デイリーレポート 2023年12月19日

December 19, 2023

【前日の為替概況】ドル円、一時 143.16 円まで上げ幅拡大 米長期金利の上昇を受け

18 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。終値は 142.78 円と前営業日 NY 終値(142.15 円) と比べて 63 銭程度のドル高水準だった。米長期金利の指標となる米 10 年債利回りが 3.96%台まで上昇 するとドル買いが進行。明日の日銀金融政策決定会合の結果に注目が集まる中、円売りも優勢となり、前 週末の高値 142.47 円や 14 日の高値 142.90 円を上抜けて一時 143.16 円まで上値を伸ばした。200 日移動 平均線が位置する 142.57 円を上抜けたことでテクニカル的にも買いが入りやすかった。

なお、市場の関心は明日の日銀会合の結果に向いており、「会合の結果と植田和男総裁の会見から政策 修正などのタイミングを探りたいとの思惑が強い」もよう。 ユーロドルは反発。終値は 1.0924 ドルと前営業日 NY 終値(1.0895 ドル)と比べて 0.0029 ドル程度の ユーロ高水準だった。ただ、NY 市場に限れば 1.09 ドル台前半での狭いレンジ取引に終始した。ユーロ豪 ドルやユーロポンドなどユーロクロスの上昇につれた買いが相場を下支えした半面、米長期金利の上昇に 伴うユーロ売り・ドル買いが出たため相場は方向感が出なかった。

市場の関心が高かった米欧の主要中銀による金融政策の発表を終えたことで、方向感が出にくい面もあ った。NY 時間の安値は 1.0907 ドル、高値は 1.0931 ドルで値幅は 0.0024 ドル程度と小さかった。

ユーロ円は反発。終値は 155.97 円と前営業日 NY 終値(154.85 円)と比べて 1 円 12 銭程度のユーロ高 水準。ドル円の上昇につれた円売りが出たほか、ユーロクロスの上昇につれたユーロ買いが入ると一時 156.31 円と本日高値を付けた。なお、ユーロ豪ドルは一時 1.6321 豪ドル、ユーロポンドは 0.8647 ポン ド、ユーロカナダドルは 1.4645 カナダドルまで値を上げた。

【本日の東京為替見通し】ドル円、昨年 12 月の日銀ショックの再現に要警戒か

本日の東京外国為替市場のドル円は、植田日銀総裁のチャレンジング発言を受けて昨年 12 月の日銀金 融政策決定会合の再現に警戒する展開が予想される。

今月 6 日の氷見野副総裁による大規模な金融緩和政策からの正常化への言及と、7 日の植田総裁による 年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる、との発言により、日銀ショックの再現の可能 性が高まっている。

昨年 12 月 19-20 日の日銀会合では、金融緩和政策の修正が決定され、日銀ショックが市場を襲った。 すなわち、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)で 0%程度に誘導している長期金利(10 年国債金利)の上限と下限を従来の「0.25%程度」から「0.5%程度」に拡大された。当時のドル円の動 きを振り返ると、高値 137.48 円から安値 130.58 円まで約 7 円急落。最終的には、今年 1 月 16 日の安値 127.23 円まで約 10 円下落していった。

今回も、昨年同様の日銀ショックが再現された場合、142 円台から 135 円程度までの急落を警戒すべき かもしれない。ドル円のテクニカル分析では、エリオット波動での最終第 5 波動となる「斜行三角形」が 完成しており、目標値 137.25 円が点灯している。 想定される金融政策正常化の道筋としては、「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」 というガイダンスが削除された場合。そして、植田総裁がチャレンジング発言で示唆していたように、マ イナス金利の解除が議論された場合となる。

日銀の金融政策予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場では、来年 1 月 の会合での利上げ確率が一時約 4 割まで高まった。

一方で、11 日の報道「日銀関係者は、賃金と物価の好循環の実現に向けた十分な確証が得られていな いため、マイナス金利や YCC の撤廃などを今月急ぐ必要はほとんどないとの認識」を裏付ける現状維持と なった場合、ドル円は 6 日高値圏となる 147 円半ばまでの上昇が予想される。

個人消費は 7-9 月期実質国内総生産(GDP)の 2 期連続減少を踏まえ、従来の判断「物価上昇の影響を 受けつつも、緩やかなペースで着実に増加している」が維持、または変更されるのかに注目しておきたい。 なお、自民党の派閥による政治資金パーティー収入の裏金化問題を受けた政局混迷が、本日の日銀の金 融政策に与える影響も警戒されている。緩和重視の安倍派の勢力が低下していることで、日銀の自由度が 高まる可能性、あるいは、政治の混乱の最中には景気への影響が大きい金融政策正常化の判断は避けられ る可能性が指摘されている。

【本日の重要指標】

<国内>

○未定 ☆ 日銀金融政策決定会合(終了後、決定内容発表、予想:当座預金金利▲0.10%で据え置き)

○15:30 ☆ 植田和男日銀総裁、定例記者会見

○未定 ◇ 12 月月例経済報告

<海外>

○09:00 ◇ 12 月 ANZ 企業信頼感

○09:30 ◎ 12 月豪準備銀行(RBA)理事会議事要旨

○17:00 ◎ シムカス・リトアニア中銀総裁、講演

○18:00 ◎ カジミール・スロバキア中銀総裁、講演

○19:00 ◎ ブイチッチ・クロアチア中銀総裁、講演

○19:00 ☆ 11 月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)改定値(予想:前年比 2.4%)

○19:00 ☆ 11 月ユーロ圏 HICP コア改定値(予想:前年比 3.6%)

○22:00 ◎ ブリーデン英中銀(BOE)副総裁、講演

○22:30 ◎ 11 月カナダ消費者物価指数(CPI、予想:前月比▲0.1%/前年比 2.9%)

○22:30 ◇ 11 月カナダ鉱工業製品価格(予想:前月比▲0.6%)

○22:30 ◇ 11 月カナダ原料価格指数(予想:前月比▲3.5%)

○22:30 ◎ 11 月米住宅着工件数(予想:136.0 万件、前月比▲0.9%)

◎ 建設許可件数(予想:146.5 万件、前月比▲2.2%)

○23:30 ◎ バーキン米リッチモンド連銀総裁、講演

○20 日 02:30 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演

○20 日 06:00 ◎ 10 月対米証券投資動向

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

18 日 06:34 グールズビー米シカゴ連銀総裁

「米経済のソフトランディングについて勝利宣言は時期 尚早」

「2023年は失業率の大幅な上昇を伴わず、インフレ率が 大きく低下することになりそう」

「目標に向かって進んでいると確信できるまでインフレ率 を低下させなければならない」

18 日 19:39 ブロードベント・イングランド銀行(英中銀、 BOE)副総裁

「不確実性が BOE の反応機能を遅らせる」

「賃金上昇率のより明確な低下が MPC が下向きトレンド と確信する前に必要だろう」

「英国は潜在成長率を下回る期間が長引く可能性」

18 日 21:42 カジミール・スロバキア中銀総裁

「性急な利下げは長すぎる引き締めのリスクよりも重大」

「過去数ヵ月に見られたインフレ率の好転は、勝利を宣 言して次の段階に進むには十分ではない」

「インフレ率が 2025 年に目標に到達し、ソフトランディン グ・シナリオでこれを達成できるとの確信を深めている」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=144 円前半の転換線を抵抗に戻り売りスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシ グナルが点灯している。2 手連続陽線で上昇中の 200 日移動 平均線を上回ったものの、依然として転換線を下回って引け ており、反落の可能性が示唆されている。 本日は 144 円前半の転換線を抵抗に戻り売りで臨み、同線 を上抜けた場合は手仕舞い。


レジスタンス 2 145.99(12/13 高値)
レジスタンス 1 144.15(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 142.78
サポート 1 141.43(12/15 安値)
サポート 2 140.97(12/14 安値)

<ユーロドル=上向きの基準線を支持に押し目買い>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシグ ナルが点灯している。3 手連続陽線の後に孕み線で反落した ものの、抱き線で切り返して転換線を上回って引けており、 続伸の可能性が示唆されている。本日は、転換線の下で 1.0850 ドル台まで水準を上げてき た基準線を支持に押し目買いスタンスで臨みたい。基準線を下抜けた場合は手仕舞い。


レジスタンス 1 1.1009(12/14 高値)
前日終値 1.0924
サポート 1 1.0855(日足一目均衡表・基準線)

<ポンド円=低下中の転換線を抵抗に戻り売りスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、雲の下で引けているため三役逆転の強い売りシグナ ルが点灯している。孕み線で反発したものの転換線を下回っ て引けており、反落の可能性が示唆されている。 本日は 181 円後半まで低下してきた転換線を抵抗に戻り売 りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。


レジスタンス 1 181.70(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 180.58
サポート 1 179.83(12/15 安値)

<NZ ドル円=昨日高値の上、転換線を抵抗に戻り売り>

陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、本日時点の雲の上限 88.94 円を下回って引けている ことで売りシグナルが優勢な展開となっている。2 手連続陽 線でも転換線を下回って引けており、反落の可能性が示唆さ れている。本日は昨日高値の上に位置する転換線を抵抗に戻り売り スタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 89.24(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 88.68
サポート 1 87.77(12/14 安値)