デイリーレポート 2023年11月9日

November 9, 2023

【前日の為替概況】円安が進行 対ドル 151.06 円・対ユーロ 161.73 円 日本と米欧の金利差受け

8 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 3 日続伸。終値は 150.99 円と前営業日 NY 終値(150.37 円)と比べて 62 銭程度のドル高水準となった。全般に手掛かり材料を欠くなか、日銀が金融緩和策を維 持する姿勢を示していることもあり、欧米との金利差に着目した円売りが出やすい状況が続いた。米 10 年債利回りが低下した影響から節目の 151.00 円手前では伸び悩む場面もあったが、5 時過ぎには 151.06 円まで本日高値を更新。1 日以来となる 151 円台を回復した。

なお、市場ではパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言内容に注目が集まっていたが、この日の あいさつでは金融政策や経済見通しについて言及しなかった。

ユーロドルは 3 営業日ぶりに小幅反発。終値は 1.0709 ドルと前営業日 NY 終値(1.0700 ドル)と比べ て 0.0009 ドル程度のユーロ高水準だった。米長期金利が低下幅を拡大するなか、欧州時間まで売りが進 んだ反動から買い戻しが入った。2 時前には 1.0716 ドルまで上昇。

ユーロ円は 5 日続伸。終値は 161.70 円と前営業日 NY 終値(160.90 円)と比べて 80 銭程度のユーロ高 水準だった。対欧州通貨などを中心に円売りが進んだ流れに沿った。他のユーロクロスの上昇につれた買 いも入り、2008 年 8 月以来の高値となる 161.73 円まで上値を伸ばした。

【本日の東京為替見通し】ドル円、本邦通貨当局の介入スタンバイの本気度を見極める展開か

ドル円は、神田財務官が 1 日に「介入スタンバイ」と述べた 151 円台に乗せてきた。本日の東京外国為 替市場では、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の本気度を見極める展開が予想される。

米長中期債の利回りは低下し、原油価格も大幅に下落している中でもドル円はしっかりした値動きが続 いている。本邦実需筋のドル買いが 151 円台まで押し上げる要因と言われているが、市場は本邦通貨当局 の出方を試しているのかもしれない。

神田財務官は今月 1 日、ドル円が 151 円台で推移していた時に「過度な変動にはあらゆる手段を排除せ ず適切な行動をとる」と発言。介入に関しては「スタンバイ」と述べていた。その日のドル円は、151.68 円を高値に 150.66 円の安値まで下落した。

ドル円は、10 月 31 日の年初来高値 151.72 円、1 日の 151.68 円に続いて、昨日 8 日は 151.06 円まで上 昇。ここからは、円買い介入が実施される円安防衛水準が 151 円台なのか否かを見定めることになる。

なお、昨日発表された 10 月末の外貨準備高は 1 兆 2380 億ドル、外貨は 1 兆 1070 億ドルだった。円買 い介入の原資である外国為替資金特別会計の持ち値は 100 円程度と試算されており、150 円台での評価益、 いわゆる埋蔵金は 50 兆円規模だ。

一方、投機筋による「円キャリー取引」(低金利の円を調達し、高金利のドルで運用する取引)は、年 初来で 20%以上のリターンをもたらしていると一部で報じられた。

昨年秋の円買い介入はボラティリティー抑制を名目として実施され、ドル円の動向は以下の通り。ボリ ンジャー・バンド+2σ付近から一目均衡表・基準線付近まで下落した。現時点の+2σは 151.39 円付近、 基準線は 149.95 円となっている。 ■9 月 22 日の第 1 弾の円買い介入(2 兆 8382 億円)東京午後 17 時 30 分過ぎ ・下落幅(▲5.54 円):高値 145.90 円から安値 140.36 円 ・+2σ:146.12 円、基準線:140.28 円 ■10 月 21 日の第 2 弾の円買い介入(5 兆 6202 億円)東京午後 23 時 30 分過ぎ ・下落幅(▲5.72 円):高値 151.95 円から安値 146.23 円 ・+2σ:150.39 円、基準線:146.16 円 ■10 月 24 日の第 3 弾の円買い介入(7296 億円)東京午前 8 時 30 分過ぎ ・下落幅(▲4.15 円):高値 149.71 円から安値 145.56 円 ・+2σ:150.69 円、基準線:146.16 円

10 時 30 分に発表される 10 月中国消費者物価指数(CPI)の予想は前年比-0.1%で、9 月±0.0%から低 下。生産者物価指数(PPI)の予想は、前年比-2.7%で 9 月-2.5%から減速が見込まれている。中国経済 は、不動産セクターの減速によるデフレ圧力が続いており、リスク回避要因として警戒しておきたい。

【本日の重要指標】

<国内>

○08:50 ◇ 日銀金融政策決定会合における主な意見(10 月 30-31 日分)

○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)

○08:50 ◎ 9 月国際収支速報

◇ 経常収支(予想:季節調整前 3 兆円の黒字/季節調整済 2 兆 2970 億円の黒字)

◎ 貿易収支(予想:2445 億円の黒字)

○14:00 ◇ 10 月景気ウオッチャー調査(予想:現状判断指数 50.0/先行き判断指数 49.5)

<海外>

○09:01 ◇ 10 月英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格(予想:▲65)

○10:30 ◎ 10 月中国消費者物価指数(CPI、予想:前年比▲0.1%)

○10:30 ◎ 10 月中国生産者物価指数(PPI、予想:前年比▲2.7%)

○17:00 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演

○17:10 ◎ レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演

○17:30 ◎ ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼チーフエコノミスト、講演

○21:00 ◎ 10 月メキシコ消費者物価指数(CPI、予想:前年比 4.28%)

○22:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:21.8 万件/182.0 万人)

○23:30 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、バーキン米リッチモンド連銀総裁、講演

○10 日 02:00 ◎ パエゼ米セントルイス連銀総裁代理、講演

○10 日 02:30 ◎ ラガルド ECB 総裁、講演

○10 日 03:00 ◎ 米財務省、30 年債入札

○10 日 04:00 ◎ メキシコ中銀、政策金利発表(予想:11.25%で据え置き)

○10 日 04:00 ◎ パウエル FRB 議長、講演

○欧州連合(EU)財務相理事会

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

8 日 09:45 植田日銀総裁

「為替はファンダメンタルズに沿って安定的に推移するこ とが望ましい」

「イールドカーブコントロール(YCC)の副作用は、マーケ ットのボラティリティが高まり為替のボラティリティが高ま ること」

「日銀の物価見通しに誤りがあったことは認めざるを得 ない」

「基調的な物価上昇率は、2%までまだ距離がある」

「物価と賃金の循環はまだ少し弱く、現在の緩和政策を 維持している」

「全体として強い金融緩和続けるという意味で、10 年金 利の目標をゼロ%程度にしている」

8 日 11:23 中国人民銀行総裁

「人民元相場のオーバーシュートリスクに断固として対 処する」

「市場の秩序を乱す行為には断固として対処」

「市場の一方的な勝手な期待の形成を阻止する」

8 日 18:07 ウンシュ・ベルギー中銀総裁

「インフレ率は急速に低下している」

「賃金スパイラルは現時点で見られない」

「成長リスクは下方向」

8 日 19:35 クック米連邦準備理事会(FRB)理事

「世界金融システムの脆弱性を悪化させる可能性のあ る潜在的なショックに警戒し続けなければならない」

「地政学的緊張の激化は、インフレ圧力を助長する可能 性がある」

8 日 19:41 カザークス・ラトビア中銀総裁

「必要以上に金利を引き上げることはない」

8 日 20:38 ナーゲル独連銀総裁

「インフレがこれほど高い状況では、利下げ話は何の役 にも立たない」

「いつ利下げを行うかという話は好きではない」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=150 円前半で横ばい転換線が支持水準>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシグ ナルが点灯している。150 円前半の転換線で支えられ、一時 1 週間ぶりの 151 円台まで上昇した。3 手連続陽線で転換線 を上回って引けており、続伸の可能性が示唆されている。 本日は転換線を支えに押し目買いスタンスで臨みたい。 150 円割れの基準線も支持水準として意識されそうだ。


レジスタンス 2 151.95(2022/10/21 高値)
レジスタンス 1 151.72(10/31 高値)
前日終値 150.98
サポート 1 150.27(日足一目均衡表・転換線)
サポート 2 149.95(日足一目均衡表・基準線)

<ユーロドル=転換線から基準線を支持帯に買い目線>

小陽線引け。雲の中で引けてはいるが、転換線は基準線を 上回り、遅行スパンは実線を上回っているため買いシグナル が優勢。2 手連続陰線の後、孕み線で切り返した。転換線を 上回って引けており、続伸の可能性が残されている。 本日は 1.0630 ドル台で横ばいの転換線から 1.0620 ドルま で上げてきた基準線を支持帯に押し目買いスタンスで臨み たい。基準線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 1.0799(日足一目均衡表・雲の上限)
前日終値 1.0709
サポート 1 1.0620(日足一目均衡表・基準線)

<ポンド円=11/8 安値を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシグ ナルが点灯中。前日安値を下回るも、抱き線で切り返した。 183 円台の転換線を大幅に上回って引け、続伸の可能性が示唆されている。 本日は 8 日安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞い。


レジスタンス 1 186.77(8/22 高値)
前日終値 185.47
サポート 1 184.55(11/8 安値)

<NZ ドル円=3 手連続の陰線引け、雲の上限が支持となるか>

極小陰線引け。転換線は基準線を下回っているものの、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けているため買いシグ ナルが優勢な展開となっている。 3 手連続陰線で上値が徐々に重くなりつつある。しかしな がら、転換線はしっかりと上回って引けているため反発の可 能性は残されているか。下押しした場合は、88 円半ばの雲の 上限が支持となるかをまずは見定めたい。


レジスタンス 1 90.20(9/29 高値)
前日終値 89.21
サポート 1 88.45(日足一目均衡表・雲の上限)