デイリーレポート 2023年11月17日

November 17, 2023

【前日の為替概況】ドル円、反落 複数経済指標が予想より弱く米長期金利低下

16 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反落。終値は 150.73 円と前営業日 NY 終値(151.36 円) と比べて 63 銭程度のドル安水準となった。前週分の米新規失業保険申請件数や 10 月米輸入物価指数、11 月米 NAHB 住宅市場指数が予想より弱い内容だったことが分かると米長期金利の低下とともに全般ドル売 りが先行。0 時 30 分過ぎに一時 150.29 円と日通し安値を更新した。

ただ、前日の安値 150.06 円がサポートとして働くと 150.77 円付近まで下げ渋った。米長期金利が低下 幅を縮めたことも相場を下支えした。

ユーロドルは小反発。終値は 1.0852 ドルと前営業日 NY 終値(1.0848 ドル)と比べて 0.0004 ドル程度 のユーロ高水準だった。低調な米経済指標が相次いだことでユーロ買い・ドル売りが優勢になると、一時 1.0896 ドルと 8 月 31 日以来の高値を付けたものの、節目の 1.0900 ドルを上抜けることは出来なかった。 ユーロ円の下落につれたユーロ売り・ドル買いも出て、6 時前には 1.0845 ドル付近まで押し戻された。

なお、メスター米クリーブランド連銀総裁は「さらなる利上げが必要かどうかは経済状況次第」と述べ たほか、クック米連邦準備理事会(FRB)理事は「ソフトランディングは可能だと信じている」「リスクに は両面性がある。バランスを取る必要」などと語った。

ユーロ円は 5 営業日ぶりに反落。終値は 163.57 円と前営業日 NY 終値(164.20 円)と比べて 63 銭程度 のユーロ安水準。欧州市場序盤に一時 164.30 円と 2008 年 8 月以来の高値を更新したものの、NY 市場に 入ると下落した。足もとで相場上昇が続いたあとだけに利益確定目的の売りが出たほか、米国株相場の失 速を受けてロングポジションを手仕舞う動きが進んだ。1 時 30 分過ぎには一時 163.26 円と日通し安値を 更新した。資源国のクロス円も軟調だった。WTI 原油先物価格が一時 6%近く急落すると産油国通貨とさ れるカナダドルなどに売りが集まった。カナダドル円は一時 109.29 円まで値を下げたほか、豪ドル円は 97.24 円、NZ ドル円は 89.86 円、南アフリカランド円は 8.17 円まで売られた。

【本日の東京為替見通し】クロス円の買いは一服、レンジ取引予想も円安地合いは変わらずか

本日のドル円はレンジ内での取引になりそうだが、底堅い動きは変わらないか。昨日は、連日 10 年前 後振り(スイスフランは史上最高値)を更新し続けたクロス円の上昇が一服し、アジア時間からオセアニ ア通貨売り・円買いの動きが入り、クロス円主導のもと円の買い戻しが優勢となった。また、一部では外 債の利金の円転も出ていたとの話もあった。このような動きが再び本日も見受けられるかに注目したい。

今週発表された複数のインフレ指標が市場予想を下回ったことにより、米連邦準備理事会(FRB)によ る利上げ打ち止め感が台頭し、ドルの上値が抑えられている。もっとも、昨日メスター米クリーブランド 連銀総裁が「インフレを克服したと言えるには、より多くのエビデンスが必要」と発言するなど、依然と して FRB 内でもインフレへの勝利宣言には慎重な姿勢が見られる。なお、タカ派のメスター総裁は来年の 米連邦公開市場委員会(FOMC)の投票メンバーになることで、同総裁の発言は今後も要注目となる。

また、今週発表された本邦の 7-9 月期の国内総生産(GDP)が大幅に下振れ、内閣支持率が 21.3%、 自民党支持率が 19.1%(いずれも時事通信社調査)まで低下したことで、国民の支持を得られない金融 引き締めを政府与党はけん制する可能性がある。円金利が急騰することがなければ、円買いにもなりにく いか。

本日はこの後には本邦やアジア・オセアニア国から主だった経済指標の発表予定はない。連日東京仲値 以後は急速に商いが低下し、動きが鈍くなっているが、サプライズなどがない場合は本日も同様な動きに なりそうだ。なお、米国入り後は複数の住宅関連指標が発表される。通常は反応が限定的な指標ではある が、グールズビー米シカゴ連銀総裁が「インフレ改善の鍵は住宅」と発言しているように、住宅指標が今 後はさらに注目される可能性は高そうだ。

【本日の重要指標】

<国内>

特になし

<海外>

○16:00 ◎ 10 月英小売売上高(自動車燃料含む、予想:前月比 0.3%/前年比▲1.5%)

○16:00 ◎ 10 月英小売売上高(自動車燃料除く、予想:前月比 0.4%/前年比▲1.5%)

○16:30 ◇ 7-9 月期スイス鉱工業生産

○17:00 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演

○17:30 ◎ ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、講演

○18:00 ◇ 9 月ユーロ圏経常収支(季節調整済)

○18:00 ◎ ホルツマン・オーストリア中銀総裁、講演

○18:15 ◎ ブイチッチ・クロアチア中銀総裁、講演

○19:00 ☆ 10 月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)改定値(予想:前年比 2.9%)

○19:00 ☆ 10 月ユーロ圏 HICP コア改定値(予想:前年比 4.2%)

○22:00 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演

○22:10 ◎ ラムスデン英中銀(BOE)副総裁、講演

○22:15 ◎ ウンシュ・ベルギー中銀総裁、グリーン英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演

○22:30 ◇ 9 月対カナダ証券投資

○22:30 ◇ 10 月カナダ鉱工業製品価格(予想:前月比横ばい)

○22:30 ◇ 10 月カナダ原料価格指数

○22:30 ◎ 10 月米住宅着工件数(予想:135.0 万件、前月比▲0.6%)

◎ 建設許可件数(予想:145.0 万件、前月比▲1.4%)

○22:45 ◎ コリンズ米ボストン連銀総裁、あいさつ

○22:45 ◎ バー米連邦準備理事会(FRB)副議長、講演

○23:30 ◎ デイリー米サンフランシスコ連銀総裁、講演

○23:45 ◎ グールズビー米シカゴ連銀総裁、講演

○24:00 ◎ チポローネ欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

16 日 10:41 バイデン米大統領

「米国は一つの中国政策を維持すると強調した」

「台湾海峡の平和と安全の重要性を強調した」

「習近平・中国国家主席とは建設的で生産的な協議が 行われ、一定の重要な進展があった」

16 日 16:42 トルコ中央銀行(TCMB)

「実体経済部門は、金利の上昇に対応可能」

「イールドカーブの正常化は継続する見通し」

16 日 18:41 グリーン英中銀金融政策委員会(MPC)委 員

「最新のインフレデータは良いニュース」

「英国の労働市場データは良好」

「英国の賃金上昇率は依然として信じられないほど高 い」

「次回の金融政策を決定する前に、英国経済がどの程 度持ちこたえているかを確認する必要がある」

「低い生産性と高い賃金上昇率では、インフレ目標の達 成は難しい」

「問題は BOE の方針が十分に制限的かどうか」

「制限的な政策を長く続ける必要があるかもしれない」

「世界の市場は、中央銀行がいつまで制限的な政策を 続ける必要があるのか把握していない」

16 日 18:59 センテノ・ポルトガル中銀総裁

「政策金利はいずれ下がる」

「政策金利がゼロに戻ることは望ましくない」

16 日 22:52 メスター米クリーブランド連銀総裁

「さらなる利上げが必要かどうかは経済状況次第」

17 日 03:39

「成長率はトレンドを下回って鈍化すると予想」

「私の予測ではリセッション(景気後退)はない」

「現在、政策に関しては非常に良い状況にある」

「重要なのはどの程度の期間、制限的なスタンスを維持 するか、場合によってはそれ以上の金利を維持するか である」

「追加利上げがまだ必要かどうかは決めていない」

17 日 00:51 ラムスデン英中銀(BOE)副総裁

「金融政策は長期間、制限的となるだろう」

「中立金利に対する市場の認識は高まっている」

「企業は高止まりする金利に適応する必要がある」

17 日 02:14 クック米連邦準備理事会(FRB)理事

「ソフトランディングは可能だと信じている」

「リスクには両面性がある。政策を十分に引き締めない リスクと過剰に政策を強化するリスクのバランスを取る 必要」

「労働力の需要と供給のバランスが改善されつつある」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=14 日の大陰線の下落幅を回復できずに失速>

下影陰線引け。14 日に形成した大陰線の下落幅を回復できないまま失速した。 150.93 円へ上昇した一目均衡表・転換線は、現状からすれば明日 150.99 円へ小幅に切り上がったところで頭打ちと る公算。上値を伸ばしきれないまま相場が軟化したことで転 換線は 151 円台回復を実現できない見込み。同線に引っ張ら れて反発する展開を描きにくくなってきた。転換線と基準線 150.36 円に挟まれたレンジ中心の上下に終始しやすいとみる。


レジスタンス 1 151.43(11/16 高値)
前日終値 150.73
サポート 1 150.06(11/15 安値)
サポート 2 149.25(11/6 安値)

<ユーロドル=重さ示唆する足型形成>

上影極小陽線引け。1.08 ドル付近で推移する 200 日移動平均線などのサポートを下値に控えるなか 1.0896 ドルまで上 値を試す展開が先行した。しかし 1.08 ドル半ばへ押し戻さ れ、長い上ひげをともなうローソク足を形成。重さを示唆す る足型で、相場の強弱の分岐点とされる 200 日線を試すよう な調整も視野に入れつつ臨む展開か。


レジスタンス 1 1.0896(11/16 高値)
前日終値 1.0852
サポート 1 1.0805(200 日移動平均線)

<ユーロ円=5 日線付近の攻防>

下影陰線引け。164.30 円まで 2008 年 8 月以来の高値を更 新したものの失速。一時 163.26 円まで下値を探る動きとな った。163.44 円前後で推移する 5 日移動平均線付近の攻防と なっている。上昇中の同線付近から折り返し再び上値を試す 展開を予想。下抜けても、一目均衡表・転換線 162.37 円を 支えに、切り上がりが見込まれる同線とともに戻すことが期 待できる。


レジスタンス 1 164.30(11/16 高値=年初来高値)
前日終値 163.57
サポート 1 163.07(11/15 安値)

<豪ドル円=転換線を支えに底堅さ示すと予想>

下影大陰線引け。98.62 円まで年初来高値を更新後、大幅安となった。一目均衡表・転換線 97.33 円を割り込む 97.24 円まで下振れた。転換線を回復して NY を引けており、同線 近辺の攻防局面。緩やかな切り上がりが想定される転換線を 支えに底堅さを示すと予想する。

レジスタンス 1 97.93(11/16 レンジ半値水準)
前日終値 97.53
サポート 1 96.98(ピボット・サポート 1)