デイリーレポート 2023年5月17日

May 17, 2023

【前日の為替概況】ドル円、4 日続伸 複数経済指標が予想を上回り米長期金利上昇

16日のニューヨーク外国為替市場でドル円は4日続伸。終値は136.39円と前営業日NY終値(136.12円)と比べて27銭程度のドル高水準だった。4月米小売売上高が予想を下回ったことが分かると一時135.69円と日本時間夕刻に付けた日通し安値に面合わせしたものの、前日の安値135.59円が目先サポートとして働くと買い戻しが優勢に。その後発表された4月米鉱工業生産や5月全米ホームビルダー協会(NAHB)住宅市場指数が予想を上回ったことが明らかになると、米長期金利の上昇とともに円売り・ドル買いが活発化した。前日の高値136.32円や3日の高値136.63円を上抜けて一時136.68円まで上値を伸ばした。メスター米クリーブランド連銀総裁が「金利は十分に制限された水準にない」と述べたほか、バーキン米リッチモンド連銀総裁が「インフレを引き下げるために必要なら一段の利上げを実施することに抵抗はない」と発言したこともドル買いを誘った。ただ、米長期金利が上昇幅を縮めると徐々に上値が重くなった。米債務上限問題を巡る先行き不安からダウ平均が一時340ドル超下落したことも相場の重し。

なお、バイデン米大統領はG7広島サミット出席後に予定していた豪州とパプアニューギニア訪問を取りやめ、債務上限を巡る協議のため21日に米国に戻ると伝わった。

ユーロドルは小反落。終値は1.0862ドルと前営業日NY終値(1.0874ドル)と比べて0.0012ドル程度のユーロ安水準だった。欧州時間発表の5月独ZEW景況感指数が予想を下回り、2022年12月以来5カ月ぶりの低水準を記録すると、独景気への警戒感からユーロ売りが先行。米経済指標の上振れで米金利が上昇するとユーロ売り・ドル買いがさらに強まり、一時1.0855ドルと日通し安値を更新した。

ユーロ円は小幅ながら3日続伸。終値は148.16円と前営業日NY終値(148.01円)と比べて15銭程度のユーロ高水準。21時30分過ぎに一時147.73円付近まで売られたものの、アジア時間に付けた日通し安値147.61円が目先サポートとして働くと買い戻しが優勢に。2時前には一時148.50円と日通し高値を更新した。ただ、米国株の下落に伴う売りが出ると148.01円付近まで下押しした。

【本日の東京為替見通し】米両政党のデフォルト回避姿勢でドル底堅いか、豪賃金指数に要注目

本日のドル円は底堅い動きか。米国の債務上限引き上げ問題について、与党民主党だけではなく、昨日共和党のマコーネル上院院内総務も、マッカーシー下院議長(共和党)とともに開いた会見で「我々(共和党と民主党)はともにデフォルト(債務不履行)を避けたい」と発言。いまだに両党は合意に達していないものの、バイデン大統領がアジア・オセアニアの歴訪を短縮し、21日に再協議を行う予定で、問題解決に進めて精力的に取り組んでいる。両党がともにデフォルト回避姿勢を明確にしていることは、ドルの支えとなりそうだ。

先週末に議会予算局(CBO)が、財務省が6月に十分な歳入を確保できれば、米国は7月までデフォルトを回避できると最新の報告書で発表している。民主党は短期的な解決は否定しているものの、ある程度の歳入を確保すれば、少なくともデフォルトリスクとされる「Xデイ」が6月から7月末までずれ込み、債務問題解決まで時間を稼ぐこともできることになる。

また、債務上限問題以外でも、昨日はメスター米クリーブランド連銀総裁、バーキン米リッチモンド連銀総裁などがタカ派発言を繰り返したことも、ドル円の買い要因。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、1カ月前は9月の利下げ予想が約68%だったものが、1週間前は約62%、そして昨日は55%程度まで低下している。銀行の信用収縮問題が、今後どの程度米経済に悪影響を与えるかが未知数なことで、年後半に利下げを回避することが出来るかはいまだに定かではない。しかし、徐々に利下げ予想が低下していることはドル買いにつながる。

本日は本邦から1-3月期実質国内総生産(GDP)速報値、3月鉱工業生産確報、同月設備稼働率などの複数経済指標が発表される。GDPでは円相場が多少の反応はするだろうが、ここ最近は市場が大きく反応することがなく、東京時間は需給の流れが円相場のトレンドを作ることになるか。

本邦以外では、豪州の1‐3月期賃金指数に注目したい。前年比では前回の3.3%増から3.6%増への上昇予想となっている。この予想は、昨日豪準備銀行(RBA)の5月議事要旨で公表された、RBA予想の「1‐3月四半期の賃金上昇率が年率約3.5%から4%程度」に沿ったものとなる。このレンジの中心値程度に収まれば市場の動意は薄いだろうが、レンジの上限や下限、またはレンジから外れた場合は豪ドルが大

きく動く可能性に留意したい。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ☆ 1-3 月期実質国内総生産(GDP)速報値(予想:前期比0.1%/前期比年率0.7%)

○13:30 ◇ 3 月鉱工業生産確報

○13:30 ◇ 3 月設備稼働率

<海外>

○08:00 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、グールズビー米シカゴ連銀総裁、討議に参加

○10:30 ◎ 1-3 月期豪賃金指数(予想:前期比0.9%)

○16:15 ◎ デコス・スペイン中銀総裁、講演

○18:00 ☆ 4 月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)改定値(予想:前年比7.0%)

○18:00 ☆ 4 月ユーロ圏HICP コア改定値(予想:前年比5.6%)

○18:00 ◎ エルダーソン欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演

○19:00 ◎ センテノ・ポルトガル中銀総裁、記者会見

○20:00 ◇ MBA 住宅ローン申請指数

○20:00 ◇ 3 月南アフリカ小売売上高(予想:前年同月比▲0.7%)

○21:00 ◎ 3 月ブラジル小売売上高(予想:前年同月比▲0.1%)

○21:30 ◇ 3 月対カナダ証券投資

○21:30 ◎ 4 月米住宅着工件数(予想:140.0 万件、前月比▲1.4%)

◎ 建設許可件数(予想:143.0 万件、前月比横ばい)

○23:30 ◇ EIA 週間在庫統計

○18 日00:15 ◎ デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁、講演

○18 日01:00 ☆ 1-3 月期ロシア国内総生産(GDP)速報値(予想:前年比▲2.1%)

○18 日02:00 ◎ 米財務省、20 年債入札

○ノルウェー(憲法記念日)、休場

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

16 日05:22 イエレン米財務長官

「債務上限の引き上げがなければ、早くて6 月1 日にデフォルトになる可能性」

16 日21:58 メスター米クリーブランド連銀総裁

「次の会合まで4 週間あり、もっとデータを見る必要がある」

「労働市場の状況に若干の減速が見られるが、依然として労働市場はかなりタイト」

「金利は十分に制限された水準にない」

16 日22:13 米共和党のマッカーシー下院議長

「昨晩から債務協議に進展はない」

16 日22:18 ホルツマン・オーストリア中銀総裁

「金利が4%に達するまで利上げを停止するべきでない」

「0.25%を超える利上げはおそらく今は不可能」

「今年、コアインフレがさらに鈍化する可能性は低い」

16 日23:24 シューマー米上院院内総務(民主党)

「民主党は債務上限について誠実に交渉している」

「誰もデフォルトを人質にすべきではない」

16 日23:38 バーキン米リッチモンド連銀総裁

「インフレについてはまだ納得が得られない」

「6 月FOMC までには多くのデータと債務上限がある」

「需要は冷え込んでいるがまだ冷え切っていない」

「銀行間で見られる回復力に勇気づけられる」

「必要なら追加利上げの可能性」

「インフレを最終的かつ確実に沈静化させたい」

17 日00:28 バー米連邦準備理事会(FRB)副議長(銀行監督担当)

「地方銀行は健全で回復力がある」

「FRB は商業用不動産のリスクを注意深く監視」

17 日01:28 ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁

「経済は容認できないほどの高インフレに直面」

「経済はより正常なパターンに戻り始めている」

「需要と供給のバランスが戻り始めている」

「インフレは徐々に正しい方向に向かっている」

「今年も経済成長が続くと予想」

「政策の効果を実感するには時間がかかる」

17 日03:27 米ホワイトハウス

「G7 後のバイデン大統領の渡航計画を再考」

「(債務上限交渉によるバイデン大統領の渡航変更の可能性について問われ)豪州について検討中」

「G7 首脳はバイデン大統領が米債務不履行に陥らないようにする必要があることを理解」

17 日03:36 グールズビー米シカゴ連銀総裁

「6 月FOMC については何も決めていない」

「5 月の金利決定は際どいところだったと感じた」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=下ひげともなう底堅さ示す足型>

下影小陽線引け。下押しが先行したものの135.69 円までにとどまった。前日安値135.59 円を割り込むことなく戻している。底堅さを示す下ひげをともなう足型を形成した。一時136.68 円まで上昇と、137 円台で推移する200 日移動平均線を狙う状況が継続。高値圏で伸び悩む場面を挟みつつも、じり高の流れをたどるとみる。

レジスタンス2 137.77(5/2 高値)
レジスタンス1 136.82(ピボット・レジスタンス1)
前日終値 136.39
サポート1 135.69(5/16 安値)

<ユーロドル=戻り局面に抵抗が控え、さえない推移>

上影小陰線引け。1.09 ドル台では上値が重く、1.08 ドル台中心のさえない推移が続いた。一目均衡表・雲の上限1.0826 ドルや90 日移動平均線といった水準で底堅さを示すことができるか見定める状況が継続。雲付近から反発できても、低下傾向の一目・転換線1.0950 ドルや、基準線1.0971ドルが上値を抑えそうな状態も変わらない。

レジスタンス1 1.0935(5/12 高値)
前日終値 1.0862
サポート1 1.0823(90 日移動平均線)

<ユーロ円=上昇中の基準線を追うような流れ続くか>

小陽線引け。低下傾向の一目均衡表・転換線147.70 円付近で動意が滞りかける場面もあった。しかし底堅さを維持し、10 日以来の水準148.50 円まで一時上昇している。上昇中の一目・基準線を追うような上向きの流れが続くか。基準線は本日148.69 円へ切り上がり、明日は148.80 円台へ上昇して、その後に同水準付近で横ばいとなる見込み。レンジを切り上げ、基準線の上昇をともなう上伸に持ち込めるか注視する局面にある。

レジスタンス1 148.67(5/10 高値)
前日終値 148.16
サポート1 147.70(5 日移動平均線)

<豪ドル円=転換線が振れる可能性あり不安定さ示唆>

下影陰線引け。90.57 円へ下押し先行後、91 円台へ戻したものの伸び悩み、結局90 円台へ押し返されてNY を引けている。一目均衡表・転換線90.52 円が目先のサポートになった。しかし同線は本日90.84 円へ切り上がた後、現状からすればいったん低下へ転じる見込み。不安定な相場推移の示唆ともいえる。90.29 円前後で推移する90 日移動平均線や一目・基準線90.16 円をここからの目先的な支えとしつつも、11 日安値89.80 円や一目・雲の上限89.55 円といった水準まで下値を探るリスクも念頭に置いて臨むべきか。

レジスタンス1 91.32(5/15 高値)
前日終値 90.77
サポート1 90.29(90 日移動平均線)