デイリーレポート 2023年5月15日

May 15, 2023

【前日の為替概況】ドル円、続伸 期待インフレ率が予想を上回り米金利上昇

12 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。終値は135.70 円と前営業日NY 終値(134.53 円)と比べて1 円17 銭程度のドル高水準だった。米ミシガン大学が発表した5月消費者態度指数(速報値)は57.7と予想の63.0を下回ったものの、消費者の期待インフレ率が予想を上回ったことが分かると米金利の上昇とともに全般ドル買いが活発化。10日の高値135.47円を上抜けて一時135.76円まで上値を伸ばした。主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時102.71と4月10日以来約1カ月ぶりの高値を付けた。

なお、米消費者の期待インフレ率は1年先が4.5%と予想の4.4%を上回ったほか、5年先が3.2%と予想の2.9%を上回り、2011年以来の高水準を記録した。

ユーロドルは続落。終値は1.0849ドルと前営業日NY終値(1.0916ドル)と比べて0.0067ドル程度のユーロ安水準だった。米消費者のインフレ期待が予想を上回ったことが伝わると米金利の上昇とともに全般ドル買いが進行。5時30分前に一時1.0848ドルと4月10日以来約1カ月ぶりの安値を更新した。市場では「根強いインフレ懸念から、米連邦準備理事会(FRB)が政策金利を高水準で据え置くとの見方が増えている」との声が聞かれた。

ポンドドルも全般ドル高が進んだ流れに沿って、一時1.2445ドルまで値を下げた。ベイリー英中銀(BOE)総裁が前日に「利上げを一時停止できる時期に近づいている」との見解を示したことで英利上げ休止観測が浮上し、ポンド売りを促した面もあった。

ユーロ円は4営業日ぶりに反発。終値は147.24円と前営業日NY終値(146.88円)と比べて36銭程度のユーロ高水準。ユーロドルの下落につれた売りが出て一時146.67円と日通し安値を付けたものの、ドル円の上昇につれた買いが入ると持ち直した。2時30分過ぎには147.37円付近まで値を戻した。

【本日の東京為替見通し】ドル円は方向感出ず、今週はリラ・ランドが大相場の可能性高い

今週のドル円は135円を挟んで上下1‐2円の間で方向感のない動きになりそうだ。先週発表された米国の4月の消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)は相次いで市場予想より弱い結果となったが、ミシガン大学の期待インフレ率が上振れたことでドルは上昇に転じた。ドル円は、週初の134.80円台から週引けは135.70円近辺となり、反発して引けている。また、米10年債利回りは、週初の3.44%台から3.46%台へ小幅に上昇して引け「行って来い」の相場になった。市場全体が、今後の米経済の動向に不透明感を持っていることで、トレンドが当面は出来にくい相場展開になり、今週は方向感がなく動く可能性が高そうだ。

不安定な相場をかき乱す要因としては、米国の債務問題がある。しかしながら、「Xデイ」とされている6月を乗りきり、週末に議会予算局(CBO)は、財務省が6月に十分な歳入を確保できれば、米国は7月までデフォルトを回避できると最新の報告書で発表した。CBOは「債務上限が変更されない場合、6月最初の2週間のどこかの時点で政府がすべての債務を返済できなくなる重大なリスクがある」とも指摘しているが、一定の歳入を確保できた場合は、デフォルトリスクとされる「Xデイ」は7月末までずれ込み、債務問題は更に長期戦になる可能性もありそうだ。なお、バイデン米大統領と共和党のマッカーシー下院議長ら議会指導部とは、16日に再協議されると報道されている。

主要通貨に対しては、方向感が出にくいだろうが、本日を含め新興国通貨の値動きは激しくなることが予想される。特にトルコリラと南ア・ランドの動きには要警戒となる。

3月に起こった金融システム不安の高まりにより、投資家の信用収縮の影響で、新興国からの資金流出が顕著になっている。その影響で新興国通貨のリラとランドは軟調地合いとなっていたが、信用収縮による売り要因だけでなく、国内リスクの高まりが更に相場に大きな変動を与えている。

トルコリラは14日に行われた大統領・国民議会選挙の結果次第の動きで乱高下が予想されている。国営通信の最新統計は、エルドアン大統領が選挙に完全勝利するために必要な50%の基準を下回っていることを示したが、野党統一候補のクルチダルオール氏も同様に、過半数に届いていないもよう。両者ともに過半数に届かない場合は、28日の決選投票に選挙が持ち越される可能性が高い。どのような結果になった場合でも非常にボラタイルな動きを見せることは確実で、リラは売り買いどちらにも大きく振れそうだ。

南アに関しては、先週ブリゲティ駐南ア米国大使が「南アがロシアに武器と弾薬を提供している」「武器と弾薬は昨年12月にケープタウンのサイモンズタウン海軍基地に停泊したロシアの船に積み込まれた」と述べたことで、先週12日には対ドルで史上最安値までランド売りが進んだ。週明けのランド相場は、週末にブリゲティ氏が先週の発言について、謝罪をしたことで、ランドは買い戻しが入っているが予断を許さない状況は変わらない。特に懸念されているのが、これまで米国が南アをはじめとした多くのアフリカ諸国に適用していたアフリカ成長機会法(AGOA)に対して、南アが除外される可能性が高まっていることだ。更に、この後広島で開かれるサミットで、米国だけでなく他国も南アに対する制裁に同意する可能性もあり、そのような措置が取られることになった場合は、南ア経済にはこれまでに無いほどの痛手となる。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ◇ 4 月企業物価指数(予想:前月比横ばい/前年比5.6%)

<海外>

○15:00 ◇ 4 月独卸売物価指数(WPI)

○15:00 ◎ 4 月スウェーデン消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.7%/前年比10.7%)

◎ コア指数(予想:前月比0.5%/前年比7.9%)

○15:30 ◇ 4 月スイス生産者輸入価格

○18:00 ◎ 3 月ユーロ圏鉱工業生産(予想:前月比▲2.5%/前年比0.9%)

○21:10 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演

○21:15 ◇ 4 月カナダ住宅着工件数(予想:22.46 万件)

○21:30 ◇ 3 月カナダ卸売売上高(予想:前月比▲0.4%)

○21:30 ◎ 5 月米ニューヨーク連銀製造業景気指数(予想:▲2.5)

○21:45 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、あいさつ

○22:15 ◎ カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、討議に参加

○16 日01:00 ◎ ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼チーフエコノミスト、講演

○16 日05:00 ◎ 3 月対米証券投資動向

○16 日06:00 ◎ クック米連邦準備理事会(FRB)理事、あいさつ

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

12 日05:53 米共和党のマッカーシー下院議長

「債務上限を巡る会談の延期は交渉決裂を意味しない」

12 日16:50 ナーゲル独連銀総裁

「インフレ率は依然としてかなり高過ぎる」

「更なるECB 利上げが必要と現時点ではみえる」

「コアインフレ率は直ぐに鈍化するとは思えない」

12 日18:38 財務省幹部

「金融システム強化に向けた議論は急務」

「ロシア制裁の迂回対策の必要性で一致」

12 日20:52 ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼

チーフエコノミスト

「インフレは依然として著しく高い」

「インフレは急低下すると予想」

「追加引き締めはインフレの持続性次第」

13 日01:57 グールズビー米シカゴ連銀総裁

「インフレ率は依然として高いものの、低下し始めている」

「FRB の責務のうち雇用部分は上手くいっているが、インフレ部分はできていない」

13 日03:01 米ホワイトハウス

「ここ数日間の債務上限に関する会合は生産的だった」

「バイデン大統領は来週初めに債務上限について議員らと協議する予定」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=基準線前後の底堅さ続くと予想>

陽線引け。先週末は3 日以来の高値圏135.70 円台まで上伸した。135.64 円で推移していた一目均衡表・転換線を上回って週の取引を終えている。週明け、転換線は135.07 円へ低下。転換線は、急上昇後の反落があった場合にしっかりした支えになりにくいだろう。しかし、上昇中の一目・基準線が現在134.80 円に位置しており同線前後では底堅さを示すとみる。先週末の上昇幅を帳消しにするような展開は回避できるとみる。

レジスタンス2 136.63(5/3 高値)
レジスタンス1 136.17(ピボット・レジスタンス1)
前日終値 135.70
サポート1 135.08(5/12 レンジ半値水準)

<ユーロドル=雲の下限付近まで下値探る展開を警戒>

陰線引け。1.08 ドル台と4 月10 日以来、1 カ月ぶり以上の安値水準での推移となっている。1.0820 ドル前後で推移する90 日移動平均線や、一目均衡表・雲の上限1.0813 ドルといった水準が目先の支えとなる可能性はある。しかし、軟調継続を想定するなら、雲の下限1.0775 ドル程度まで下値余地を見込んで臨んだほうがよいかもしれない。

レジスタンス1 1.0911(5 日移動平均線)
前日終値 1.0849
サポート1 1.0775(日足一目均衡表・雲の下限)

<ユーロ円=抵抗となる可能性ある転換線付近の動き注視>

陽線引け。11 日安値146.13 円を目先の底に、先週末は147円台へ戻す動きとなった。上昇中の一目均衡表・基準線147.71 円を追うような底堅い流れが続くことも期待できる。しかし、低下傾向の一目・転換線が148.26 円に位置している。同線が抵抗となり、戻りが頭打ちとなる展開も想定しておきたい。

レジスタンス1 147.89(5/9 安値)
前日終値 147.24
サポート1 146.67(5/12 安値)

<豪ドル円=基準線付近で底堅い>

下影極小陰線引け。一目均衡表・基準線前後で推移し、下押し場面を挟みつつも、90 円台に戻して引ける底堅い動きが続いた。基準線は本日90.16 円へ小幅に上昇している。再び下値を探る展開となっても、一目・雲が支えとなりそう。90円台への定着から、11 日高値91.16 円も位置する91 円台を目指す展開を予想する。

レジスタンス1 90.84(5/8-11 下落幅の半値戻し)
前日終値 90.15
サポート1 89.55(日足一目均衡表・雲の上限)