デイリーレポート 2024年4月16日

April 16, 2024

【前日の為替概況】ドル円154.45円まで上昇、米3月小売売上高で米10年債利回りが4.66%台

15日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反発。終値は154.28円と前営業日NY終値(153.23円) と比べて1円05銭程度のドル高水準だった。予想を上回る3月米小売売上高を手掛かりに全般ドル買い が先行。米長期金利の指標となる米10年債利回りが一時4.6611%前後と昨年11月13日以来の高水準を 記録したことも相場の支援材料となり、154.45円と1990年6月以来約34年ぶりの高値を更新した。

中東情勢緊迫化への警戒感から一時400ドル超上昇したダウ平均が失速し320ドル超下落すると、ドル 円にも売りが出て153.88円付近まで伸び悩む場面もあったが、下押しは限定的だった。市場では「154 円台に乗せたことで政府・日銀が円買い為替介入に動くとの警戒感が強まっている」との声も聞かれたが、 結局154円台を維持して引けた。

なお、イスラエル戦時内閣はこの日、「明確に強力に」再報復する方針を決定。イスラエルのガラント 国防相は「イランへの報復以外に選択肢はない」と述べたうえ、「イスラエルによるイランへの報復は差 し迫っている」との報道が伝わった。イスラエルがイランに再報復の構えをみせており、中東の地政学リ スクを巡る警戒が高まっている。

ユーロドルは4日続落。終値は1.0624ドルと前営業日NY終値(1.0643ドル)と比べて0.0019ドル程 度のユーロ安水準だった。欧州中央銀行(ECB)の利下げ開始時期が近づいているとの見方が一段と強ま る一方、米連邦準備理事会(FRB)による利下げ開始は想定より後にずれるとの観測が高まっており、欧 米の金利差拡大への思惑からユーロ売り・ドル買いが出やすかった。米小売指標の上振れをきっかけに全 般ドル買いが活発化すると、前週末の安値1.0623ドルを下抜けて一時1.0620ドルと昨年11月3日以来 の安値を付けた。主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時106.25と昨年11月2 日以来の高値を付けた。

ユーロ円は5営業日ぶりに反発。終値は163.91円と前営業日NY終値(163.13円)と比べて78銭程度 のユーロ高水準。ドル円の上昇につれた買いが入ると一時164.44円と本日高値を付けたものの、前週末 の高値164.47円が目先レジスタンスとして意識されると失速。ユーロドルの下落につれた売りも出て一 時163.66円付近まで下押しした。

本日の東京為替見通し】ドル円、155円が円買い介入の防衛ラインかを見極める展開か

本日の東京外国為替市場のドル円は、155円を目前にして本邦通貨当局のドル売り・円買い介入の可能 性に警戒する展開が予想される。

ドル円は154円台に乗せてきた。市場筋の試算では、150円台の円安水準が続いた場合、電気・ガス代 での補助金がなくなることや再エネ賦課金の値上がりなども考慮すると、2024年度の世帯平均の家計負 担は前年度と比べて10万円を超すとのことである。すなわち、6月に予定されている1人当たり4万円 の定額減税の恩恵を打ち消すことになる。

財務省と日銀は、円安による輸入物価上昇への懸念を表明しており、ファンダメンタルズに沿っていな いとの理由から、円買い介入を実施しやすい環境となっている。鈴木財務相は「輸入物価上昇を通じて国 内物価上昇させ消費者負担増」と言及した。植田日銀総裁は、円安が日銀の物価見通し変更を迫るものと なれば金融政策的な対応をとる、と述べている。

鈴木財務相は、17日からワシントンで開催されるG20財務大臣・中央銀行総裁会議を控えて、ドルは 各国通貨に対して独歩高の基調にあり議題となる可能性はある、と述べた。

2022年秋の本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入は、9月22日、10月21日、24日の3回行われ たが、合間の10月12-13日にワシントンでG20会議が開催されていた。

神田財務官は、金融・為替市場に関して「日常的に、米国を含む主要国の財務官や中銀幹部と頻繁に連 絡を取り合っている」と述べ、国際通貨基金(IMF)・世銀の春季会合の合間に、日米韓財務相会談を開催 することを明らかにした。

ドル円は、2022年秋の本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入以来、152円が防衛ラインと見なされ てきたが、今回154円台に上昇しても円買い介入が実施されないことで、防衛ラインが155円まで引き上 げられているのではないか、との見方が広がっている。

一部の市場筋は、神田財務官が介入に踏み切る「神田ライン」は、過去28日間の安値から10円上昇し た水準(本日は156.49円=146.49円+10円)付近ではないか、と推測している。ドル円の上昇チャネル の上限も156円台に位置している。また、2022年秋に円買い介入が行われた水準であるドル円のボリン ジャー・バンド+2σは、154.00円付近にある。

ところで中東においては、イスラエルの戦時内閣がイランによる攻撃に対して「明確に強力に」再報復 する方針を決定したものの、時期と規模を巡り意見が分かれている、と報じられた。イラン側は「作戦は 終了した」としつつも、ライシ大統領が「いかなる反撃も、より厳しく強力なもので迎え撃つ」と、イス ラエルを牽制する声明を出しており、今後も関連ヘッドラインに注意しておきたい。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

特になし

<海外>

○09:00 ◎ デイリー米サンフランシスコ連銀総裁、あいさつ

○11:00 ☆ 1-3 月期中国国内総生産(GDP、予想:前期比 1.4%/前年同期比 4.6%)

○11:00 ◎ 3 月中国鉱工業生産(予想:前年比 6.0%)

○11:00 ◎ 3 月中国小売売上高(予想:前年比 4.6%)

○15:00 ◇ 3 月独卸売物価指数(WPI)

○15:00 ◎ 3 月英雇用統計(失業率/失業保険申請件数推移)

○15:00 ◎ 12-2 月英失業率(ILO 方式、予想:4.0%)

○17:00 ◎ レーン・フィンランド中銀総裁、講演

○18:00 ◎ 4 月独 ZEW 景況感指数(予想:35.0)

○18:00 ◎ 4 月ユーロ圏 ZEW 景況感指数

○18:00 ◇ 2 月ユーロ圏貿易収支(予想:季節調整前なし/季節調整済 218 億ユーロの黒字)

○18:00 ◎ ロンバルデリ次期(英中銀、BOE)副総裁、議会証言

○21:15 ◇ 3 月カナダ住宅着工件数(予想:24.50 万件)

○21:30 ◎ 3 月カナダ消費者物価指数(CPI、予想:前月比 0.7%/前年比 2.9%)

○21:30 ◎ 3 月米住宅着工件数(予想:148.4 万件、前月比▲2.4%)

◎ 建設許可件数(予想:151.0 万件、前月比▲0.9%)

○22:00 ◎ ジェファーソン米連邦準備理事会(FRB)副議長、講演

○22:15 ◎ 3 月米鉱工業生産指数(予想:前月比 0.4%)

◇ 設備稼働率(予想:78.5%)

○17 日 01:30 ◎ ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、ビルロワドガロー仏中銀総裁、イベントに参加

○17 日 02:00 ◎ ベイリーBOE 総裁、講演

○17 日 02:00 ◎ バーキン米リッチモンド連銀総裁、講演

○17 日 02:15 ☆ パウエル FRB 議長、マックレム・カナダ銀行(中央銀行、BOC)総裁、討議に参加

○17 日 03:00 ◎ ブイチッチ・クロアチア中銀総裁、講演

○17 日 05:30 ◎ コリンズ米ボストン連銀総裁、講演

○国際通貨基金(IMF)世界経済見通し

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

15 日 12:31 鈴木財務相

「(為替相場について)しっかり注視している」

「万全の対策を取りたい」

15 日 16:33 シムカス・リトアニア中銀総裁

「7 月にも利下げの可能性もある」

「50%以上の可能性で 2024 年の利下げは 3 回以上と予 想」

「4 回の利下げの可能性も」

15 日 17:14 神田財務官

「(為替)主要国の財務官・中銀幹部と頻繁に連携」

15 日 20:33 レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チ ーフ・エコノミスト

「インフレが予想通り鈍化すれば 6 月に利下げの可能性 がある」

「賃金圧力は徐々に緩やかになっているが、依然として 高い水準にある」

「インフレ率は当面、現在の水準前後で変動すると予想 される」

「より広範なインフレ指標に比べ、国内インフレに関する 進展ははるかに少ない」

「インフレ率が 2%の目標達成に見合う率に収束するた めには、賃金上昇率の減速が必要である」

15 日 20:34 カジミール・スロバキア中銀総裁

「インフレ率の持続的な低下を考慮すると、ECB は 6 月 に利下げする可能性がある」

15 日 21:40 ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁

「今年の経済全体の成長率は約 2%にとどまるだろう」

「個人消費は好調」

「経済の供給側から追い風が吹いている」

「最近のインフレ統計が転換点になるとは思わない」

「市場はインフレ進行の鈍化を考慮に入れている」

「いつものようにデータに依存している」

15 日 23:43 イスラエルのガラント国防相

「イスラエルはイランの攻撃に応じるしかない」

16 日 01:25 バイデン米大統領 「米国はイスラエルの安全にコミット」

「中東紛争の拡大を阻止したい」

16 日 04:21 米国防省報道官

「米国はイランとの衝突を望んでいない」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=4/12 高値を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯中。抱き線で切り返して、依然として転換線を 上回って引けており続伸の可能性が示唆されている。 本日は 12 日の高値を支持に押し目買いスタンスで臨み、 同水準を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 2 156.98(1990/5/11 高値)
レジスタンス 1 155.87(1990/6/25 高値)
前日終値 154.28
サポート 1 153.39(4/12 高値)
サポート 2 152.63(日足一目均衡表・転換線)

<ユーロドル=転換線を抵抗に戻り売りスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を 下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売りシ グナルが点灯している。5 手連続陰線で転換線を下回って引 けており続落の可能性が示唆されている。 本日は転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上 抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 1.0753(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0624
サポート 1 1.0517(2023/11/1 安値)

<ユーロ円=基準線を支持に押し目買いスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯中。4 手連続陰線の後、切り込み線で反発して 転換線を上回って引けており続伸の可能性が示唆されてい る。 本日は転換線 163.73 円を念頭に置き、基準線を支持に押 し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 165.17(4/9 高値)
前日終値 163.91
サポート 1 162.82(日足一目均衡表・基準線)

<豪ドル円=4/11・12 の高値を抵抗に戻り売りスタンス>

上影陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実 線を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買 いシグナルが点灯している。しかし、孕み線で反発したもの の、転換線や 12 日の大陰線の実体部の中心値を下回って引 けており反落の可能性が示唆されている。 本日は転換線 99.77 円を念頭に置き、11・12 日の高値を抵 抗に戻り売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕 舞い。

レジスタンス 1 100.24(4/11・12 高値)
前日終値 99.38
サポート 1 98.74(4/12 安値)