デイリーレポート 2024年6月11日
June 11, 2024
【前日の為替概況】フランス政局懸念でユーロ下落対ドル1.0733ドル、対円では一時168.30円
10日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは続落。終値は1.0765ドルと前営業日NY終値(1.0801 ドル)と比べて0.0036ドル程度のユーロ安水準だった。6-9日に実施された欧州議会選挙では欧州連合 (EU)に懐疑的な勢力が伸長し、フランスでは下院議会の解散と総選挙の実施が決まった。仏政局不安を 背景にユーロ売りが出ると、欧州時間に一時1.0733ドルと5月9日以来約1カ月ぶりの安値を付けた。
ただ、NYの取引時間帯に入ると下げ渋る展開に。ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁が「金利は必ずし も直線的に低下するわけではない」「ECBはまだインフレ退治の勝利宣言はしない」などと発言すると、 「ECBは追加利下げを急いでいない」との見方からユーロを買い戻す動きが出た。取引終了間際には 1.0767ドル付近まで下げ幅を縮めた。
ドル円は続伸。終値は157.04円と前営業日NY終値(156.75円)と比べて29銭程度のドル高水準だっ た。11-12日の米連邦公開市場委員会(FOMC)や13-14日の日銀金融政策決定会合を前に様子見ムード が広がる中、米長期金利の上昇に伴う円売り・ドル買いが出てじり高の展開となった。4時過ぎには157.10 円付近まで値を上げ、東京時間に付けた日通し高値157.20円に近づいた。
ユーロ円は3日続落。終値は169.06円と前営業日NY終値(169.33円)と比べて27銭程度のユーロ安 水準。仏政局不安を背景にユーロ売りが先行すると19時30分前に一時168.30円と日通し安値を付けた ものの、売り一巡後は買い戻しが優勢に。4時30分前には169.08円付近まで下げ幅を縮めた。
【本日の東京為替見通し】ドル円、底堅い展開かタカ派的なドット・プロットへの警戒感から
本日の東京外国為替市場のドル円は、本日から明日にかけて開催される米連邦公開市場委員会(FOMC) を控えて動きづらい展開の中、タカ派的なドット・プロット(金利予測分布図)への警戒感から底堅い展 開が予想される。
昨日のドル円は、先週末に発表された米5月雇用統計での非農業部門雇用者数(前月比+27.2万人)と 平均時給(前月比+0.4%)を受けたドル買いの流れで157.20円まで上昇した。もっともここからは、FOMC を控えていることや本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入への警戒感などから伸び悩む展開となった。 FOMCでは、FF金利誘導目標5.25-50%の据え置きが確実視されており、注目ポイントは、ドット・プ ロットとパウエルFRB議長の会見となる。ドット・プロットでは、年内の利下げの回数が、これまでの3 回から1-2回に減る可能性、前回2.5%から2.6%まで上方修正された中立金利が更に上方修正される可 能性が警戒されている。
なおシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウ オッチ」では利下げ回数は11月FOMCのみの1回となっており、12月FOMCでは据え置きが見込まれてお り、年末のFF金利誘導目標は5.00-25%となっている。
パウエルFRB議長の見解を代弁していると思われるウォールストリート・ジャーナル紙のFEDウォッチ ャー、ニック・ティミラオス記者は、「Fedは非対称的なアプローチを採用しており、弱い労働指標で利 下げ前倒しは可能だが、強い労働市場は必ずしも利下げ先送りとはならず、むしろインフレ次第となる」 と述べていた。
明日は、FOMCが開催されている時に、インフレ指標である米5月消費者物価指数(CPI)が発表される ため、大幅な上昇や鈍化を示す数字だった場合には、FOMC声明やパウエルFRB議長の会見に影響を及ぼ すことになるのかもしれない。
ところで本邦通貨当局は、4月29日の第1弾介入を159円台、第2弾介入と5月2日未明の第3弾介 入を157円台で行ったと推測されている。しかし、イエレン米財務長官が「為替介入は稀であるべき」と 幾度も苦言を呈していることで、その後の157円台での円買い介入は見送られている。
鈴木財務相は、先週末に「為替介入は抑制的に行われるべきものと考えている。今後も為替市場を注視 し、必要に応じて万全の対応をとる」と述べており、本日も、ドル円が157円台後半まで上昇した場合に は警戒しておきたい。
【本日の重要指標】
<国内>
○08:50 ◇ 5 月マネーストック M2
<海外>
○10:30 ◇ 5 月豪 NAB 企業景況感指数
○15:00 ◎ 5 月英雇用統計(失業率/失業保険申請件数推移)
○15:00 ◎ 2-4 月英失業率(ILO 方式、予想:4.3%)
○16:00 ◎ シムカス・リトアニア中銀総裁、講演
○16:10 ◎ ビルロワ・フランス中銀総裁、講演
○17:00 ◎ レーン・フィンランド中銀総裁、講演
○18:30 ◎ 5 月南アフリカ SACCI 企業信頼感指数
○20:00 ◎ ホルツマン・オーストリア中銀総裁、講演
○20:05 ◎ レーン欧州中央銀行(ECB)専務理事兼チーフ・エコノミスト、講演
○21:00 ◎ 5 月ブラジル IBGE 消費者物価指数(IPCA、予想:前年同月比 3.89%)
○21:00 ◇ 4 月メキシコ鉱工業生産(季調済、予想:前月比 0.3%)
○21:30 ◇ 4 月カナダ住宅建設許可件数(予想:前月比 2.2%)
○23:00 ◎ マクルーフ・アイルランド中銀総裁、講演
○12 日 01:45 ◎ エルダーソン ECB 専務理事、講演
○12 日 02:00 ◎ 米財務省、10 年債入札
○米連邦公開市場委員会(FOMC)1 日目
※「予想」は特に記載のない限り市場予想平均を表す。▲はマイナス。
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
10 日 14:21 カザークス・ラトビア中銀総裁
「インフレが再燃しないことを確認する必要がある」
「欧州中央銀行(ECB)の次のステップは、インフレや景 況感次第」
10 日 17:56 カジミール・スロバキア中銀総裁
「夏の間は金利について急ぐ必要はなく、楽観視できる」
「9 月の新しい経済データを待ってから判断したい」
「ユーロ圏経済は依然として脆弱な状況にある」
「物価上昇圧力が再燃するリスクは無視できない」
10 日 18:40 ナーゲル独連銀総裁
「ECB は今後の金利軌道についてはなお慎重である必 要」
「ECB、利下げサイクルは必ずしも始まっていない」
11 日 01:05 ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁
「金利は必ずしも直線的に低下するわけではない」
「金利を据え置く期間もあるだろう」
「金利を据え置く期間が複数回あるかもしれない」
「労働コストや企業利益の動向を見守りたい」
「ECB はあらかじめ決まった金利の道筋にはいない」
「ECB はまだインフレ退治の勝利宣言はしない」
※時間は日本時間
【日足一目均衡表分析】
<ドル円=転換線を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ
グナルが点灯している。2 手連続陽線で転換線を上回って引
けていることで続伸の可能性が示唆されている。
本日は転換線を支持に押し目買いスタンスで臨み、同線を
下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 2 160.17(4/29 高値=年初来高値)
レジスタンス 1 157.99(5/1 高値)
前日終値 157.04
サポート 1 156.11(日足一目均衡表・転換線)
サポート 2 155.75(日足一目均衡表・雲の上限)
<ユーロドル=遅行スパン逆転、転換線を抵抗に戻り売り>
陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンはわずか
に実線を下回り、雲の中で引けていることで、売買中立とな
っている。しかし、2 手連続陰線で転換線を下回って引けて
おり続落の可能性が示唆されている。
本日は雲の上限 1.0791 ドルを念頭に置き、転換線を抵抗
に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 1.0825(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 1.0765
サポート 1 1.0650(5/1 安値)
<ユーロ円=6/6 高値を抵抗に戻り売りスタンス>
陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ
グナルが点灯している。しかし、3 手連続陰線で転換線を下
回って引けており続落の可能性が示唆されている。
本日は転換線 169.49 円を念頭に置き、6 日の高値を抵抗に
戻り売りスタンスで臨み、同水準を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 170.28(6/6 高値)
前日終値 169.06
サポート 1 168.27(日足一目均衡表・基準線)
<豪ドル円=基準線を支持に押し目買いスタンス>
陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を
上回り、雲の上で引けていることで、三役好転の強い買いシ
グナルが点灯している。抱き線で切り返して転換線を上回っ
て引けていることで続伸の可能性が示唆されている。
本日は転換線 103.67 円を念頭に置き、基準線を支持に押
し目買いスタンスで臨み、同線を下抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス 1 104.87(5/29 高値)
前日終値 103.80
サポート 1 103.23(日足一目均衡表・基準線)