デイリーレポート 2023年11月14日

November 14, 2023

【前日の為替概況】ドル円、6 日続伸 高値圏で一時下落も売り一巡後に買い戻される

13 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 6 日続伸。終値は 151.72 円と前営業日 NY 終値(151.52 円)と比べて 20 銭程度のドル高水準となった。米 10 年債利回りが 4.69%台まで上昇したことなどを手 掛かりに円売り・ドル買いが先行。24 時前に一時 151.91 円と年初来高値を更新した。ただ、昨年 10 月 21 日の高値 151.95 円に接近したことで、政府・日銀による為替介入への警戒感が高まると一転下落した。 24 時過ぎには一時 151.21 円と日通し安値を付けた。もっとも、売り一巡後は買い戻しが優勢となり、151 円台半ばまで持ち直している。市場では「目立った材料が出たわけではないが、1990 年以来の高値であ る 151.95 円に近い水準では神経質な動きとなった」との声が聞かれた。

ユーロドルは小幅続伸。終値は 1.0698 ドルと前営業日 NY 終値(1.0686 ドル)と比べて 0.0012 ドル程 度のユーロ高水準だった。米長期金利の上昇に伴うユーロ売り・ドル買いが先行すると、一時 1.0665 ド ルと日通し安値を付けたものの、前週末の安値 1.0656 ドルが目先サポートとして働くと買い戻しが優勢 に。NY 連銀が公表した 10 月の消費者調査で、1 年先の期待インフレ率が 3.6%と前月の 3.7%から低下し たことが伝わると、米 10 年債利回りが 4.62%台まで低下。全般ドル売りが優勢となり、2 時過ぎには一 時 1.0706 ドルと日通し高値を更新した。

ユーロ円は続伸。終値は 162.31 円と前営業日 NY 終値(161.93 円)と比べて 38 銭程度のユーロ高水準。 欧州序盤に一時 162.37 円と 2008 年 8 月以来の高値を付けたものの、NY 市場に入ると、ドル円の失速に 伴う売りが先行し 161.55 円と日通し安値を付けた。ただ、売り一巡後は買い戻しが優勢となり、162.34 円付近まで持ち直した。

【本日の東京為替見通し】ファンダメンタルズ通り円独歩安、実弾介入以外は歯止め効かないか

本日のドル円も為替介入に警戒しつつ、円安のトレンドから離れられない相場展開が続くか。昨日も再 び円の年初来安値を更新したが、円安を止めることができるのは実弾介入以外方法がなくなっている。前 回の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げ打ち止めを示唆した一方で、日本は YCC(イールド・カー ブ・コントロール、長短金利操作)の再修正が行われた。しかしながら、パウエル米連邦準備理事会(FRB) 議長は今月 9 日の国際通貨基金(IMF)での講演で「さらなる引き締めが適切になれば躊躇しない」と発 言。一方、日銀は 10 月 31 日の声明文で「必要なら躊躇なく追加緩和」と、真逆なことを発表している。 経済の発展性からみた金融政策の方向性の違いは明らかで、円安を止めることが難しい状況だ。米国だけ でなく、欧州・アジア諸国と比較しても日本だけ取り残された状況になり、多くの通貨で円安が進むのは ファンダメンタルズに基づいた動きだ。支持率が低下傾向にある岸田政権が、円安を阻止するには実弾介 入以外なくなってきている。また、先週末に格付け会社ムーディーズ社による米国の信用格付け見通しを 引き下げたが(安定的からネガティブ)、これに対する昨日の米市場の反応は非常に限定的であったこと で、ドルが大きく崩れることを期待するのも難しいだろう。

市場筋の間では、昨年の介入時点で輸入業者が仕込んだノックアウトオプションが、ドル円が上昇すれ ばするほど大きいものがあり、ノックアウトされた場合には輸入業者は水準が悪くても再びドル買いをし なくてはならず、下値が更に固くなると指摘されている。特に昨年 32 年ぶりに付けた高値 151.95 円の上 の節目 152.00 円から 155 円にかけては、そのようなノックアウトオプションが多数あるとのうわさもあ り、介入が遅くなれば遅くなるほど下値が支えられることになりそうだ。この状況を阻止するためにスタ ンバイ状態とされる当局の動きが注目される。

また、警戒が必要なのは、本日は米国から 10 月消費者物価指数(CPI)が発表されること。仮に結果が 強くなった場合には、ドルが一気に 152 円台を超えて 33 年ぶりの水準まで円安が進むリスクもありそう だ。

【本日の重要指標】

<国内>

特になし

<海外>

○08:30 ◇ 11 月豪ウエストパック消費者信頼感指数

○09:30 ◇ 10 月豪 NAB 企業景況感指数

○16:00 ◎ 10 月英雇用統計(失業率/失業保険申請件数推移)

○16:00 ◎ 7-9 月英失業率(ILO 方式、予想:4.3%)

○16:00 ◎ 10 月スウェーデン消費者物価指数(CPI、予想:前月比 0.4%/前年比 6.7%)

コア指数(予想:前月比 0.3%/前年比 4.3%)

○16:30 ◇ 10 月スイス生産者輸入価格

○17:00 ◎ レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演

○17:00 ◎ ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、パネルディスカッションに参加

○18:30 ◎ 7-9 月期南アフリカ失業率(予想:32.5%)

○18:30 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演

○19:00 ◎ 11 月独 ZEW 景況感指数(予想:5.0)

○19:00 ◎ 11 月ユーロ圏 ZEW 景況感指数

○19:00 ☆ 7-9 月期ユーロ圏域内総生産(GDP)改定値(予想:前期比▲0.1%/前年比 0.1%)

○19:30 ◎ ジェファーソン米連邦準備理事会(FRB)副議長、講演

○21:00 ◎ ディングラ英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演

○22:30 ◎ バーキン米リッチモンド連銀総裁、講演

○22:30 ☆ 10 月米 CPI(予想:前月比 0.1%/前年比 3.3%)

☆ エネルギーと食品を除くコア指数(予想:前月比 0.3%/前年比 4.1%)

○22:45 ◎ ピル英 MPC 委員兼チーフエコノミスト、講演

○24:00 ◎ バーFRB 副議長、議会証言

○15 日 02:45 ◎ グールズビー米シカゴ連銀総裁、講演

○インド(ディワリ)、休場

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

13 日 08:37 コーラー豪準備銀行(RBA)総裁補

「インフレ率を目標に戻すには、もっと時間がかかるだろ う」

「労働市場の環境は緩和されつつあるが、依然として厳 しい」

「金利が制限的であることに疑いの余地はない」

「国内起源のインフレは広範囲に及んでいるが、低下は 遅い」

「賃金の伸びは加速したが、現在は概ね安定しているよ うだ」

13 日 18:06 鈴木財務相

「為替の水準についてコメントしない」

「為替相場、急激な変動は好ましくない」

「為替は市場においてファンダメンタルズに基づいて決 まるもの」

「市場を注視し、緊張感を持って万全の対応する」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=高値更新後に下振れるも 5 日線近辺から切り返す>

小陽線引け。151.91 円まで年初来高値を更新する動きが先 行した。昨年 10 月 21 日につけた 1990 年以来の高値 151.95 円に迫った。高値警戒感もあり 151.21 円まで下振れる場面もあった。 しかし昨日 151.19 円で引けた 5 日移動平均線近辺から切り 返した。本日は 151.46 円前後へ上昇した 5 日線を下回る場 面もありそう。だが再び下振れても、現水準 150.56 円から の切り上がりが見込まれる一目均衡表・転換線を支えとした 底堅い推移が続くと予想する。


レジスタンス 1 152.31(ピボット・レジスタンス 2)
前日終値 151.72
サポート 1 151.21(11/13 安値)
サポート 2 150.56(日足一目均衡表・転換線)

<ユーロドル=下押した場合、転換線前後で下げ渋るか注視>

小陽線引け。一目均衡表・雲の中で小動きだった。目先の すう勢を示す 5 日移動平均線は 1.0690 ドル台で伸び悩み気 味。相場推移がやや重くなることの示唆と受け止めることも できる。下押した場合、上昇傾向の一目均衡表・転換線 1.0662 ドル前後が目先の下げ渋りのポイントになるか。ただ、同線 は 1.07 ドル台に達したところでいったん頭打ちとなる公算。 切り返しが甘いと、転換線の低下とともに調整安が進みやす くなるリスクがある。


レジスタンス 1 1.0756(11/6 高値)
前日終値 1.0698
サポート 1 1.0656(11/10 安値)

<ポンド円=高値更新うかがう展開、調整あっても軽微か>

大陽線引け。186.32 円と、年初来高値 186.77 円をつけた 8 月 22 日以来の水準まで上昇した。年初来高値更新をうかが う展開が続きそうだ。更新後は目先的な達成感から調整の売 りが入ることも想定できるが、185.64 円前後で上昇中の 5 日 移動平均線付近をめどに下げ渋り、上値を試す動きが続くと みる。

レジスタンス 1 186.77(8/22 高値=年初来高値)
前日終値 186.30
サポート 1 185.64(5 日移動平均線)

<NZ ドル円=転換線付近で底堅さ示しせるか注視>

小陰線引け。9 日に 89.86 円をつけて上値の重さを示唆す る長い上ひげを形成して以降は戻りが鈍い。さえない推移だ が、上昇傾向の一目均衡表・転換線 89.03 円付近で底堅さを 示し、上値を試す展開へ戻すことができるか注視。現状から すれば 89.40 円台まで切り上がる見込みの同線を支えとした 底堅い展開が期待できる。

レジスタンス 1 89.86(11/9 高値)
前日終値 89.16
サポート 1 88.69(ピボット・サポート 2)