デイリーレポート 2023年11月29日
November 29, 2023
【前日の為替概況】米 10 年債利回り、4.31%台まで低下しドル下落 対円では 147.33 円
28 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 3 日続落。終値は 147.48 円と前営業日 NY 終値(148.69 円)と比べて 1 円 21 銭程度のドル安水準となった。米国で利上げ局面が終了したとの見方が広がる中、 全般ドル売りが先行。ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事が「政策が好位置にあるとの確信を強めて いる」「インフレ率がさらに数カ月間低下し続ければ、政策金利を引き下げる根拠は十分にある」などと 発言すると、米長期金利の低下とともに円買い・ドル売りが活発化し、一時 147.33 円まで下落した。
21 日の安値 147.15 円がサポートとして働くと 147.71 円付近まで下げ渋る場面があった。米 7 年債入 札が低調となったことを受けて、米長期金利が低下幅を縮めたこともドル買い戻しを促した。ただ、戻り を売りたい向きは多く、買い戻しの勢いは長続きしなかった。
なお、ボウマン FRB 理事は「インフレ率の低下が停滞した場合には利上げを支持する」などと述べた。
ユーロドルは 4 日続伸。終値は 1.0993 ドルと前営業日 NY 終値(1.0954 ドル)と比べて 0.0039 ドル程 度のユーロ高水準。タカ派のウォラーFRB 理事が数カ月後の利下げの可能性を示唆すると、全般ドル売り が先行。節目の 1.1000 ドルを突破し、2 時過ぎに 1.1009 ドルと 8 月 10 日以来の高値を更新した。主要 通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時 102.61 と 8 月 11 日以来の低水準を付けた。
米長期金利の指標となる米 10 年債利回りは一時 4.3187%前後と 9 月 20 日以来の低水準を付けた。
ユーロ円は続落。終値は 162.12 円と前営業日 NY 終値(162.87 円)と比べて 75 銭程度のユーロ安水準。 ドル円の下落につれた円買い・ユーロ売りが優勢になると、161.93 円と日通し安値を更新した。
【本日の東京為替見通し】ドル円、軟調推移か 豪 CPI や RBNZ 政策金利にも要注目
本日の東京外国為替市場のドル円は、米 10 年債利回りが 4.3%台まで低下していることで下値リスク が高い展開が予想される。
昨日は、米連邦準備理事会(FRB)のタカ派であるウォラー理事やボウマン理事が、ややハト派的な見 解を示した。それらを受けて市場が織り込む来年の利下げ確率が上昇。米国債利回りの低下とともに、ド ルは全面安の展開となった。
ウォラーFRB 理事は、インフレ率が低下し続ければ、数カ月先に政策金利を引き下げる可能性を示唆し た。ボウマン FRB 理事は、「インフレ率の低下が停滞した場合には利上げを支持する」とタカ派見解を述 べつつも、追加利上げは経済データ次第とし、追加利上げを明確に求めるには至らなかった。
今週のドル円の注目経済指標は、FRB がインフレ指標として注視している 30 日に発表される米 10 月 PCE 価格指数。もし、10 月 PCE 価格指数の伸び率が鈍化していた場合、来年の利下げ開始時期が、これまで 市場が見込んでいた「6 月や 5 月」から 3 月あたりまで前倒しされる可能性が高まることになる。CME の フェドウオッチによると、米金利先物市場では来年 3 月の利下げ確率を約 34%、5 月は約 49%と想定し ている。
ドル円のテクニカル分析では、長期的には、エリオット波動の最終第 5 波を示唆する「斜行三角形」を 形成しつつあり、中期的には高値反転を示唆する「弱気の乖離(ベアリッシュ・ダイバージェンス)」を 形成しつつあることで、下値リスクが高まりつつある。
そして短期的には「ダブル・トップ(151.72 円・151.91 円)」がネック・ラインの 149.21 円(11/3 安 値)を下抜けたことで完成し、目標値 146.70 円{=149.21 円-(151.72 円-149.21 円)}が点灯している。
9 時 30 分発表の 10 月豪消費者物価指数(CPI)は前年同月比+5.2%と予想されており、9 月+5.6%から 低下見込み。ブロック RBA 総裁は先日、「価格上昇が CPI 項目の広範囲にわたり、インフレがますます国 内主導、需要主導になっている」と述べ、金利がしばらく高止まる可能性が高いことを示唆していた。10 月 CPI で RBA 総裁の発言を裏付けるような広範な物価上昇が確認されれば、追加利上げ期待の高まりとと もに豪ドル相場を下支えすることになる。
10 時に発表されるニュージーランド準備銀行(RBNZ)の政策金利は、5.50%での据え置き予想。声明 文では、足もとのインフレ率が RBNZ の目標レンジである 1-3%からまだ距離があることを考慮すると、「政 策金利を当面抑制的な水準に維持する必要がある」との基本方針に変化はないことが予想されている。し かし、今後の四半期 CPI が予想を下回る可能性が高まりつつあることで、RBNZ のインフレに対する見方 に注目しておきたい。
【本日の重要指標】
<国内>
○10:30 ◇ 安達誠司日銀審議委員、あいさつ
<海外>
○09:30 ◎ 10 月豪消費者物価指数(CPI、予想:前年同月比 5.2%)
○10:00 ☆ ニュージーランド準備銀行(RBNZ)、政策金利発表(予想:5.50%で据え置き)
○16:00 ◇ 10 月独輸入物価指数(予想:前月比▲0.1%/前年比▲13.4%)
○16:00 ◇ 10 月トルコ貿易収支(予想:67.0 億ドルの赤字)
○16:00 ◎ 7-9 月期スウェーデン国内総生産(GDP、予想:前期比横ばい)
○18:30 ◇ 10 月英消費者信用残高(予想:15 億ポンド)
○18:30 ◇ 10 月英マネーサプライ M4
○19:00 ◎ 11 月ユーロ圏経済信頼感指数(予想:93.7)
○19:00 ◎ 11 月ユーロ圏消費者信頼感指数(確定値、予想:▲16.9)
○21:00 ◇ MBA 住宅ローン申請指数
○22:00 ◎ 11 月独 CPI 速報値(予想:前月比▲0.1%/前年比 3.5%)
○22:30 ◇ 7-9 月期カナダ経常収支(予想:10.0 億カナダドルの黒字)
○22:30 ◇ 10 月米卸売在庫(予想:前月比 0.2%)
○22:30 ☆ 7-9 月期米 GDP 改定値(予想:前期比年率 5.0%)
◎ 個人消費(改定値、予想:前期比年率 4.0%)
◎ コア PCE(改定値、予想:前期比年率 2.4%)
○30 日 00:05 ◎ ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
○30 日 00:30 ◇ EIA 週間在庫統計
○30 日 01:00 ◎ 10 月ロシア失業率(予想:3.0%)
○30 日 03:45 ◎ メスター米クリーブランド連銀総裁、講演
○30 日 04:00 ◎ 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
28 日 11:14 ラムスデン英中銀(BOE)副総裁
「インフレ率を目標の 2%に戻すには、金融政策を長期 にわたって制限的にする必要がありそうだ」
「英国のインフレは国内に起因する傾向が強い」
28 日 11:16 ブロック豪準備銀行(RBA)総裁
「失業率を上げずにインフレ率を下げるために金利を使 うことに対して多少注意する必要」
「高い雇用は、より高額な住宅ローンを支払うのに役立 つ」
「豪州のインフレは海外と似ている」
28 日 13:28 潘功勝・中国人民銀行(PBOC)総裁
「中国経済は勢いを増している」
「中国の CPI は徐々に底を打ちつつある」
「中国は 2024 年に持続可能な成長を享受できると確信」
「緩和的な金融政策を継続する」
28 日 22:25 ハスケル英中銀金融政策委員会(MPC)委 員
「雇用市場の逼迫は金利上昇の長期化を意味する」
「労働市場の逼迫がインフレ圧力を与え続けている」
「現在の見通しでは、近い将来に金利が緩和される余地 は示唆されていない」
「金利は多くの人が予想しているよりも長く、高く維持さ れる必要があるだろう」
29 日 00:12 ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事
「政策が好位置にあるとの確信を強めている」
「全体のインフレ率が 2%に達するには、住宅を除くサー ビスインフレ率のある程度の改善が必要」
「FRB が十分な措置を講じたかどうかは断言できない」
「今後数カ月間のデータによって、FRB が十分な措置を 講じたかどうかが分かると期待」
「経済成長鈍化の兆しが後押し」
「インフレ率は依然として高すぎ、減速が持続するかどう かを判断するには時期尚早」
「個人消費は低迷しており、製造業や非製造業の活動 は減速している」
「労働市場は冷え込んでいるものの、依然としてかなり 逼迫しており、今後も注意深く監視」
「インフレ率がさらに数カ月間低下し続ければ、政策金 利を引き下げる根拠は十分にある」
29 日 00:13 グールズビー米シカゴ連銀総裁
「全体としてインフレに関しては良好な進展が見られた」
29 日 00:49 ボウマン米連邦準備理事会(FRB)理事
「インフレ率の低下が停滞した場合には利上げを支持す る」
29 日 04:48 ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁
「インフレ圧力の低下は励みになる」
「FRB はインフレ率を 2%に戻すという強いコミットメント を示している」
「長期的なインフレ期待は非常に安定している」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=147.39 円まで上昇した雲下限を念頭に置いた取引>
陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を
下回り、雲の中で引けているものの売りシグナルが優勢な展
開となっている。3 手連続陰線で転換線を下回って引けてお
り、続落の可能性が示唆されている。
本日は昨日の下落局面で支えとなった雲の下限を念頭に
置いた取引となりそうだ。同水準は昨日 147.31 円から本日
は 147.39 円まで上げてきている。
レジスタンス 2 148.97(日足一目均衡表・転換線)
レジスタンス 1 148.43(ピボット・レジスタンス 1)
前日終値 147.48
サポート 1 146.44(9/12 安値)
サポート 2 145.91(9/11 安値)
<ユーロドル=1.0910 ドル台まで上昇してきた転換線が支持>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシグ
ナルが点灯している。一時 1.10 ドル台に乗せて、8 月 10 日
以来の高値を更新した。4 手連続陽線で転換線を上回って引
けており、続伸の可能性が示唆されている。
転換線は 1.0917 ドルまで上昇してきた。本日も同線を支
持に押し目買いスタンスで臨み、下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 1.1150(7/27 高値)
前日終値 1.0993
サポート 1 1.0917(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロ円=11/28 高値を抵抗に戻り売りスタンス>
陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けているため三役好転の強い買いシグナ
ルが点灯中。しかし、2 手連続陰線で転換線を下回って引け
ており続落の可能性が示唆されている。
転換線は 162 円半ばまで水準を下げてきた。本日は同線を
念頭に、28 日の高値を抵抗に戻り売りスタンスで臨みたい。
レジスタンス 1 162.95(11/28 高値)
前日終値 162.12
サポート 1 161.00(日足一目均衡表・基準線)
<豪ドル円=転換線を支持に押し目買いスタンス>
小陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線
を上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシ
グナルが点灯中。2 手連続陰線でも、依然として転換線を上
回って引けており、反発の可能性が示唆されている。
本日は、転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線
を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 98.62(11/16 高値)
前日終値 98.05
サポート 1 97.69(日足一目均衡表・転換線)