デイリーレポート 2023年11月15日

November 15, 2023

【前日の為替概況】】ドル円、7 日ぶり反落 米 CPI 予想を下回る

14 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 7 営業日ぶりに反落。終値は 150.37 円と前営業日 NY 終 値(151.72 円)と比べて 1 円 35 銭程度のドル安水準となった。10 月米消費者物価指数(CPI)が前月比 横ばい/前年比 3.2%と予想の前月比 0.1%/前年比 3.3%を下回り、エネルギーと食品を除くコア指数 が前月比 0.2%/前年比 4.0%と予想の前月比 0.3%/前年比 4.1%より弱い内容だったことが分かると、 米長期金利の低下とともに全般ドル売りが優勢となった。5 時 30 分過ぎに一時 150.16 円と日通し安値を 更新した。なお、市場では「米連邦準備理事会(FRB)の積極的な利上げサイクルは終了した」との見方 が浮上。米長期金利の指標となる米 10 年債利回りは一時 4.4298%前後まで急低下した。

ユーロドルは 3 日続伸。終値は 1.0879 ドルと前営業日 NY 終値(1.0698 ドル)と比べて 0.0181 ドル程 度のユーロ高水準だった。欧州時間発表の 11 月独 ZEW 景況感指数が予想を上回ったことを受けてユーロ 買いが先行。米 CPI の下振れをきっかけに全般ドル売りが活発化すると、一時 1.0887 ドルと 8 月 31 日以 来の高値を更新した。市場では「200 日移動平均線が位置する 1.0803 ドルを上抜けたことでテクニカル 的にも買いが入りやすかった」との声が聞かれた。主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデック スは一時 103.99 と 9 月 1 日以来の低水準を付けた。

ユーロ円も 3 日続伸。終値は 163.60 円と前営業日 NY 終値(162.31 円)と比べて 1 円 29 銭程度のユー ロ高水準。米インフレ指標の下振れを受けてダウ平均が一時 590 ドル超上昇すると、リスク・オンの円売 りが優勢となり、2 時前に 163.82 円と 2008 年 8 月以来の高値を更新した。

ユーロ円以外のクロス円も堅調だった。ポンド円は一時 188.29 円と 15 年 11 月以来の高値、豪ドル円 は 97.94 円と 22 年 9 月以来の高値、NZ ドル円は 90.39 円と 15 年 5 月以来の高値を更新した。また、ス イスフラン円は一時 169.40 円と史上最高値を記録した。

【本日の東京為替見通し】ドル安も円安地合い変わらずか、豪中経済指標にも要注目

本日のドル円は下値が限定的な動きとなるか。10 月末にドル円が年初来高値を更新し 151.72 円まで上 値を広げた後は、米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の利上げ打 ち止めを示唆する発言により、ドル高の勢いが削がれた。今月 13 日に 151.91 円まで更に高値を更新した が、昨日は市場予想より弱い 10 月の米消費者物価指数(CPI)の結果を受けて上値が抑えられた。二度の ドル円の上昇過程では、米国からの神風が吹いたことにより、33 年ぶりの高値超えを辛うじて免れてい る。しかしながら、あくまでもドル売りによる動きで、円安地合いは全く変わっていない。昨日も円はス イスフランに対して大幅に過去最安値を更新、対ユーロでも 15 年超振りの円安水準になるなど、多くの 通貨で円安が大幅に進行した。この円安地合いが変わっていないことで、ドル円が 150 円前半や 150 円を 割り込んだ場合のドル買い・円売り意欲は引き続き根強いだろう。

また、本邦当局者が 151 円台でも実弾介入に動かなかったことで、市場が昨年のように介入に対して積 極的に動けないのではないかと、一部では考え始めていることが、下落局面でのドル買いにもつながって いる。昨日、鈴木財務相は為替について万全の対応を行うと発言しつつも、「円安のマイナス面を緩和、 プラス面を最大化が重要」「円安はプラスとマイナス双方に様々な影響がある」と述べている。多くの輸 出企業がすでに円安局面で為替予約を行っていることで、現行水準では円安のメリットよりもデメリット の方が大きいにもかかわらず、円安の負の側面から目を逸らそうとする発言は、海外からの圧力で実弾介 入を積極的に行えないから、との声も出始めている。

本日は本邦からの経済指標は 7-9 月期実質国内総生産(GDP)速報値が発表される。前期比、前期比年 率ともにマイナス予想となっているが、予想と結果に多少の振れが生じた場合でも、ここ最近は円金利の 動向に注目が集まっていないことで、反応は限定的か。

円以外では、豪ドルと人民元の動きに本日は注目したい。豪州からは重要なインフレ指標の一つ 7-9 月期豪賃金指数が発表される。豪準備銀行(RBA)の利上げ打ち止め感が出ているが、予想(前期比+1.3%) と乖離が生じた場合には豪金利に連れて豪ドルも大きく動きそうだ。中国からは 10 月の鉱工業生産、小 売売上高が発表され、中期貸出制度(MLF)も公表される。MLF 金利は人民銀が毎月 20 日に公表する最優 遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)の算出基準になる。人民銀は 8 月に MLF の 1 年物金利を 0.15% 引き下げたが、9 月と 10 月は 2.50%に据え置いている。

【本日の重要指標】

<国内>

○08:50 ☆ 7-9 月期実質国内総生産(GDP)速報値(予想:前期比▲0.1%/前期比年率▲0.6%)

○13:30 ◇ 9 月鉱工業生産確報

○13:30 ◇ 9 月設備稼働率

<海外>

○09:30 ◎ 7-9 月期豪賃金指数(予想:前期比 1.3%)

○11:00 ◎ 10 月中国鉱工業生産(予想:前年比 4.4%)

○11:00 ◎ 10 月中国小売売上高(予想:前年比 7.0%)

○16:00 ◇ 10 月独卸売物価指数(WPI)

○16:00 ◎ 10 月英消費者物価指数(CPI、予想:前月比 0.1%/前年比 4.8%)

○16:00 ◎ 10 月英 CPI コア指数(予想:前年比 5.8%)

○16:00 ◇ 10 月英小売物価指数(RPI、予想:前月比 0.1%/前年比 6.4%)

○16:45 ◇ 10 月仏 CPI 改定値(予想:前月比 0.1%/前年比 4.0%)

○19:00 ◎ 9 月ユーロ圏鉱工業生産(予想:前月比▲1.0%/前年比▲6.3%)

○19:00 ◇ 9 月ユーロ圏貿易収支(予想:季節調整前なし/季節調整済 67 億ユーロの黒字)

○20:00 ◇ 9 月南アフリカ小売売上高(予想:前年同月比 0.1%)

○21:00 ◇ MBA 住宅ローン申請指数

○22:30 ◇ 9 月カナダ卸売売上高(予想:前月比横ばい)

○22:30 ◇ 9 月カナダ製造業出荷(予想:前月比▲0.1%)

○22:30 ☆ 10 月米小売売上高(予想:前月比▲0.3%/自動車を除く前月比横ばい)

○22:30 ◎ 10 月米卸売物価指数(PPI、予想:前月比 0.1%/前年比 1.9%)

◎ 食品とエネルギーを除くコア指数(予想:前月比 0.3%/前年比 2.7%)

○22:30 ◎ 11 月米ニューヨーク連銀製造業景気指数(予想:▲2.8)

○23:30 ◎ バー米連邦準備理事会(FRB)副議長、議会証言

○24:00 ◇ 9 月米企業在庫(予想:前月比 0.4%)

○16 日 00:30 ◇ EIA 週間在庫統計

○16 日 01:00 ☆ 7-9 月期ロシア GDP 速報値(予想:前年比 4.8%)

○16 日 03:00 ◎ ハスケル英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演

○16 日 05:30 ◎ バーキン米リッチモンド連銀総裁、講演

○米中首脳会談(米カリフォルニア州)

○アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(米サンフランシスコ、17 日まで)

○ブラジル(共和制宣言記念日)、休場

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

14 日 09:40 鈴木財務相

「円安のマイナス面を緩和、プラス面を最大化が重要」

「円安はプラスとマイナス双方に様々な影響がある」

「為替相場はファンダメンタルズを反映し安定的に推移 することが重要」

14 日 11:18 イエレン米財務長官

「金利上昇が続くならば、債務に困難が伴う」

14 日 21:27 ジェファーソン FRB 副議長

「高インフレがいつまで続くか不確実な場合はインフレ期 待を抑制するため、強力な金融政策が必要になる可能 性がある」

「中央銀行は政策を決定する際に不確実性を考慮に入 れるべき」

14 日 22:24 ジョーダン・スイス国立銀行(スイス中銀、 SNB)

「現在の金融政策が長期的な物価安定を確保するほど 引き締め的でない場合、更なる利上げが可能性として 考えられる」

14 日 23:04 ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼 チーフエコノミスト

「インフレに関しては大幅な進展が見られる」

「5%のインフレはまだ高すぎる」

「インフレ抑制のためにまだやるべきことがいくつかあ る」

「英経済の回復力は弱まりつつあるようだ」

14 日 23:09 バーキン米リッチモンド連銀総裁

「インフレの過剰修正と過小修正にはリスクがある」

「需要とインフレを抑制するにはさらなる対応が必要に なるのではないかと懸念している」

「住宅価格は経済活動の鈍化にかかわらず堅調維持」

「インフレが 2%まで順調に進むとは確信していない」

「インフレに関しては進展が見られる」

15 日 02:58 グールズビー米シカゴ連銀総裁

「インフレ改善が進む一方で経済成長は強力」

「インフレ目標の達成までにはまだ道のりがある」

「経済の過熱よりも外的ショックの可能性をむしろ懸念」

「インフレ改善の鍵は住宅であり、ある程度の困難は避 けられない」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線の上昇に追随して反発できるか注目>

大陰線引け。13 日に 151.91 円まで年初来高値を更新したものの昨年 10 月 21 日につけた 1990 年以来の高値 151.95 円 を上抜くことができず、昨日は続伸してきたことの反動もあ って 7 営業日ぶりの大幅反落となった。150.04 円に位置して いた一目均衡表・基準線手前でいったん下げ止まった。本日 150.17 円に切り上がった上昇傾向の同線付近で底堅さを示 すか注視。現水準 150.56 円から来週にも 151 円台へ上昇す る可能性を残す一目・転換線を追うように反発できるか注目。


レジスタンス 1 151.06(5 日移動平均線)
前日終値 150.37
サポート 1 149.76(ピボット・サポート 1)
サポート 2 149.21(11/3 安値)

<ユーロドル=雲を上抜け、底堅い推移期待>

大陽線引け。相場の上振れ前には 1.0662 ドルに位置していた一目均衡表・転換線を割り込むことなく急上昇へ転じ、 8 月 31 日以来の高値 1.0887 ドルまで上昇した。一目・雲の 抵抗をこなしての上伸。相場の強弱の分岐点 200 日移動平均 線も上抜けた。買い優位に転じ、抵抗からサポートに転換し たと考えられる 200 日線や、雲の上限 1.0757 ドルを背景と した底堅い推移が期待できる。


レジスタンス 1 1.0945(8/30 高値)
前日終値 1.0879
サポート 1 1.0804(200 日移動平均線)

<ユーロ円=堅調ながら調整挟む可能性も、底堅さ維持へ>

大陽線引け。5 日移動平均線の上昇をともない上伸してきた動きが加速した。163.82 円まで 2008 年 8 月以来の高値を 更新している。本日 162.56 円前後へ上昇して推移する 5 日 線からかい離した感もあり、調整の反落が入る可能性も視野 に入れておきたい。ただ、下押しが 5 日線までに済めば堅調 な推移は維持できていると判断していいだろう。押し目が深 めになっても一目・転換線 161.71 円が支えとなり、同線の 切り上がりとともに水準を回復できるとみる。

レジスタンス 1 164.42(2008/8/12 高値)
前日終値 163.60
サポート 1 163.02(11/14 レンジ半値水準)

<豪ドル円=高値更新の達成感による反動安にも留意>

大陽線引け。一目均衡表・転換線の切り上がりに沿うように戻し、昨日は 97.94 円まで年初来高値を更新した。目先的 な達成感で反動安となった際に、下支えとなるテクニカル指 標が付近に乏しい点はやや気掛かり。下押しが 7日高値 97.59 円までに済めば、強い基調が続いていることの確認になる。

レジスタンス 1 98.37(ピボット・レジスタンス 1)
前日終値 97.86
サポート 1 97.21(11/14 レンジ半値水準)