デイリーレポート 2023年12月8日
December 8, 2023
【前日の為替概況】ドル円、大幅反落 日銀の政策修正期待を背景に円買い
7 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は大幅反落。終値は 144.13 円と前営業日 NY 終値(147.31 円)と比べて 3 円 18 銭程度のドル安水準だった。NY 勢の参入後も日銀の政策修正期待を背景にした円買 いの流れが継続した。3 時前に売り圧力が強まると、市場では「エアポケット(買いの空白)のような状 態に陥ってしまったようだ」との声も聞かれるなか、一時 141.71 円まで急落した。ただ、その後は急ピ ッチで値を下げてきた反動から短時間で 143 円台まで反発。引けにかけても 144 円台前半まで下値を切り 上げた。 ユーロ円は大幅に 9 日続落。終値は 155.58 円と前営業日 NY 終値(158.57 円)と比べて 2 円 99 銭程度 のユーロ安水準だった。円が独歩高となった流れに沿って一時 153.23 円まで下押す場面があった。他の クロス円も全面安となり、ポンド円は 178.67 円、豪ドル円は 93.73 円、NZ ドル円は 87.71 円、カナダド ル円は 104.25 円まで下げ幅を拡大。ただ、クロス円もドル円と同じく 3 時前に急落した後は反動から買 い戻しが入り、ユーロ円は 155 円台半ばまで反発した。 ユーロドルは 7 営業日ぶりに反発。終値は 1.0794 ドルと前営業日 NY 終値(1.0764 ドル)と比べて 0.0030 ドル程度のユーロ高水準だった。対円を中心にドル売りが進んだ影響を受けた。昨日高値の 1.0804 ドル を上抜けて 3 時前には 1.0818 ドルまで上昇。もっとも、その後は 1.0790 ドル台まで押し戻された。
【本日の東京為替見通し】昨年 12 月のデジャブ相場、実質賃金連続マイナスのリスクに要警戒
本日のドル円相場も不安定な値動きになりそうだ。レンジ相場に慣れていたこともあり、昨日は 5 円を 超える値幅を伴ったドル円相場だが、本日も 1 日を通して乱高下を繰り返しそうだ。また、昨年も 12 月 の日銀政策決定会合を前後に大幅な円高となったことで、同様の動きを先取りした感じもある。
昨年を振り返ってみると、12 月 17 日の日経新聞に「政府、日銀との共同声明見直し論」との報道が流 れ、2%の物価上昇目標の達成時期や範囲をより柔軟にし、表現の一部を修正との内容を報じた。市場は 瞬間的な円買いとなったが、影響は限られた。しかし、20 日の日銀政策決定会合で長短金利操作の運用 に関し、長期金利の許容変動幅を従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大すると発表すると、 一転円が急伸した。ドル円は当日の高値から 7 円弱の円買い・ドル安が進行した。
この経験があったことで、昨日は同じ轍を踏まないようにとの動きも進み、円の買い戻しが強烈に入っ た次第だ。ただし、市場が警戒しなくてはならないのは、今年最後の日銀政策決定会合は 18-19 日とい うことで、結果発表までまだ 10 日以上先になっている。日銀のブラックアウト期間は他国の中央銀行と 違いわずか 2 営業日前(詳細は、各金融政策決定会合の 2 営業日前、会合が 2 営業日以上にわたる場合に は会合開始日の 2 営業日前)からで、今後も植田日銀総裁をはじめとした日銀関係者から様々な発言が出 てくることが予測され、その都度発言内容で乱高下することが予想される。
また、今後の本邦の経済指標もこれまで以上に神経質に市場が反応することが考えられる。本日も 10 月家計調査、10 月毎月勤労統計、7-9 月期実質国内総生産(GDP)改定値、10 月国際収支速報、11 月景 気ウオッチャー調査などが発表される。9 月の毎月勤労統計では実質賃金が 2.4%減少し 18 カ月連続でマ イナスとなった。日銀はこれまで「賃金上昇に伴う 2%物価安定目標」としていることで、更に連続して マイナスになるのか。19 カ月ぶりにプラスに転じるのかにより市場が敏感に反応する可能性も出てきて いる。
【本日の重要指標】
<国内>
○08:30 ◇ 10 月家計調査(消費支出、予想:前年比▲3.0%)
○08:30 ◇ 10 月毎月勤労統計(現金給与総額、予想:前年比 1.0%)
○08:50 ☆ 7-9 月期実質国内総生産(GDP)改定値(予想:前期比▲0.5%/前期比年率▲2.0%)
○08:50 ◎ 10 月国際収支速報 ◇ 経常収支(予想:季節調整前 1 兆 9012 億円の黒字/季節調整済 1 兆 8582 億円の黒字)
◎ 貿易収支(予想:3722 億円の赤字)
○14:00 ◇ 11 月景気ウオッチャー調査(予想:現状判断指数 49.1/先行き判断指数 48.1)
<海外>
○13:30 ☆ インド中銀、金融政策決定会合(予想:6.50%で据え置き)
○16:00 ◎ 11 月独消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比▲0.4%/前年比 3.2%)
○16:35 ◎ ミュラー・エストニア中銀総裁、講演
○22:30 ◇ 7-9 月期カナダ設備稼働率(予想:81.0%)
○22:30 ☆ 11 月米雇用統計(予想:非農業部門雇用者数変化 18.0 万人/失業率 3.9%/平均時給、前月比 0.3%/前年比 4.0%)
○24:00 ◎ 12 月米消費者態度指数(ミシガン大調べ、速報値、予想:62.0)
○9 日 01:00 ◎ 11 月ロシア CPI(予想:前月比 1.2%)
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
7 日 10:03 植田日銀総裁
「日本経済の先行き、緩やかな回復を続けるとみてい る」
「基調的な物価上昇率は、25 年度にかけ 2%目標へ 徐々に高まる」
「為替市場の動向や経済、物価への影響を注視」
7 日 15:20
「(岸田首相との会談で)為替については話していない」
「金融政策の基本的な考えを説明した」
「年に数回の意見交換」
8 日 02:39 グラベル・カナダ銀行(中央銀行、BOC)副総 裁
「住宅価格の不均衡は住宅価格のインフレに深刻な影 響を及ぼす」
「10 月の家賃インフレは 40 年ぶりの高水準に加速、住 宅供給は近年の移民増加に追いついていない」
「人口動態に伴う需要の急増と既存の構造的供給問題 が相まって、家賃インフレが上昇を続けている可能性が ある」
「景気は現在ほぼ均衡しているが、インフレ期待、賃金 の伸び、企業の価格設定行動を注視」
「これらの指標は、インフレ率が 2%への持続的な道筋 をたどるのかどうかを評価するのに役立っている」
「主要なインフレ指標では歓迎すべき改善が見られたが、 さらなる進展が必要」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=支えとなりそうなテクニカル指標が乏しく不安定か>
下影大陰線引け。8 月 7 日以来、4 カ月ぶりの安値 141.71
円まで大幅安となった。その後は急落の反動で 144 円台へ大きめに戻している。
本日も買い戻しが入る余地はあるかもしれないが戻り待ちの売りも想定できる。下値に押し目を支えそうな主要な日足テ
クニカル指標も乏しいため、不安定に振れる展開が続くか。
レジスタンス 2 145.98(5 日移動平均線)
レジスタンス 1 145.27(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 144.13
サポート 1 142.34(200 日移動平均線)
<ユーロドル=基準線に沿う戻り期待も 1.08 ドル台は重そう>
小陽線引け。昨日 1.0793 ドルへ切り上がった一目均衡表・
基準線を動向を追うように戻し、一時 1.08 ドル台を回復す
る動きとなった。NY 終値ベースでも基準線を上回った。基準
線は本日 1.0816 ドルへ上昇。同線を追うような戻りが続く
ことも期待できる。ただ、昨日は 5 日移動平均線付近で上値
が重かったが同線は本日 1.0797 ドル前後へ低下して推移。
一目・転換線 1.0886 ドルの抵抗も位置する 1.08 ドル台では動きが重くなりそう。
レジスタンス 1 1.0852(ピボット・レジスタンス 2)
前日終値 1.0794
サポート 1 1.0755(12/7 安値)
<ユーロ円=即座の 200 日線回復好感もリスクは下向き>
下影大陰線引け。7 月 28 日以来、4 カ月ぶり以上となる水
準 153.23 円まで大きく下振れた。154 円付近で推移する 200
日移動平均線を下抜ける場面もあった、反発して 155 円半ば
で NY を引けており、相場の強弱を判断する上の分岐点 200
日線を即座に回復した点は好感したい。しかし相場が傷んだ
感のある下振れであり、200 日線を意識した下向きリスクを
抱えながらの推移が続くことになりそう。
レジスタンス 1 156.52(10/9 安値)
前日終値 155.58
サポート 1 154.01(200 日移動平均線)
<豪ドル円=200 日線手前から反発も安定感を欠く推移か>
下影大陰線引け。10 月 3 日以来、約 2 カ月ぶりの安値 93.73
円まで大幅に下落が進んだ。好感したいのは 93 円半ばで推
移する 200 日移動平均線手前で折り返すことができた点。相
場の強弱を判断する上の分岐点である同線付近から 95 円近
辺で切り上がる一目均衡表・雲の下限付近まで反発した。た
だ、昨日安値や 200 日線は支えと考えるにはやや距離感があ
り、急落に対する反動が続くにしても安定感を欠く推移にな
るとみる。
レジスタンス 1 96.06(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 95.16
サポート 1 93.73(12/7 安値)