デイリーレポート 2023年12月14日

December 14, 2023

【前日の為替概況】ドル円、大幅続落 FRB 議長発言が来年の米利下げ観測を後押し

13 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は大幅に続落。終値は 142.89 円と前営業日 NY 終値(145.45 円)と比べて 2 円 56 銭程度のドル安水準だった。11 月米卸売物価指数(PPI)が予想を下回ったことが 分かると、全般ドル売りが先行。米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果やパウエル米連邦準備理事会(FRB) 議長の発言が「市場で広がっている来年の利下げ観測を後押しする内容だった」との受け止めから、米金 利が急低下するとドル売りが加速した。5 時過ぎには一時 142.65 円まで大きく値を下げた。なお、米 10 年債利回りは一時 4.0051%前後と 8 月 10 日以来の低水準を更新した。

FRB は 12-13 日に開いた FOMC で市場予想通り FF レートの誘導目標を 5.25-5.50%に据え置くことを 決めたと発表。政策金利見通し(ドット・チャート)では 2024 年末時点の中央値を 5.125%(5.00-5.25%) から 4.625%(4.50-4.75%)に下方修正し、来年 3 回の利下げを想定していることが示唆された。また、 パウエル FRB 議長は会見で「インフレは緩和したものの、依然として高すぎる」「FOMC は適切であれば追 加引き締めの用意」としながらも、「きょうの会合で利下げのタイミングを協議した」「FOMC は現状維持 が長すぎる場合のリスクを認識」などと語った。

ユーロドルは 3 日続伸。終値は 1.0874 ドルと前営業日 NY 終値(1.0794 ドル)と比べて 0.0080 ドル程 度のユーロ高水準だった。11 月米 PPI が米国のインフレ鈍化を裏付ける内容だったことから、全般ドル 売りが先行。FOMC の結果を受けて米利下げ観測が高まると、ドル売りが加速した。前日の高値 1.0827 ド ルを上抜けて一時 1.0896 ドルまで上値を伸ばした。

なお、市場では「FOMC の内容はかなりハト派的だった」との声が聞かれた。 ユーロ円は続落。終値は 155.38 円と前営業日 NY 終値(157.00 円)と比べて 1 円 62 銭程度のユーロ安 水準。ユーロドルの上昇につれた買いが入った半面、ドル円の急落につれた売りが出ると一時本日安値と なる 155.38 円まで値を下げた。

【本日の東京為替見通し】FOMC後の米利下げ観測高まりドルの上値は重いか

本日のドル円相場は、昨日の FOMC の結果を受けて上値が重い動きとなりそうだ。昨日はパウエル FRB 議長が「きょうの会合で利下げのタイミングを協議した」「政策金利は今サイクルのピークかそれに近い と考えている」などと発言。ドットプロットでは FF 金利見通しを、2024 年末時点の中央値を 4.6%と、 前回の 5.1%から下方修正した。この結果を受けてシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが FF 金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、来年 3 月の米連邦公開市場委員会(FOMC) での利下げ予想は、前日まで約 41%が利下げ予想だったものが、約 78%まで上昇している。米金利の低 下がドル全体の重しになるだろう。

FOMC 後に米 10 年債利回りは一時 8 月 10 日以来の 4.00%台まで低下したが、同日のドル円は 143-144 円台で取引されていた。米金利の低下幅とドル円の下落幅はほぼ同じだが、日銀がマイナス金利政策解除 に舵を切るとの観測が強いことで、円は更に買い上げられる可能性もありそうだ。

来週 18-19 日に行われる日銀政策決定会合を前に、会合前は日銀の政策を事前に小出しに伝えようと する日経新聞は、本日も「金利のある世界に備え」との見出しで、マイナス金利政策解除だけではなく「継 続的利上げ 耐えられるか」とも記載している。もっとも、同紙が指摘するように、市場関係者の中で来 週にマイナス金利政策解除を行うとの予想はほぼないが、地ならしを始める可能性はありそうだ。あくま でも観測記事ではあるが、海外勢はこのような記事に対しては反応が敏感なこともあり、ドル円の上値を 抑える一因になりそうだ。また、昨日発表された日銀短観の、全規模・全産業の 2023 年度の下期想定為 替レートは 139.97 円となっている。現行水準から 3 円程度しかないことで、円安局面では輸出予約が入 ることも考えられる。なお、本日は本邦からそれぞれ 10 月の機械受注、鉱工業生産確報、設備稼働率な どが発表されるが、円高基調ということもありポジティブサプライズには要警戒となりそうだ。

円以外の通貨では、オセアニア通貨の動きに注目したい。11 月の食品価格が 3 カ月連続でマイナスと なり、インフレ鈍化予想となっているニュージーランドだが、本日早朝に発表された 7-9 月期の国内総 生産(GDP)はプラス予想がマイナスに転じ、NZ ドルは上値が重く推移している。この後に豪州から 11 月の雇用統計が発表されることで、オセアニア通貨が軟調地合いとなっている中で、ネガティブサプライ ズへの反応が敏感になりそうだ。

【本日の重要指標】

<国内>

○08:50 ◎ 10 月機械受注(予想:船舶・電力除く民需 前月比▲0.5%/前年比▲5.1%)

○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)

○13:30 ◇ 10 月鉱工業生産確報

○13:30 ◇ 10 月設備稼働率

<海外>

○09:01 ◇ 11 月英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格(予想:▲57)

○09:30 ◎ 11 月豪雇用統計(予想:失業率 3.8%/新規雇用者数 1.10 万人)

○16:00 ◎ 11 月スウェーデン消費者物価指数(CPI、予想:前月比 0.6%/前年比 6.0%)

コア指数(予想:前月比 0.5%/前年比 3.9%)

○16:30 ◇ 11 月スイス生産者輸入価格

○17:30 ☆ スイス国立銀行(中央銀行、SNB)、政策金利発表(予想:1.75%で据え置き)

○18:00 ◎ ノルウェー中銀、政策金利発表(予想:4.25%で据え置き)

○18:30 ◇ 11 月南アフリカ卸売物価指数(PPI、予想:前月比 0.1%/前年比 5.5%)

○21:00 ☆ 英中銀(BOE)、政策金利発表(予想:5.25%で据え置き)

○21:00 ☆ 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨

○21:00 ◎ 10 月ブラジル小売売上高(予想:前年同月比 1.8%)

○22:15 ☆ 欧州中央銀行(ECB)定例理事会、終了後政策金利発表(予想:4.50%で据え置き)

○22:30 ◇ 10 月カナダ製造業出荷(予想:前月比▲2.7%)

○22:30 ☆ 11 月米小売売上高(予想:前月比▲0.1%/自動車を除く前月比▲0.1%)

○22:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:22.0 万件/188.7 万人)

○22:30 ◇ 11 月米輸入物価指数(予想:前月比▲0.8%)

○22:45 ☆ ラガルド ECB 総裁、定例記者会見

○24:00 ◇ 10 月米企業在庫(予想:前月比横ばい)

○15 日 04:00 ◎ メキシコ中銀、政策金利発表(予想:11.25%で据え置き)

○欧州連合(EU)首脳会議(15 日まで、ブリュッセル)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

14 日 04:04 米連邦公開市場委員会(FOMC)声明

「最近の指標は、経済活動が第 3 四半期の好調なペー スから鈍化していることを示している」

「雇用の増加は年初から鈍化したが依然として強く、失 業率も低いままだ」

「インフレは過去 1 年間で緩和したが、依然として高止ま りしている」

「米国の金融システムは健全で強固だ」

「家計や企業の金融および信用状況の引き締まりが経 済活動、雇用、インフレの重しになる可能性がある」

「これらの影響の程度は引き続き不透明だ。委員会はイ ンフレのリスクを引き続き大いに注視している」

「委員会は雇用最大化と長期的な 2%のインフレ率の達 成を目指す」

「これらの目標を支援するため、委員会はフェデラルファ ンド(FF)金利の目標誘導レンジを 5.25-5.50%に維持 することを決定した」

「委員会は追加の情報と金融政策への意味を引き続き 評価する」

「徐々にインフレ率を 2%に戻すために適切とみられる 追加的な金融政策の引き締めの程度を決めるに当たり、 委員会は金融政策の度重なる引き締め、金融政策が経 済活動とインフレ率に及ぼす影響の遅れ、および経済と 金融の動向を考慮する」

「さらに、以前発表された計画で説明されている通り、委 員会は保有する米国債およびエージェンシーローン担 保証券の削減を続ける」

「委員会は、インフレ率を 2%の目標に戻すことに強く取 り組む」

「金融政策の適切な姿勢を評価するに当たり、委員会は 今後もたらされる経済見通しに関する情報の意味を引 き続き監視する」

「もしも委員会の目標の達成を妨げる可能性があるリス クが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調 整する準備がある」

「委員会の評価は、労働市場の状況、インフレ圧力、イ ンフレ期待、金融と世界の動向を含む幅広い情報を考 慮する」

「今回の金融政策決定は全会一致」

14 日 04:35 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長

「インフレは緩和したものの、依然として高すぎる」

「引き締めの効果はまだ十分に感じられていない可能 性」

「政策は制限領域にうまく移行した」

「失業の急増なしにインフレが緩和したことは良いニュー ス」

「FOMC は慎重に進んでいる」

「労働市場のリバランスは継続すると予想」

「ここ数カ月のインフレ率低下を歓迎」

「FOMC は雇用市場の緩和が継続すると予想」

「名目賃金の伸びは鈍化しているようだ」

「金利上昇が設備投資に重し」

「FOMC は適切であれば追加引き締めの用意」

「当局者はさらなる利上げの可能性をテーブルから外す ことを望んでいなかった」

「政策金利は今サイクルのピークかそれに近いと考えて いる」

「きょうの会合で利下げのタイミングを協議した」

「FOMC は現状維持が長すぎる場合のリスクを認識」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=200 日線割れ水準で底堅さ示し反発できるか注視>

大陰線引け。低下中の一目均衡表・転換線を追う展開から 下抜けに発展した。一時 142.65 円と、142.40 円台で推移す る 200 日移動平均線を試す動きとなった。まだ 7 日の 141.71 円、8 日の 142.50 円手前に下落はとど まっていた。しかし反発して長い下ひげをともなう足型を形 成した両日と異なり、大きな陰線でしっかり下げた印象。本 日早朝は売りが盛り返し 142 円割れに近づく動き。相場の強 弱を判断する際の分岐点・200 日線を下回る水準から反発できるか注視する状況となっている。


レジスタンス 2 143.93(12/13 レンジ 38.2%水準)
レジスタンス 1 142.89(12/14 オセアニアタイム高値)
前日終値 142.89
サポート 1 141.71(12/7 安値)

<ユーロドル=基準線を支えとした底堅い推移予想>

陽線引け。前日 12 日に押し返された一目均衡表・転換線 の抵抗をこなし、一目・基準線も上抜けた。1.09 ドル回復を うかがう状況となっている。レンジ切り上げにより、基準線 は横ばいから週明け 18 日にも上昇を再開する公算となって きた。1.0870 ドル前後で推移する 21 日移動平均線付近で上 昇の流れはやや停滞したが、ここからは基準線を支えに底堅く推移するか。


レジスタンス 1 1.0922(ピボット・レジスタンス 1)
前日終値 1.0874
サポート 1 1.0837(日足一目均衡表・基準線)

<ユーロ円=転換線の上昇を待つことできるか注目>

大陰線引け。低下傾向の一目均衡表・転換線付近では動き が重く、円高基調のなか 155.38 円まで下振れた。動きを弱 めたものの、154 円前半で上昇中の 200 日移動平均線がまだ 支えになる可能性を残している範囲の推移。同線を下値に控 えるなかレンジ切り下げを回避して、上昇へ転じる兆しも見 えてきた転換線(現在 156.58 円)の動きに沿って戻す機会をうかがう状況といえる。

レジスタンス 1 156.18(12/13 レンジ 38.2%水準)
前日終値 155.38
サポート 1 154.68(ピボット・サポート 1)

<豪ドル円=雲を下抜け、雲下限付近のさえない動き想定>

上影陰線引け。一目均衡表・雲を下回る重い動きとなった。 雲の中で戻りを試す場面もあったが押し返され、上値の重さ を示す上ひげをつけた足型を形成している。雲の下限 95.33 円近辺のさえない推移が続くか。一目・転換線も現水準 95.85 円から低下してくる見込みで次第に抵抗を強めてきそうだ。

レジスタンス 1 95.67(12/13 高値)
前日終値 95.18
サポート 1 94.61(12/14 オセアニアタイム安値)