デイリーレポート 2024年5月8日

May 8, 2024

【前日の為替概況】ドル円154.75円まで強含み、ミネアポリス連銀総裁が年内金利据え置き示唆

7日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。終値は154.69円と前営業日NY終値(153.92円)と 比べて77銭程度のドル高水準だった。4日のイエレン米財務長官の発言を受けて「政府・日銀が断続的 に為替介入を行うのは困難になったのではないか」との観測が浮上する中、日米金利差を意識した円売 り・ドル買いがこの日も続いた。一時は4.42%台まで低下した米10年債利回りが4.46%台まで低下幅を 縮めたことも相場の支援材料となり、3時30分過ぎに154.75円と日通し高値を更新した。

なお、カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁は「米連邦準備理事会(FRB)は金利を長期にわたり現行水 準に維持する必要がある」と述べ、「年内は金利据え置きの可能性が高い」との見解を示した。 ユーロドルは5営業日ぶりに小幅反落。終値は1.0755ドルと前営業日NY終値(1.0769ドル)と比べ て0.0014ドル程度のユーロ安水準だった。米長期金利の低下などを手掛かりにユーロ買い・ドル売りが 先行すると、22時30分過ぎに一時1.0787ドルと日通し高値を更新した。

ただ、前日の高値1.0791ドルが目先レジスタンスとして意識されると失速した。米長期金利が低下幅 を縮めると徐々にドルを買い戻す動きが優勢となり、3時30分過ぎに一時1.0748ドルと日通し安値を付 けた。主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは一時105.45まで上昇した。

ユーロ円は続伸。終値は166.37円と前営業日NY終値(165.74円)と比べて63銭程度のユーロ高水準。 「植田和男日銀総裁は岸田文雄首相と意見交換のために官邸入りした」との報道を受けて、日本時間夕刻 に一時165.64円と日通し安値を付ける場面もあったが、売り一巡後は買い戻しが優勢に。23時前には 166.57円と日通し高値を更新した。そのあとはドル円とユーロドルの値動きの影響を同時に受けたため、 相場はもみ合いに転じた。

【本日の東京為替見通し】ドル円、円安進行局面での円買い介入の可能性に要警戒か

本日の東京外国為替市場のドル円は、155円に向けた円安進行局面での本邦通貨当局によるドル売り・ 円買い介入の可能性に警戒していく展開が予想される。

昨日、植田日銀総裁は岸田首相と会談し、為替が経済物価に与える影響などについて議論した。植田日 銀総裁は、円安は「経済物価に潜在的に大きな影響を与え得るものであり、最近の円安について日銀の政 策運営上、十分注視していくことを確認した」と述べ、今後「基調的物価上昇率にどういう影響が出てく るかについて注意深く見ていく」と語った。

今回の円安は、4月26日の日銀金融政策決定会合後の記者会見で、植田日銀総裁が円安進行による政 策運営への影響について現時点で大きな影響を与えてはいない、と述べたことで円売りが誘発されており、 昨日は、円安への懸念を強める姿勢を示したことになる。

1ドル=154円程度を前提にした場合、2人以上世帯における家計負担増額は今年度、平均10万円超に 上るとの試算もあり、6月に予定されている4万円の定額減税の恩恵を無にすることになる。岸田政権が 解散・総選挙を目論んでいるのであれば、150円台の円安を抑える必要があると思われ、財務省による円 買い介入、日銀による円安懸念という円安阻止の連携姿勢を打ち出したのかもしれない。

ドル円は4月29日(※昭和の日で休場)に高値160.17円を付けた後、159円付近での本邦通貨当局に よるドル売り・円買い覆面介入で154.54円まで5.63円下落した。1日には157.99円まで反発し、フィ ボナッチ・リトレースメント61.8%戻しをほぼ達成した。円買い介入金額は5.5兆円程度と推定されて おり、157円で換算すれば350億ドル程度になる。 5月2日の未明5時過ぎには、157円付近でのドル売り・円買い覆面介入で153.04円まで下落し、3日 の米4月雇用統計を受けて151.86円まで合計6.13円続落した後、154円台後半まで反発しており、61.8% 戻しならば155.65円となる。

円買い介入金額は3.5兆円程度と推定されており、157円で換算すれば220億ドル程度になる。 過去2回の覆面介入を参考にするならば、155円台での3回目の円の押し上げ介入の可能性に警戒すべ きかもしれない。

また、明日発表される本邦4月末の外貨準備高では、ドル売り・円買い介入の原資が外貨預金(※1550 億ドル=24兆円@155円)だったのか、米国債(※9948億ドル=154兆円@155円)の売却だったのかを 確認することになる。

【本日の重要指標】

<国内>

特になし

<海外>

○15:00 ◎ 3 月独鉱工業生産(予想:前月比▲0.6%/前年同月比▲3.6%)

○16:30 ◎ スウェーデン中銀、政策金利発表(予想:3.75%に引き下げ)

○20:00 ◇ MBA 住宅ローン申請指数

○21:00 ◎ 3 月ブラジル小売売上高(予想:前年同月比 5.1%)

○21:00 ◎ ウンシュ・ベルギー中銀総裁、講演

○23:00 ◇ 3 月米卸売売上高(予想:前月比 0.8%)

○23:30 ◇ EIA 週間在庫統計

○24:00 ◎ ジェファーソン米連邦準備理事会(FRB)副議長、講演

○9 日 00:45 ◎ コリンズ米ボストン連銀総裁、講演

○9 日 02:00 ◎ 米財務省、10 年債入札

○9 日 02:00 ◎ デコス・スペイン中銀総裁、講演

○9 日 02:30 ◎ クック FRB 理事、講演

○9 日 03:00 ◎ 4 月ブラジル貿易収支(予想:93.00 億ドルの黒字)

○9 日 06:30 ☆ ブラジル中銀、政策金利発表(予想:10.50%に引き下げ)

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

7 日 08:15 神田財務官

「過度な変動や無秩序な動きあれば政府が適切な対 応」

「為替相場はファンダメンタルズに沿って安定推移が重 要」

「各国当局と意思疎通密に連携継続に変わりなし」

7 日 11:15 林官房長官

「為替介入については実施の有無を含めコメントは控え る」

7 日 13:34 オーストラリア準備銀行(RBA)声明

「これまでのところ、中期のインフレ期待はインフレ目標 と整合的であり、この状況が維持されることが重要」

「インフレは緩和しつつあるものの、その歩みは以前の 予想よりも遅く、依然として高水準にある」

「インフレ率が持続的に目標範囲内に収まるにはまだ時 間がかかると予想」

「合理的な期間内にインフレ率が目標に戻ることを最も 確実にする金利の道筋は依然として不透明」

「理事会はあらゆる可能性を排除していない」

「経済見通しは依然不透明」

「最近のデータはインフレ率を目標に戻すプロセスがス ムーズにいかない可能性が高いことを示している」

「理事会の決定は、データとリスク評価の進展に依存」

「グローバル経済の動向、国内需要のトレンド、インフレ と労働市場の見通しに引き続き注意を払う」

「理事会はインフレを目標に戻すという決意を固く持って いる」

7 日 14:38 ブロック豪準備銀行(RBA)総裁

「金利はインフレ率を目標に戻す上で適切と考える」

「インフレリスクを警戒する必要」

「我々はより長い視点(支店)を持っている」

「必ずしも再び引き締める必要があるとは思わないが、 それを排除することはできない」

「現時点での正しいスタンスは、現状に留まり、景気を見 定めること」

「金利を再び引き上げる必要があるかもしれないが、そ れは必ずしもそうしなければならないということではな い」

「理事会では金利引き上げの選択肢について議論した」

7 日 17:39 植田日銀総裁

「首相とは定期的に意見交換を行っている」

「大きな政策変更をした後なので、その後の経済金融情 勢について意見交換した」

「政府・日銀で緊密に連携することを確認」

「為替についても議論した」

「為替について十分注視していくことを確認」

「円安で今後基調的物価情勢にどういう影響が出てくる か注意深くみていく」

7 日 18:31 デコス・スペイン中銀総裁

「物価の道筋が維持されるならば6月からの利下げが可 能」

「ECB はデータ次第であり、詳細な金利の経路について コミットすることはない」

7 日 22:15 カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁

「想定する中立金利は 2%から 2.5%に小幅上昇」

「住宅市場は過去に比べて金融引き締め政策に対して より回復力があることが判明している」

「住宅市場の回復力は、少なくとも短期的には中立金利 が上昇したことを意味する可能性がある」

「問題はディスインフレがまだ進行中なのか、それとも単 に時間がかかるだけなのかということ」

「金利の長期据え置きとなる可能性が非常に高い」

「労働市場が」著しく弱まれば利下げ加速の可能性も」

「今年利下げについては勿論まだ可能性がある」

「FRB はインフレ率を 2%にするために必要なことを行 う」

「インフレの進展が停滞していると宣言するには時期尚 早」

8 日 00:24 ネタニヤフ・イスラエル首相

「ハマスの提案はイスラエルの必須条件を大きく満たし ていない」

「ハマスに対する軍事的圧力は、拘束されている人々を 帰還させるための必須条件」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=横ばいの基準線を抵抗に戻り売りスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯中。しかし、2 手連続陽線でも、依然として転 換線を下回って引けており反落の可能性が示唆されている。 本日は横ばいの基準線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、 同線を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 2 156.02(日足一目均衡表・転換線)
レジスタンス 1 155.49(日足一目均衡表・基準線)
前日終値 154.69
サポート 1 153.86(5/7 安値)
サポート 2 152.78(5/6 安値)

<ユーロドル=5/1 安値を支持に押し目買いスタンス>

小陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線 を下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売り シグナルが点灯している。しかし、4 手連続陽線の後の抱き 線で反落したものの、依然として転換線を上回って引けてお り反発の可能性が示唆されている。 本日は転換線 1.0731 ドルや雲のねじれを念頭に置き、1 日 の安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜け た場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 1.0838(日足一目均衡表・雲の上限)
前日終値 1.0755
サポート 1 1.0650(5/1 安値)

<ユーロ円=横ばいの転換線を抵抗に戻り売りスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯している。しかし、2 手連続陽線でも転換線を 下回って引けており反落の可能性が示唆されている。 本日は横ばいの転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、 同線を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 167.79(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 166.37
サポート 1 165.64(5/7 安値)

<豪ドル円=4/30 高値を抵抗に戻り売りスタンス>

小陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線 を上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買い シグナルが点灯している。しかし、4 手連続陽線でも転換線 を下回って引けており反落の可能性が示唆されている。 本日は転換線 102.44 円を念頭に置き、4 月 30 日の高値を 抵抗に売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕舞 い。

レジスタンス 1 102.90(4/30 高値)
前日終値 102.07
サポート 1 101.36(日足一目均衡表・基準線)