デイリーレポート 2024年5月23日
May 23, 2024
【前日の為替概況】ドル円、反発FOMC議事要旨にさらなる引き締めへの言及も
22日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反発。終値は156.80円と前営業日NY終値(156.17円) と比べて63銭程度のドル高水準だった。米長期金利の指標である米10年債利回りが4.45%台まで上昇 すると円売り・ドル買いが先行。米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(4月30日-5月1日分)で「最 近の指標はディスインフレの過程に想定していたより時間がかかりそうなことを示唆」「数人の当局者は 必要ならさらなる引き締めに意欲」との見解が示されると、全般ドル買いが活発化し一時156.84円と日 通し高値を付けた。
ユーロドルは3日続落。終値は1.0823ドルと前営業日NY終値(1.0854ドル)と比べて0.0031ドル程 度のユーロ安水準だった。米長期金利の上昇に伴うユーロ売り・ドル買いが先行すると一時1.0822ドル まで下落したものの、米長期金利が上昇幅を縮めると1.0847ドル付近まで下げ渋った。ただ、FOMC議事 要旨が「タカ派的な内容だった」と受け止められると再びドル買いが優勢に。4時30分前には1.0818ド ルと日通し安値を更新した。ユーロ円は反発。終値は169.71円と前営業日NY終値(169.51円)と比べ て20銭程度のユーロ高水準。ユーロドルの下げ渋りにつれて169.72円付近まで買い戻される場面もあっ たが、FOMC議事要旨公表後に米国株が軟調に推移するとリスク・オフの円買いが優勢に。3時30分過ぎ には169.38円と日通し安値を付けた。ただ、引けにかけては169.73円付近まで持ち直した。
【本日の東京為替見通し】円安継続、国債買い入れオペに注目G7控え介入は困難か
本日のドル円相場は引き続き円安地合いが継続されそうだ。昨日は本邦の長期債利回りが11年ぶりに 1%まで上昇しただけではなく、2・5年債や超長期債の20・30年債なども上昇している。しかしながら、 為替市場では本邦金利の動向に連れて円が買われることが全くなく、むしろ介入が観測された5月1日以 来の水準までドル買い・円売りが進んだ。改めてドル円の買いトレンドの強さが示され、市場は円の売り 場を探す流れは全く変わっていない。
本日も円安トレンドは変わらないだろうが、まず注目されるのが日本時間10時10分頃に公表される日 本銀行による国債買い入れオペ。13日に行われた買い入れオペで、残存期間5年超10年以下の国債買い 入れ額を前回から500億円減らした。債券市場では日銀の早期の修正観測が期待されているが、上述のよ うに本邦金利上昇が円買いには結びついていない。よってリスク要因としては今回のオペでは、前回17 日のようにオペを据え置いた場合による金利低下で、円が売られるリスクの方が高くなりそうだ。
また、為替介入警戒感はあるものの、介入が難しいと思われることもドル円を支えそうだ。前回観測さ れた5月1日(日本時間2日早朝)の介入が157円だったこともあり、一部市場関係者の間では再び介入 を警戒している。しかしながら、本日から25日にかけてイタリア・ストレーザで主要7カ国(G7)財務 相・中央銀行総裁会議が開かれることで、本邦当局者が為替介入を行うのは極めて難しいと思われる。本 邦の介入観測後にイエレン米財務長官が「G7の国の通貨は市場で決定されるべきだ」と発言しているよ うに、G7前にこの原則を無視して介入を行うことは厳しいだろう。しかも、先日明らかになったバイデ ン米大統領の支持率は、大統領在任中の最低水準に並び、調査結果では「経済情勢を米国が直面する最大 の課題」との回答だった。経済情勢の課題はインフレの高止まりということで、大統領選挙を控えインフ レ圧力を高める自国通貨(ドル)安をバイデン政権は受け入れられないと思われることも、介入を行う難 しさと言える。
なお、本日は本邦からは対外対内証券売買契約等の状況が発表されるが、他はアジア・オセアニアを含 め市場を動意づけるような主だった経済指標の発表予定がない。よって、本日のアジア時間では円相場が 中心に動くことになるだろう。しかし、日本時間夕刻から欧州各国の購買担当者景気指数(PMI)速報値 が発表されることで、ここ最近値動きが限定的だったユーロなども動意づくことが予想される。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)
<海外>
○09:00 ◎ 1-3 月期シンガポール国内総生産(GDP)確定値(予想:前期比▲0.3%)
○未定 ◎ 韓国中銀、政策金利発表(予想:3.50%で据え置き)
○14:00 ◎ 4 月シンガポール消費者物価指数(CPI、予想:前年比 2.7%)
○16:15 ◎ 5 月仏製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値(予想:45.8)
○16:15 ◎ 5 月仏サービス部門 PMI 速報値(予想:51.7)
○16:30 ◎ 5 月独製造業 PMI 速報値(予想:43.1)
○16:30 ◎ 5 月独サービス部門 PMI 速報値(予想:53.5)
○17:00 ◎ 5 月ユーロ圏製造業 PMI 速報値(予想:46.2)
○17:00 ◎ 5 月ユーロ圏サービス部門 PMI 速報値(予想:53.5)
○17:30 ◎ 5 月英製造業 PMI 速報値(予想:49.5)
○17:30 ◎ 5 月英サービス部門 PMI 速報値(予想:54.7)
○17:30 ◎ 4 月香港 CPI(予想:前年同月比 2.0%)
○20:00 ◎ トルコ中銀、政策金利発表(予想:50.00%で据え置き)
○20:30 ◎ ピル英中銀金融政策委員会(MPC)委員兼チーフエコノミスト、講演
○21:00 ◎ 1-3 月期メキシコ国内総生産(GDP)確定値(予想:前期比 0.2%/前年同期比 1.6%)
○21:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:22.0 万件/179.4 万人)
○22:45 ◎ 5 月米製造業 PMI 速報値(予想:50.0)
○22:45 ◎ 5 月米サービス部門 PMI 速報値(予想:51.3)
○22:45 ◎ 5 月米総合 PMI 速報値(予想:51.1)
○22:45 ◎ ビルロワドガロー仏中銀総裁、講演
○23:00 ◎ 5 月ユーロ圏消費者信頼感指数(速報値、予想:▲14.2)
○23:00 ☆ 4 月米新築住宅販売件数(予想:前月比▲2.1%/67.9 万件)
○24 日 04:00 ◎ ボスティック米アトランタ連銀総裁、質疑応答に対応
○先進 7 カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議(伊ストレーザ、25 日まで)
○インド(釈迦生誕日)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
22 日 08:13 メスター米クリーブランド連銀総裁
「年間ではトレンド以上の成長を見込む」
「制約的な金利水準の維持、現在の雇用市場の強さを 踏まえればさほど大きなリスクではない」
22 日 08:20 コリンズ米ボストン連銀総裁
「高い不確実性が経済の特徴となり続けている」
「いかなるデータにも過剰反応してはならない」
「金利調整に必要な進展には時間がかかるだろう」
「忍耐が重要となる局面にある」
22 日 08:21 ボスティック米アトランタ連銀総裁
「経済は驚くほど強靭」
22 日 12:13 オア NZ 準備銀行(RBNZ)総裁
「国内のインフレ率低下には時間かかる見込み」
「経済の潜在成長率は低下しているが、それが一時的 なものかどうかは不明」
「インフレサプライズの上昇余地は限定的」
「今回の会合で金利の引き上げを真剣に検討」
「高水準の国内インフレは目先の要因に左右されること が多い」
23 日 03:04 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨 (4 月 30 日-5 月 1 日分)
「数人の当局者は必要ならさらなる引き締めに意欲」
「一部の当局者は高金利の影響は以前よりも小さいと 認識」
「一部の当局者は金融状況が十分に制限的ではないと 懸念」
「インフレ率は 3 月よりも緩やかに低下していると見てい る」
「一部の当局者は長期金利がこれまで考えられていた よりも高くなる可能性があると認識」
「当局者らは依然として金融政策は制限的だと考えてい るが、程度については不確実と認識」
「当局者らは第 1 四半期のインフレ率に失望」
「当局者らはインフレが下がらなければ金利を長期間維 持することを議論」
「インフレ巡る確信の高まりは予想よりも長期化すると認 識」
「当局者の多くは景気抑制の度合いに確信持たず」
23 日 01:18 スナク英首相
「7 月 4 日に総選挙を実施する」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=レンジ切り上がり、転換線の低下回避へ>
陽線引け。一目均衡表・基準線 156.02 円を上回る水準で
底堅さを維持し、156.84 円までじり高となった。
目先の上値の節目だった 14 日高値 156.74 円をこなしてい
る。レンジの切り上がりにより、重い推移の示唆となりそう
だった一目・転換線の低下は回避できそう。同線は来週にも
現水準 155.22 円から 156 円台へ上昇することが予想される。
底堅い動きが続きそうだ。
レジスタンス 2 157.99(5/1 高値)
レジスタンス 1 157.25(5/21 下落幅の倍返し)
前日終値 156.80
サポート 1 156.02(日足一目均衡表・基準線)
<ユーロドル=転換線の頭打ち前に十分戻したい>
小陰線引け。一時 1.0818 ドルまで下落して 15 日以来、1
週間ぶりの安値をつけた。終値も一目均衡表・転換線を下回
っている。本日 1.0831 ドルへ小幅に切り上がる同線を追う
ような戻りも想定できるが、現状からすれば転換線の上昇は
来週 28 日にも頭打ちとなる公算。転換線が低下へ向かい抵
抗が強まる前に十分戻し、下値を探る流れを断ち切れるか注
視したい。
レジスタンス 1 1.0884(5/20 高値)
前日終値 1.0823
サポート 1 1.0753(日足一目均衡表・基準線)
<ポンド円=すう勢を示す5日線の上昇ともない高値更新狙う>
陽線引け。一時 199.54 円と、200 円の節目や 4 月 29 日に
つけた年初来高値 200.55 円を視野に入れたじり高の流れが
続いた。目先のすう勢を示す 5 日移動平均線の上昇をともな
う上向きの流れが続いている。同線は本日 198.70 円前後へ
切り上がって推移。下押しがあっても 5 日線前後をめどに折
り返し、高値更新を狙う動きが予想される。
レジスタンス 1 200.27(ピボット・レジスタンス 2)
前日終値 199.41
サポート 1 198.70(5 日移動平均線)
<NZ ドル円=96 円乗せの達成感あるが上向きの流れ維持へ>
上影陽線引け。一時 96.11 円まで上振れた。2007 年以来の
高値をつけている。達成感もあってか押し戻され、長めの上
ひげをともなう足型を形成した。上値の重さの示唆といえる
が、終値は 95 円前半で上昇中の 5 日移動平均線を上回る水
準にとどまっている。同線付近や上昇傾向の一目均衡表・転
換線 94.80 円を支えとした上向きの流れは続きそうだ。
レジスタンス 1 96.11(5/22 高値=年初来高値)
前日終値 95.55
サポート 1 94.80(日足一目均衡表・転換線)