デイリーレポート 2024年4月12日
April 12, 2024
【前日の為替概況】ドル円、小幅続伸約34年ぶりの高値更新
11日のニューヨーク外国為替市場でドル円は小幅ながら続伸。終値は153.27円と前営業日NY終値 (153.16円)と比べて11銭程度のドル高水準だった。3月米卸売物価指数(PPI)が予想を下回ったこと が分かると米長期金利の低下とともにドル売りが先行。22時前に一時152.80円付近まで下押しした。市 場では「前日の3月米消費者物価指数(CPI)が予想比上振れとなり、インフレへの懸念が高まっていた だけに、PPIの結果は米金融当局者に一定の安堵感を与え、不安を和らげる内容となった」との声が聞か れた。 ただ、アジア時間に付けた日通し安値152.76円が目先サポートとして働くとじりじりと買い戻しが進 んだ。米長期金利が上昇に転じたことも相場の支援材料となり、0時30分過ぎには153.32円と1990年6 月以来約34年ぶりの高値を更新した。もっとも、政府・日銀による為替介入への警戒感は根強く、NY午 後に入ると153円台前半で伸び悩んだ。一時は4.5886%前後と昨年11月14日以来の高水準を記録した 米10年債利回りが4.52%台まで上昇幅を縮めたことも相場の重し。 ユーロドルは続落。終値は1.0726ドルと前営業日NY終値(1.0743ドル)と比べて0.0017ドル程度の ユーロ安水準だった。米PPIの下振れを受けて一時1.0757ドルと日通し高値を付けたものの、「米国の利 下げ開始が先延ばしになるとの観測は根強い」との声が聞かれる中、ドル売りの勢いは長続きしなかった。 米長期金利が上昇に転じると全般ドル買いが優勢となり、一時1.0699ドルの日通し安値まで押し戻され た。 ただ、売り一巡後は徐々に下値を切り上げる展開に。市場では「明日12日のNYカット(日本時間23 時)に行使期限を迎えるまとまった規模のオプションが1.0700ドルに観測されており、オプションに絡 んだ買いが入ったようだ」との声が聞かれた。米長期金利が上昇幅を縮小したことも相場を下支えした。 ユーロ円は3日続落。終値は164.40円と前営業日NY終値(164.54円)と比べて14銭程度のユーロ安 水準。日本時間夕刻に一時164.70円と日通し高値を付けたものの、前日の高値164.99円が目先レジスタ ンスとして意識されると失速。21時30分前には一時163.95円と日通し安値を更新した。そのあとはド ル相場となったため、ユーロ円自体は方向感に乏しい展開となった。
【本日の東京為替見通し】ドル円、本邦当局の円安けん制に注意しつつ上値を試す展開か
本日の東京外国為替市場のドル円は、日米金利差が意識されやすい中、米長期金利の動向を眺めつつ上 値を試しやすいとみる。 昨日、神田財務官が円安けん制発言を行うも、従来の介入時に聞かれた「断固たる措置」や「投機的な 動き」などの強い口調ではなかったことから、ドル円の下押しは限定的となった。次に、昨日の米PPI は市場予想を下回ったとはいえ、足元で高まっている米利下げ開始時期の観測に影響を与えるほどではな かった。 これらを合わせ、本邦金融当局者からの円安けん制姿勢が強さを増さない限り、市場の関心は日米金利 差に向かいやすいとみる。ドル円はテクニカル面からみても、上昇パターンの「アセンディング・トライ アングル」上抜けで上値模索の機運が高まっており、米長期金利の上昇場面では、ドル円にも上昇圧力が 掛かることが予想される。昨日高値153.32円を突破すると、1990年6月高値155.87円まで主だった目 標値が見当たらないこともあり、154円などの「きりのよい水準」を手掛かりに上値を試すことになるだ ろう。仮に下押したとしても、昨日安値152.76円レベルが引き続きサポートとして機能するか注目した い。 ただし、本邦金融当局者からの円安けん制の動きには引き続き注意したい。昨日見られなかった強い口 調のほか、レートチェックや実弾介入など、当局の本気度が伝わる場合は、約34年ぶり高値水準に位置 するドル円相場に強い下押し圧力が掛かることも想定される。引き続き注意が必要だろう。 なお、本日中国では時刻未定ながら3月貿易収支の発表が予定されている。市場予想は702.0億ドルの 黒字と前月(1251.6億ドルの黒字)と比べ黒字幅の縮小が見込まれている。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
○13:30 ◇ 2 月鉱工業生産確報
○13:30 ◇ 2 月設備稼働率
<海外>
○09:00 ◎ 1-3 月期シンガポール国内総生産(GDP)速報値(予想:前期比 0.5%)
○09:00 ◎ シンガポール金融通貨庁(MAS)、金融政策発表
○未定 ◎ 韓国中銀、政策金利発表(予想:3.50%で据え置き)
○未定 ◎ 3 月中国貿易収支(予想:702 億ドルの黒字)
○15:00 ◎ グリーン英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演
○15:00 ◎ 3 月独消費者物価指数(CPI)改定値(予想:前月比 0.4%/前年比 2.2%)
○15:00 ☆ 2 月英国内総生産(GDP、予想:前月比 0.1%)
○15:00 ◎ 2 月英鉱工業生産(予想:前月比横ばい/前年比 0.6%)
○15:00 ◎ 2 月英製造業生産高(予想:前月比 0.1%)
○15:00 ◇ 2 月英商品貿易収支/英貿易収支(予想:145.00 億ポンドの赤字/29.50 億ポンドの赤字)
○15:00 ◎ 3 月スウェーデン CPI(予想:前月比 0.4%/前年比 4.4%)
コア指数(予想:前月比 0.4%/前年比 2.6%)
○15:45 ◇ 3 月仏 CPI 改定値(予想:前月比 0.2%/前年比 2.3%)
○20:00 ◎ エルダーソン欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演
○21:00 ◎ 2 月インド鉱工業生産(予想:前年同月比 6.0%)
○21:00 ◎ 3 月インド CPI(予想:前年比 4.91%)
○21:30 ◇ 3 月米輸入物価指数(予想:前月比 0.3%)
○22:00 ◎ コリンズ米ボストン連銀総裁、メディア出演
○23:00 ◎ 4 月米消費者態度指数(ミシガン大調べ、速報値、予想:79.0)
○13 日 02:00 ◎ シュミッド米カンザスシティー連銀総裁、講演
○13 日 03:30 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
○13 日 04:30 ◎ デイリー米サンフランシスコ連銀総裁、イベントに参加
○トルコ(砂糖祭)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
11 日 08:25 神田財務官
「特定の水準を念頭に判断していない」
「過度な為替変動は国民経済に影響」
「行き過ぎた動きにはあらゆる手段排除せず適切な手 段をとる」
「あらゆる事態に常日頃からそなえている」
「現在の為替、過度な変動か『総合的に判断しているの で申し上げない』」
「一晩で 1 円、過度な変動か申し上げない」
「 一般にいえばリスクオフになると円高になることが多 いことが観察されている」
11 日 09:51 鈴木財務相
「(為替市場について)過度な変動は好ましくない」
「高い緊張感をもって注視」
「行き過ぎた動きにはあらゆるオプションを排除せず適 切に対応」
「財務官と頻繁に連絡を取り合っている」
「152、153 円の数字ではなく背景を分析する」
11 日 11:29 林官房長官
「為替相場、行き過ぎた動きにはあらゆる手段を排除せ ずに適切に対応」
「(為替で)ファンダメンタルズを反映して安定的に推移 することが重要」
「(為替で)過度な変動は望ましくない」
「 為替市場の動向、高い緊張感もって注視する」
11 日 15:30 清水誠一日銀理事
※日銀出口戦略について
「準備金積み立てや債券取引損失引当金の拡充など、 必要な財務面の手当て行ってきている」
11 日 21:21 欧州中央銀行(ECB)声明
「食料品や商品の価格低下により、インフレ率は低下し 続けている」
「ECB の主要金利は進行中のディスインフレプロセスに 大きく貢献」
「今後の決定において、必要な期間に渡り、政策金利が 十分に制限的な水準に設定される」
「インフレのターゲット収束が持続的になるとの確信が 今後の評価でさらに高まれば、現行の金融引き締め度 合いを緩和することが適切」
「理事会はデータに基づき、最適な制限水準と継続期間 を会合ごとに柔軟に判断する方針」
「特定の金利の道筋にコミットするものではない」
11 日 21:49 ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁
「見通しは不確実であり、データ次第」
「今年からの利下げを予測」
「今年の米 GDP は 2%に達すると予想」
「雇用市場は依然として強い」
「今年のインフレ率は 2.25%から 2.5%になると予想」
「今年の失業率は 4%に上昇すると予想」
11 日 23:20
「住宅を除いたコアサービスのインフレは予想よりも早く 低下」
「最終的には利下げが必要になる」
「FRB の利上げは基本的な見通しの一部ではない」
「短期的には金融政策を変更する必要はない」
11 日 21:54 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁
「経済は弱いまま」
「製造業は需要が低迷している」
「輸出は今後数四半期で回復する見込みです」
「インフレは変動しながら、目標に向かって低下するだろ う」
「成長見通しに対するリスクは下方向」
「最近の指標は賃金上昇のさらなる緩和を示唆」
「6 月にはさらに多くのデータが得られ、新しい予測も得 られるだろう」
「少数の加盟国は利下げに十分な自信を持っていた」
「大多数はより多くのデータを望んでいた」
「我々は FRB に依存しているのではなく、データに依存 している」
「バランスシートの規模はすでにかなり縮小している」
「データを得るまで政策に関していかなる路線にもコミッ トすることはできない」
「ユーロ圏のインフレの性質は米国とは異なる」 「ユーロ圏のデータに基づいて決定を下す必要がある」 「ディスインフレが継続すれば、金利の道筋に反映させ る」 「方向性はかなり明確だが、具体的な道筋はない」
「エネルギーベースの影響がインフレに変動を引き起こ す」
11 日 22:58 バーキン米リッチモンド連銀総裁
「インフレ・データからは、ディスインフレが広がるという 確信は得られなかった」
「インフレについてはまだ望むところではないが、長期的 には正しい方向に向かっている」
12 日 00:30 岸田首相
「米国が重要な世界的な役割を担うことが必要」
「米国のリーダーシップが必要」
「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」
12 日 01:11 コリンズ米ボストン連銀総裁
「最近のデータは金利変更の差し迫った必要性を否定 するもの」
「依然として年内利下げを予想」
「経済が強ければ利下げの回数は減るかもしれない」
「ディスインフレは引き続き不均一になる可能性が高い」
「最近のインフレ・データは見通しを変えるものではな い」
「堅調な雇用市場で利下げが必要となる緊急性は低下」
「インフレは引き続き緩やかになると予想」
「インフレ率が 2%に戻るにはさらに時間がかかる可能 性がある」
12 日 02:14 グリーン英中銀金融政策委員会(MPC)委 員
「英国はリセッションからの脱却の兆しを見せている」
「インフレは低下し、雇用市場は好調」
「インフレ目標は 5 月中に短期的に達成すると予想」
「利下げ後に再び利上げしなければならないことが最 悪」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=調整入る可能性あるものの上向きの流れ維持へ>
下影小陽線引け。一時 152.76 円と、前日の急上昇の後を
受けた揺り戻しの反落もあった。しかし、その後は 153.32
円まで 1990年 6月以来、約 34年ぶりの高値を更新しており、
上昇の流れを崩していない。
本日 152.65 円前後で推移している 5 日移動平均線付近ま
での調整が入る可能性はあるものの、上向きの流れは維持で
きるだろう。深押しがあっても、今後の上昇が見込まれる一
目均衡表・転換線が支えになるとみる。
レジスタンス 1 154.05(3/11・21 安値の値幅 2 層倍=NT 計算値)
前日終値 153.27
サポート 1 152.65(5 日移動平均線)
サポート 2 152.07(日足一目均衡表・転換線)
<ユーロ円=転換線の上昇とともに上値試す展開期待>
下影小陰線引け。一時下振れて 163.95 円と 5 日以来、約 1
週間ぶりの水準まで下落した。しかし一目均衡表・転換線
163.90 円を前に下げ渋り、前日に続き長めな下ひげをともな
う足型を形成している。底堅さの示唆であり、今後の切り上
がりが見込まれる転換線ともに上値を試す展開が期待でき
る。
レジスタンス 1 165.17(4/9 高値)
前日終値 164.40
サポート 1 163.90(日足一目均衡表・転換線)
<豪ドル円=転換線前後の底堅さ確認、100 円台を回復>
下影陽線引け。一時 99.40 円まで下落したものの、前日安
値 99.39 円を目前に下げ渋り、100 円台を回復した。一目均
衡表・転換線 99.53 円前後の底堅さも確認できた格好。上昇
が見込まれる同線を支えに上値を試す展開か。すう勢を示す
5 日線の上昇をともなう堅調な推移を予想する。
レジスタンス 1 100.81(4/9 高値=年初来高値)
前日終値 100.21
サポート 1 99.53(日足一目均衡表・転換線)
<NZ ドル円=雲の中で戻り試す展開予想>
陰線引け。9 日、上ひげを形成した 4 日の高値 91.71 円を
上抜け、勢いづいて一目均衡表・雲の上限 91.80 円もこなし
上昇した。昨日 10 日は 2 月 28 日以来の高値 92.37 円まで上
伸したものの大きく失速。雲の中へ押し戻され、91.23 円ま
で下振れている。雲の中で推移する一目・転換線 91.24 円前
後が支えになった。同線は雲を上抜く水準まで上昇していく
見込み。転換線を支えに雲の中で戻りを試す展開を予想する。
レジスタンス 1 91.94(4/10 レンジ 61.8%水準)
前日終値 91.48
サポート 1 91.05(日足一目均衡表・雲の下限)