デイリーレポート 2023年11月13日
November 13, 2023
【前日の為替概況】ドル円、5 日続伸 日米金融政策の違いを手掛かりにした買いの流れ続く
10 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 5 日続伸。終値は 151.52 円と前営業日 NY 終値(151.35 円)と比べて 17 銭程度のドル高水準となった。前日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言を受 けて、米金融引き締めの長期化観測が改めて意識されるなか、この日も日米金融政策の方向性の違いを手 掛かりにした買いの流れが続いた。年初来の高値圏で推移している影響から政府・日銀による介入警戒感 もあり、週末を控えた持ち高調整売りなども入ったが、下値の堅さを確認すると徐々に円売り・ドル買い が優勢に。米ミシガン大学が発表した 11 月の消費者期待インフレ率が 1 年先・5 年先とも市場予想を上 回り、米 10 年債利回りが低下幅を縮小したことなども支えに一時 151.60 円まで本日高値を更新した。
なお、取引時間の終盤には米格付け会社ムーディーズが米国の格付け見通しを「安定的」から「ネガテ ィブ」に引き下げたと伝わった。
ユーロドルは反発。終値は 1.0686 ドルと前営業日 NY 終値(1.0668 ドル)と比べて 0.0018 ドル程度の ユーロ高水準だった。欧州時間は独長期金利の上昇を受けた買いが進み、23 時前には一時 1.0693 ドルま で本日高値を更新。その後は米長期金利の低下幅縮小などで 1.0660 ドル台まで伸び悩む場面もあったが、 引けにかけては米国株高を背景にしたリスクオンの買いが入り、再び下値を切り上げた。もっとも、この 日は総じて値動きが鈍く、1.06 ドル台後半でのレンジ内推移に終始した。
ユーロ円は反発。終値は 161.93 円と前営業日 NY 終値(161.46 円)と比べて 47 銭程度のユーロ高水準 だった。ドル円の上昇や米株高などを手掛かりにした円売り・ユーロ買いが進み、2008 年 8 月以来の高 値となる 161.95 円まで値を上げた。
【本日の東京為替見通し】32 年ぶりの円安水準に接近、スタンバイ状態の介入に要警戒
本日のドル円は、引き続き本邦当局者への円買い介入への警戒感から、上値は限定的になるか。また、 先週末 NY 引け間際に格付け会社ムーディーズ社による米国の信用格付け見通しの引き下げ(安定的から ネガティブ)となったことを、市場がどのように判断するかにも注目が集まる。
先月末の 10 月 31 日にドル円は 151.72 円まで上昇。昨年 10 月 21 日につけた 32 年超振りとなる水準 151.95 円に接近した。その日に登庁した神田財務官は介入について「スタンバイ状態」と発言した。そ の後は円安が止まったというよりも、米金利低下によりドル高の流れが反転したことで、ドル円は昨年高 値を超えることを回避することができた。しかしながら、ユーロ円やアジア通貨に対しても円安が十年超、 数十年以来の水準まで進んできていること。また、円買い介入はボラティリティーを抑制するためとされ ているが、ボリンジャーバンド+2σ付近とされている水準が現時点では 151.80 円台に位置することなど で、さらに円安に市場が動いた場合には本邦当局者が円安阻止に動く可能性はあるだろう。
また、ムーディーズ社による米債の見通し引き下げだが、発表された時間帯が NY の引け近辺だったこ とを考えると、この発表に対して市場はまだ反応していないといえる。週末に米議会下院のジョンソン議 長(共和党)が新たなつなぎ予算案を提示したが、大統領報道官は「この提案は共和党にとってのさらな る混乱と政府閉鎖リスクの種になる」と発言している。17 日に期限を迎えるまでにつなぎ予算案が可決 されなければ、連邦政府機関の閉鎖が現実味となり、ドルの重しになりそうだ。
なお、本日は本邦から 10 月企業物価指数以外は、アジア時間には主だった経済指標などの発表予定は ない。
【本日の重要指標】
<国内>
○08:50 ◇ 10 月企業物価指数(予想:前月比横ばい/前年比 0.9%)
<海外>
○16:00 ◇ 9 月トルコ経常収支(予想:13.7 億ドルの黒字)
○17:15 ◎ デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁、講演
○20:55 ◎ ブリーデン英中銀(BOE)副総裁、講演
○21:00 ◎ 10 月インド消費者物価指数(CPI、予想:前年比 4.80%)
○14 日 01:05 ◎ マン英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演
○14 日 04:00 ◎ 10 月米月次財政収支(予想:300 億ドルの赤字)
○シンガポール(ディーパバリの振替休日)、カナダ(リメンバランス・デー)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
10 日 09:30 豪準備銀行(RBA)四半期金融政策報告
「政策金利のピークは 4.5%程度と予想」
「インフレは予想したよりも弾力的」
「理事会の優先事項はインフレを目標水準に戻すこと」
「11 月会合、金利据え置きも検討したが引き上げがイン フレ対応に必要と判断」
「2024 年 6 月までの 1 年間の消費者物価指数(CPI)トリ ム平均は 4%上昇を見込む」
「インフレが長期間高水準にとどまるリスクは増大した」
「さらなる引き締めが必要かはデータとリスクのバランス 次第」
10 日 21:38 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁
「現行の金利水準が長く続けば、インフレ率を目標に戻 すことに貢献するだろう」
10 日 23:05 ボスティック米アトランタ連銀総裁
「インフレ率は高過ぎる」
「インフレに関してはやるべきことがまだ残っている」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=高値圏で足踏み>
小陽線引け。10 月 31 日につけた年初来高値 151.72 円を前
にした足踏みが続いている。
底堅さは維持しているものの、151.14 円前後で推移する 5
日移動平均線を割り込むような調整場面も想定しておきた
い。しかし、下押しが深めになっても、150 円台から 151 円
台への切り上がりが予想される一目均衡表・転換線がやがて
支えになり、高値圏を維持できるとみる。
レジスタンス 2 152.75(10/26-30 下落幅の倍返し)
レジスタンス 1 151.95(2022/10/21 高値=2022 年高値)
前日終値 151.52
サポート 1 150.77(11/9 安値)
<ユーロドル=転換線が下振れを防ぎそう>
小陽線引け。一目均衡表・雲の中でのじり安の流れが落ち着き始めてきた。まだ重い動きが続くかもしれないが、現水
準 1.0637 ドルからの切り上がりが予想される一目均衡表・
転換線が下振れを防ぎそう。雲の下抜けは当面回避できるだ
ろう。
レジスタンス 1 1.0756(11/6 高値)
前日終値 1.0686
サポート 1 1.0637(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロ円=5 日線の上昇ともなう堅調な推移>
陽線引け。一時 161.95 円と、2008 年以来の 162 円台回復目前まで上昇した。高値圏で警戒感もあるが、目先のすう勢
を示す 5 日移動平均線の上昇をともなう堅調な流れは続きそ
う。ここ最近の値動きに対する倍返しや N 計算値など目先の
ポイントをこなしつつ上値を追う展開を予想する。
レジスタンス 1 162.63(10/31-11/1 下落幅の倍返し)
前日終値 161.93
サポート 1 161.36(11/10 安値)
<豪ドル円=目先の底堅さを示す足型形成>
下影極小陽線引け。96 円割れを目前に下げ渋り、長めの下ひげをともなうローソク足を形成している。目先の底堅さを
示す足型となった。現水準 96.60 円からの切り上がりが見込
まれる一目均衡表・転換線に沿った戻りを期待したいところ。
ただ、水準を切り上げきれないと、頭打ちが予想される転換
線とともに相場も失速しかねない点には注意したい。
レジスタンス 1 97.01(11/9 高値)
前日終値 96.38
サポート 1 95.82(日足一目均衡表・基準線)