デイリーレポート 2023年10月20日

October 20, 2023

【前日の為替概況】ドル円 149.96 円まで強含み、米 10 年債利回りが 4.992%台まで上昇

19 日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは反発。終値は 1.0582 ドルと前営業日 NY 終値(1.0536 ドル)と比べて 0.0046 ドル程度のユーロ高水準だった。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長はこの日 の講演で「リスクや累積利上げを踏まえ、FOMC は進んでいる」「地政学的緊張は非常に高まっており、主 要なリスクに」と述べた一方、「インフレは依然として高すぎる、さらなる進展が必要」などと発言した。 また、質疑応答では「金利の高さ、期間が十分でない可能性がある」「現在の政策が引き締め過ぎでない ことは明らか」と述べた半面、「利回りの上昇は利上げの必要性低下を意味し得る」などと語った。パウ エル氏の発言を受けて売買が交錯したため、NY 市場では大きな方向感が出なかった。

1 時過ぎには一時 1.0616 ドルと 12 日以来の高値を付ける場面もあったが、1.06 ドル台では戻り売りな どが出たため、すぐに失速。そのあとは 1.05 ドル台後半でのレンジ取引に終始した。

なお、パウエル氏の発言については「他の FRB 高官の発言よりもややハト派的だったうえ、最近の金融 情勢の引き締まりや地政学的な緊張のリスクについても言及した。ただ、インフレ率が FRB にとって望ま しい水準まで低下していないことから、高金利長期化バイアスも排除しなかった」との指摘があった。

ドル円は 3 営業日ぶりに小反落。終値は 149.80 円と前営業日 NY 終値(149.93 円)と比べて 13 銭程度 のドル安水準だった。パウエル FRB 議長の発言が伝わった直後に 149.96 円と 3 日以来の高値を付けたも のの、米 10 年債利回りが 4.88%台まで低下すると 149.68 円付近まで下押しした。

ただ、東京時間に付けた日通し安値 149.67 円が目先サポートとして働くと買い戻しが優勢に。1 時 30 分過ぎには 149.93 円付近まで持ち直した。米 10 年債利回りが一時 4.9920%前後と 2007 年 7 月以来の高 水準を記録したことも相場を下支えした。

なお、売買一巡後は 149 円台後半でのもみ合いに終始した。今日一日の値幅は 29 銭程度と非常に小さ い。市場では「政府・日銀による為替介入への警戒感は根強く、150 円の心理的節目に迫る水準で足踏み 状態となっている」との声が聞かれた。

ユーロ円は反発。終値は 158.52 円と前営業日 NY 終値(157.97 円)と比べて 55 銭程度のユーロ高水準。 ドル円とユーロドルの方向感が乏しかったため、ユーロ円ももみ合いの展開となった。1 時過ぎに一時 158.93 円と日通し高値を付けたあとは 158 円台半ばから後半での値動きが続いた。

【本日の東京為替見通し】ドル円、9 月 CPI を見極めつつ 150 円の攻防に要警戒か

本日の東京外国為替市場のドル円は、中東情勢の緊迫化を受けて有事のドル買いの様相を呈し始めてい ることで、150 円台に上昇する局面では、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒する 展開が予想される。

昨日のパウエル FRB 議長の講演では、タカ派見解「金融政策の一段の引き締めが正当化される可能性が ある」により米 10 年債利回りは上昇したものの、複数の米連邦準備理事会(FRB)が言及しているハト派 的見解「長期金利の上昇で利上げの必要性を低下」を受けて、年内の利上げ観測が後退している。

8 時 30 分に発表される 9 月全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く総合)の予想は前年比+2.7%で、 8 月の同比+3.1%からの伸び率鈍化が見込まれている。8 月の政府による電気・ガス価格激変緩和対策事 業の影響を除いたコア CPIは 4.1%上昇、日銀が注視している生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア CPI は 4.3%となり、1981 年以来の高水準だった 5 月と 7 月に並んでいる。一部報道で「日銀が物価見通しを 上方修正する方向」と伝わっており、伸び率が予想に反して上昇していた場合には要警戒となる。

神田財務官は、昨日、「為替はファンダメンタルに沿って安定推移が好ましいが、過度の変動があれば 経済に悪影響があるため、適切な行動を取るというのは国際的に認められている」と述べた。

昨年 10 月は、12-13 日の G20 財務相・中央銀行総裁会議の後、21 日のニューヨーク市場(東京時間 23 時 30 分過ぎ)と 24 日のシドニー市場(東京時間 8 時 30 分過ぎ)でドル売り・円買い介入が実施された。 今年も 12-13 日の G20 会議の後に口先介入(鈴木財務相「為替は場合によって適切な対応が求められる」 や神田財務官「為替介入で過度の変動に対抗する」)が行われていることで、要警戒となる。

2022 年 10 月 20 日のドル円は 150.29 円まで上昇していた。そして、21 日には、151.95 円まで上昇し た局面で、ドル売り・円買い介入が実施された。

当時、神田財務官は「投機筋によって為替が大きく変動し、国民生活、世界経済に悪影響を及ぼすのは 容認できない」と述べていた。

本日も引き続き、中東情勢に関するヘッドラインの要警戒となる。最悪のシナリオは、イスラエル軍が パレスチナ自治区ガザで地上作戦を開始し、ハマスを支援するイランが参戦することで、第 5 次中東戦争、 そして石油ショックが引き起こされることとなる。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:30 ☆ 9 月全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く総合、予想:前年比 2.7%)

○08:30 ☆ 9 月全国 CPI(生鮮食料品・エネルギー除く、予想:前年比 4.1%)

○15:35 ◎ 植田和男日銀総裁、全国信用組合大会であいさつ

〇臨時国会が召集

<海外>

○07:40 ◎ ローガン米ダラス連銀総裁、講演

○08:01 ◇ 10 月英消費者信頼感指数(Gfk 調査、予想:▲20)

○15:00 ◇ 9 月独生産者物価指数(PPI、予想:前月比 0.4%)

○15:00 ◎ 9 月英小売売上高(自動車燃料含む、予想:前月比▲0.2%/前年比▲0.1%)

○15:00 ◎ 9 月英小売売上高(自動車燃料除く、予想:前月比▲0.4%/前年比▲0.2%)

○17:30 ◎ 9 月香港 CPI(予想:前年同月比 1.8%)

○21:30 ◎ 8 月カナダ小売売上高(予想:前月比▲0.3%/自動車を除く前月比横ばい)

○21 日 01:15 ◎ メスター米クリーブランド連銀総裁、講演

〇米・欧州連合(EU)首脳会談(ワシントン)

○22 日 スイス連邦議会選挙

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

19 日 13:57 神田財務官

「為替市場はこう着している」

「市場は方向感を失っている」

「世界経済は、中国減速・ウクライナ・中東情勢など下方 リスクが大きい」

「過度な変動があったら適切に対応する」

「為替はファンダメンタルズに沿って安定推移がいい」

20 日 01:03 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長

「力強い経済の追加証拠があれば利上げに値する可能 性」

「FOMC はリスクや累積利上げを踏まえて慎重に進めて いる」

「地政学的緊張は非常に高まっており、主なリスクに」

「利回りは金融環境を著しくタイトにした」

「金融環境の動向が持続的であれば、政策に影響する 可能性も」

「金融状況はここ数カ月で著しく逼迫している」

「金融政策は制限的」

「低インフレへの持続的な回帰にはトレンドを下回る経 済成長が必要」

「インフレは依然として高すぎる、さらなる進展が必要」

「賃金上昇率は 2%のインフレと一致する水準まで徐々 に低下を示している」

「持続的にトレンドを上回る成長を示すさらなる証拠は一 段の引き締めを正当化する可能性」

「失業率上昇なしのインフレ率低下は大歓迎だが歴史 的に異例」

「我々は非常に回復力のある経済を手にしている」

「経済は利上げの影響をいくらか受けにくいかもしれな い」

「金利が長く十分に高くなかったのかもしれない」

「金利が経済に与える影響に根本的な変化は見られな い」

「自然利子率は短期間で上昇した可能性がある」

「長期の潜在成長率は 2%程度だと推測」

「現在の政策が引き締め過ぎでないことは明らか」

「現時点でのリスクは依然として高いインフレ」

「利回りの上昇は利上げの必要性低下を意味し得る」

「利回りの上昇について、FRB は見守るしかない」

20 日 02:55 グールズビー米シカゴ連銀総裁

「リセッション(景気後退)を回避できると期待」

「米国の労働市場は緩和したが依然として堅調」

20 日 05:37 米格付け会社ムーディーズ

「イスラエルの格付け『A1』を引き下げる可能性」

20 日 06:23 ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁

「最新のデータは予想よりわずかに強い」

「必要に応じてさらなる利上げを支持する可能性」

20 日 06:25 ボスティック米アトランタ連銀総裁

「賃金と物価のスパイラルは見られない」

「賃金は現在の経済における遅行指標」

「FRB は雇用市場に大きなダメージを与えることなくイン フレを制御できると信じている」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線を支持に押し目買いスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシグ ナルが点灯中。孕み線で反落したものの転換線を上回って引 けており反発の可能性が示唆されている。 本日は、転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線 を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 2 151.95(2022/10/21 高値)
レジスタンス 1 150.16(10/3 高値)
前日終値 149.80
サポート 1 149.07(日足一目均衡表・転換線)
サポート 2 148.74(日足一目均衡表・基準線)

<ユーロドル=10/13 安値を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、雲の下で引けており、三役逆転の強い売りシグナル が点灯中。しかし、抱き線で反発して転換線を上回って引け ており続伸の可能性が示唆されている。 本日は、転換線 1.0568 ドルを念頭に置き、13 日の安値を 支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は 手仕舞い。

レジスタンス 1 1.0640(10/12 高値)
前日終値 1.0582
サポート 1 1.0496(10/13 安値)

<ユーロ円=転換線を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯している。抱き線で切り返して転換線を上回っ て引けており続伸の可能性が示唆されている。 本日は、転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線 を下抜けたら手仕舞い。

レジスタンス 1 159.76(8/30 高値)
前日終値 158.52
サポート 1 157.85(日足一目均衡表・転換線)

<豪ドル円=10/18 高値を抵抗に戻り売りスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、雲の上で引けているものの、売りシグナルが優勢な 展開となっている。2 手連続陰線で転換線を下回って引けて おり続落の可能性が示唆されている。 本日は、18 日の高値を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同 水準を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 95.67(10/18 高値)
前日終値 94.80
サポート 1 94.06(日足一目均衡表・雲の下限)