デイリーレポート 2023年6月7日

June 7, 2023

【前日の為替概況】ドル円、小反発 日経平均先物や米金利の上昇で円売り・ドル買い

6日のニューヨーク外国為替市場でドル円は小反発。終値は139.63円と前営業日NY終値(139.58円)と比べて5銭程度のドル高水準だった。日経平均先物の上昇につれた買いが入ったほか、米金利の上昇に伴う円売り・ドル買いが出て、24時前に一時139.99円と日通し高値を付けた。ただ、節目の140.00円に接近した場面では戻り売りなどが出たため、1時過ぎには139.58円付近まで押し戻された。

もっとも、NY午後に入ると次第に値動きが鈍った。主要な米経済指標の発表がなく新規材料難となる中、来週の5月米消費者物価指数(CPI)や米連邦公開市場委員会(FOMC)など重要イベントを控えて、積極的な商いは手控えられた。

ユーロドルは反落。終値は1.0693ドルと前営業日NY終値(1.0713ドル)と比べて0.0020ドル程度のユーロ安水準だった。欧州中央銀行(ECB)が発表した4月のユーロ圏消費者予測調査で、1年先と3年先のインフレ期待がいずれも前月から低下したことが分かるとユーロ売りが優勢となった。米金利の上昇に伴うドル買いも入り、22時前には一時1.0667ドルと日通し安値を付けた。

ただ、1日の安値1.0662ドルが目先サポートとして働くと買い戻しが入り1.0698ドル付近まで下げ幅を縮めた。ECBの利上げ継続観測が引き続き根強いことも相場を下支えした。

ユーロ円は続落。終値は149.32円と前営業日NY終値(149.56円)と比べて24銭程度のユーロ安水準。日本時間夕刻に一時148.83円と日通し安値を付けたあとはじりじりと下値を切り上げて、24時過ぎには149.48円付近まで持ち直した。ただ、そのあとはドル円と同様に商いが細った。

豪ドル円はしっかり。豪準備銀行(RBA)のサプライズ利上げを受けて、欧米市場でも堅調地合いが続いた。4時30分過ぎに一時93.26円と昨年12月以来約半年ぶりの高値を更新した。

【本日の東京為替見通し】ドル円 材料探し、豪ドルは格言を念頭に置いた取引か

本日の東京為替市場でドル円は昨日同様に139円台を中心に方向感を探る展開となりそうだ。昨日は元米連邦準備理事会(FRB)副議長のクラリダ氏による「FRBが2024年まで利下げを開始する可能性は低い」との発言を受けて米金利が上昇し、これにドル円も飛びついた場面があった。同氏は確かに米金融政策を決定するうえで重要な位置にいたが、退任は1年5カ月前だ。現在は、債券運用残高では世界最大級のアクティブ運用会社・ピムコのグローバル経済アドバイザーでもあるため、発言はポジショントーク的な面が強いのではないか。それに反応してしまうほど「相場は材料難だった」ということを象徴している。

短期金利市場がFOMCをどう予想しているかをCMEのフェドウォッチでみると、来週は据え置きが8割超、逆に7月は利上げを6割超織り込んでいる。この辺りの見方について今週は変わりようがなさそう。12月会合に対しては、夏の利上げ後から現行水準に戻すか、または更に0.25ポイント引き下げもあり得るかという程度。1カ月前には利下げしか眼中になかったところから考えると、かなり雰囲気は変わった。この辺りは注視していきたい。

米金利で気になるのは、中長期金利の逆イールドが再び拡大傾向にあること。昨日は米2年債利回りが前日比+0.01%の4.48%、同10年債利回りは前日比-0.02%の3.66%と82ベーシスポイント(bp)差まで広がった。年初から3月前半にかけて逆イールドは拡大基調となり、一時は約110bp差を記録。月後半にかけて急速に縮小したものの、5月以降では再び中期金利の上昇が長期金利より目立っている。金利全般の方向性を示唆しているのかもしれない。

なお日本時間10時30分には1-3月期豪国内総生産(GDP)が発表予定。市場予想は前期比0.3%増、前年同期比2.4%増と前四半期からプラス幅を0.2-0.3ポイント縮める見込み。昨日に0.25ポイントの利上げを決定した豪準備銀行(RBA)は声明で示した「経済成長の減速」を確認することになりそうだ。遅行指標ということもあり、予想から大きく上下に振れない限りは豪ドル相場への影響は限定的だろう。

その豪ドルは、昨日のRBA利上げ以降、底堅い動きを見せている。豪ドル円は93円前半と約半年ぶりの高値圏でニューヨーク引け、豪ドル/ドルも0.6690ドル台の200日移動平均線に迫った。「The trend is your friend」という相場格言を念頭に置いて取引したほうがよいかもしれない。

【本日の重要指標】

※時刻表示は日本時間

<国内>

○08:50 ◇ 5 月外貨準備高

○14:00 ◇ 4 月景気動向指数速報値(予想:先行98.2/一致99.0)

<海外>

○08:20 ◎ ロウ豪準備銀行(RBA)総裁、講演

○10:30 ☆ 1-3 月期豪国内総生産(GDP、予想:前期比0.3%/前年比2.4%)

○未定 ◎ 5 月中国貿易収支(予想:920 億ドルの黒字)

○14:45 ◇ 5 月スイス失業率(季節調整前、予想:1.9%)

○15:00 ◎ 4 月独鉱工業生産(予想:前月比0.6%/前年同月比1.5%)

○15:45 ◇ 4 月仏貿易収支(予想:77.00 億ユーロの赤字)

○15:45 ◇ 4 月仏経常収支

○16:50 ◎ デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁、講演

○17:30 ◎ クノット・オランダ中銀総裁、講演

○18:10 ◎ パネッタECB 専務理事、講演

○20:00 ◇ MBA 住宅ローン申請指数

○21:00 ◎ ブイチッチ・クロアチア中銀総裁、講演

○21:00 ◎ 5 月ブラジルIBGE 消費者物価指数(IPCA、予想:前年同月比4.04%)

○21:30 ◇ 4 月カナダ貿易収支(予想:9.0 億カナダドルの黒字)

○21:30 ◇ 1-3 月期カナダ労働生産性指数

○21:30 ◎ 4 月米貿易収支(予想:752 億ドルの赤字)

○23:00 ☆ カナダ銀行(BOC、中央銀行)、政策金利発表(予想:4.50%で据え置き)

○23:30 ◇ EIA 週間在庫統計

○8 日04:00 ◇ 4 月米消費者信用残高(予想:220 億ドル)

※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。

※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。

※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

【前日までの要人発言】

6 日14:42 植田日銀総裁

「インフレの予想はデフレ期と比べて水準が上昇している」

「物価目標に達するまで量的・質的金融緩和政策を継続する」

6 日16:08 クノット・オランダ中銀総裁

「基調的なインフレ圧力は高まっている」

「金融引き締めの効果を十分にみる必要がある」

「金融引き締めが実体経済に波及していることを示す最初の兆候が見られる」

6 日17:06 欧州中央銀行(ECB)

「消費者のインフレ期待は著しく低下」

「3 年先のインフレ期待が2.9%から2.5%に低下」

6 日21:16 ラガルドECB 総裁

「インフレ率は依然として高水準であり、欧州中央銀行(ECB)は追加利上げを継続する」

※時間は日本時間

【日足一目均衡表分析】

<ドル円=転換線付近からの下押しリスクに留意>

小陽線引け。139.10円まで下振れ後、一時139.99円と140円回復目前まで上昇した。一目均衡表・転換線139.69円前後で上下している。転換線が今週末まで現水準で横ばいで、週明けには低下し始める状態に変化はない。転換線をわずかながらNY終値で下回っていることから、138.30円台で推移している21日移動平均線などをめどに下値を探り、戻してもやがて低下する転換線に動きが抑えられるリスクを念頭に置いて臨みたい。

レジスタンス1 139.99(6/6 高値)
前日終値 139.63
サポート1 139.10(6/6 安値)
サポート2 138.38(21 日移動平均線)

<ユーロドル=21 日線などが戻り抑えそう>

小陰線引け。一目均衡表・転換線1.0707 ドル前後で上値が重かった。転換線は現水準を底に、来週13日にも水準を切り上げ始める見込み。同線に沿って緩やかに持ち直す展開を期待するが動きはさえない。戻りがやや強めになっても、2日高値1.0779ドルや1.0780ドル台で推移する21日移動平均線が重しになるかもしれない。

レジスタンス1 1.0779(6/2 高値)
前日終値 1.0693
サポート1 1.0635(5/31 安値)

<ユーロ円=転換線・基準線はレンジ切り下がりを示唆>

下影小陰線引け。一時148.83円へ下振れたものの、149円台を回復してNY の取引を終えている。148.87円に位置していた一目均衡表・基準線前後で下支えされた格好だが、同線は本日148.60円へ低下。転換線も今週末には現水準149.83円から低下し始める見込み。総じてレンジが切り下がることの示唆と考えられ、動きがやや重くなる可能性がある。

レジスタンス1 149.83(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 149.32
サポート1 148.60(日足一目均衡表・基準線)

<豪ドル円=200 日線を上回る水準で上昇>

下影陽線引け。相場の強弱を判断する際の分岐点とされる200日移動平均線を上回る水準で5 日は下押し先行とやや不安定に推移した。しかし底堅さを維持し、昨日は昨年12月13日以来の高値93.26円をつけた。次の節目は同11月13日高値93.85円になるか。目先のポイントであるピボット・レジスタンスなどをこなしつつ、上値を試す展開が続くとみる。

レジスタンス1 93.57(ピボット・レジスタンス1)
前日終値 93.16
サポート1 92.66(6/5 高値)