デイリーレポート 2024年5月9日
May 9, 2024
【前日の為替概況】ドル円155.68円まで続伸、米10年債利回りが4.49%台へ上昇
8日のニューヨーク外国為替市場でドル円は3日続伸。終値は155.53円と前営業日NY終値(154.69 円)と比べて84銭程度のドル高水準だった。米長期金利の指標となる米10年債利回りが4.49%台まで 上昇する中、日米金利差を意識した円売り・ドル買いが優勢となった。21時30分過ぎには一時155.68 円と日通し高値を付けた。
市場では「4月29日の年初来高値160.17円から3日の安値151.86円までの下落局面からの半値戻し となる156.02円が重要なレジスタンスとして意識されている」との指摘があり、1時前には155.37円付 近まで下押しする場面もあったが、下値は限定的だった。引けにかけては再び強含み、4時30分過ぎに は155.66円付近まで持ち直した。
なお、コリンズ米ボストン連銀総裁は講演で、「インフレ率を目標の2%に戻すには米経済活動の減速 が必要」「利下げを早期に実施することにはリスクがある」などと述べた。
ユーロドルは小幅続落。終値は1.0748ドルと前営業日NY終値(1.0755ドル)と比べて0.0007ドル程 度のユーロ安水準。新規材料に乏しい中、商いも低調で大きな方向感は出なかった。今日の安値は欧州時 間に付けた1.0735ドル、高値はNY時間に付けた1.0757ドルで値幅は0.0022ドル程度と小さかった。
ユーロ円は3日続伸。終値は167.19円と前営業日NY終値(166.37円)と比べて82銭程度のユーロ高 水準。英国やドイツの株価指数が史上最高値を更新するなど、欧州株相場が底堅く推移すると円売り・ユ ーロ買いが優勢となった。23時過ぎには一時167.35円と日通し高値を付けた。ドル円の上昇につれた買 いも入った。市場では「政府・日銀による為替介入への警戒感はあるものの、円先安観は揺らがない」と の声が聞かれた。
【本日の東京為替見通し】ドル円、本邦当局の為替介入への警戒高まる防衛ラインを見極め
本日の東京外国為替市場のドル円は、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒してい く展開が予想される。昨日は政府関係者が、政府・日銀が4月29日と5月2日に為替介入を行ったと述 べた。
4月29日、「昭和の日」で東京市場が休場の日に行われた円買い覆面介入は、東京時間午後1時過ぎに、 ドル円が160.17円まで急騰した後の159円台で実施された。神田財務官が「激しい為替変動が国民経済 に与える影響を看過し難い」と述べたことで、160円が「第1次防衛ライン」だと想定できる。その後、 午後4時頃、ドル円が157円台まで反発した局面で、再び円買い覆面介入が実施され、ドル円は154.54 円まで下落した。
そして、5月2日の早朝に米連邦公開市場委員会(FOMC)声明が発表された後の5時過ぎに、ドル円が 157円付近で推移していた頃、円買い覆面介入が実施され、ドル円は153.04円まで下落した。おそらく、 157円が「第2次防衛ライン」なのかもしれない。2日の介入のタイミングは、フィボナッチ・リトレー スメント61.8%戻しの水準だった。本邦通貨当局は、円安阻止のための防衛ラインを設定して、円の押 し上げ介入を実施していると想定できる。フィボナッチ・リトレースメント61.8%戻し(157.99円~ 151.86円)である155.65円付近に「第3次防衛ライン」が設定されている可能性はありそうだ。
本日の注目水準としては、4月29日の年初来高値160.17円から3日の安値151.86円までの下落局面 からの半値戻しである156.02円。一目均衡表・転換線でもあり、重要なレジスタンスとして意識されて いる。
なお鈴木財務相は昨日、「過度な変動に必要な対応を取る際、介入の原資が制約になるとは認識してい ない」と述べた。本日は、4月末の日本の外貨準備高が発表されることで、4月29日のドル売り・円買い 覆面介入の原資を見極めることになる。3月末の外貨準備高は1兆2906億ドル、外貨預金は1550億ドル、 証券は9948億ドルだった。2022年秋のドル売り・円買い介入(約623億ドル)の時は、米短期国債(T ビル)が売却されていた。米財務省のデータによると、日本は2月末時点で1兆1679億ドルの米国債を 保有しており、米国以外で世界最大の保有国であるものの、米国債発行残高全体の4%程度に過ぎない。 ちなみに、最大の米国債保有機関は、米連邦準備理事会(FRB)であり、5月1日時点で3兆8749億ドル となっている。ドル売り・円買い介入の原資に、米国債を売却した場合、25兆ドルの米国債市場にとっ ては「大海の一滴」にとどまる。
【本日の重要指標】
<国内>
○08:30 ◇ 3 月毎月勤労統計(現金給与総額、予想:前年比 1.4%)
○08:50 ◇ 4 月外貨準備高
○08:50 ◇ 日銀金融政策決定会合における主な意見(4 月 25-26 日分)
○14:00 ◇ 3 月景気動向指数速報値(予想:先行 111.2/一致 114.0)
<海外>
○08:01 ◇ 4 月英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格(予想:▲2)
○未定 ◎ 4 月中国貿易収支(予想:775 億ドルの黒字)
○20:00 ☆ 英中銀(BOE)、政策金利発表(予想:5.25%で据え置き)
○20:00 ☆ 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
○20:30 ◎ ベイリーBOE 総裁、記者会見
○未定 ◎ ポーランド中銀、政策金利発表(予想:5.75%で据え置き)
○21:00 ◎ 4 月メキシコ消費者物価指数(CPI、予想:前年比 4.63%)
○21:15 ◎ チポローネ欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演
○21:15 ◎ デギンドス ECB 副総裁、講演
○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:21.5 万件/178.5 万人)
○24:00 ◎ マックレム・カナダ銀行(中央銀行、BOC)総裁、記者会見
○10 日 01:15 ◎ ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼チーフエコノミスト、質疑応答
○10 日 02:00 ◎ 米財務省、30 年債入札
○10 日 03:00 ◎ デイリー米サンフランシスコ連銀総裁、イベントに参加
○10 日 04:00 ◎ メキシコ中銀、政策金利発表(予想:11.00%で据え置き)
○スイス、ノルウェー、スウェーデン(キリスト昇天祭)、ロシア(戦勝記念日)、休場
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
8 日 09:09 鈴木財務相
「為替はファンダメンタルズを反映して安定推移が重要、 過度の変動望ましくない」
「引き続き為替動向注視し、万全の態勢取っていきた い」
「円安、輸入物価の押上げというマイナス面に強い懸 念」
「円安はプラスマイナス面両面ある」
「為替相場、守るべきラインがあるわけではない」
「市場を注視し、とるべき時にはしっかり対応」
8 日 09:17 植田日銀総裁
「為替を直接のコントロール対象とはみていない」
「円安、様々な経済主体の活動に影響を与える」
「基調的な物価上昇率が動けば、金融政策上の対応が 必要になる」
「最近の円安の動きを十分に注視している」
「為替レートは経済・物価に大きな影響を与える」
「為替動向次第で金融政策の対応が必要になる」
「円安、これまでのところは基調的物価に大きな影響な い」
「足もとの円安、今後基調的物価上昇に影響してくるリ スクある」
「財務への配慮で金融政策が妨げられることはない」
「1 年半後・2 年後を待って利上げするということではな い」
「経済・物価見通しや、それを巡るリスク変化すれば、当 然金利を動かす理由」
「物価見通しを巡るリスクは上下双方に大きい」
「過去と比べると為替の変動が物価に影響を及ぼしや すくなっている」
「(足元の為替について)具体的なコメント差し控える」
「急速かつ一方的な円安は日本経済にマイナスであまり 望ましくない」
「為替はファンダメンタルズに沿った推移が重要」
「為替の影響は業種や企業規模・経済主体によってさま ざま」
8 日 22:29 ホルツマン・オーストリア中銀総裁
「利下げをあまりにも急ぐ理由はない」
「ECB はある程度、FRB の影響を受ける」
9 日 00:13 ホワイトハウス
「ガザの人質解放合意に向けた交渉が進行中であり、 両者間に残る隔たりは埋められる可能性」
9 日 00:46 コリンズ米ボストン連銀総裁
「現在の情勢に対し、FRB の金融政策は適切な位置づ けにある」
「金融政策は中程度の引き締め姿勢」
「利下げを早期に実施することにはリスクがある」
「最近のインフレ悪化は驚くべきことではない」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=横ばいの転換線を抵抗に戻り売りスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ
グナルが点灯中。しかし、3 手連続陽線でも、依然として転
換線を下回って引けており反落の可能性が示唆されている。
本日は横ばいの転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、
同線を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 2 157.99(5/1 高値)
レジスタンス 1 156.02(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 155.53
サポート 1 154.55(5/8 安値)
サポート 2 153.86(5/7 安値)
<ユーロドル=5/1 安値を支持に押し目買いスタンス>
小陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線
を下回り、雲の下で引けていることで、三役逆転の強い売り
シグナルが点灯している。しかし、4 手連続陽線の後の 2 手
連続陰線でも、依然として転換線を上回って引けており反発
の可能性が示唆されている。
本日は転換線 1.0731 ドルを念頭に置き、1 日の安値を支持
に押し目買いスタンスで臨み、同水準を下抜けた場合は手仕
舞い。
レジスタンス 1 1.0838(日足一目均衡表・雲の上限)
前日終値 1.0748
サポート 1 1.0650(5/1 安値)
<ポンド円=横ばいの転換線を抵抗に戻り売りスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ
グナルが点灯している。しかし、3 手連続陽線でも転換線を
下回って引けており反落の可能性が示唆されている。
本日は横ばいの転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、
同線を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 195.96(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 194.39
サポート 1 193.33(5/8 安値)
<NZ ドル円=基準線を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ
グナルが点灯している。4 手連続陽線で転換線を上回って引
けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は転換線 93.11 円を念頭に置き、基準線を支持に押し
目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 95.40(4/29 高値)
前日終値 93.34
サポート 1 92.68(日足一目均衡表・基準線)