ウィークリーレポート 2024年4月26日

週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

April 26, 2024

ドル円、FOMC や介入の可能性に注視

◆ドル円、FOMC で利下げ時期や利上げの可能性に関する協議に注目

◆4 月米雇用統計、本邦通貨当局の円買い介入の可能性や中東の地政学リスクにも注意

◆ユーロドル、ユーロ圏 4 月 CPI 速報値や 1-3 月期 GDP 速報値に注目

予想レンジ

ドル円 153.00-158.00 円

ユーロドル 1.0400-1.0900 ドル

4月29日週の展望

ドル円は、30 日-5 月 1 日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利据え置きが見込まれており、利下げ開始時期やタカ派メンバーによる利上げ主張に関する協議に注目することになる。また、量的金融緩和政策(QE)による月 950 億ドルの資産売却の終了時期に関する協議にも注目しておきたい。米国の 1 月、2 月、3 月の消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)は、インフレの再燃を示唆しつつあり、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが FF 金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」での利下げ開始時期は、9 月の FOMC と見込まれており、年内は 1 回の利下げのみと想定されている。さらに、ウィリアムズ米 NY 連銀総裁やボスティック米アトランタ連銀総裁が、利上げの可能性に言及していることもあり、FOMC 声明文に注目している。また、5 月 3 日に発表される 4 月の米雇用統計で堅調な労働市場の状況が示された場合は、ジェファーソン FRB 副議長が言及しているように、「インフレが予想通りに減速しない場合は現在の金融引き締め姿勢をより長期間維持することが適切」とのタカ派的な見解が優勢となるため注意しておきたい。

ドル円は今週、1990 年以来 34 年ぶりの高値圏まで上昇している。本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性には引き続き警戒だろう。現状の円安と原油高を前提にした試算では、家計の負担が年間でおよそ 11 万円増えるとのこと。今春の大幅な賃上げや 4 万円の定額減税の恩恵が感じられなくなれば、岸田政権にとっては円安阻止が喫緊の課題になる可能性もある。

また、19 日のイスラエルによるイランへの小規模な攻撃は、「バイデン米大統領や独仏外相が大規模攻撃を目論んでいたネタニヤフ・イスラエル首相を説得した結果だった」と報じられているが、今後も中東の地政学リスクには警戒しておきたい。最悪のシナリオとして第 5 次中東戦争に拡大した場合は、有事のドル買いや原油価格の高騰で円安圧力を高めることにもなる。

ユーロドルは、6 月の欧州中央銀行(ECB)理事会での利下げ開始の可能性が高まる中、ユーロ圏 4 月消費者物価指数(CPI)速報値やユーロ圏 1-3 月域内総生産(GDP)速報値が予想を下回る内容だった場合は、6 月理事会での利下げへの思惑が更に高まることになりそうだ。

4月22日週の回顧

ドル円は、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入が見受けられないなか、154.46 円から155.75 円まで上昇。1990 年 6 月以来の高値を更新した。米 10 年債利回りは 4.5655%から 4.7351%まで上昇している。ユーロドルは 4 月仏・独サービス部門 PMI 速報値が予想を上回り、米 1-3 月国内総生産(GDP)速報値が予想を下回ったことなどで、1.0624 ドルから 1.0739 ドルまで上昇した。

ユーロ円は 164.40 円から 167.09 円まで上昇。2008 年 8 月以来の高値を更新した。(了)

週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

April 26, 2024

豪ドル、CPI 上振れで堅調地合い

◆豪ドル、粘り強いインフレ圧力で長期の金利据え置き観測が支え

◆豪ドル、既に来月の RBA 理事会が焦点に

◆ZAR、地政学リスクや選挙リスクなどが重し

予想レンジ

豪ドル円 99.50-104.00 円

南ア・ランド円 7.90-8.25 円

4月29日週の展望

豪ドルは堅調地合いを維持できるかに注目。今週発表された 1-3 月期消費者物価指数(CPI)は前年比で市場予想の 3.5%を上回る 3.6%となり、3 月の月次 CPI も予想の 3.4%を上振れ 3.5%となった。また、豪準備銀行(RBA)の注目度が高いトリム平均値も 1-3 月期は 4.0%となり、予想の 3.8%よりも強い結果だった。10-12 月期と比較し豪州のインフレ圧力は鈍化したとはいえ、RBA が目標とする 2-3%を大幅に上回っている。今後も長期にわたって現行金利水準が維持される可能性がさらに高まっており、豪ドルを支えそうだ。特に、対円では日豪の金利差縮小を期待することが難しいことから、2014 年以来の 101 円台に乗せてきている。

ただ、国内では高止まりするインフレと高い住宅ローン金利という二重の負担に直面しており、今後の貯蓄の目減りや個人消費が圧迫されることが懸念材料。アルバニージー政権が年央に所得減税を含めた対策を進めるとの予想もあるが、スタグフレーションに陥ることにならないかどうかを見極めなければならないだろう。

来週は 5 月 2 日に 3 月貿易収支と住宅建設許可件数が発表されるが、両指標とも市場を動意づけるのは難しいだろう。市場の注目はすでに 5 月 6-7 日の RBA 理事会に集まっている。理事会では、今週のインフレ指標の結果を受けて 3 月に削除された「追加利上げの可能性を排除できない」との文言が再び加えられるかが焦点になりそうだ。なお、ニュージーランド(NZ)からは 5 月 1日に 1-3 月期失業率、5 月 2 日に 3 月住宅建設許可件数が発表予定。

南アフリカ・ランド(ZAR)は上値が限られてきそうだ。対円では底堅い動きを見せているが、対ドルでは軟調な動きが続いている。ZAR 安の要因としては、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測の後退や中東をめぐる地政学リスクの高まり、来月の総選挙への不確実性など複合的な要因が重なっている。また、12 日には年初来高値に接近したプラチナ価格が、一転軟調な動きとなっていることも重しだ。インフレ指標は低下しているが、クガニャゴ南アフリカ準備銀行(SARB)総裁は、エルニーニョ現象の影響が食品価格にはまだ転嫁しきれていないこともあり、インフレの上振れリスクを警戒している。インフレの高止まりは、金利負担など財政への悪影響が大きく、ZAR 安要因になる。なお、来週は 30 日に 3 月貿易収支が発表される。

4月22日週の回顧

豪ドルは堅調だった。豪州の CPI が予想を上回ったことがきっかけで、豪ドル円は週初の 99 円前半から、2014 年以来となる 101 円後半まで上値を広げた。対ドルでも 0.64 ドル前半から 0.65ドル前半までじり高となった。ZAR は上値が重かった。中東情勢に対しての不安感がぬぐえないことや、来月後半の総選挙に対するリスク回避の動きが上値を抑えた。ランド円は 8 円前半でもみ合い、ドルランドは 19 ランド近辺で下値が支えられた。なお、SARB の「金融政策レビュー」では、今後のインフレを計るために、基調インフレ指標の PCCI の発表を決定した。(了)

週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

April 26, 2024

ポンド、指標や発言に一喜一憂

◆対円は円買い介入、対ドルでは FOMC に注目

◆ポンド、利下げをめぐり英指標や要人発言に一喜一憂

◆加ドル、6 月利下げ思惑も根強く 2 月 GDP に注目

予想レンジ

ポンド円 191.00-197.00 円

加ドル円 110.50-115.50 円

4月29日週の展望

来週、対円では引き続き日本当局の円買い介入関連のヘッドライン、対ドルでは米連邦公開市場委員会(FOMC)とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見が注目される。今回のFOMC では政策金利が 6 会合連続で据え置かれることがほぼ確実視され、経済見通しやドットチャートの公表もないことから大きなサプライズはなさそうだ。ただし、声明やパウエル FRB 議長の発言次第では利下げの思惑は一段と後退し、ドル高が加速する可能性はある。

ポンドは足もとで利下げ時期をめぐり、英経済指標やイングランド銀行(英中銀、BOE)金融政策委員会(MPC)メンバーの発言に一喜一憂の動き。今週は MPC メンバーからタカ派寄りの発言が伝わった。ピル委員は、「インフレが持続するリスクへの警戒を怠らないことが重要だ」と述べた。

「利下げ時期の判断には慎重に慎重を重ねる必要がある」とし、「利下げはまだ先」との見解を示した。また、最近まで利上げを支持したハスケル委員は「労働市場が依然として極めてタイト」だと警告し、「インフレ目標の 2%にとどまるとの確信を得るには労働市場の一段の緩みが必要」との認識を示した。グリーン委員も労働市場についてハスケル委員と同様の見解。「利下げは差し迫っていない」と述べた。5 月 9 日に BOE 会合を控え、年内の利下げ思惑はやや緩んでいる。

来週は英国内で 4 月製造業・サービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値の発表が予定されている。今週発表の速報値では、製造業が 48.7 と予想外に 3 月から低下した一方で、サービス部門は予想を上回る 54.9 と 3 月から大幅上昇。総合 PMI は 54.0 と 11 カ月ぶりの高い水準となった。賃金や輸送・原材料価格の上昇により、コストも過去約1年で最も速いペースで上昇しており、BOE の利下げ決断はもっと慎重になる可能性が示された。

加ドルは、カナダ中銀(BOC)の 6 月会合での利下げ警戒感が一部では根強いなか、カナダの経済データを睨みながら利下げ時期を見極める展開となる。来週は 2 月 GDP の発表が予定されている。カナダの 23 年第 4 四半期 GDP は前年比 1.0%、1 月 GDP は 0.9%と市場予想を上回り、BOC は4 月会合で今年の成長見通しを 1 月時点の 0.8%から 1.5%に上方修正した。2 月 GDP が好調な結果となれば、早急な利下げを迫る圧力は和らぐ可能性がある。なお、短期金融市場では 6 月利下げ確率が五分五分で、7 月利下げは完全に織り込んでいる。

4月22日週の回顧

ドル円が介入ラインと警戒された 155 円を突破して円が全面安。ポンド円は 2015 年 8 月以来の高値となる 195 円手前まで上昇。加ドル円は 114 円付近まで 2007 年 12 月以来の高値を更新した。

ポンドドルは 1.2300 ドルまで昨年 11 月中旬以来の安値をつけたが、4 月サービス部門 PMI の予想比上振れや BOE メンバーのタカ派寄り発言を手がかりに 1.25 ドル台に切り返した。ドル買いが一服し、加ドルは対ドルで下げ渋るも、カナダの 2 月小売売上高が前月比で 2 カ月連続のマイナスとなったことも重しとなり、ドル/加ドルの下押しは 1.36 加ドル台にとどまった。(了)