デイリーレポート 2024年5月28日
May 28, 2024
【前日の為替概況】英米市場が休場のため動意に乏しい展開、ドル円は 156 円台後半で小動き
27 日のニューヨーク外国為替市場でドル円は 4 営業日ぶりに小反落。終値は 156.88 円と前営業日 NY 終値(156.99 円)と比べて 11 銭程度のドル安水準だった。ポンドやオセアニア通貨を中心にドル売りが 出た影響を受けると 24 時過ぎに 156.71 円付近まで下押ししたものの、売り一巡後は徐々に下値を切り上 げた。取引終了間際には 156.94 円付近まで下げ渋った。ただ、週明け早朝取引で付けた日通し高値 157.04 円を上抜けることは出来なかった。前週末の高値 157.15 円や 23 日の高値 157.20 円もレジスタンスとし て意識された。メモリアルデーで米国市場が休場となったほか、英国もスプリング・バンク・ホリデーで 休場だったことから市場参加者が激減。NY 時間に限れば値幅 20 銭程度の狭いレンジ取引に終始した。
ユーロドルは小幅続伸。終値は 1.0859 ドルと前営業日 NY 終値(1.0847 ドル)と比べて 0.0012 ドル程 度のユーロ高水準だった。ビルロワドガロー仏中銀総裁が「欧州中央銀行(ECB)は 7 月の追加利下げの 可能性を排除すべきではない」と発言するとユーロ売りが先行。21 時過ぎに一時 1.0841 ドル付近まで値 を下げた。ただ、週明け早朝取引で付けた日通し安値 1.0838 ドルが目先サポートとして働くと買い戻し が優勢に。1 時 30 分過ぎには 1.0862 ドル付近まで持ち直した。ポンドやオセアニア通貨を中心にドル売 りが出た影響も受けた。
なお、ポンドドルは一時 1.2778 ドル、豪ドル米ドルは 0.6660 米ドル、NZ ドル米ドルは 0.6154 米ドル まで値を上げた。
ユーロ円も小幅続伸。終値は 170.34 円と前営業日 NY 終値(170.23 円)と比べて 11 銭程度のユーロ高 水準。19 時過ぎに一時 170.50 円と前週末の高値に面合わせしたあとは 170.03 円付近まで上げ幅を縮め たものの、170.43 円付近まで持ち直した。欧州株相場の上昇を背景にリスク・オンの円売りが出た。
【本日の東京為替見通し】6 月日銀金融政策決定会合への警戒感が上値を抑える展開か
本日の東京外国為替市場のドル円は、昨日の植田日銀総裁と内田日銀副総裁の発言を受けて 6 月の日銀 金融政策決定会合での追加金融引締めへの警戒感が高まったことで、上値の重い展開が予想される。 また、本日は 13 時 55 分からメスター米クリーブランド連銀総裁やボウマン米連邦準備理事会(FRB) 理事の講演が予定されていることで、週末からの 6 月 11-12 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)前のブラ ックアウト期間を控えて、FOMC の利下げ開始時期への言及には警戒しておきたい。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが FF 金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッ チ」では、11 月 FOMC での 0.25%利下げ開始と 12 月 FOMC での据え置きが見込まれている。
内田日銀副総裁は、2 月 8 日の奈良県での金融経済懇談会での講演で、マイナス金利解除後の金融政策 運営について、短期政策金利の連続的な利上げは想定しておらず、緩和的な金融環境を維持していく考え を明確にしていた。内田副総裁は、今後の経済・物価情勢次第としながらも、「どんどん利上げをしてい くようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく」と表明した。内田副総裁の発言を受けて、 3 月の金融政策決定会合でのマイナス金利解除観測が強まったものの、追加利上げを急がない姿勢が示さ れたことは、長期金利の低下要因、円安要因となった。
昨日、内田副総裁は、過去 25 年間の金融政策運営におけるデフレとゼロ金利政策との闘いの終焉が視 野に入ったとの見解を示した。内田副総裁は、3 月に短期政策金利の操作を通じて 2%の物価安定目標を 目指す伝統的な金融政策の枠組みに戻ったことは「ゼロ金利制約を克服したことを意味する」と説明し、 インフレ予想を 2%にアンカーしていくという大きな課題は残っているが、「デフレとゼロ金利制約との 闘いの終焉は視野に入った」と語った。内田副総裁の発言を受けて、新発 10 年債利回りは 2012 年 4 月以 来 12 年ぶりの高水準である 1.025%台まで上昇した。市場では、6 月 13-14 日の日銀金融政策決定会合で、 円安対策のために、0.25%の追加利上げと現状 6 兆円程度の毎月の長期国債買入れの減額、撤廃への警戒 感が高まっているが、昨日の植田日銀総裁と内田日銀副総裁の発言が地均しだったのかもしれない。
仮に 6 月会合で利上げが実施された場合、日米金融政策の格差が縮小し、本邦実質金利のマイナス幅が 縮小するため、これまでのように円売りを進めれば、本邦通貨当局が投機的な円売りと判断して円買い介 入に踏み切る可能性が高まることになる。神田財務官は、3 月会合でのマイナス金利解除の後の円安に対 して、「日米のインフレ率の動向や見通し、金融政策、金利の方向性といったファンダメンタルズに照ら すと強い違和感を覚えざるを得ない」と述べていた。
【本日の重要指標】
<国内>
○08:50 ◇ 4 月企業向けサービス価格指数(予想:前年比 2.3%)
<海外>
○10:30 ◎ 4 月豪小売売上高(予想:前月比 0.2%)
○13:55 ◎ メスター米クリーブランド連銀総裁、イベントに参加
○13:55 ◎ シュナーベル欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演
○13:55 ◎ ボウマン米連邦準備理事会(FRB)理事、講演
○15:00 ◇ 4 月独卸売物価指数(WPI)
○20:00 ◎ センテノ・ポルトガル中銀総裁、講演
○21:30 ◇ 4 月カナダ鉱工業製品価格(予想:前月比 0.9%)
○21:30 ◇ 4 月カナダ原料価格指数(予想:前月比 3.0%)
○22:00 ◇ 3 月米住宅価格指数(予想:前月比 0.5%)
◇ 1-3 月期米住宅価格指数
○22:00 ◎ 3 月米ケース・シラー住宅価格指数(予想:前年比 7.3%)
○22:15 ◎ クノット・オランダ中銀総裁、講演
○22:55 ◎ カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、あいさつ
○23:00 ◎ 5 月米消費者信頼感指数(予想:95.9)
○29 日 00:30 ◎ 米財務省、2 年債入札
○29 日 02:00 ◎ 米財務省、5 年債入札
○29 日 02:05 ◎ クック米連邦準備理事会(FRB)理事、デイリー米サンフランシスコ連銀総裁、討議に参 加
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
27 日 09:11 植田日銀総裁
「インフレ目標の枠組みを有する他の中央銀行と同様に、 その実現に向けて注意深く進んでいくつもり」
「インフレ予想をゼロ%から押し上げることには成功した ように思うが、それを 2%の目標値にアンカーしなけれ ばならない」
27 日 11:16 内田日銀副総裁
「マイルドでしつこいデフレが、『現在の物価と賃金は将 来も変わらない』という、ある種の社会的なノルム(social norm)を生み出した」
「これまでの状況を変えるためには、デフレのそもそもの 原因を解消することと、デフレ的なノルムを克服すること が必要」
「日本銀行は伝統的な金融政策の枠組みに戻った」
「このことはゼロ金利制約を克服したことを意味する」
「インフレ予想を 2%にアンカーしていくという大きな課題 は残っているが、デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉 は視野に入った」
27 日 14:11 レーン ECB 専務理事兼主任エコノミスト
「欧州中央銀行(ECB)は利下げを開始する準備が整っ ている」
27 日 21:09
「2024 年の残りの期間にインフレ率がスムーズに低下し なかったとしても、2025 年の間にさらなるディスインフレ が予想される」
「欧州中央銀行(ECB)の賃金トラッカーは、全体的な賃 金圧力が 2023 年以降緩やかになっていることを示して いる」
27 日 16:28 レーン・フィンランド中銀総裁
「6 月に利下げの時期が熟す」
「利下げを想定するためには、引き締め姿勢の継続が 前提」
「金利経路に前もってコミットしない」
「データに基づき、会合ごとのアプローチをとる」
27 日 21:13 ビルロワドガロー仏中銀総裁
「ECB は 7 月の追加利下げを排除すべきではない」
「サプライズがなければ、6 月の利下げは『決定事項』」
「賃金やマージンよりもサービス・インフレの方が重要」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=横ばいの転換線を支持に押し目買いスタンス>
小陰線引け。転換線は基準線を下回っているものの、遅行
スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで、買いシ
グナルが優勢な展開。3 手連続陽線の後の抱き線で反落した
ものの、依然として転換線を上回って引けており反発の可能
性が示唆されている。
本日は横ばいの転換線を支持に押し目買いスタンスで臨
み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 2 160.17(4/29 高値)
レジスタンス 1 157.99(5/1 高値)
前日終値 156.88
サポート 1 155.40(日足一目均衡表・転換線)
サポート 2 154.55(5/8 安値)
<ユーロドル=基準線を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ
グナルが点灯している。2 手連続陽線で転換線を上回って引
けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は転換線 1.0850 ドルを念頭に置き、基準線を支持に
押し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 1.0943(3/21 高値)
前日終値 1.0859
サポート 1 1.0767(日足一目均衡表・基準線)
<ユーロ円=転換線を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ
グナルが点灯している。4 手連続陽線で転換線を上回って引
けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を
下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 171.56(4/29 高値)
前日終値 170.34
サポート 1 168.92(日足一目均衡表・転換線)
<豪ドル円=転換線を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ
グナルが点灯している。2 手連続陽線で転換線を上回って引
けており続伸の可能性が示唆されている。
本日は転換線支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を下
抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 104.94(4/29 高値)
前日終値 104.39
サポート 1 103.69(日足一目均衡表・転換線)