デイリーレポート 2024年5月24日

May 24, 2024

【前日の為替概況】ドル円、小幅続伸米指標が予想より強く1日以来の高値

23日のニューヨーク外国為替市場でドル円は小幅ながら続伸。終値は156.93円と前営業日NY終値 (156.80円)と比べて13銭程度のドル高水準だった。米長期金利の指標である米10年債利回りが4.40% 台まで低下すると円買い・ドル売りが先行。21時30分前に一時156.53円と日通し安値を更新した。

ただ、前週分の米新規失業保険申請件数が予想より強い内容だったことが分かると買い戻しが優勢に。 5月米製造業・サービス部門PMI速報値が予想を上回ったことも相場の支援材料となり、23時過ぎに一時 157.20円と1日以来約3週間ぶりの高値を付けた。米10年債利回りが4.49%台まで上昇したこともドル 買いを誘った。

もっとも、買い一巡後は伸び悩んだ。米株式市場でダウ平均が60 0ドル超下落するとリスク回避の円買 いが入ったため、やや上値を切り下げた。 なお、イエレン米財務長官はこの日、「為替介入はめったに使用されない手段であるべき」「介入に踏み 切る際には事前の伝達が必要」との考えを改めて表明した。市場では「G7財務相・中央銀行総裁会議を 前に、日本をけん制した可能性がある」との声が聞かれた。

ユーロドルは小幅に4日続落。終値は1.0815ドルと前営業日NY終値(1.0823ドル)と比べて0.0008 ドル程度のユーロ安水準だった。5月の独・ユーロ圏PMI速報値が概ね良好な内容だったことを受けてユ ーロ買い・ドル売りが先行。22時30分過ぎに一時1.0861ドルと日通し高値を付けた。 ただ、前日の高値1.0864ドルがレジスタンスとして働くと失速した。5月米PMI速報値が予想を上回 ったことが伝わると米長期金利の上昇とともに全般ドル買いが活発化し、一時1.0805ドルと日通し安値 を付けた。

ユーロ円はほぼ横ばい。終値は169.73円と前営業日NY終値(169.71円)と比べて2銭程度のユーロ 高水準。23時過ぎに一時170.32円と4月29日以来の高値を付けたものの、ダウ平均が600ドル超下落 するとリスク・オフの円買いが優勢となり、3時30分過ぎには169.48円付近まで下押しした。

【本日の東京為替見通し】米当局者の介入けん制で円安継続、当局者間の意思疎通欠如の噂も

本日のドル円相場も引き続き円安地合いが継続されそうだ。昨日からイタリア・ストレーザで主要7 カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が始まったが、議題は多岐にわたり特段為替について言及されるこ となどはないだろう。

昨日会合前にイエレン米財務長官が「為替介入はめったに使用されない手段であるべき」と改めて言及 した。本邦当局者が「G7の国の通貨は市場で決定されるべき」という原則を無視して、介入を指示する ことは難しく、引き続き円は売られやすい状況だ。更にイエレン氏は「介入に踏み切る際には事前の伝達 が必要」と今回も発言したことは、4月末と5月初旬の介入観測について「本邦当局者が米国サイドに伝 達をしなかったことにたいして不快感を示している」とのうわさもある。バイデン政権がインフレ圧力の 緩和に苦労している中で、当局者が意思疎通を怠りドル売り介入を指示したとしたら、インフレ高進につ ながる自国通貨(ドル)売りに対して米国サイドは更に抵抗色を強めるだろう。

また、昨日は中国人民銀行(PBOC)が、人民元取引の基準値を1月以来の元安水準に設定した。これま で中国は7.25元超えで自国通貨の防衛をしていたが、防衛ラインより元安に動いたことで、中国が一定 の元安を放置したとの憶測もある。この状況下で円だけ防衛するのが更に難しくなりそうだ。

なお、週末にかけては「G7声明、日本の主張を踏まえて為替のコミットメントを再確認」などと本邦 当局者からの声が聞こえてくる可能性もある。しかし、本邦当局者や国内の通信社だけの報道では真偽を 確かめるのが難しい。これまでも、様々な首脳会談で国内外の報道では、報じている内容の強弱や、内容 そのものの相違があった。特に本邦当局が円安対応に苦慮していることで、円安是正など大袈裟に報じら れた場合は、国外も同様に報じられているかを確認するまでは、鵜呑みにするのはリスクがありそうだ。 本日は本邦の4月全国消費者物価指数(CPI)が発表される。同月の生鮮食料品除いた東京都区部コア CPIは前月の2.4%から1.6%に急低下したこともあり、全国のコアCPIも2.6%から2.2%へと低下する と予想。更にエネルギーを除いたコア・コアCPIは2.9%から2.4%まで低下予想になっている。今週に 入り本邦金利は高水準を記録し、昨日は国債購入が未達になった。しかし、市場予想よりもさらに下振れ た場合は、本邦の債券利回りが低下し、円売りに反応する可能性が高い。一方で、予想を上振れた場合は 円が買われるだろうが、為替市場は米国が当面政策金利を据え置くとの認識が高まっていることで、本邦 金利の上昇に連れにくくなっている。よって、円買いの反応は短命に終わりそうだ。

また、昨日厚労省が発表した2023年度の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は、前年度比-2.2%と なり、消費税増税の影響で物価が上昇した2014年度以来、9年ぶりの大きさを記録した。実質賃金が低 下する中で、本邦金利が大幅に上がるとは考えにくいことも円売り要因として残る。

なお、オセアニア通貨が今週はボラタイルに動いていることで、本日も値動きに注目したい。早朝に4 月のニュージーランド貿易収支が発表された以外は、本日は主だった経済指標の発表予定はない。しかし ながら、オセアニア通貨は株価の値動きなどのリスク許容度に敏感に反応することで、本日は大幅反落の 可能性もある日経平均や米株指数先物の動きにオセアニア通貨も連れそうだ。

【本日の重要指標】

<国内>

○08:30 ☆ 4 月全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く総合、予想:前年比 2.2%)

○08:30 ☆ 4 月全国 CPI(生鮮食料品・エネルギー除く、予想:前年比 2.4%)

<海外>

○07:45 ◎ 4 月ニュージーランド(NZ)貿易収支

○08:01 ◇ 5 月英消費者信頼感指数(Gfk 調査、予想:▲18)

○15:00 ☆ 1-3 月期独国内総生産(GDP)改定値(季節調整済、予想:前期比 0.2%/前年同期比▲0.2%)

○15:00 ☆ 1-3 月期独 GDP 改定値(季節調整前、予想:前年同期比▲0.9%)

○15:00 ◎ 4 月英小売売上高(自動車燃料含む、予想:前月比▲0.4%/前年比▲0.2%)

○15:00 ◎ 4 月英小売売上高(自動車燃料除く、予想:前月比▲0.6%/前年比▲1.1%)

○15:45 ◇ 5 月仏企業景況感指数(予想:100)

○16:00 ◎ シュナーベル欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演

○18:15 ◎ バスレ・スロベニア中銀総裁、ミュラー・エストニア中銀総裁、講演

○18:15 ◎ ナーゲル独連銀総裁、リントナー独財務相、講演

○19:15 ◎ デコス・スペイン中銀総裁、講演

○21:00 ◇ 4 月メキシコ貿易収支(予想:8.00 億ドルの赤字)

○21:30 ◎ 3 月カナダ小売売上高(予想:前月比横ばい/自動車を除く前月比 0.1%)

○21:30 ◎ 4 月米耐久財受注額(予想:前月比▲0.8%/輸送用機器を除く前月比 0.1%)

○22:35 ◎ ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事、講演

○23:00 ◎ 5 月米消費者態度指数(ミシガン大調べ、確報値、予想:67.5)

○25 日 00:25 ◎ センテノ・ポルトガル中銀総裁、講演

○先進 7 カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議(伊ストレーザ、25 日まで)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

23 日 08:58 オア NZ 準備銀行(中央銀行、RBNZ)総裁

「インフレ率が 2%に達する前に緩和を始めることは可 能」

「政策判断は特定のデータに依存しない」

23 日 15:55 デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁 「利下げの規模や回数は決まっていない」

「今後数カ月の金利上昇は基本シナリオではない」

23 日 18:43 イエレン米財務長官

「為替介入は稀であるべきであり、事前の伝達が必要」

「G7 財務相会合では、中国の過剰生産能力への対応を 協議する」

「中国の政策が変わらなければ、G7 が安価な中国製品 の大量流入で打撃を受ける」

「欧米諸国は製造業を守るため、戦略的かつ連携して 中国の産業政策に対応する必要がある」

23 日 21:15 植田日銀総裁

「日本経済の認識、4 月の会合時から大きく変わってい ない」

「世界経済をめぐるリスク、何か新しいものが出ているわ けではない」

24 日 04:25 ボスティック米アトランタ連銀総裁

「景気過熱回避へより辛抱強くなくてはならない」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=156 円台で、転換線の基準線上抜けを待つ状態>

小陽線引け。大きな動きではないが 1 日以来の 157 円台を 回復する場面もあった。同節目を割り込んで NY の取引を終 えたが、156.36 円で引けた 5 日移動平均線や、一目均衡表・ 基準線 156.02 円は上回っている。 気迷い気味ではあるものの、156 円台の推移を維持して、 現在 155.40 円に位置する一目・転換線が基準線を上回って、 一目均衡表の主要指標がすべて買い示唆となるのを待つ状 態。まだ戻りはじりじりとしたペースだが、買いサインの確 認後に地合いをさらに強めることが期待できる。

レジスタンス 2 157.99(5/1 高値)
レジスタンス 1 157.56(ピボット・レジスタンス 2)
前日終値 156.93
サポート 1 156.11(5/22 安値)

<ユーロドル=転換線の切り上がりに追随しきれない>

上影小陰線引け。1.0861 ドルまで上昇する場面もあったが、 22 日高値 1.0864 ドルを目前に失速している。NY 終値は 1.0815 ドルと、一目均衡表・転換線を上回って引けることが できなかった。本日 1.0832 ドルへわずかながら切り上がっ た転換線に追随できない。週明けにも頭打ちとなる見込みと 強めてきた同線の動きを反映するように相場も動きを弱め ることが想定でき、一目・雲やその下の基準線を試す展開も 視野に入れて臨むべきか。

レジスタンス 1 1.0875(5/21 高値)
前日終値 1.0815
サポート 1 1.0753(日足一目均衡表・基準線)

<ユーロ円=軽い調整の可能性も、転換線は支えに>

上影極小陽線引け。169 円半ばで推移していた 5 日移動平 均線を割り込む調整場面もあった。しかし下げ渋り、同線を 上回って NY の取引を終えている。本日 169.66 円前後で推移 する 5 日線を再び割り込むような下押しもありそう。ただ、 上昇傾向を維持しそうな一目・転換線 168.83 円は、やや押 し目が深くなった局面があっても支えになるとみる。現状か らすれば同線は来週、169 円半ばから後半へ上昇する見込み。

レジスタンス 1 170.32(5/23 高値)
前日終値 169.73
サポート 1 169.22(5/21 安値)

<豪ドル円=転換線付近の攻防>

上影小陰線引け。104 円台へ戻す場面もあったが押し戻さ れた。一目均衡表・転換線前後の攻防となっている。転換線 は本日 103.69 円で推移。上昇傾向の同線は支えにるとみる。 下抜けた場合は、102.91 円前後で推移する 21 日移動平均線 や、16 日安値 102.81 円が次のサポートとなるか。

レジスタンス 1 104.12(ピボット・レジスタンス 1)
前日終値 103.67
サポート 1 102.81(5/16 安値)