デイリーレポート 2024年2月9日
February 9, 2024
【前日の為替概況】 内田日銀副総裁発言で円は全面安対ドル149.48円、対ユーロ160.99円
8日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。終値は149.32円と前営業日NY終値(148.18円)と 比べて1円14銭程度のドル高水準だった。内田真一日銀副総裁が東京時間に「仮にマイナス金利を解除 しても、その後にどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく ことになる」と発言したことを受けて、日銀の低金利政策が続くとの見方が強まると、海外市場に入って も円売りが続いた。一方、堅調な米雇用情勢などを背景に米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ観測は 後退しており、ドルは引き続き買われやすい地合いとなった。1時前には一時149.48円と昨年11月27 日以来の高値を付けた。
ユーロドルは小幅ながら3日続伸。終値は1.0778ドルと前営業日NY終値(1.0772ドル)と比べて0.0006 ドル程度のユーロ高水準となった。米長期金利の指標となる米10年債利回りが4.16%台まで上昇すると ユーロ売り・ドル買いが先行。前日の安値1.0752ドルを下抜けて一時1.0742ドルまで値を下げた。前週 分の米新規失業保険申請件数が21.8万件と予想の22.0万件より強い内容だったこともユーロ売り・ドル 買いを促した。
ただ、5・6日の安値1.0723ドルがサポートとして意識されると買い戻しが優勢に。ユーロ円の上昇に つれた買いも入ると、1.0783ドル付近まで持ち直した。欧州中央銀行(ECB)高官から早期利下げ観測を けん制する発言が相次いだことも相場の支援材料。
なお、ウンシュ・ベルギー中銀総裁は「賃金上昇が利下げを阻んでいる」と述べたほか、レーンECB 専務理事兼チーフ・エコノミストは「2%目標への道筋確保には一段のディスインフレが必要」などと発 言。ホルツマン・オーストリア中銀総裁は「ECBが今年利下げしない可能性は確かにある」と話した。
ユーロ円は続伸。終値は160.94円と前営業日NY終値(159.62円)と比べて1円32銭程度のユーロ高 水準。内田日銀副総裁がマイナス金利解除後も緩和的な金融環境が続くとの見解を示したことで、海外市 場でも円安が進んだ。5時30分前には一時160.99円と本日高値を更新した。
クロス円も堅調だった。ポンド円は一時188.49円、豪ドル円は97.04円、NZドル円は91.04円、カナ ダドル円は111.04円、スイスフラン円は170.96円、南アフリカランド円は7.89円まで値を上げた。
【本日の東京為替見通し】 ドル円、3月の日米金融政策転換の見送り観測から堅調推移か
本日の東京外国為替市場のドル円は、3月の日米金融政策転換の見送り観測から上値を探る展開が予想 される。
昨年のドル円は、早期の米連邦準備理事会(FRB)による利下げ開始と日銀によるマイナス金利解除観 測から、昨年11月13日の高値151.91円から12月28日の安値140.25円まで11.66円下落した。ただし 今年は、パウエルFRB議長や内田日銀副総裁の発言で日米金融政策の早期転換観測が後退。これを背景に、 昨年の下落幅の76.4%戻し(149.16円)を上回り、全値戻しの可能性が高まりつつある。なお、昨年11 月13日のドル円の高値151.91円の時の米10年債利回りは4.696%まで上昇しており、今後も米10年債 利回りの動向を見極めて行くことになる。
今週のドル円は、5日にパウエルFRB議長の発言「3月以降まで利下げに踏み切るのを待つ公算が大き い」を受けて、148.89円(※米10年債利回り4.16%)までドル高が進行。昨日8日は内田日銀副総裁の 発言「緩和的な金融環境を維持していく」の後、年初来高値となる149.48円(※米10年債利回り4.17% 付近)まで上げ幅を拡大した。
内田日銀副総裁は、企画局長(2012年~17年)として、雨宮日銀前副総裁とともに、黒田第31代日銀 総裁が打ち出した「大規模な量的・質的金融緩和政策」(2013年4月)や「マイナス金利政策」(2016年 1月)、「イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)」(2016年9月)政策の企画・立案に関与し てきたキーパーソンである。
内田副総裁は、昨日、マイナス金利解除後の短期政策金利について、今後の経済・物価情勢次第になる としながらも、「どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく」 とのハト派的な見解を示した。 もっとも同副総裁は、1月の日銀金融政策決定会合の「主な意見」、経済・物価情勢の展望(展望リポ ート)、植田日銀総裁などによる物価見通し実現の「確度」が高まりつつあるとの見解には同意していた。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◇ 1 月マネーストック M2
<海外>
○16:00 ◎ 1 月独消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比 0.2%/前年比 2.9%)
○16:00 ◎ 1 月ノルウェーCPI(予想:前月比 0.1%/前年比 4.6%)
○16:00 ◇ 12 月トルコ鉱工業生産
○19:30 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演
○21:00 ◇ 12 月メキシコ鉱工業生産(季調済、予想:前月比▲0.1%)
○22:30 ☆ 1 月カナダ雇用統計(予想:新規雇用者数変化 1.50 万人/失業率 5.9%)
○23:15 ◎ チポローネ欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演
○10 日 03:30 ◎ ローガン米ダラス連銀総裁、質疑応答
○韓国(旧正月)、中国(旧正月の大晦日)、休場
○米独首脳会談(ワシントン)
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
8 日 09:50 清水日銀理事
「マイナス金利を解除しても緩和的な環境が続く」
「物価目標の実現を見通せれば、大規模緩和の継続の 是非を検討」
「政策修正の内容は、その時の経済・物価・金融情勢次 第」
8 日 10:37 内田日銀副総裁
「賃金上昇を伴う物価目標の実現を目指している」
「物価目標が実現する確度、少しずつ高まっている」
「マイナス金利解除後もどんどん利上げするパスは考え にくい」
「政策修正後の前後で市場に不連続生じないようにオペ などで工夫」
「緩和的な金融環境を維持していくことになる」
「緩和的な金融環境が大きく変化することは想定されな い」
「イールドカーブコントロール(YCC)は量的緩和の一類 型、廃止したら終わりではない」
「予想インフレ率の再下落リスクを意識して緩和政策を 行う必要」
「YCC 見直しの前後で、不連続に国債購入額は大きく変 わらない」
「YCC とその後の国債買い入れは連続的なもの」
「ETF と REIT の購入は、大規模緩和修正後にやめるの が自然」
「利上げのペースは、予想物価のペースや物価ダイナミ ズム次第」
「現状の見通しでは、緩和的な環境が維持される」
「ビハインド・ザ・カーブに陥っていることはない」
「見通しと上下バランスを踏まえ、適切な政策運営をして いる」
「各政策手段は、変えるものを先に決めているわけでは ない」
「今年の賃上げは、昨年より強い可能性がある情報が そろっている」
「時間の経過とともに、2%実現見通せる確度は少しず つ高まっている」
「2%が見通せると判断すれば、大規模緩和の見直しを 検討する」
8 日 16:39 カラハン・トルコ中銀総裁
「インフレ脱却のための努力を続ける 」
「インフレ率が目標に達するまで金融引き締めを維持す る」
8 日 22:15 ウンシュ・ベルギー中銀総裁
「賃金上昇が利下げを阻んでいる」
「より安心できる賃金データが得られるまで待つ価値は ある」
「しかし、賃金の伸びが鈍化しているという強い兆候で はないが、いくつかの兆候はある」
9 日 00:07 マン英中銀金融政策委員会(MPC)委員
「継続的なインフレの勢いと根強い持続性のリスクを認 識」
「労働市場は依然として逼迫している」
「ヘッドラインのインフレ動向はインフレの適切な尺度で はない」
9 日 00:42 レーン ECB 専務理事兼チーフ・エコノミスト
「2%目標への道筋確保には一段のディスインフレが必 要」
「データは目先、予想以上に速いディスインフレを示唆」
9 日 02:35 バーキン米リッチモンド連銀総裁
「経済モデルに基づいて金利をどうすればいいのか分 からない」
「家賃やサービス価格がもっと安くなることを望む」
「利下げへの確信はインフレが一段と抑制されることに よって決まる」
「雇用市場は逼迫しているが、データが示すほど逼迫し ていない」
9 日 02:37 ホルツマン・オーストリア中銀総裁
「ECB が今年利下げしない可能性は確かにある」
「最初の利下げ前に、インフレが抑制されていることを確 認する必要」
9 日 04:14 メキシコ中銀声明
「据え置きは全会一致」
「金融政策スタンスは、インフレ率が 3%目標をカバーす るために必要な軌道に沿ったまま」
「インフレリスクのバランスは引き続き上向き」
「次回の会合で金利調整の可能性を評価する予定」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=2/5 高値を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ
グナルが点灯している。2 手連続陽線で転換線を上回って引
けており、続伸の可能性が示唆されている。
本日は、5 日の高値を支持に押し目買いスタンスで臨み、
下抜けた場合でも転換線までは押し目買いスタンスで臨み
たい。
レジスタンス 2 151.91(2023/11/13 高値)
レジスタンス 1 150.78(2023/11/17 高値)
前日終値 149.32
サポート 1 148.89(2/5 高値)(日足一目均衡表・転換線)
サポート 2 147.69(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロドル=雲の下限を抵抗に戻り売りスタンス>
小陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線
を下回り、雲の下で引けたことで、三役逆転の強い売りシグ
ナルが点灯している。3 手連続陽線でも依然として転換線を
下回って引けており、反落の可能性が示唆されている。
本日は転換線 1.0811 ドルを念頭に置き、雲の下限を抵抗
に戻り売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕舞
い。
レジスタンス 1 1.0828(日足一目均衡表・雲の下限)(日足一目均衡表・雲の下限)
前日終値 1.0778
サポート 1 1.0723(2/5・6 安値) (2023/11/10 安値)
<ユーロ円=転換線・基準線を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
大陽線引け。転換線は基準線と同値、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で推移していることで、買いシグナルが優勢
な展開となっている。2 手連続陽線で転換線や基準線を上回
って引けており、続伸の可能性が示唆されている。
本日は 159.54 円の転換線と基準線を支持に押し目買いス
タンスで臨み、両線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 161.86(1/19 高値)(1/19 高値)
前日終値 160.94
サポート 1 159.54(日足一目均衡表・基準線・転換線)
<豪ドル円=雲の上限を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を
下回り、雲の上で引けているものの、売りシグナルが優勢な
展開となっている。しかし、3 手連続陽線で転換線を上回っ
て引けており、続伸の可能性が示唆されている。
本日は 96.55 円の転換線を念頭に置き、雲の上限を支持に
押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕舞
い。
レジスタンス 1 97.70(1/29 高値)(1/11 高値)
前日終値 96.94
サポート 1 96.32(日足一目均衡表・雲の上限)