デイリーレポート 2024年5月31日

May 31, 2024

【前日の為替概況】米10年債利回り4.54%台でドル下落対円156.38円、対ユーロ1.0845ドル

30日のニューヨーク外国為替市場でドル円は3営業日ぶりに反落。終値は156.82円と前営業日NY終 値(157.64円)と比べて82銭程度のドル安水準だった。米商務省が発表した1-3月期米国内総生産(GDP) 改定値は前期比年率1.3%増と市場予想通りの結果となったが、米連邦準備理事会(FRB)が重視するイ ンフレ指標である食品とエネルギーを除いた個人消費支出(PCE)コア価格指数が前期比年率3.6%上昇 と予想の3.7%上昇を下回ると、全般ドル売りが先行した。米長期金利の指標となる米10年債利回りが 4.54%台まで低下したことも相場の重しとなり、一時156.38円と日通し安値を更新した。

ただ、一目均衡表基準線が位置する156.02円が目先サポートとして働くと下げ渋った。5時過ぎには 156.88円付近まで下値を切り上げた。ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁は「金融政策が景気抑制的 であるという十分な証拠ある」と述べたほか、ボスティック米アトランタ連銀総裁は「7月に利下げは予 想しないが、データが裏付けるなら利下げは検討する」「適切なら9月の利下げあり得る」などと語った。

ユーロドルは反発。終値は1.0832ドルと前営業日NY終値(1.0801ドル)と比べて0.0031ドル程度の ユーロ高水準だった。米長期金利の低下に伴うユーロ買い・ドル売りが優勢になると一時1.0845ドルと 日通し高値を付けた。低調な米経済指標が相次いだこともドル売りを誘った。主要通貨に対するドルの値 動きを示すドルインデックスは一時104.63まで低下した。

ユーロ円は続落。終値は169.86円と前営業日NY終値(170.28円)と比べて42銭程度のユーロ安水準。 ただ、NY市場に限れば169円台半ばから後半でのもみ合いに終始した。ドル円とユーロドルの値動きの 影響を同時に受けたため、相場は大きな方向感が出なかった。

【本日の東京為替見通し】5月東京都CPIを見極めた後は、今夜の米4月インフレ指標待ちか

本日の東京外国為替市場のドル円は、5月の全国消費者物価指数(CPI)の先行指標である東京都区部 消費者物価指数(CPI)を見極めた後は、今夜発表される4月米PCEデフレーターを控えて動きづらい展 開が予想される。

8時30分に発表される5月東京都区部消費者物価指数(CPI、生鮮食料品除く総合)は前年比+1.9%と 予想されており、4月の同比+1.6%からの上昇が見込まれている。予想通りならば、5月の全国CPIも、4 月の同比+2.2%からの上昇が見込まれることになり、6月の日銀金融政策決定会合での金融政策正常化観 測を高めることになる。

また、本日は、19時に外国為替平衡操作の実施状況(介入実績:4月26日~5月29日)が発表される ことで、市場筋による覆面介入の推定値約9兆円(4月29日:約5.5兆円、5月2日未明:約3.5兆円) との乖離を確認することになる。

4月17日に開催された日米韓財務相会談の時、イエレン米財務長官は、自国通貨の急激な下落を巡る 日本と韓国両財務相の懸念に留意する姿勢を示し、日本に対しては160円をレッドラインとして、ドル売 り・円買い介入を容認していたとのことである。160円がレッドライン(本丸)ならば、4月29日の第1 弾介入の159円台は内堀、第2弾介入と5月2日未明の第3弾介入の157円台は外堀と見なせることで、 今週の157円台での本邦通貨当局の不在は戦術の変更なのかもしれない。

岸田首相は経済財政諮問会議で、「最近の円安の動きを十分注視しており、政府・日銀は引き続き密接 に連携していく」と円安阻止を宣言しており、財務省による円買い介入、日銀による金融政策正常化、そ して6月に公表される「骨太の方針」でのレパトリ減税策などへの警戒感を高めている。 昨日は新発10年債利回りが2011年7月以来の高水準となる1.1%まで上昇して、円買い・日本株売り 要因となったことで、本日も債券市場の動向には警戒しておきたい。

債券市場では、6月の日銀金融政策決定会合での追加利上げや国債買いオペの減額、撤廃への警戒感が 高まっており、債券売り圧力が高まりつつある。

植田和男総裁は、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、「長期金利は金融市場 で形成されることが基本になる」と述べており、国債買いオペの撤廃の可能性を示唆していた。 6月11-12日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では、現状の金融政策の維持が見込まれてい るものの、利下げ開始時期を見極める意味で、今夜発表される4月米PCEデフレーターには要注目となる。 米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注視しているPCEだが、昨日発表された1-3月期のコ アPCE指数は+3.6%と、速報値の+3.7%から下方改定された。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッ チ」での利下げ開始は、11月5日に実施予定の米国大統領選の直後の11月7日のFOMCとなっており、 12月FOMCでは据え置きが見込まれていることで、年末のFF金利誘導目標は5.00-25%となっている。 昨日はボスティック米アトランタ連銀総裁が「適切なら9月の利下げあり得る。政治的な理由ではない」 と述べていた。

【本日の重要指標】

<国内>

○08:30 ◎ 5 月東京都区部消費者物価指数(CPI、生鮮食料品除く総合、予想:前年比 1.9%)

○08:30 ◎ 4 月完全失業率(予想:2.6%)

○08:30 ◎ 4 月有効求人倍率(予想:1.28 倍)

○08:50 ◎ 4 月鉱工業生産速報(予想:前月比 1.5%/前年比▲1.1%)

○08:50 ◇ 4 月商業販売統計速報(小売業販売額、予想:前年比 1.9%)

○14:00 ◇ 4 月新設住宅着工戸数(予想:前年比▲0.2%)

○19:00 ◇ 外国為替平衡操作の実施状況(介入実績)

<海外>

○10:30 ◎ 5 月中国製造業購買担当者景気指数(PMI、予想:50.4)

○15:00 ◇ 4 月独輸入物価指数(予想:前月比 0.5%/前年比▲1.8%)

○15:00 ◎ 4 月独小売売上高(予想:前月比▲0.3%/前年比 2.5%)

○15:00 ◇ 5 月英ネーションワイド住宅価格指数(予想:前月比 0.1%)

○15:00 ◎ ブイチッチ・クロアチア中銀総裁、講演

○15:30 ◇ 4 月スイス小売売上高

○15:45 ◇ 5 月仏 CPI 速報値(予想:前月比 0.2%/前年比 2.4%)

○15:45 ◇ 4 月仏卸売物価指数(PPI)

○15:45 ◇ 4 月仏消費支出(予想:前月比 0.2%)

○15:45 ◎ 1-3 月期仏国内総生産(GDP)改定値(予想:前期比 0.2%)

○16:00 ◎ 1-3 月期トルコ GDP(予想:前年比 5.7%)

○17:30 ◇ 4 月英消費者信用残高(予想:15 億ポンド)

○17:30 ◇ 4 月英マネーサプライ M4

○17:30 ◎ パネッタ欧州中央銀行(ECB)専務理事、講演

○18:00 ☆ 5 月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値(予想:前年比 2.5%)

○18:00 ☆ 5 月ユーロ圏 HICP コア速報値(予想:前年比 2.7%)

○21:00 ◎ 4 月南アフリカ貿易収支(予想:89 億ランドの黒字)

○21:00 ☆ 1-3 月期インド GDP(予想:前年同期比 6.7%)

○21:30 ☆ 3 月カナダ GDP(予想:前月比横ばい/前年比 0.7%)

☆ 1-3 月期カナダ GDP(予想:前期比 2.2%)

○21:30 ◎ 4 月米個人消費支出(PCE、予想:前月比 0.3%)

◎ 4 月米個人所得(予想:前月比 0.3%)

☆ 4 月米 PCE デフレーター(予想:前年比 2.7%)

☆ 4 月米 PCE コアデフレーター(予想:前月比 0.3%/前年比 2.8%)

○22:45 ◎ 5 月米シカゴ購買部協会景気指数(予想:41.0)

○6 月 2 日 石油輸出国機構(OPEC)プラス閣僚級会合(オンライン)

○6 月 2 日 メキシコ大統領選

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

30 日 08:36 ボスティック米アトランタ連銀総裁

「2%インフレ率への道筋は確実ではなく、用心が必要」

「インフレの道筋はでこぼこ(bumpy)だが、全般的に下 方傾向」

「利下げが可能になるのはおそらく第 4 四半期」

31 日 04:16

「インフレはゆっくりと低下する見通し」

「7 月に利下げは予想しないが、データが裏付けるなら 利下げは検討する」

「失業率の急上昇なしにインフレ目標達成を見込んでい る」

「適切なら 9 月の利下げあり得る」

「政治的な理由ではない」

30 日 10:46 ジョーダン・スイス国立銀行(スイス中銀、 SNB)総裁

「インフレ予測に小幅な上振れリスクがある」

「このリスクが現実となった場合、われわれの金融政策 スタンスは意図したより緩和的になる。スイスフラン安に 関連している可能性が最も高いが、外貨を売ることで対 応できる」

30 日 22:18 南アフリカ準備銀行(SARB、中央銀行)声 明

「2024 年 GDP 成長率見通しは前年比 1.2%と予測(前回 1.2%)、25 年は 1.4%と予測(前回 1.4%)」

「24 年CPI見通しは前年比5.1%と予測(前回は5.1%)、 25 年 CPI 見通しは 4.6%(前回 4.6%)」

「24 年のコア CPI 見通しは前年比 4.7%と予測(前回は 4.8%)、25 年 CPI 見通しは 4.6%(前回 4.6%)」

「長期的なインフレ見通しについては、世界的にまだか なりの不確実性がある」

「市場は引き続き国内政策の方向性に注目」

「インフレ見通しの変更は大きくない、インフレ目標達成 の課題はまだ終わっていない」

「インフレ率は来年第2四半期に4.5%目標で安定すると 見ている」

「電力供給停止の想定を下方修正したが、今年の GDP 成長率は 1.2%と予想」

「インフレ率を目標バンドの中間値で安定させることにコ ミットしている」

31 日 01:10 ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁 「金融政策が景気抑制的であるという十分な証拠ある」

「PCE は 2024 年に 2.5%、25 年に 2%に近づく」

「2024 年は GDP が 2-2.5%、失業率が 4%前後になる と予想」

「今年後半にインフレの緩和が再開すると予想」

「政策は FRB の目標に向けて順調に進んでいる」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=横ばいの基準線を支持に押し目買いスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯している。抱き線で反落したものの、転換線を 上回って引けていることで反発の可能性が示唆されている。 本日は転換線 156.78 円を念頭に置き、基準線を支持に押 し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 2 160.17(4/29 高値)
レジスタンス 1 157.99(5/1 高値)
前日終値 156.82
サポート 1 156.02(日足一目均衡表・基準線)
サポート 2 155.32(日足一目均衡表・雲の上限)

<ユーロドル=5/28 高値を抵抗に戻り売りスタンス>

陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯している。しかし、2 手連続陰線の後で孕み線 で反発したものの依然として転換線を下回って引けており 反落の可能性が示唆されている。 本日は転換線 1.0839 ドルを念頭に置き、28 日の高値を抵 抗に戻り売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕 舞い。

レジスタンス 1 1.0889(5/28 高値)
前日終値 1.0832
サポート 1 1.0773(日足一目均衡表・基準線)

<ポンド円=5/30 の安値を支持に押し目買いスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯している。2 手連続陰線でも依然として転換線 を上回って引けており反発の可能性が示唆されている。 本日は 30 日の安値を支持に押し目買いスタンスで臨み、 同水準を下抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 200.74(5/29 高値)
前日終値 199.67
サポート 1 198.76(5/30 安値)

<NZ ドル円=5/28 の高値を抵抗に戻り売りスタンス>

陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を 上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ グナルが点灯している。しかし、2 手連続陰線で転換線 95.91 円を下回って引けており続落の可能性が示唆されている。 本日は転換線を念頭に置き、28 日の高値を抵抗に戻り売り スタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕舞い。

レジスタンス 1 96.74(5/28 高値)
前日終値 95.87
サポート 1 95.04(5/17 安値)