフ の円買いを誘った。24 時過ぎには一時 147.32 円と日通し安値を更新した。市場では「明日の日銀金融政 策決定会合を前にポジション調整目的の売りが出た」との声も聞かれた。

ただ、一目均衡表転換線が位置する 147.19 円付近がサポートとして意識されると 147.60 円付近まで下 げ渋った。

ユーロ円は 4 日ぶりに反落。終値は 157.37 円と前営業日 NY 終値(158.15 円)と比べて 78 銭程度のユ ーロ安水準。世界的な株価の下落で、投資家がリスク回避姿勢を強めると円買い・ユーロ売りが進行。24 時過ぎに一時 157.03 円と本日安値を付けた。

ユーロ円以外のクロス円の下落も目立った。英中銀(BOE)はこの日、政策金利を現行の 5.25%に据え 置くことを決めたと発表。金利据え置きは約 2 年ぶりで、5 対 4 の僅差で決まった。市場では 0.25%の利 上げ予想が大勢を占めていただけに、発表後はポンド売りで反応。ポンド円は一時 180.84 円と 8 月 7 日 以来の安値を更新した。

また、スイス国立銀行(中央銀行、SNB)もこの日、政策金利を現行の 1.75%で据え置くことを決めた と発表。市場では 0.25%の利上げを見込んでいたため、発表後はスイスフラン売りで反応した。スイス フラン円は一時 162.99 円と 8 月 8 日以来の安値を付けた。

ユーロドルはほぼ横ばい。終値は 1.0661 ドルと前営業日 NY 終値(1.0661 ドル)と同じ水準だった。 米長期金利の指標である米 10 年債利回りが一時 4.4962%前後と 2007 年 11 月以来の高水準を記録すると ユーロ売り・ドル買いが進行。21 時 30 分過ぎに 1.0625 ドル付近まで弱含んだ。

ただ、アジア時間に付けた日通し安値 1.0617 ドルがサポートとして働くと買い戻しが優勢に。ドル円 の下落をきっかけに対ユーロでもドル売りが広がると、一時 1.0674 ドルと日通し高値を更新した。

本日の東京為替見通し】日銀結果次第で乱高下必至、昨年と同様に会合後の介入にも要警戒

本日のドル円は、日銀政策決定会合次第の動きとなる。政策金利自体の変更予想は無いが、見解などに ついて市場ではさまざまな予測・憶測が出ている。マイナス金利解除を打ち出す方針を期待する声や、そ れを否定する声。また、イールドカーブコントロール(YCC・長短金利操作)の柔軟化を更に目指す声は あるが、YCC の修正・削除により利上げが規定路線化するリスクを指摘する声がある。他にも YCC の年内 撤廃を匂わす、YCC を残しゼロ金利解除を進める方針を示す、10 月の経済見通し公表時に合わせて変更を するなど、様々な憶測が出回っている。全く方針が変わらないことを含め、どのような結果が出た場合で もドル円を中心とした円相場は激しく動くことが予想される。

仮に主だった意見や、総裁の会見で市場の一部が期待するような金融政策の正常化へのヒントがなく、 円安に傾いた場面でも警戒を怠らないようにしたい。

昨年の 9 月 22 日には日銀が金融政策の現状維持を発表すると円売りが加速した。その後の当時の総裁 だった黒田氏の会見では「当面は金利を引き上げない」と明言したことで、さらに円安が進行。しかし、 このタイミングを見計らったように、円買い介入を実施された。当時のドル円の上昇時の水準は 145.90 円近辺(ユーロ円も 143 円台)だったことを考えると、現行の水準の方が円安水準である。

また、20 日にはイエレン米財務長官が「日本の円介入に関する見解は状況次第」「円のボラティリティ を滑らかにする必要を理解」と発言している。FOMC を前に出たこの発言は、FOMC か日銀政策決定会合後 に円が急落(ドルが急騰)した場合には、ボラティリティ抑制のために為替介入を行うことを本邦当局者 が事前に財務長官にお伺いを立てたのでは、との声もある。この発言が伝わった後に為替介入の権限を司 っている神田財務官も為替相場について、米当局とは日ごろから極めて緊密に意思疎通を取っていると述 べ、「過度な変動が好ましくないという認識を共有」「行き過ぎた変動に対して適切な対応をあらゆる手段 を排除せずに取る」と発言しており、米国の了承を受けて臨戦態勢が整ったとの指摘もある。ドル円が上 値トライを仕掛けた時には、為替介入の実弾が出る可能性もあることには留意したい。

なお、本日の日銀政策決定会合を前にして、8 時半には本邦の 8 月全国消費者物価指数(CPI)が発表 される。昨日、イングランド銀行(BOE)が金融政策委員会(MPC)の結果を発表したが、BOE は前日発表 された 8 月 CPI が低下したことで、政策金利を据え置いた。日銀当局者が 8 月 CPI を見て見解を変える可 能性も否定できないことで、CPI の結果にも注目したい。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:30 ☆ 8 月全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く総合、予想:前年比 3.0%)

○08:30 ☆ 8 月全国 CPI(生鮮食料品・エネルギー除く、予想:前年比 4.3%)

○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)

○未定 ☆ 日銀金融政策決定会合(終了後、決定内容発表、予想:当座預金金利▲0.10%で据え置き)

○15:30 ☆ 植田和男日銀総裁、定例記者会見

<海外>

○15:00 ◎ 8 月英小売売上高(自動車燃料含む、予想:前月比 0.5%/前年比▲1.2%)

○15:00 ◎ 8 月英小売売上高(自動車燃料除く、予想:前月比 0.6%/前年比▲1.3%)

○16:15 ◎ 9 月仏製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値(予想:46.0)

○16:15 ◎ 9 月仏サービス部門 PMI 速報値(予想:46.0)

○16:30 ◎ 9 月独製造業 PMI 速報値(予想:39.5)

○16:30 ◎ 9 月独サービス部門 PMI 速報値(予想:47.2)

○17:00 ◎ 9 月ユーロ圏製造業 PMI 速報値(予想:44.0)

○17:00 ◎ 9 月ユーロ圏サービス部門 PMI 速報値(予想:47.7)

○17:30 ◎ 9 月英製造業 PMI 速報値(予想:43.0)

○17:30 ◎ 9 月英サービス部門 PMI 速報値(予想:49.2)

○20:00 ◎ デギンドス ECB 副総裁、講演

○21:30 ◎ 7 月カナダ小売売上高(予想:前月比 0.4%/自動車を除く前月比 0.5%)

○21:50 ◎ クック米連邦準備理事会(FRB)理事、講演

○22:45 ◎ 9 月米製造業 PMI 速報値(予想:48.0)

○22:45 ◎ 9 月米サービス部門 PMI 速報値(予想:50.6)

○22:45 ◎ 9 月米総合 PMI 速報値(予想:50.4)

○23 日 02:00 ◎ デイリー米サンフランシスコ連銀総裁、講演

○23 日 02:00 ◎ カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、講演

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

21 日 11:09 松野官房長官

「為替の過度な変動にはあらゆる選択肢を排除しない」

「為替相場、安定的に推移することが重要」

「日銀には適切な金融政策運営を期待したい」

21 日 16:40 スイス国立銀行(中央銀行、SNB)声明

「さらなる引き締めが行われる可能性は排除できない」

「今後数カ月間、インフレの動向を注意深く監視してい く」

「必要に応じて為替市場に介入する用意がある」

「2023 年のインフレ見通しは 2.2%、2024 年は 2.2%、 2025 年は 1.9%」

21 日 17:27 カザークス・ラトビア中銀総裁

「資産購入プログラム(APP)の再投資と APP 再投資の 終了は、利下げの前に議論されるべきである」

「インフレ見通しが常に目標を下回るようであれば、利下 げを開始する必要がある」

「現在の見通しを踏まえると、2024 年半ばの利下げ予想 は早すぎる」

「最近のエネルギー価格の上昇は構造的なものであり、 短期的な一過性の上昇ではない」

21 日 20:06 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨

「MPC は 5 対 4 で、5.25%での据え置きを決定」

「政策金利水準は、インフレを抑制するために十分に制 約的」

「今後、インフレ率は劇的に低下すると見込む」

「もし、インフレが高止まりした場合は、利上げが必要と なる可能性」

「MPC の多数派は、労働市場の停滞、8 月のインフレ率 などを重視」

「MPC の少数派は、根強いインフレ率や 8 月のサービス 部門のインフレ率を重視」

21 日 20:14 トルコ中銀声明

「金融引き締めはインフレ見通しの大幅な改善が達成さ れるまで、タイムリーかつ段階的に必要に応じてさらに 強化される」

「委員会は金融政策スタンスを支援するために量的引き 締めと選択的信用引き締めに関する決定を継続」

「インフレ指標とインフレの基礎的傾向は注意深く監視さ れ、委員会は物価の安定という主な目的に沿ってあらゆ る手段を断固として使用し続ける」

「原油価格の上昇とインフレ期待の継続的な悪化がイン フレのさらなる上振れリスクとなっている」

21 日 20:14 ベイリー英中銀(BOE)総裁

「インフレ率はかなり低下してきており、今後も低下する と予想」

21 日 23:40

「利下げについて話し始めるのは時期尚早」

「インフレに関する好材料が利上げ休止を促した」

21 日 20:28 ナーゲル独連銀総裁

「欧州中央銀行(ECB)の政策金利のピーク宣言は時期 尚早」

21 日 21:53 ブイチッチ・クロアチア中銀総裁

「見通しが正しければ、利上げの必要はない」

21 日 22:30 クガニャゴ南アフリカ準備銀行(SARB)総裁

「我々の政策スタンスは制限的」

「高インフレに良いことはない」

「我々の見通しではリセッションはない」

21 日 22:42 ウンシュ・ベルギー中銀総裁

「もっとやる必要があるのかないのか、それは非常に難 しい問題」

「もう限界に達したと結論づけることはできない」

21 日 22:55 クノット・オランダ中銀総裁

「次回理事会での利上げを予想せず」

「現在の金利に満足している」

「ECB はインフレ率が高すぎることを示すシグナルに引 き続き警戒」

22 日 03:34 岸田首相(NY 経済クラブでの講演)

「株価は 33 年ぶりの水準まで上昇している」

「投資に関し、環境分野で 10 年間に 150 兆円の官民投 資を行う」

「少額投資非課税制度(NISA)の抜本拡充・恒久化に続 き、今後、増加する投資ファンドを運用することになる資 産運用業とアセットオーナーの改革を行う」

「海外からの参入を促進するため、資産運用特区を創 設し、英語のみで行政対応が完結するよう規制改革し、 ビジネス環境や生活環境の整備を重点的に進める」

「円相場の過度な変動は望ましくない」

「引き続き高い緊張感を持ち、過度な変動に対してあら ゆる選択肢を排除せず、適切な対応を取る」

「政府・日銀が緊密に意思疎通し、機動的な政策運営を していく」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=下値に控える基準線のサポートも期待できる>

下影陰線引け。早朝に 148.46 円まで昨年 11 月 1 日以来の高値を更新した後は調整の売りが優位となった。 一時 147.32 円まで下落したが一目均衡表・転換線を下回る同水準で下げ渋り戻している。本日 147.45 円前後へ切り上がった転換線付近、あるいは 147.11 円前後で推移する 21日移動平均線近辺で底堅さを示すとみる。下値 146.46 円に控える一目均衡表・基準線のサポートも期待していいだろう。

レジスタンス 1 148.26(ピボット・レジスタンス 1)
前日終値 147.59
サポート 1 146.93(9/1-21 上昇幅の 38.2%押し)
サポート 2 146.46(日足一目均衡表・基準線)

<ユーロドル=下落の流れに停滞感も反発限定的か>

下影同事線引け。一時 1.0617 ドルと、3 月 17 日以来の安値まで下振れた。下げ渋り、下落の流れの停滞感を示す足型を形成している。ただ、レンジ下限が切り下がったことで、来週にも底打ちする可能性があった一目均衡表・転換線1.0693 ドルの下落傾向がもう少し先まで続く公算が高まった。反発が限定されやすい展開は続きそうだ。

レジスタンス 1 1.0737(9/20 高値)
前日終値 1.0661
サポート 1 1.0617(9/21 安値)

<ポンド円=90 日線近辺の攻防>

下影大陰線引け。一時 180.84 円と、8 月 7 日以来の 181 円割れとなった。181.14 円前後で上昇中の 90 日移動平均線近辺の攻防。戻りを試す展開を期待するが、雲の中で低下中の5 日移動平均線や一目均衡表・転換線 182.61 円が上伸を妨げそうだ。

レジスタンス 1 182.42(5 日移動平均線)
前日終値 181.48
サポート 1 180.84(9/21 安値)

<NZ ドル円=転換線を下回るも下げ渋り 5 日線近辺へ戻す>

陰線引け。20 日には 88.32 円と、8 月 2 日以来の高値をつけたものの、87 円台で上昇中の 5 日移動平均線からややかい離した感もあり調整が入る展開となった。一時 87.29 円とやや下の一目均衡表・転換線も下回ったものの下げ渋り、5 日移動平均線近辺へ戻した。本日 87.62 円前後で推移する 5 日線への追随や上昇中の転換線 87.45 円付近での底堅さが期待でき、じりじり戻す展開を予想する。

レジスタンス 1 88.09(ピボット・レジスタンス 1)
前日終値 87.53
サポート 1 87.06(日足一目均衡表・基準線および雲の上限)