デイリーレポート 2024年4月11日

April 11, 2024

【前日の為替概況】ドル円、反発34年ぶり高値153円台

10日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反発。終値は153.16円と前営業日NY終値(151.76円) と比べて1円40銭程度のドル高水準だった。米労働省が発表した3月米消費者物価指数(CPI)が前月比 0.4%/前年比3.5%と予想の前月比0.3%/前年比3.4%を上回り、エネルギーと食品を除くコア指数も 前月比0.4%/前年比3.8%と予想の前月比0.3%/前年比3.7%より強い内容となった。米利下げ開始時 期が後ずれするとの観測が高まると、全般ドル買いが優勢となり、節目の152.00円や153.00円を突破。 目先のストップロスを断続的に誘発し、一時153.24円と1990年6月以来約34年ぶりの高値を更新した。 米財務省が実施した米10年債入札が「不調」に終わり、米長期金利が上昇幅を拡大したこともドル買い を促した。 なお、米長期金利の指標となる米10年債利回りは一時4.5660%前後と昨年11月14日以来の高水準を 記録した。 ユーロドルは下落。終値は1.0743ドルと前営業日NY終値(1.0857ドル)と比べて0.0114ドル程度の ユーロ安水準だった。3月米CPIの上振れをきっかけに米長期金利が急伸すると全般ドル買いが活発化。 1時30分過ぎ一時1.0729ドルと日通し安値を更新した。主要通貨に対するドルの値動きを示すドルイン デックスは一時105.30と昨年11月14日以来約5カ月ぶりの高値を付けた。 ただ、2日の安値1.0725ドルがサポートとして働くと1.0754ドル付近まで下げ渋る場面があった。 ユーロ円は続落。終値は164.54円と前営業日NY終値(164.80円)と比べて26銭程度のユーロ安水準。 米CPI発表後にユーロドルが下落すると円買い・ユーロ売りが先行。22時前に一時164.03円と日通し安 値を付けた。ただ、そのあとはドル相場となったため、ユーロ円自体は方向感に乏しい展開となった。 米ドルカナダドルは一時1.3703カナダドルと昨年11月24日以来の高値を付けた。カナダ銀行(BOC) はこの日、市場予想通り政策金利を5.00%に据え置くことを決めたと発表。声明では「インフレ率は2025 年に中銀の目標に達すると予想」「物価安定を回復するという確固たる決意を維持」との見解を示した。 ただ、マックレムBOC総裁が会見で「6月利下げは可能性の範囲内」「予想通りの展開になれば、利下げ が適切になるだろう」などと発言すると、米ドルが全面高となる中でカナダドル売りも出た。

【本日の東京為替見通し】ドル円、153円台乗せで新たな局面入りか

本日の東京外国為替市場のドル円は、153円台に乗せたことで上値試しの機運が高まることが予想され る。 チャート上では、2022年以降の上値抵抗であった152円の水平ラインと、2023年1月安値を起点とす る下値を切り上げるサポートラインで、三角保合の一種とされる「アセンディング・トライアングル」を 形成していた。今回、三角保合を上抜いたことで、テクニカル的には上昇再開のサインと解される。 上値目処については、1990年6月高値155.87円まで主だった目標値が見当たらないこともあり、昨日 高値153.24円を突破すると、154円などのきりのよい水準を手掛かりに上値を試すことになるだろう。 仮に下押す場合、昨日までの上値抵抗であった152円が下値支持に代わるか注目される。本日も引き続き、 米長期金利の動向がドル円相場を左右することが予想されるため注意したい。 ただし、本邦金融当局者からの円安けん制の動きには注意したい。約34年ぶりの高値水準とあって、 口先介入のみならず、レートチェックや実弾介入への警戒感も高まっている。また、昨日の米CPI発表後 に152.50円前後まで上昇後に50銭程度下押す場面も見られたことから、市場の恐怖心に便乗した「なん ちゃって介入(介入もどきの動き)」にも、引き続き気を付けたい。こうした思惑も交わり、上昇時は特 に神経質な展開となりそうだ。 そのほか、中国で3月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)が発表される。市場予想は前 年比で+0.4%/-2.8%と、前月(+0.7%/-2.7%)を下回るとみられている。弱めの予想を下回ることと なれば、中国の景気減速が懸念され、アジア株に下押し圧力が掛かりオセアニア通貨をはじめとして影響 を受けることもある。こちらの動向にも気を付けたい。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ◇ 3 月マネーストック M2

○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)

〇未定 ◎ 岸田首相、米議会上下両院合同会議で演説

<海外>

○10:30 ◎ 3 月中国消費者物価指数(CPI、予想:前年比 0.4%)

○10:30 ◎ 3 月中国生産者物価指数(PPI、予想:前年比▲2.8%)

○18:30 ◎ 3 月南アフリカ SACCI 企業信頼感指数

○21:00 ◎ 2 月ブラジル小売売上高(予想:前年同月比 3.3%)

○21:00 ◇ 2 月メキシコ鉱工業生産(季調済、予想:前月比 0.3%)

○21:15 ☆ 欧州中央銀行(ECB)定例理事会、終了後政策金利発表(予想:4.50%で据え置き)

○21:30 ◎ 3 月米卸売物価指数(PPI、予想:前月比 0.3%/前年比 2.2%)

◎ 食品とエネルギーを除くコア指数(予想:前月比 0.2%/前年比 2.3%)

○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:21.5 万件/180.0 万人)

○21:45 ☆ ラガルド ECB 総裁、定例記者会見

○21:45 ◎ ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、あいさつ

○23:00 ◎ バーキン米リッチモンド連銀総裁、講演

○12 日 01:00 ◎ コリンズ米ボストン連銀総裁、講演

○12 日 01:30 ◎ グリーン英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演

○12 日 02:00 ◎ 米財務省、30 年債入札

○12 日 02:30 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演

○インド(イスラム教断食明け祭)、トルコ(砂糖祭)、休場

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

10 日 09:08 植田日銀総裁

「当面は緩和的な金融環境が継続すると考えている」

「2%物価目標の持続・安定的な実現が見通せる状況に 至った」

「基調的な物価は現在ではまだ 2%に届いていない」

「基調的な物価が徐々に 2%へ収束していく見通しを持 っている」

「基調物価が 2%を大きく超えれば、急激な利上げが必 要となる可能性がある」

「厳格なインフレターゲットを目指しているわけではない」

「2%の物価目標はグローバルスタンダードであり適切」

「景気、一部に弱めの動き見られるが緩やかに回復して いる」

「春闘の最近のデータから、賃金と物価の好循環の強ま りが確認されてきている」

10 日 11:05 ニュージーランド準備銀行(RBNZ)声明

「生産能力への圧力とインフレをさらに軽減するには、 引き続き制限的な金融政策スタンスが必要」

「現在の消費者物価インフレ率は依然として委員会の目 標範囲である 1-3%を上回っている」

「委員会は政策金利を一定期間にわたって制限的な水 準に維持することで、消費者物価インフレ率を 1-3%の 目標範囲内に戻すことができると確信している」

「全体としてリスクのバランスは 2 月の声明以来ほとんど 変わっていないということで委員は同意」

「サービスインフレの持続が依然としてリスクであり、商 品インフレは依然として高止まりしている」

「世界成長が低迷する環境下で継続的な制限的政策が 続けば、予想よりも急速なインフレ低下につながる可能 性がある」

10 日 22:48 カナダ銀行(BOC、カナダ中央銀行)声明

「世界経済は約 3%の成長を続けるとともに、大半の先 進国のインフレが徐々に緩和すると予想」

「米国経済は、回復力のある消費と堅調な企業支出と 政府支出に支えられ、予想よりも好調であることが再び 示された」

「米 GDP 成長率は今年下半期に鈍化すると予想されて いるが、1 月予想よりは依然として強い」

「ユーロ圏は現在の低成長から徐々に回復すると予想」

「原油価格は上昇し、1 月想定より平均約 5 ドル高となっ ている」

「1 月以降、利回りは上昇したが、企業の信用スプレッド の縮小と株式市場の急騰により、全体的な金融状況は 緩和した」

「インフレ率は 2025 年に中銀の目標に達すると予想」

「労働市場の状況が引き続き緩和していることを幅広い 指標が示唆」

「雇用の伸びは生産年齢人口に比べて遅く、失業率は 徐々に上昇し、3 月には 6.1%に達した。最近、賃金圧力 が緩和している兆候がいくつか見られる」

「経済成長は 2024 年に加速すると予測」

「2024 年の GDP 成長率を 1.5%、2025 年に 2.2%、2026 年に 1.9%と予測」

「2 月 CPI インフレ率は 2.8%に減速し、物価圧力の緩和 が財やサービス全体にわたってより広範に広がってい る」

「今年上期の CPI インフレ率は 3%近くとなり、下半期に は 2.5%を下回り、2025 年には 2%のインフレ目標に到 達すると予想」

「理事会は政策金利を 5%に維持し、バランスシートの 正常化を継続することを決定」

「インフレ率は依然高すぎる、リスクは残っているものの、 CPI とコアインフレ率はここ数カ月でさらに低下している」

「理事会はこの低下の勢いが持続しているという証拠を 模索」

「理事会は特にコアインフレの推移に注目しており、経 済における需要と供給のバランス、インフレ期待、賃金 上昇率、企業の価格設定行動に引き続き焦点を当て る」

「物価安定を回復するという確固たる決意を維持」

10 日 23:47 マックレム・カナダ銀行(中央銀行、BOC)総 裁

「6 月利下げは可能性の範囲内」

「予想通りの展開になれば、利下げが適切になるだろ う」

「インフレ指標全体に進展が見られる」

「企業の価格設定が正常化し始めている」

「インフレのモメンタムが低下したのは最近のこと」

11 日 01:54 バーキン米リッチモンド連銀総裁

「インフレに関しては大きく前進していると考えている」

11 日 02:30 バイデン米大統領

「日本、英国との軍事演習実施を楽しみにしている」

「年末までに利下げが実施されるだろう」

「利下げは 1 か月延期される可能性がある」

11 日 02:37 岸田首相

「日本は防衛能力を決意を持って強化」

「日米は中国との対話を維持」

「日米は中国関連問題で緊密に連携する」

「バイデン氏と北朝鮮について協議した」

11 日 03:05 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨 (3 月 19-20 日分)

「ほぼ全員が年内の利下げが適切と判断」

「当局者らは経済成長が 2023 年から減速するとみてい る」

「インフレ率は中期的に 2%に戻ると予想」

「インフレの進展が停滞した場合、当局者らは金利を高 水準に維持することで合意」

「かなり近いうちにランオフのペースを縮小する準備」

「多くの当局者は低所得世帯に金融圧力が高まってい ると認識」

「当局者は利下げの前にインフレに対するさらなる確信 を求める」

「最近のインフレデータは当局者にとって失望」

「インフレは低下し続けたが、最近の進捗状況にはばら つきがある」

「雇用とインフレ目標の達成に対するリスクはより良いバ ランスに向かいつつあると判断」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=急騰後の調整が大きめになる可能性にも留意>

大陽線引け。1990 年 6 月以来、約 34 年ぶりの 153 円台回 復となった。153.24 円まで高値を更新している。 3 月後半以来、152.00 円で上値が抑制され溜まっていた上 昇エネルギーが爆発した格好。堅調だが、高値圏の調整局面 で支えとなりそうな日足ベースの主要なテクニカル指標は 5 日移動平均線が 152.31 円前後、一目均衡表・転換線が 152.03 円と、相場水準からややかい離。上昇の流れを大きく崩さな くとも、揺り戻し範囲の反落が相応に大きめになりそうな点 には注意したい。

レジスタンス 1 153.70(ピボット・レジスタンス 1)
前日終値 153.16
サポート 1 152.46(4/10 レンジの半値水準)
サポート 2 152.03(日足一目均衡表・転換線)

<ユーロドル=2 日安値の下抜け警戒しながら推移か>

大陰線引け。下支えが期待された日足一目均衡表・雲の下 限や転換線を下抜けて大幅安となった。2 日以来の安値 1.0729 ドルまで下落している。2 日安値 1.0725 ドルを割り 込まなければ、転換線は現水準 1.0805 ドルから、来週にも 1.0807 ドルへわずかながら切り上がる公算。急落後の揺り戻 し示唆かもしれないが大幅な改善は難しそう。2 日安値の下 抜けを警戒しながらの推移が続きそうだ。

レジスタンス 1 1.0808(5 日移動平均線)
前日終値 1.0743
サポート 1 1.0695(2/14 安値)

<ポンド円=転換線付近の底堅さ維持できるか注視>

陰線引け。一時 192.98 円と 3 月 21 日以来、約 3 週間ぶり の 193 円台回復に迫った。しかしその後は前日安値を下抜け る 191.48 円までの下落と、荒っぽく上下している。安値が 一目均衡表・転換線 191.52 円前後にとどまったことは好感 できる材料。上昇が続く見込みの同線付近の底堅さを維持で きれば、再び 193 円トライへ向けた動きを再開できるだろう。

レジスタンス 1 192.98(4/10 高値)
前日終値 192.07
サポート 1 191.52(日足一目均衡表・転換線)

<NZ ドル円=雲の中で戻り試す展開予想>

陰線引け。9 日、上ひげを形成した 4 日の高値 91.71 円を 上抜け、勢いづいて一目均衡表・雲の上限 91.80 円もこなし 上昇した。昨日 10 日は 2 月 28 日以来の高値 92.37 円まで上 伸したものの大きく失速。雲の中へ押し戻され、91.23 円ま で下振れている。雲の中で推移する一目・転換線 91.24 円前 後が支えになった。同線は雲を上抜く水準まで上昇していく 見込み。転換線を支えに雲の中で戻りを試す展開を予想する。

レジスタンス 1 91.94(4/10 レンジ 61.8%水準)
前日終値 91.48
サポート 1 91.05(日足一目均衡表・雲の下限)