デイリーレポート 2024年3月21日

March 21, 2024

【前日の為替概況】ドル円、年初来高値151.82円から150.73円まで反落、ユーロ円は165.35円へ

20日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは3営業日ぶりに反発。終値は1.0922ドルと前営業日 NY終値(1.0866ドル)と比べて0.0056ドル程度のユーロ高水準だった。ラガルド欧州中央銀行(ECB) 総裁が「今後数カ月のうちに利下げ開始に向けた確信の度合いを高められるような証拠を得られるだろ う」との認識を示すと、ECBの利下げ開始時期が近づいているとの見方から、欧州市場では一時1.0836 ドルまで値を下げた。ただ、NY市場に入ると買い戻しが優勢に。米連邦準備理事会(FRB)は今日まで開 いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を市場予想通り据え置き、政策金利見通し(ドット・チャ ート)では年内3回としていた利下げ予想を維持した。市場では年内の利下げ予想が2回に減ると警戒す る向きもあっただけに、FOMC後はドル売りが優勢となり一時1.0923ドルと日通し高値を更新した。

なお、パウエルFRB議長はFOMC後の会見で「インフレは大幅に緩和したが継続的な進展は保証されて いない」「インフレ率は依然として高すぎる。今後の道筋も不透明」などと発言。利下げ回数を減らさな かった理由については「インフレ率が2%に向かって徐々に低下し、時には険しい道もあるという全体的 なストーリーは変わっていないと思う」と話した。

ドル円は7日続伸。終値は151.26円と前営業日NY終値(150.86円)と比べて40銭程度のドル高水準 だった。日銀が緩和的な金融環境を維持するとの見方を背景に、この日も円売りが継続。FOMC結果公表 を前に思惑的なドル買いも入り、22時30分過ぎには一時151.82円と年初来高値を更新した。

FOMCが公表したドット・チャートでは年内利下げ予想が3回に維持された一方、2025年・2026年の金 利見通しが上方修正され、来年以降の利下げが昨年12月時点の予測よりも緩やかになるとの見通しが示 された。市場では「景気を下支えするために利下げを急ぐ必要性はますます薄まっている。全体的には 12月時点よりもタカ派的」との見方があり、当初は売買が交錯した。日経新聞の「日銀の追加利上げ『10 月』『7月』観測」との記事が英語で伝わると円買いが強まり、一時150.73円と日通し安値を付けた。

もっとも、当該記事はあくまでも「観測記事」との見方から、円買いでの反応は一時的だった。日銀が 緩和的な環境を維持するとの期待は根強く、引けにかけては151.40円付近まで持ち直している。

ユーロ円は続伸。終値は165.21円と前営業日NY終値(163.92円)と比べて1円29銭程度のユーロ高 水準。日銀の利上げに関する記事を受けて一時164.31円付近まで売られる場面もあったが、下押しは限 定的だった。日銀の緩和的スタンスが当分継続されるとの見方から、全般円売りが優勢となり、5時30 分前には165.35円と2008年8月以来の高値を更新した。ダウ平均が400ドル超上昇するなど、米株式相 場が底堅く推移したこともリスク・オンの円売りを誘った。

ポンド円は193.54円と15年8月以来の高値、豪ドル円は99.66円と14年12月以来の高値、カナダド ル円は112.26円と08年1月以来の高値、メキシコペソ円は9.08円と08年10月以来の高値を更新した。

【本日の東京為替見通し】ドル円、日米金融政策で底堅い展開だが円買い介入には要警戒か

本日の東京外国為替市場のドル円は、19日の日銀金融政策決定会合でのハト派的利上げと、20日の米 連邦公開市場委員会(FOMC)でのタカ派的据え置きを受けて底堅い展開が予想されるものの、ドル売り・ 円買い介入の可能性には警戒しておきたい。

19日の日銀金融政策決定会合では、マイナス金利(▲0.10%)からゼロ金利へ引き上げられたものの、 「当面の間は緩和的な金融環境を維持する」と表明されたことで、ハト派的な利上げとなり、ドル円は 151.82円まで上昇して年初来高値を更新している。

20日のFOMCでは、5会合連続での政策金利の据え置きが決定されたものの、ドット・プロット(金利 予測分布図)で2024年の3回の利下げ予想が前回の11人から10人へ減り、2025年の利下げ予想が前回 の4回から3回へ減ったことで、ややタカ派的な据え置きとなっている。

日銀金融政策決定会合での「当面の間は緩和的な金融環境を維持する」との表現は、2006年7月にゼ ロ金利から0.25%へ引き上げられた時と同じであり、2007年2月に0.50%へ引き上げられている。昨日 も「日銀は7月か10月に追加利上げを検討している」との観測記事が報じられており、今後も予断を許 さない状況が続くことになる。

岸田首相は年初の施政方針演説で「2024年に物価高を上回る所得を実現する」と公約していた。春季 労使交渉(春闘)では33年ぶりの高水準の賃上げが実現し、6月の所得税・住民税の定額減税により所 得面は実現しつつある。4月の衆議院補欠選挙や秋の総裁選に向けて、物価高の抑制は喫緊の課題である と思われることで、輸入物価の上昇要因となる円安に関しては、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介 入によって抑えたいのではないだろうか。また、植田日銀総裁は、物価を押し上げる主役が「第1の力」 から「第2の力」に徐々にバトンタッチし、賃金と物価の好循環が強まっていく姿をメインシナリオと考 えている。ドル円が151円台に乗せていることで、円安による輸入物価上昇の価格転嫁による物価上昇圧 力「第1の力」への警戒感が高まりつつある。

2022年秋のドル円151円台は、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入で反転させられており、今 回も円買い介入の可能性には警戒しておきたい。

8時50分に発表される2月の本邦の貿易統計では、季節調整前で8102億円の赤字、季節調整済で8401 億円の赤字と予想されており、本邦実需筋による円売り圧力を確認することになる。

9時30分に発表される2月の豪雇用統計では、失業率が4.0%、新規雇用者数が+4.00万人と予想され ている。18-19日の豪準備銀行(RBA)理事会では政策金利4.35%が据え置かれたばかりであり、予想か ら大幅に外れない限り、豪ドルへの影響は限定的だと思われる。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ◎ 2 月貿易統計(通関ベース、予想:季節調整前 8102 億円の赤字、季節調整済 8401 億円の赤字)

<海外>

○09:30 ◎ 2 月豪雇用統計(予想:失業率 4.0%/新規雇用者数 4.00 万人)

○16:45 ◇ 3 月仏企業景況感指数(予想:99)

○17:15 ◎ 3 月仏製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値(予想:47.5)

○17:15 ◎ 3 月仏サービス部門 PMI 速報値(予想:48.7)

○17:30 ☆ スイス国立銀行(中央銀行、SNB)、政策金利発表(予想:1.75%で据え置き)

○17:30 ◎ 2 月香港消費者物価指数(CPI、予想:前年同月比 2.2%)

○17:30 ◎ 3 月独製造業 PMI 速報値(予想:43.1)

○17:30 ◎ 3 月独サービス部門 PMI 速報値(予想:48.8)

○18:00 ◎ 3 月ユーロ圏製造業 PMI 速報値(予想:47.0)

○18:00 ◎ 3 月ユーロ圏サービス部門 PMI 速報値(予想:50.5)

○18:00 ◇ 1 月ユーロ圏経常収支(季節調整済)

○18:00 ◎ ノルウェー中銀、政策金利発表(予想:4.50%で据え置き)

○18:30 ◎ 3 月英製造業 PMI 速報値(予想:47.8)

○18:30 ◎ 3 月英サービス部門 PMI 速報値(予想:53.8)

○20:00 ◎ トルコ中銀、政策金利発表(予想:45.00%で据え置き)

○21:00 ☆ 英中銀(BOE)、政策金利発表(予想:5.25%で据え置き)

○21:00 ☆ 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨

○21:30 ◎ 10-12 月期米経常収支(予想:2090 億ドルの赤字)

○21:30 ◎ 3 月米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(予想:▲2.3)

○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:21.5 万件/182.0 万人)

○22:45 ◎ 3 月米製造業 PMI 速報値(予想:51.7)

○22:45 ◎ 3 月米サービス部門 PMI 速報値(予想:52.0)

○22:45 ◎ 3 月米総合 PMI 速報値(予想:52.2)

○23:00 ◎ 2 月米景気先行指標総合指数(予想:前月比▲0.2%)

○23:00 ◎ 2 月米中古住宅販売件数(予想:前月比▲1.5%/年率換算 394 万件)

○22 日 01:00 ◎ バー米連邦準備理事会(FRB)副議長、イベントに参加

○22 日 04:00 ◎ メキシコ中銀、政策金利発表(予想:11.00%に引き下げ)

○南アフリカ(人権の日)、休場

○欧州連合(EU)首脳会議(ブリュッセル、22 日まで)

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

20 日 17:53 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁

「ディスインフレ路線をさらに進める必要がある」

「2024 年の全賃金契約の平均賃金上昇率は、1 月の理 事会時点の 4.4%から 3 月の理事会時点では 4.2%に低 下した」

「関連情報が出揃うまで待つことはできない」

「今後数カ月以内に、最初の政策変更に十分な信頼度 を高めることができる 2 つの重要な証拠が得られると期 待している」

20 日 21:27 デコス・スペイン中銀総裁

「インフレ見通しのリスクはバランスがとれている」

20 日 22:50 シュナーベル欧州中央銀行(ECB)専務理 事

「実質金利が転換点を迎えている可能性がある」

「従来の想定よりも金融政策の措置とコミュニケーション の影響が強い可能性がある」

21 日 03:00 米連邦公開市場委員会(FOMC)声明

「最近の指標は経済活動が堅調なペースで拡大してい ることを示している」

「雇用の伸びは引き続き堅調であり、失業率は依然とし て低い」

「インフレ率はこの 1 年で緩和したが、依然として高止ま りしている」

「委員会は雇用最大化と長期的な 2%のインフレ率の達 成を目指す」

「委員会は雇用とインフレ率の目標達成に対するリスク のバランスが改善しつつあると判断する」

「経済の見通しは不確実で、委員会はインフレのリスク を引き続き大いに注視している」

「FF 金利の目標誘導レンジのあらゆる調整を検討する に当たり、委員会は今後もたらされるデータ、変化する 見通し、リスクのバランスを慎重に評価する」

「委員会はインフレ率が持続的に 2%に向かっていると の確信がさらに強まるまで、目標誘導レンジの引き下げ が適切になるとは予想していない」

「さらに、以前発表された計画で説明されている通り、委 員会は保有する米国債およびエージェンシーローン担 保証券の削減を続ける」

「委員会はインフレ率を 2%の目標に戻すことに強く取り 組む」

「金融政策の適切な姿勢を評価するに当たり、委員会は 今後もたらされる経済見通しに関する情報の意味を引 き続き監視する」

「もしも委員会の目標の達成を妨げる可能性があるリス クが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調 整する準備がある」

「委員会の評価は、労働市場の状況、インフレ圧力、イ ンフレ期待、金融と世界の動向を含む幅広い情報を考 慮する」

「今回の金融政策決定は全会一致」

21 日 03:34 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長

「インフレ率は依然として高すぎる。今後の道筋も不透 明」

「FRB の目標達成へのリスクはより良いバランスに」

「FRB は引き続き 2%のインフレ目標にコミット」

「インフレは大幅に緩和したが、依然として高すぎる」

「今年のある時点で緩和を開始するのが適切」

「政策金利はおそらくサイクルのピークにあると考えてい る」

「長期インフレ期待は依然として抑制されている」

「資産ランオフのペース減速は比較的早期開始が適切 になる可能性」

「インフレ抑制に向けて引き続き良好な進歩を遂げてい る」

「1 月の PCE および CPI は季節調整の影響があった可 能性」

「長期的に金利が高くなるかどうかは分からない」

「労働市場が著しく悪化すれば、利下げを開始する理由 になる」

「商品価格の下落はそれほど早くないだろう」

「最近のインフレ統計は FOMC の待機姿勢を正当化」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線と同値、遅行スパンは実線を上 回り、雲の上で引けていることで、買いシグナルが優勢な展 開となっている。7 手連続陽線で基準線や転換線を上回って 引けており続伸の可能性が示唆されている。 本日は転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を 下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 2 152.90(ピボット・ターニングポイント)
レジスタンス 1 151.82(3/20 高値=年初来高値)
前日終値 151.26
サポート 1 149.16(日足一目均衡表・転換線=基準線)
サポート 2 148.44(日足一目均衡表・雲の上限)

<ユーロドル=三役好転、雲の下限を支持に押し目買い>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯した。抱き線で切り返して転換線を上回って引 けており続伸の可能性が示唆されている。 本日は転換線 1.0900 ドルを念頭に置き、雲の下限を支持 に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕 舞い。

レジスタンス 1 1.1046(1/2 高値)
前日終値 1.0922
サポート 1 1.0798(日足一目均衡表・雲の下限)

<ポンド円=3/20 安値を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線と同値、遅行スパンは実線を上 回り、雲の上で引けていることで、買いシグナルが優勢な展 開となっている。7 手連続陽線で転換線を上回って引けてお り続伸の可能性が示唆されている。 本日は 20 日の安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、 同水準を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 194.64(ピポット・レジスタンス 2)
前日終値 193.40
サポート 1 191.82(3/20 安値)

<NZ ドル円=転換線を支持に押し目買いスタンス>

小陽線引け。転換線は基準線を下回っているものの、遅行 スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、買いシ グナルが優勢な展開となっている。3 手連続陽線で転換線を 上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。 本日は転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を 下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 92.94(2/28 高値)
前日終値 91.95
サポート 1 91.19(日足一目均衡表・転換線)