デイリーレポート 2023年6月5日
June 5, 2023
【前日の為替概況】ドル円、5日ぶり反発 雇用大幅増で米金利上昇
2日のニューヨーク外国為替市場でドル円は5営業日ぶりに反発。終値は139.95円と前営業日NY終値(138.80円)と比べて1円15銭程度のドル高水準だった。5月米雇用統計で非農業部門雇用者数変化が33.9万人増と市場予想の19.0万人増を大きく上回ったことが伝わると米・中長期金利の上昇とともに買いが優勢に。上下に大きく振れながらも金利が一段と上昇したうえ、ダウ平均が740ドル超の大幅上昇を見せると上値を試す展開となり、3時過ぎには140.07円まで上げ幅を拡大した。
なお、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%の利上げを予想する確率が前日の45%付近から52%付近まで上昇。また、0.50%の利上げを予想する確率も前日の8%付近から20%前後まで上昇した。
ユーロドルは反落。終値は1.0708ドルと前営業日NY終値(1.0762ドル)と比べて0.0054ドル程度のユーロ安水準だった。米雇用統計後に全般ドル高が進んだ流れに沿って下落。一時1.0705ドルまで下押しした。また、ポンドドルは1.2442ドル、ドルスイスフランは0.9092フランまでドル高に振れた。
ユーロ円は続伸。終値は149.76円と前営業日NY終値(149.37円)と比べて39銭程度のユーロ高水準だった。ドル円や米国株の一段高を受けて次第に買いが強まり、一時149.96円まで値を上げた。また、その他クロス円も総じて強く、ポンド円は174.68円、豪ドル円は92.56円、NZドル円は84.89円、カナダドル円は104.28円まで上昇した。
【本日の東京為替見通し】先週末の流れが継続か、米金利動向や原油相場を睨んだ動き
本日の東京為替市場でドル円は、基本的に2日ニューヨーク市場の流れが続くと考えてよさそうだ。米国では債務上限の停止法案が可決し、デフォルト(債務不履行)が避けられたことで相場全般のリスクセンチメントが大きく改善。同国の5月雇用統計を受けて米金利先高観が強まったことなど、ドル円をサポートする要因が目立つ。日本株も大幅高スタートが見込まれており、リスク選好ムードの高まりによるクロス円の堅調さもドル円の支えとなるだろう。
ただし、ここから米金利の一方的な上昇が続くかは不透明。先週末の5月米非農業部門雇用者数変化は33.9万人増と市場予想から大きく上振れ、上方修正された前回値も上回った。確かに強かったものの、その前に発表された5月ADP全米雇用報告や4月JOLTS求人件数が雇用の好調さを示していただけにビッグサプライズというわけでもない。
雇用者数の変化に目が行きがちだが、5月失業率は(歴史的には低い水準ではあるが)3.7%に悪化した。同月平均時給は前年比4.3%と若干ながらも鈍化しており、「6月米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げ見送り」を裏付ける結果だろう。短期金利先物は7月の米利上げを織り込んだようだが、年末までとなるとまだ意見が分かれるところだ。
今週米国では、今晩が5月米ISM非製造業指数、8日に前週分の米新規失業保険申請件数と重要指標は少ない。また、来週のFOMCを前にしてブラックアウト期間に入るため、当局者からの金融政策に関する発言もなし。判断材料が少ない分だけ、金利市場は思惑で上下しやすくなるかもしれず、為替はその動向を見定めることになる。
ほか、原油相場が激しく動くようであれば、資源国通貨も神経質に上下しそうだ。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」は4日の会合で、協調減産の枠組みを2024年末まで延長することを決定。サウジアラビアが7月に独自で日量100万バレルの追加減産を表明したことを受けて、時間外のNY原油先物は上サイドに大きく窓を開けて始まった。産油国通貨でもあるカナダドルの振れ幅が大きいようだと、他通貨への影響も大きくなるだろう。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
○10:45 ◎ 5月Caixin 中国サービス部門購買担当者景気指数(PMI、予想:55.2)
○15:00 ◇ 4月独貿易収支(予想:160 億ユーロの黒字)
○15:30 ◎ 5月スイス消費者物価指数(CPI、予想:前月比0.3%)
○16:00 ◎ 5月トルコ消費者物価指数(CPI、予想:前月比▲0.20%/前年比39.20%)
○16:50 ◎ 5月仏サービス部門PMI 改定値(予想:52.8)
○16:55 ◎ 5月独サービス部門PMI 改定値(予想:57.8)
○17:00 ◎ 5月ユーロ圏サービス部門PMI 改定値(予想:55.9)
○17:30 ◎ 5月英サービス部門PMI 改定値(予想:55.1)
○18:00 ◎ 4月ユーロ圏卸売物価指数(PPI、予想:前月比▲3.0%/前年比1.5%)
○22:00 ◎ ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、講演
○22:45 ◎ 5月米サービス部門PMI 改定値(予想:55.1)
○22:45 ◎ 5月米総合PMI 改定値
○23:00 ☆ 5月米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業指数(予想:52.2)
○23:00 ◎ 4月米製造業新規受注(予想:前月比0.8%)
○23:00 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演
○6日02:30 ◎ メスター米クリーブランド連銀総裁、講演
○ニュージーランド(国王誕生日)、休場
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
2 日08:27 シューマー上院院内総務(民主党)
「債務上限法案の今夜の採決で合意」
2 日09:27 ブラード米セントルイス連銀総裁
「政策金利は、十分に景気抑制的な水準の下限にある」
2 日09:59 植田日銀総裁
「債券取引損失引当金の金額は、現在の対応で将来の不確実性への対応としては十分と認識」
「2%の物価目標達成には、なおしばらく時間がかかる」
「物価基調的な上昇率は徐々に高まっていく」
「達成時期について確たることを申し上げることは出来ない。市場に不測の影響を発生させるリスクを高めることになる」
「金融緩和を続けることは、長い目でみた生産性向上に資する」
「持続的・安定的な物価目標達成で、通貨の信認を確保していく」
「ファンダメンタルズの最大の構成要素が物価の安定」
「消費者物価指数は、年度半ばから後半にかなりはっきり低下する」
「REIT 売却を含め、出口議論ができる段階には至っていない」
2 日10:46 鈴木財務相
「円安には、ポジティブとネガティブの両面がある」
「為替相場は、様々な要因で変動する」
「円の信認は、健全財政も重要な要素」
「円の信認を保つため、経済成長と財政健全化が必要」
2 日12:05 バイデン米大統領
「できるだけ早期の法案署名を楽しみにしている」
2 日12:15 イエレン米財務長官
「インフレ抑制法の効果的な実施を継続する」
2 日14:14 パネッタ欧州中央銀行(ECB)専務理事
「利上げサイクルの終点には到着していない」
2 日16:51 バスレ・スロベニア中銀総裁
「コアインフレは依然として高く、持続している」
「インフレ目標の2%達成には追加利上げが必要」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=レンジ切り上げ転換線の頭打ち回避したい>
大陽線引け。一目均衡表・転換線を下回る水準で下げ渋り、140円台に乗せる上昇となった。上昇傾向の転換線前後での底堅い動きがしばらく続くか。ただ、同線は現状からすれば明日139.69円へ上昇したところで頭打ちとなる公算。転換線の頭打ちとともに相場が失速する展開を回避するためにも年初来高値を更新して直近のレンジ上限を切り上げる必要がある。
レジスタンス1 140.48(ピボット・レジスタンス1)
前日終値 139.92
サポート1 139.58(日足一目均衡表・転換線)
サポート2 138.61(6/2 安値)
<ユーロドル=転換線付近で持ち直すことできるか注視>
上影陰線引け。一時1.0779ドルまで上昇した。しかし、一目均衡表・雲の下限1.0806 ドルや同水準付近で低下中の90日移動平均線が上値に控えるなか伸び悩み、1.07ドル付
近へ押し返されて週の取引を終えた。1.07ドル台で低下傾向の一目均衡表・転換線を追うような格好となったが、同線は明日1.0707 ドルまで低下したところで底打ちすることが見込まれる。同線の底打ちから戻りに沿って、相場水準が回復するか注視する局面となる。
レジスタンス1 1.0779(6/2 高値)
前日終値 1.0708
サポート1 1.0635(5/31 安値)
<ユーロ円=21 日線付近へ下押す展開も想定しておきたい>
下影陽線引け。1 日に一目均衡表・基準線148.87 円を下回った水準から浮上し、先週末は一目均衡表・転換線149.83円を一時上回った。転換線を下回って週引けとなったものの、週明けは再び同線を上回る推移となった。ただ、同線は現水準で頭打ちとなる可能性がある。やや重い動きとなり、149円付近で推移する21 日移動平均線や、転換線付近まで下押す場面も想定しておきたい。
レジスタンス1 150.63(5/30 高値)
前日終値 149.76
サポート1 149.09(21 日移動平均線)
<豪ドル円=上抜けた200 日線まだ低下中、動き不安定か>
大陽線引け。相場の強弱を判断する際の分岐点とされる200 日移動平均線を上抜けて上伸した。5 月2 日の上振れでつけた高値92.44 円を上回る強い動き。気掛かりなのは200日線がまだ低下中で、調整局面において下支えになりそうな主だった日足テクニカル指標が見当たらないこと。高値圏で不安定に振れる局面がありそうだ。
レジスタンス1 93.01(2/21 高値)
前日終値 92.47
サポート 1 92.01(5/29高値)